『完結』家族ができるよ! やったねモモンガ様!   作:万歳!

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本格的に寒くなってきましたね……冬が来たって感じです。

皆さんも体調に気を付けましょう!

ちなみ今回はR17,9の意味で熱いですよ!


第7話

 デミウルゴスはbarでやけ酒を飲んでいた。何故か? 答えは簡単である。自分の創造主の本当の理念を理解できずに、浅はかにもウルベルトが憎む悪党になってしまったからだ。

 

「私は、何ということを……許される事ではない……くっ」

 

 グラスに残っていた酒を全て飲み干し、副料理長に酒を注ぐように頼む。副料理長は自分が、ナザリック一の智者がこのような状態に驚いていた。当然だ普段であれば、デミウルゴスはこんな酒の飲み方何かしない。

 

 だが途中からは副料理長は、愚痴を言語化せずに酒を飲むだけのデミウルゴスに嫌気がさしてきている様だった。

 

 普段のデミウルゴスなら副料理長を気遣って、その段階で酒を止めていただろう。だが今の自分には酒が必要だ。憂さを晴らすために。

 

 そうして暫くすると、パンドラズ・アクターが現れた。何故現れたかは分からない。

 

「副料理長!? 私にもカクテルを!」

 

「畏まりました。パンドラズ・アクター様」

 

 そうして自分の隣にパンドラズ・アクターが座る。

 

「荒れていますね……デミウルゴス殿? 私で良ければ話を聞きますが?」

 

 即座に必要はないと言いかけて……改める。誰かに相談するとすれば、パンドラズ・アクターだけが最適だからだ。そう創造主の理念から外れた行動をした場合、裁いてくれる創造主が残っている、パンドラズ・アクターが。

 

 カクテルが作られてパンドラズ・アクターの目の前に置かれる。そして副料理長にこの場を一旦離れるようにパンドラズ・アクターが促してくれる。

 

 自分の中の闇を吐き出させやすくしてくれているのだろう、その心遣いに感謝する。

 

「さて、準備は整いました。デミウルゴス殿? あなたは何を悩んでいるのですか?」

 

「……私は、ウルベルト様の理念で悪であれと願われています。ですが、伯父上から聞いてしまいました。伯父上とウルベルト様はリアルの世界では負け組であるということを……君も知ってたのかい?」

 

「はい、ウルベルト様はご両親を小さいころに亡くされていると聞いております。父上と同じであると」

 

「……そうか、父上か。私は本当におろかだ。ただ表面にある悪と言う言葉に括って、ウルベルト様が本来望んでいた、『悪』、正義が裁けぬ『悪』を裁くという理念から外れた行動をしていたのだから……いや私がしていることは……悪と言う言葉では表現できないっ」

 

 その言葉に沈黙がbarを支配する。その闇を切り裂くようにパンドラズ・アクターが口を開く。

 

「あなたは間違っていない。誰かがナザリックの存在のために『悪』にならなければならなかったのだから。デミウルゴス殿。あなたがやったことは必要悪です。もしウルベルト様が激怒なされようと私があなたを擁護いたします」

 

「――ありがとう」

 

「では誇りある悪として、デミウルゴス殿にはやっていただきたい仕事があります」

 

 そして仕事の話をし解散した。デミウルゴスの心は少しだけ晴れていた。

 

★ ★ ★

 

 ラキュースは怒っていた。自分の私利私欲しか考えない王国の貴族たちに。自分達は今、麻薬を作っている村を襲撃して、ラナーの元に戻ってきていた。これからのことを考えるために。

 

「村の麻薬を焼き払った際、この羊皮紙を発見したわ。恐らくは何らかの指令書だと思うんだげど、何か分かる? ラナー?」

 

「換字式暗号ね」

 

「私たちもそう考えたわ。だから必死に暗号表を探したんだけれど、見つからなくて。魅了の魔法も2回目以降は利きが悪くなってしまうから一番最初は大事にしたいと思ってまだ使ってないの」

 

「……ちょっと待ってね。うん。この暗号意外と簡単な気がするわよ?」

 

 ラキュースは内心で冷汗を流す。この天才という文字だけでは表せないような天才の友人を。

 

(ほんと、ありえない才能を持っているわね)

 

 この子が男子として生まれていたなら間違いなく国王を目指させていただろう。それとも今からでも女王を目指させるべきなのかもしれないとラキュースは思う。この娘が王国の頂点に立てばきっと王国の腐敗は撲滅されるだろう。

 

(下半身でしかものを考えられない、愚か者たちめ!)

 

 ラキュースが強く憤る。拳は固く結ばされているしかし表情には出さない。貴族としての生活で慣れた対応だ。

 

「分かったわ。指令書じゃなかったけど」

 

 その言葉に従いラナーがいくつかの王国の地名がかかれた書類を渡してくる。

 

「この場所に麻薬の蓄積所なり、重要拠点があるということかしら?」

 

「ただの生産場にそんな大事なことを文章にしておかないと思う。たぶん囮。それにこの文章はもう役に立たないわ」

 

「どうして? 八本指を討伐するのに何かしら役に立つんじゃないの?」

 

「ええ、以前ならそうだったわ。でも、今じゃ役に立たないの。あなた達が麻薬を作っている村を襲撃してくれている時に、この地名の場所って何者かに襲われているの。そうよねクライム?」

 

「はい、この場所は何者かに襲撃された場所と一致しています……内部抗争の可能性もありますね」

 

 それまで声を出さずに背景に徹していたクライムが話し出す。何者かに襲われている。何があったのだろうか……。クライムが言う通り内部抗争だろうか? 八本指は八つの部門に分かれて行動しているのだから。

 

 一度思いっきり溜息を吐く。

 

「そう、つまり何でかは知らないけどこの場所は、無意味ってことね?」

 

「そうよ」

 

 ラナーのその言葉に部屋を沈黙が支配する。自分たちが行った事がほとんど意味の無い物になったことにラキュースは無念という気持ちが込み上げる。

 

「話し合うべきことは他にもある」

 

 その言葉はティナの者だ。今までクライム同様、背景に徹したのを破って会話に参加してきた。確かに話し合うべきことは八本指のことだけではない。

 

「ティナさんの言う通りよ。ラキュース? あなた達も噂では聞いているでしょ? 今度の王国と帝国の戦争ではアダマンタイト級冒険者達を含めたすべての冒険者たちを徴用するという噂が立っているのは」

 

「ええ、確かに冒険者たちがそんな噂をしているのは知ってるわ。でも噂に過ぎないでしょう? 王国だって冒険者組合の不文律は知っているはずだもの」

 

「いえ、違うわ。残念ながらバルブロお兄様が、本腰を入れて冒険者たちを徴用すべきと主張しているわ」

 

 ラキュースは思わず、眉を引きつらせる。ラナー以外の王族は無能しかいないのだろうか。そう言った怒りの感情が心を支配した。

 

「恐らく帝国も、今回の戦争では冒険者たちを徴用するわ。そうなった時のことを、私たちは話し合うべきだと思うの」

 

 確かにその通りだ。だがそれは決まった言葉しか出てこないのではないだろうか。冒険者の不文律を守るために参戦しないと言う言葉が。

 

「不文律じゃダメなの? 今まではそれで認められてきたはずよ」

 

「ええ、残念ながらバルブロお兄様は本気で、冒険者たちを徴用しようと考えているわ、恐らく今回の戦争で亡くなる兵士の数は帝国も冒険者を徴用するはずだから、今までとは比較にならないぐらいの被害になるはずだわ」

 

 犠牲者が増える……帝国に理不尽ではあるかもしれないが怒りがわく。帝国がちょっかいをかけてこなければもう少し、王国の膿を絞り出すことも可能だったはずだから。

 

 それ以上に膿を作り出す貴族たちに怒りがわく。

 

「もしあなた達アダマンタイト級冒険者たちが、今度の戦争への参加を拒絶するなら、王国を追われることになると思うわ。だからラキュース、あなたが選んで。王国から何もせずに去るか、今度の戦争に参加して、帝国が二度と戦争を仕掛けてくることができないぐらいの打撃を与えるかを」

 

 ……その発想は無かった。確かに自分たちが帝国兵を殺しまくれば帝国は二度と王国に戦争を仕掛けてこないだろう。ラキュースは貴族の出身だ。この国を見捨てることは出来ない。ならラナーが言う通り、戦争に参加して、帝国兵を殺しまわるべきなのかもしれない。尤も相手も同じようにアダマンタイト級冒険者を徴用する以上そう簡単にはいかないだろうが。

 

「鬼ボス、帝国のアダマンタイト級冒険者は私たちより弱い、戦争に参加した場合、帝国は大きな打撃を受けることになるはず」

 

 その言葉にラキュースの覚悟は決まった。今度の戦争で徴用されるのであれば、王国兵を守って代わりに戦おうと。

 

「分かったわ。バルブロ王子が本当に私たちを徴用するなら、徴用されてあげる。それがこの国を守ることに繋がるはずだから」

 

★ ★ ★

 

 ラキュースたちが去り、クライムも自分の部屋から出て行った。そして帝国が何を考えているのか思考する。ラキュース達は気付いていなかったが、今回の冒険者達を徴用するという噂は帝国から流れてきたものだ。どこから噂が立ったか分からないように細工されていたが、ラナーにかかれば簡単であった。

 

 しかし、なぜ帝国が冒険者を徴用するという噂を王国に流したか、ラナーにも難しかった。兵士の質では王国が帝国にかなり劣るが、冒険者の質では劣っていない。いやアダマンタイト級冒険者では王国が勝っているのだ。どちらも貴族に連なるアダマンタイト級冒険者だ。何らかの仕掛けがあれば帝国との戦争に参加するのは当然だろう。自国への愛と、民を守るために。

 

 だからこそ分からない。帝国の皇帝は一体何を考えているのかが。わざわざ犠牲者が多くなるようにお膳立てをしているのだから。

 

 帝国の騎士たちは専業騎士たちだ。冒険者のランクで言えば上位に位置する。その者たちを冒険者たちが討ち取る。冒険者達は自分達よりも弱い人間しか狙わないだろう。その場合帝国の騎士たちも自分達よりも強い存在、例えば蒼の薔薇に殺されるだろう。それを帝国の皇帝が分からないとは思えない。今回初めて帝国の皇帝は私の想像を超えている。

 

 

 分からない。何故……冒険者たちを徴用させるのか……。待てよ。ここに第三者の意向があると仮定したらどうだろう……。

 

 体に電流が走った。

 

 もし第三者がいて王国を亡国に導こうとしているのなら、ラキュースたち冒険者が参戦するのは都合がいいのかもしれない。戦える者たちを根こそぎ倒してしまおうというのだろう。

 

 確かにアダマンタイト級冒険者たちまでも殺されたら王国は立ち直ることは難しいだろう。となると帝国の皇帝に第三者が、冒険者を徴用するように命じたのだろう。貴族に連なる者たちを殺害させるために。

 

 それだけじゃない。最近聞く違法娼館の襲撃や、スラムから人間が去っていることも、関連付けられるかもしれない。

 

「第三者の存在……恐らく、王国は大敗する」

 

 それは構わない。だが問題があるとすれば、どうやって自分がクライムと一緒に生活するかだ。そのために必要なことは何だろうか?

 

 第三者と接触することだ。だがどうやって第三者と接触すべきだろうか……。いや、頭を振る。恐らく今回の第三者は私と同程度の知能を持っていると仮定できる。そして、アダマンタイト級冒険者を軽くあしらえる力を持っていると仮定できる。そうすればその第三者が、王国の冒険者たちを徴用させようとしたわけが理解できる。

 

 無表情のまま必死に思考するどうすれば第三者と接触できるか……いやどうすれば接触してきてくれるか。そして思う。仮に自分と同程度の知能があり力がけた外れているのなら……私なら自分を見つからないように監視する。そして呟く。

 

「私はクライムとの生活を保障してくれるのであれば、軍門に即座に下ります。第三者様」

 

 そして夜まで待つ。恐らく第三者が接触してきてくれると信じて。自分の知能は王国の誰よりも優れている、恐らく第三者も自分に匹敵すると分かっているだろう。そしてその願いはかなった。ラナーの部屋に突然のっぺらぼうの人?が現れた。

 

「お初にお目にかかります。私はパンドラズ・アクターと申します! 夜分遅くに失礼いたします!」

 

「いえ、構いません、それ以上に来ていただいて感謝しています。」

 

 安堵の息を吐く。もし来てくれなければラナーとクライムの生存は厳しくなっていただろうから。

 

「確認させてください。八本指の拠点を襲ったのはあなた達ですか? それとスラムから人が少なくなっているとも聞きます。それもあなた達ですか?」

 

「ええ、正解です。なるほど。あなたはやはり知能だけで言えば、我々に匹敵しているようだ」

 

「褒めて頂き感謝致します。パンドラズ・アクター様。それで私はどう動けばよろしいでしょうか?」

 

「そうですね、動かないでほしいです。むしろあなたが何もしない方が、王国を滅亡させるのがたやすくなります。後はそうですね、あなたと少年の命の保証は致しましょう」

 

「ありがとうございます、パンドラズ・アクター様」

 

 これで自分とクライムの最低限の安全は確保できた。後は王国をどう滅ぼすかだが……これは自分が知るべきではない情報なのだろう。もし知るべき情報であれば既に話してくれているはずだ。自分は何もしない。そうすることが王国の滅亡に繋がるはずなのだから。

 

「あなたに関してですが、王国が滅亡した後、失踪して頂きます。そして我々の住む地にてあなたの才覚を活かしてもらおうと考えています」

 

「私の頭脳がどこまでお役に立てるかは分かりませんが、役に立つように必死に役目を果たさせて頂きます」

 

「少年に関しても私が拉致してあなたの住む場所に連れて行きましょう。そうすれば、あなたは永遠を少年と一緒に暮らすことができます」

 

 そう言ってパンドラズ・アクターは去って行った。それからしばらくしてラナーは笑った。

 

★ ★ ★ 

 

 

 

「まだだぁ!!」

 

 首輪をしているブレイン・アングラウスは声を大にして叫んでいた。そして敵を見据える。それはガゼフに匹敵する強さを持つ敵であった。その名は死の騎士(デス・ナイト)。曰く強大すぎて幻になってしまった伝説に匹敵する騎士である。

 

 それが4体ブレインに襲い掛かってきている。既に1対1ではブレインが簡単に勝てるようになったから行われる戦いである。

 

 4対1。はっきり言って逸脱者に到達したブレインから見ても無謀極まりない。しかも相性も悪い。自分の刀はアンデッドと戦うには不向きだ。だがだとしても逃げだけは打たない。連携を取りお互いを守りながら戦ってくる死の騎士(デス・ナイト)は脅威だ。

 

 しかしブレインは互角に戦っていた。それはパンドラズ・アクターが与えた疲労無効の指輪のおかげだ。自分の方が能力が優れているため、疲労さえしなければ負けることもない。

 

 さらに言えば、時間をかければ死の騎士(デス・ナイト)の連携の隙を見極め一撃を叩きこむことができる。

 

 それを一体どれくらい繰り返しただろう……。気が付けば死の騎士(デス・ナイト)たちは灰に変わっていた。

 

 自分は勝ったのだ。死の騎士(デス・ナイト)4体に。今の自分なら間違いなくガゼフ・ストロノーフに勝てるとの確信がある。

 

 だがそれでは足りない。ブレインの目標はシャルティアに傷をつける。ただそのために生きているのだから。

 

「パンドラズ・アクターこの程度じゃ足りない。もっと強い敵を出してくれ」

 

 その言葉にこちらを観察していた、パンドラズ・アクターが反応を返す。だが自分の思っている反応ではなかった。

 

「ふむ……これなら、間に合いますね。おっと、もっと強い敵を出してほしいとのことでしたね構いません。ですがその前にあなたに話しておかなければならない事があります」

 

 パンドラズ・アクターが何か重大なことを話そうとしているのは分かる。だから自分は聞く体勢になった。ブレインの聞く体勢とはシャルティアを仮想敵にしながら刀を振るう状態のことだ。

 

 シャルティアは圧倒的に強い。だが、いつか必ず、その頂に到達する。そのために自分は生きているのだから。

 

「では聞く準備も整ったようなので話させて頂きます。今度の王国と帝国の戦争ですが、貴方にも参戦してもらいます」

 

「それは、構わないが、意味があるのか?」

 

 帝国は戦争に関して、まともに戦うことは無い。ただ対峙して撤退するそれが今までの帝国のやり方だったはずだ。

 

「ええ、意味はあります。今回の戦争では王国を滅ぼします。その手筈も整っております。あなたは参戦して、ネム様を護衛しながら……ガゼフ・ストロノーフを討ちなさい」

 

「――それは、確実に俺はガゼフと戦っていいということなのか?」

 

「ええ、構いません。それとその首輪はそろそろ外しなさい。その首輪は強くなるのを補助してくれますが、能力が下がります。戦争まで時間がありません。今の自分が全力を出せばどこまでいけるのか確認をしておきなさい」

 

「分かった」

 

 パンドラズ・アクターの言葉に従いながらすでに、自分の一部分と化していた首輪を外していた。何となく違和感がある。

 

「では、コキュートス殿! ブレインの相手をよろしくお願い致します。カルネ村の護衛は私が致しますので、よろしくお願い致します」

 

「――分カッタ。ブレイン・アングラウス。腕ヲ上ゲタナ」

 

「ありがとう、褒めてくれて」

 

 自分が望んだのこういった格上との戦いだ。その中でもコキュートスは自分の師匠とも呼べる存在だ。普段は裏からカルネ村を護衛しているが、たまに自分の相手をしてくれていた。

 

 今回の戦争ではすでにパンドラズ・アクターの中では勝ち筋が見えているのだろう。ならば自分はそれに従って、ガゼフを討つだけだ。

 

 そのためにコキュートスの胸を借りる。恐らくほとんどの人間が望んでも手に入らない、幸福な人生を自分は送っていると思う。

 

 さぁ戦いの時間だ。

 

★ ★ ★

 

 薄黒く闇がかかってくるころ、ガゼフは自身の家に向かって力を落とした調子で歩いていた。

 

 そして、思わずため息を吐いていた。何故か?

 

 あの少女たちの自分を見る視線が忘れられないからだ。あの時から悩まされていた。最近は夢にまで出てくるようになっていた。

 

 自分は悪党だ。彼女たちを救うことができず、自分を襲うための囮にさせてしまった。

 

 あの言葉が忘れられない。あの自分を断罪する言葉が。「家族を、返してよー!!」当然だろう。自分のせいで家族を失ってしまったのだから。

 

 ――否、悪いのはガゼフではない。では誰が悪いのか? 王国をまともに運営できない、国王のせいだろうか? 否、否である。悪いのはガゼフを差し出した王国に蔓延る害悪である貴族派閥の者たちである。

 

 だが国王は決して他人のせいにはしないだろう。全ての責任は自分にあると考えるはずである。

 

 そしてガゼフも同様である。彼はナザリックにいる者と比べればただの弱者に過ぎない。

 

 しかし(こと)、精神面においてはナザリックの者たちを上回っているだろう。それ故に自責の念を自分に課しているのだから。本当に罪と言っていいか分からない物から決して目をそらざずに受け入れているのだから。

 

 例えどのような結果になろうとも彼が肉体面では英雄に足を延ばしており、精神面では紛れもない英雄なのだから――

 

 一度首を横に振る。思考がだんだんと悪い方向に向かっている気がする。だが、その思考は自分を逃してくれなかった。

 

(私が悪い。どう言い訳しようと……俺がもっと強ければっ)

 

 だが魔法詠唱者者(マジック・キャスター)の断罪の言葉が思い出される。自分は間違えたのだろうか? 王に仕えたのは間違いだったのだろうか?

 

 否、否である。王は間違いなくこの国に住む者たちを少しでもいい暮らしをさせようと努力している。必死に努力されている。それをガゼフは見続けている。カルネ村での出来事を話した時、王は自分に頭を下げた。万が一貴族派にもれれば鬼の首を取った勢いで王を糾弾するだろう。平民に頭を下げるとは何事かと。

 

 それでもガゼフに頭を下げた。救えなかった者たちのことを自分の罪のように王は受け入れくれていた。それほどまでに素晴らしい王なのだ……自分は王の剣である。なのに何もできない……最近では違法と思われる人身売買に関係する者たちが何者かによって救われていると噂で聞いている。喝采を挙げたかった。できるなら自分も参加して今なお地獄で苦しんでいる者たちを救いたいぐらいでる。だが自分は王の剣なのだ。迂闊に動くことは許されていない。そう、それがどれだけ苦しいものであろうと。

 

 そして恐らくそれを黙認し続けている貴族派閥の貴族たちへの嫌悪感が増す。彼らは明確につながっていると言わない。だが自分を非合法な売買の護衛に何とか理屈をつけて自分を護衛にしようとしている。王に圧力を加えて。

 

 一言で言おう。反吐が出る。できるなら今すぐ王国を蝕んでいる害虫をこの手で切り裂いてしまいたい。だがそれをすれば忽ち内乱が起きるだろう。帝国の介入も起こるだろう。そうなればこの国は終わりである。

 

 戦士長として自分に何ができるのか? 自問自答を繰り返す。だが答えが出ることはなかった。まるで王国に蔓延る暗闇のように。

 

 

★ ★ ★ おまけ

 

「イクぅッ!?」

 

 アルベドが自身の股間から跳ねた。今は執務の時間だ。悟はアルベドとお付きのメイドと、プレアデスからユリ・アルファ(小さくなった)で執務を行っていた。

 

 では何故冒頭のようになったのか? 簡単である悟が自重を捨てたからだ。疲労無効の指輪の効果で絶倫になった悟はいつでもビンビンになれる。そしてそんな状況で美少女であるアルベドと一緒にいる。我慢できるわけがなかった。

 

 手を出した以上、最後まで面倒を見るべきだろう。タブラ・スマラグディナには悪いと思うが、とりあえず彼らが帰還するまではこのままでいいはずだ。だから悟は超肉食系になっているのだ。

 

 周りに視線を向ける。アルベドは息絶え絶えになって気持ちよさそうにしている。良かった。気持ち良くできている様で。一般メイドを見る。顔を真っ赤にしてスカートを押さえている。恐らく自分が手を出すと言えば頷くだろう。だが手は出さない。既に手を出してしまった者には満足させるが、それ以外の者たちには決して手を出さない。それが悟の願望であるから。しかし、ユリ・アルファを見る。こちらも恥ずかしそうにスカートを強く握っている。

 

(恐らく、俺はロリコンと思われている)

 

 それはアルベドがミニマムの指輪で小さくなっていることから理解することができる。他に手を出したのもアウラとネムだけだ。

 

 間違いなく、ロリコンと思われているはずだ。

 

 そんな中ユリ・アルファが小さくなった姿で、自分の前にいる。これはもう、手を出しても良いということではないだろうか?

 

 悟の中の悪魔がささやく。全員違っても気持ちいんだから、ユリ・アルファも気持ちいいはずだ。だから手を出しちゃいなよと。

 

 悟の中の天使がささやく。NPCたちは創造主や支配者に支配されることを望んでいる。だから手を出して側室にしちゃいなよと。

 

 

 数分、息絶え絶えのアルベドの中を行ったり来たりしながら……。

 

「ユリ、こっちに来い」

 

「は、はい伯父上」

 

 ユリ・アルファが何かで動きにくい表情をしながらメイドとして鍛えられた自制心で歩き出す。そしてアルベドの中から、取り出したものをユリ・アルファに近づける。

 

「あっ」

 

「ユリ、スカートをたくし上げて後ろを向きなさい」

 

 その言葉に従い、ユリ・アルファはスカートをたくし上げながらこちらにお尻を見せる。そして下着を見てみる。濡れていた。思わずにやけてしまう

 

「ユリは悪い子だな。アルベドと私がしているところを見るだけで、濡らしてしまうんだから」

 

「ああモモンガ酷いです、今は私の番です抜いちゃだめです!」

 

「ああ、アルベドは悪い娘だな。お仕置きが必要だな」

 

 そういって悟は強くアルベドのお尻を叩いた。反応が即座に帰ってくる。揺れる。愛液が飛び散る。

 

「ああ、もっともっと、感じさせてください!!」

 

 アルベドを幸せにする、ユリ・アルファにも手を出す。支配者の辛いところだ。だが後悔だけはしない。

 

 




支配者の仮面がはがれたら、性欲の塊でロリコンになったという話(´・ω・`)

クリスマスとクリスマスイブ、どっちが最終話に相応しいですか?

  • クリスマス
  • クリスマスイブ

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