『完結』家族ができるよ! やったねモモンガ様!   作:万歳!

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お待たせしました!

駆け足になりますが、お付き合いください!


第5話

 セバスは現在充実した生活を送っていた。何故か? それは創造主の理念であろうか? それに基づく「誰かが困っていたら助けるのは当たり前!」という理念を実行できているからである。創造主の理念が実行できていて嬉しくないNPCはいないはずだ。

 

 パンドラズ・アクターの要請のもと、現在セバスは王国内でほぼ奴隷扱いされている者たちを助け出していた。それだけではないスラムで暮らしている貧しい者たちも救っていた。

 

 現在の仮の住まいである屋敷に他の者たちにばれないように夜誘導して、シャルティアの魔法で救った者たちを移動させているのだ。

 

 既に1000名近くをカルネ村に送っている。革命を起こすのにはまだまだ足りない。最低でも5000人近くの人を集めなくては。そうパンドラズ・アクターに指示されている。5000人である。目安としてだろうが、コツコツとやっているのでは今年の帝国の戦争には間に合わない。

 

 帝国の兵たちとともに、カルネ村は革命を起こす手筈となっている。人を集めるために何らかの切っ掛けが欲しいものである。

 

 そう考えていた時であった。彼女に出会ったのは。

 

 闇の中、進んでいたセバスの前に鉄の扉があった。その扉が重そうに開いて行ったのだ。そして彼女がゴミのように投げ捨てられる。

 

「……あなたは困っているのですか?」

 

「おい、爺、どこから湧いて出た! 最近じゃゴミ掃除がされたのか人が少なくなってきているのに……今なら見逃してやる。さっさと行け!」

 

 セバスは必死に思考する。どうすれば一番ナザリックのためになるかを。この少女の扱い方は人に対する者ではない。ゴミ同然の扱いである。恐らくは犯罪組織に食い物にされた被害者なのだろう。

 

 人数を少しづつ集めて、カルネ村に送るのにも限界がある。

 

(で、あるなら、犯罪組織と敵対して、犯罪組織で食い物にされている人たちを救うことが、現在のナザリックの方針にあっていますね)

 

 そこまでゆっくりと思考する。後は言葉に出すだけだ。

 

「彼女は『何』ですか?」

 

 静かに怒りを内包しながらセバスは男に問いかけていた。いやそれだけではない。相手の男は強制的に空中にいた。セバスの両腕で空中に浮かされたのだ。

 

 それでようやくセバスが尋常ならざるものだと、男は悟ったのだろう。

 

「う、うちの従業員だ」

 

 その顔には必死さが浮かんでいた。だがセバスには無意味だ。

 

「なるほど」

 

 そうして片手で男を空中に浮かせたまま。メッセージのスクロールを発動する。相手はパンドラズ・アクターだ。

 

『パンドラズ・アクター様、聞こえていらっしゃいますか?』

 

『はい! 聞こえております! 如何なさいました、セバス殿』

 

『実は――』

 

 そうして今自分が直面している事態を細かに話す。犯罪組織と敵対して大勢を一気に救って良いかと。その言葉にパンドラス・アクターは答えた。

 

 

『――成程それは良い提案です。私も部下たちに命じてバックアップをさせましょう。革命を起こさせる以上、もう情報源としてのあなた達の行動は意味がありません。むしろそれで、一気に人を救って引きこもるべきでしょう。ついでにシャルティア嬢にも動いて頂きましょう』

 

『畏まりました。では実行させて頂きます』

 

 そう言ってメッセージを終わらせる。そしてセバスの言葉を聞いていた男が必死になってこっちを見ている。だがそこで終わってしまった。

 

「では、あなたは用済みです」

 

「まっ――」

 

 男は最後まで言葉をつづけることなくゴミのようにセバスに殺された。まるで今までの罪が襲ってきたかのように。そうして被害者の少女を優しく抱え、セバスは王都の仮の住宅へと堂々とした姿で戻っていった。

 

 まるで自分にはやましい事は何一つもないとの格好で。

 

★ ★ ★

 

 ソリュシャン・イプシロンはセバスが帰ってくるのを待っていた。

 

「おかえり――」

 

 途中でソリュシャンの言葉は終わった。視線はセバスが抱えている物に移る。

 

「セバス様、それは一体?」

 

「拾いました」

 

 セバスが人間を救ってきて、この屋敷からカルネ村へ送っていることは知っている。それがナザリックの方針とも理解している。しかし一つだけ疑問がある。今まで拾ってきた人間もかなり汚い部類に入ったが今回の人間は今までと比較して一番ひどい状態だ。

 

「カルネ村にお送りになりますか?」

 

「いいえ、その前にソリュシャン、あなたに治療をして頂きたいのです」

 

 そしてセバスはパンドラズ・アクターと話し合った事をソリュシャンに話し出した。

 

「パンドラズ・アクター様と話し合いましたが、情報収集手段としての私達の出番はほぼ意味をなさなくなっています。捕らえた人間たちの存在が、我々の任務とかぶっているからです。そのため犯罪組織と敵対してそこで奴隷となっている人間たちを救う手筈となりました。救った後はそのまま我々はナザリックに帰還します」

 

「畏まりました。ですがそれなら治療は私よりもメイド長にお願いしたほうが良いのではないでしょうか?」

 

「私もそれを考えました。ですがメイドたちは以前のあなた達の会議で混乱していると聞きます。そのためメイド長が離れるのは難しいでしょう。ですのであなたが治療してください」

 

「畏まりました。では治療が終わったらすぐに、カルネ村にお送りになるのでしょうか?」

 

「いえ、その前に違法組織がどのあたりにあるか聞いてからカルネ村に送ろうと考えています。ある程度の想像は付きますが……では私は食事を買ってきます。治療をよろしくお願い致します」

 

「畏まりました」

 

 そしてセバスの拾い物を受け取ると、現在使っていない部屋へソリュシャンは運ぶ。そして診断を行う。結果として幾つかの性病やろっ骨が折れている等が判明した。

 

 ソリュシャンにとって簡単に治療できるものだ。

 

 即刻治療を行った。そして気づく。妊娠していると。これはどうするべきだろうか? 暫く考えた後、こんな状態にさせた男の子どもなんて生みたくないだろうと判断して、中絶を行った。

 

 そして、セバスが帰ってくるのとソリュシャンが治療等を終わらせて部屋を出てきたのはほぼ同時であった。

 

★ ★ ★

 

 ツアレは夢の中にいた。そう、昔妹と一緒に暮らしていた時だ。そのころの幸福を思い出す。だが実際は違う。ツアレは貴族に無理矢理、初めてを奪われて奴隷にされた。

 

 しかし死の一瞬前、誰かに救われた気がした。そしてまどろみの中、自分が今いる部屋を見る。綺麗な部屋だった。そして自分が来ている服を見る。貴族の令嬢が着そうな綺麗な服だった。

 

 ボーっとしていると、ドアがノックされた。少しだけ震えてしまう。そして男の人が部屋に入ってくる。そして優しく口を開く。

 

「完全に癒えたと思いますが、体の状態はどうですか?」

 

 返答は出来なかった。ツアレはまだここが現実だとは認識できていなかった。まるで夢のようだ。相手も返事があることを期待していたわけではないのだろう。言葉が続けられた。夢心地のままその言葉を聞く。

 

「お腹が減っていませんか? 食事を持ってきましたよ」

 

 そして男の人の中にある器を見る、匂いに反応してしまう。美味しそうだ。

 

「では、どうぞ」

 

 ツアレは動けなかった。ただボーとしていた。長い時間が経過した後ツアレはようやく動き出す。痛みに怯えて、強張った動き方で。傷はない。だが記憶に刻まれた痛みだけは無くなっていない。

 

 ツアレは木のスプーンを握り器の中にあるお粥を食べる。

 

 目を見開いてしまう。その美味しさに。

 

 片方の手で男の人から気の器を受け取る。優しいことに自分がどこに置きたいかを理解した上で手伝ってくれる。

 

 そして手元に抱え込んだ器に木のスプーンを突き刺す。そして勢いよく焦ったように食べ始める。服を汚しているようだが気にならない。そして食べ終わった後、一気にホッとしてしまう。眠気が急に襲ってきた感じだ。そして眠りにつこうとして……一気に目が見開かれる。この光景が夢になってしまうのではないかと恐怖を覚えて。

 

 それに対して男の人が優しそうに言葉をかけた。

 

「体が睡眠を欲しているのでしょう。無理はされずにゆっくり眠られるといいでしょう。ここにいれば何も怖い事はありません。私が保障します」

 

 目が動き始めて男の人を直視する。その顔は優しさが溢れているように見えた。

 

 ツアレの口がわずかに開く。そして閉ざす。そんなことを幾たびか繰り返す。それを男性は優しそうに見守ってくれた。

 

「あ……ありが……ござ……ぃます」

 

「気にする事はありません。私が拾い上げたからにはあなたの身の安全は必ず保障いたしましょう」

 

 その言葉にツアレの目が見開かれた。そしてぽろぽろと涙が溢れだす。そして火が付いたかのように泣き出してしまう。自分の運命への呪いその運命を与えた存在を憎悪した。そして矛先は男の人にも向かった。

 

「ど……し……て、も、もっと、はやく……けてくれなかったんですか!?」

 

 人としての扱いを受けた。そのせいで今までの記憶に耐えられなくなったのだ。頭をかきむしる。髪の毛がプチプチと抜ける音がする。だが気にならない。

 

 木の器などもベットに転がる。そんなことをしていると男の人が優しく自分を抱きしめてくれた。まるで小さいころ父親に優しく抱いてくれたかのように。

 

「もう、大丈夫です」

 

 その言葉を聞き一瞬だけしゃくりあげ、男の人の言葉をかみしめるようにしながら、ツアレは男の人の胸に顔を埋めると泣き声をあげた。それは先程前の呪詛が籠った泣き声とは違っていた。

 

★ ★ ★

 

 セバスの服が彼女の涙で濡れるだけの時間が経過したころ、ようやく彼女は泣き止んだ。そしてゆっくりと恥ずかし気にセバスから離れる。

 

「あ……ごめ……さい」

 

「気にしないでください。女性に胸を貸したというのは男にとって名誉なことですよ」

 

 そう言いながらセバスはハンカチをポケットから取り出すと優しく涙の後をふき取る。そしてハンカチを渡す。

 

「さぁゆっくりと休んでください。起きたら今後について話し合いましょう」

 

「こんご、で……か?」

 

 セバスは彼女を見る。本人は喋る気になっているようだがこのまま会話を続けていいかと逡巡したが、注意深く観察しながら話を続ける。

 

「今後ですが、あなたは私の主人が治めているカルネ村というところに行ってもらいます」

 

 彼女が少しだけ不安そうな顔をしている。知らない人たちのところに行くのが不安なのだろう。その不安をぬぐうように会話を続ける。

 

「安心してください、あの村ではあなたと同じようにひどい目にあった人がたくさんいます。同じ苦しみを抱えた者同士で仲良くなれるはずです。そうそう、名前を名乗っていませんでしたね。私はセバス・チャンといいます。あなたのお名前は?」

 

「あ……わた……は、ツー……ツアレ……す」

 

 

「ツアレですか? いい名前です。少しだけ酷なことを聞きますが、あなたはどこでそう言った目にあっていましたか? 私が全員助けてきますので、分かる事だけでも教えて頂けると、ありがたいのですが」

 

 

「あ……その……わか……ないです」

 

「そうですか、分かりました。その当たりは私が調査を行いましょう。今はゆっくりと休んでください」

 

 そうして、ツアレがベットに横になるのを眺めた後、セバスは部屋を退出した。今後のことを考えながら。

 

(さて、彼女が奴隷でどこにいたか分からないかは、凡そ見当がついてました)

 

 犯罪組織は闇に隠れて行動するのだから。ばれないように用意周到に行っているだろう。だが、まき餌はある。あの殺した人間と堂々とツアレを連れ帰った以上きっと何か反応があるだろう。

 

(それまでに彼女をカルネ村に移動させなければ)

 

 

★ ★ ★

 

 そしてツアレがカルネ村に向かってから数日、反応があった。今まで誰も叩いたことがないドアノブが叩かれたのだ。それを耳にするとセバスがゆっくりと玄関に向かう。

 

「……どちら様でしょうか?」

 

「私は巡回使のスタッファン・へーウィシュである」

 

 少しだけトーンの高い音でドアの外から人物が名乗る。

 

「王国には、知っていると思うが奴隷売買を禁止する法律がある。……ラナー王女が先頭に立って立案し可決されたものだがね。今回はその法律に違反しているのではないかという話が飛び込んできてね。確認のために来させてもらったのだよ」

 

 釣り糸に愚か者が引っ掛かったようだ。きっとどうしようもないクズがこの罠に引っかかると思っていた。

 

「残念ですが、私共は奴隷を持っておりません。それに失礼ですがあなた様が本当に役人かどうかも分かりません。お帰り下さい」

 

「なっ!?」

 

 少しだけ殺気を込めて威圧すると、もう一人の男が危険性に気付いたのだろう。男を引っ張り去っ行った。

 

 それを見ながらセバスは聞こえないように小声で声を出す。

 

影の悪魔(シャドウ・デーモン)。あの二人を追いなさい。そしてどこに行ったのか、どこに奴隷たちがいるか細かく確かめてきなさい」

 

 その言葉に反応して影の悪魔(シャドウ・デーモン)たちは二人を追って闇に消えた。

 

 それを尻目にしながらセバスはいつものようにメッセージの魔法をスクロールを使い発動させる。

 

『パンドラズ・アクター様ですか? ネズミが巣穴に案内してくれるようです』

 

 

★ ★ ★

 

 夜のナザリック。パンドラズ・アクターとデミウルゴス、アルベドが集まっていた。ある一件について話し合うためだ。

 

「さてお集まりいただき感謝致します」

 

「いえいえ、構いませんよ」

 

「ええ、私も構わないわ。夜は残念ながら私の番じゃないからね……」

 

 アルベドが少しだけ悔しそうにしているのをデミウルゴスは横目に見る。今の時間はネム・エモットの順番だ。たまにそこにアウラが混じっているようだが……早く吉報を貰いたいものである。

 

 それはともかくデミウルゴスは何故、パンドラズ・アクターが自分達を集めたか質問をしていた。

 

「さて、パンドラズ・アクターも忙しいだろうし、早速本題に入ろう」

 

「ありがとうございます! 今回、皆様と話し合うのことは二つあります。まず一点目ですが、セバス殿が王国の犯罪組織と敵対して一気に人を救ってナザリックに撤退することになりました。今現在被害者が救われている時間でしょう。それと今まで奴隷たちを食い物にしていた商人や上の者たちは、デミウルゴス殿、あなたに渡しますので好きなようにしてください」

 

「ありがとうございます。中々奴隷が手に入らないから、都合がいいね。さてでは、そろそろ本題に入ってもらって良いかな?」

 

 今までの情報は単なる情報共有に過ぎない。情報共有は大事であるが、この程度のことならメッセージで話すだけでいい。アルベドとデミウルゴス、パンドラズ・アクターの3人が集まる必要性はない。

 

 

「畏まりました。今回話したい本題とは、王国の第3王女ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフについてです」

 

「ふむ、何かありましたか?」

 

「確か噂では賢いとは聞いていたけど、私たちを呼び集めるほどなの?」

 

 その言葉にパンドラズ・アクターが大きく頷く。

 

「はい、夜中ですが、影の悪魔(シャドウ・デーモン)たちに情報を集めさせた結果をプロファイリングし私自身が潜入して調べたのですが――」

 

 そこで一度言葉が切れる。パンドラズ・アクターはそうすることで言葉を印象付けようとしている。もう我々の間では必要はないと思うが、伯父上の定めた理念に従っている以上、反論は出来ない。

 

「彼女は私達3人に匹敵する智者ということが判明しました」

 

「それは、本当かい?」

 

「ええ、デミウルゴスの言う通りよ、本当なの?」

 

影の悪魔(シャドウ・デーモン)の情報と私自身の見立てでまず間違いないかと」

 

 不気味な沈黙が発生した。自分たちに匹敵する智者が人間に存在する。危険だ。これから先王国を滅ぼすならその女には死んでもらうべきだろう。と高速に思考する。だがあえてそれを行わずに自分たちに話したということは。

 

「殺すのは、惜しいということですか?」

 

「はい、我々の配下になるのであれば、有効活用できると思います」

 

「確かに、有効活用できるなら、それもいいと思うわ。でも危険じゃない?」

 

 その言葉にパンドラズ・アクターが頷く。しかしなぜ配下にできる可能性があるのかをパンドラズ・アクターは自分達に話し出す。

 

「彼女は一人の男に執着しています。その男も淡い恋心を王女に対して抱いているようです。お互いを人質にすれば、我々ナザリックに逆らうことは無いでしょう」

 

 それに逆らったとしても、レベル差がありすぎて、簡単に殺せるだろうと匂わせている。

 

 

 なるほど。確かにそれなら自分たちの中に入れてもいいかもしれない。ナザリックの中で監禁すればいいだけの話なのだから。デミウルゴスは自分の思うことを話す。

 

「分かりました。元々、王国と帝国はパンドラズ・アクターの領域ですその件に関してはお任せいたしましょう」

 

「デミウルゴスの言う通りね。任せたわ」

 

「畏まりました。では頃合いを見て、王国から拉致してナザリックに監禁しましょう」

 

★ ★ ★

 

『レイナース殿、聞こえていらっしゃいますか?』

 

『……パンドラズ・アクター様ですか?』

 

 自分の頭の中にパンドラズ・アクターの声が響き渡る。だが即座に信じることは出来ない。メッセージの魔法は便利ではあるが盲信は出来ないからだ。

 

『よろしければ、今誰も私のそばにいないので、以前のようにこちらに来ていただけますか?』

 

『ああ、そうでしたね! こちらではメッセージは完全に信じられるものではなかったのでしたね! 畏まりました、今すぐそちらに向かわせて頂きます』

 

 そしてメッセージの魔法が途切れる。そして数秒後、転移門であろうか? 以前にも見た門が開いた。

 

「お久しぶりです、レイナース殿」

 

「お久しぶりでございます。パンドラズ・アクター様。本日は一体どのような御命令でしょうか?」

 

「はい、今回は今年の帝国の戦争に関することで一つお願いがありまして」

 

「今年の戦争ですか? 確かカルネ村という場所が革命を起こして、我々帝国はそれを助ける形で攻めるのではなかったのでしょうか?」

 

 その言葉にパンドラズ・アクターが大きく頷く。そして追加の議題が提案された。

 

「その通りです。ですがそこに冒険者たちも加えてほしいと思っているのです」

 

「冒険者たちをですか? ですが、それは冒険者組合の不文律に外れています」

 

「存じています。ですがジルクニフ殿なら強権を持って一度ぐらいなら通せるでしょう?」

 

「……確かに一回ぐらいなら通せると思いますが、その場合王国の冒険者たちも徴兵されるのでは? 余り言いたくありませんが帝国にいるアダマンタイト冒険者たちと王国のアダマンタイト冒険者たちを比較した場合、王国のアダマンタイト冒険者たちの方が上かと思います」

 

 疑問に思った事を話す。確かにジルクニフの強権を持ってすれば一回限りなら、冒険者たちを徴用することも可能だろう。だがその場合同じように王国も冒険者たちを徴用するだろう。アダマンタイト冒険者たちが王国、帝国で徴用すれば戦争の被害は大きくなるだろう。本当にそれでいいのだろうか。それに話した通り王国のアダマンタイト冒険者の方が優れているだろう。下手を打てば帝国軍は壊滅的打撃を受けるだろう。レイナースは構わないが、パンドラズ・アクターからすれば革命を成功させるためには帝国軍が必要なはずである。

 

「構いません。むしろそれが狙いです。王国の冒険者の代表であるアダマンタイト冒険者たちはどちらも貴族にかかわる者たちです。その者たちの目の前で農民兵たちの武器を下ろさせる。それによって革命を成就させます」

 

「畏まりました、その事を皇帝陛下にお伝えさせて頂きます」

 

「よろしくお願い致します、本来なら私自身が伝えるべきなのでしょうか、ジルクニフ殿は暇がなさそうなので……では失礼いたします」

 

「はい、畏まりました。またのお出でをお待ちしております」

 

 そしてパンドラズ・アクターは帰って行った。

 

 レイナースは必死に思考する。これは自分がパンドラズ・アクターから与えられた命令だ。この命令をこなせば恐らく顔の呪いを治療してくれるのだろう。

 

 確かにジルクニフは忙しいが、わざわざ私の手柄を立てさせる機会を与えてくれたことに感謝である。

 

(でも冒険者たちを徴用ね……)

 

 本当に可能なのか疑問に思う。オリハルコンまでの冒険者なら強権を持ってジルクニフが徴用することは可能だろう。問題はアダマンタイト級冒険者たちだ。彼らは冒険者たちの中でも別格だ。相手をするなら、万が一を考えるならフールーダに動いてもらうしかないだろう。現在のフールーダは魔導書の読み込みに必死になっている。

 

 それの邪魔をしたら皇帝と言えど殺されるだろう……いやそれも任務か。フールーダを動かし冒険者たちを徴用する。それが私に課せられた役目なのだから。

 

「――必ず、成し遂げなければ」

 

★ ★ ★

 

 昨日もネムたちと一緒にエッチな遊びをした。

 

 そして結論を言うと自分がいつも先に力尽きてしまう。少女に性欲で負ける。自分が情けなくなった。何よりもアルベドもアウラも本当は満足させられていないのではないかと疑問に思った。自分が恥ずかしい。

 

 しかしその不安も今日でサヨナラだ。

 

 そう悟は今日から人間形態時、疲労無効の指輪を装備し始めたのだから。

 

 これで絶倫になれる。疲れ知らず。抜かずの10連発、20連発なども理論上は可能だ。

 

 彼女たちが快楽で気絶するまで続けよう。そうすることが愛しているという一番の愛情表現になるだろうと信じて。

 

「サトル~ただいま~」

 

 さぁ戦いの時だ。自分の息子は既に臨戦態勢だ。軽く食事を取ったら始めるとしよう。

 

「ああ、御帰りネム。今日はどうだったか?」

 

「うん今日はね村の外からたくさんに人たちがやってきたの! ただ……みんな元気がないみたいで心配」

 

 パンドラズ・アクターから聞いた革命要員だろう。王国で地獄を見てきた人間たちのはずだ。恨みは骨髄にまでしみこんでいるのだろう。そして、それを救うのはアインズ・ウール・ゴウン。自分の命令の下救われた命がいる。感無量だ。後は革命を成功させるだけだ。

 

「そうか、それは心配だな……ユリだけでなくメイド長にもカルネ村に足を運ぶように命令しておこう」

 

「メイド長ってあの頭が犬の人で、お父さんやお母さんを蘇生させてくれた人?」

 

「ああ、その認識であっている」

 

 駄目だ。食事が終わるまでは我慢しようと思っていたが我慢できそうにない。ネムを抱える。

 

「わっ」

 

(天国を見せてやるからな、ネム)

 

 そうして寝室につくとネムの服の上から愛撫を始める……そして夜が明けた――

 

「――サトル酷いよ……壊れちゃうかと思っちゃた」

 

「ああ、すまない。でも気持ちは良かっただろ?」

 

 赤い顔をしながらツンとして「知らない」と呟く少女。可愛い。だが部屋の中は臭気が漂っていた。ネムの愛液や悟の精液の匂いが混ざり合った独特の匂いだ。掃除する者たちも大変だろう。何れは福利厚生も手を出さなきゃならないだろう。いやパンドラズ・アクターに命じて福利厚生にも手を出そう。

 

(他にも魔法の道具で何かプレイに使えそうなものを宝物殿から集めてこないとな……それともシャルティアに聞くか? シャルティアならペロロンチーノの娘だし、何か持っていても不思議ではなさそうだが)

 

 そう考えながら、優しくネムを抱きしめる。決して手放さないと心に決めて。この温もりは自分だけのものだと信じて。

 

「……えっ? サトルのまだ元気なの!?」

 

「そうだな。朝の食事まで時間があるし、もう1ラウンドと行こうか……ネムがもう一度気絶するまで続けるからな」

 

 朝は始まったばかりだ。




なお、この時空のセバス様は無事ハーレムを築いたようです(*´ω`*)

クリスマスとクリスマスイブ、どっちが最終話に相応しいですか?

  • クリスマス
  • クリスマスイブ

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