『完結』家族ができるよ! やったねモモンガ様!   作:万歳!

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小説家よ。私も昔小説家だったが、ぶくぶく茶釜様の呪いを受けてしまって1919か0721の時間にしか投下できない体にされてしまってな……。


第4話

 デミウルゴスはアルベドたちがメイド会議を行っている頃、シャルティアの下を訪れていた。それは義務感と仲間思いのデミウルゴスがシャルティアに助言しなければならないと思ったからだ。

 

「何なんですか、デミウルゴス。いきなり押しかけてくるなんて」

 

「時間を取らせてすまないね、以前のことで少しだけ助言をさせてほしいと思ってね?」

 

「以前のこと? 何のことでありんしょうか? 私も今難しい問題で悩んでいるのでありんす。手短にお願いするでありんす」

 

 シャルティアが悩んでいること……恐らくアルベドが関連しているのだろう。そこを考慮に入れたうえで助言を行うべきだ。

 

「以前、アルベドが側室として伯父上の孤独を埋めていくと言ったね。その事を覚えているかい?」

 

「……もちろんでありんす」

 

 非常に悩ましそうな顔に変わった。

 

「何かあったのかい? 私で良ければ相談に乗りますが……」

 

「……そうでありんすね。デミウルゴスになら話しても特に問題はないでありんすね」

 

 そしてその言葉を最後に、シャルティアがアルベドに言われた言葉を自分に話す。

 

 成程と思う。確かにアルベドの言葉は間違っていない。シャルティアはペロロンチーノか伯父上かどちらかを選ばなければならない。

 

 だがそれだけではない。

 

 アルベドはライバルを少しでも減らそうとしているのだ。建て前は立派だが……。

 

(まさかペロロンチーノ様のことを持ち出してライバルを減らそうとは……)

 

 驚嘆に値する。もちろん別の意味でだが。

 

「――シャルティア。それはアルベドの謀略だ。君をモモンガ様と家族にさせないための策略に過ぎない」

 

「え、そうなんでありんすか!? でもペロロンチーノ様とモモンガ様を選ばなければならないのは事実でありせんせんか?」

 

「確かにそこだけを見るとアルベドはシャルティアのことを思って忠告してくれているように見えるね。だが、それは君が躊躇を持つことで伯父上と離れさせようとする謀略に過ぎない」

 

 いいかいと、デミウルゴスは前置きを置く。

 

「別に側室に括ることは無いんだよ。そこをアルベドは隠している。伯父上と家族になる方法は側室になる事だけじゃない。今の関係性を深くしていくことや……あるいは義父上と呼んでみるとか方法はいくらでもある。アルベドの謀略に惑わされてはいけないよ」

 

「あ……ありがとうでありんす!義父上と呼ぶのは盲点でありんした! 色々と考えてみるでありんす、ありがとうデミウルゴス!」

 

「力になれてよかったよ。では私は行くよ。また会おう」

 

★ ★ ★ 

 

「では、今から第一回メイド会議を実施します。わん。今回はオブサーバーとして守護者統括のアルベド様とアウラ様にお越しいただきました」

 

「みんな、よろしくね」

 

「よろしくーぶぃ!」

 

 アルベドは周りを見る。そこには一般メイドたちと、プレアデスのメイドたちが集合していた。議長はメイド長だ。会議の内容はどうすればモモンガの家族になれるかだ。中にはネム・エモットの力を借りて側室になったアウラもいた。怒りで頭が沸騰しそうだ。アウラに対して何も考えず側室になったことに関して。

 

 しかしそれは横においておく。ここでの会話では自分が主導権を握って側室の数を減らすのと……アウラにやってもらうことを誘導しなければならないだろう。

 

 今回は、至高の御方を呼び捨てで呼べるという特権を得たアルベドがオブサーバーとしてメイド達の会議に呼ばれたのだ。またアウラもモモンガのことをどう呼んでいるか知らないが側室の一人として意見を聞きたいということで呼ばれていた。

 

 一番最初に発言したのは、プレアデスの一人ルプスレギナだった。ふむ、もしかしたら彼女が対抗馬になるような未来もあったのかもしれないと夢想してしまう。だがここでその未来は出来る限り断つ。

 

「はいはい、やっぱりアルベド様とアウラ様のように側室になるのが、一番伯父様の家族になれる方法だと思うっす!」

 

 その言葉にメイドたち全員が「モモンガ様の側室」「ああ、いけませぬモモンガ様、私のような下賤な身に」等溜息を吐きたくなるような妄想をするメイドたちが続出した。

 

 大きくため息をつく。

 

「そうね。それができるなら、一番いいわね」

 

 アルベドの言葉に周囲のざわつきが消えた。少しだけだがアルベドはメイドたちを憐みのこもった眼で見ていた。そしてかつては自分も同じであったと。勝手に自分の理想を押し付けていたと。自己嫌悪を覚えた。アウラは訝しげに自分を見ている。そしてメイドたちは少し非難するように自分を見ている。

 

「アルベド様? それはどういうことですか? 我々は全員伯父上様の妃になることを嫌がったりはしません」

 

 メイドの一人がアルベドに反発するように発言した。それを全てのメイドたちが頷いている。気づいていないのだ。シャルティアも同様だが。哀れである。

 

 事実を教えてあげるのが、優しい守護者統括アルベドだろう。

 

「いい、あなた達がモモンガの側室になるということは、自分の創造主が帰還なされた時、その御方の妻となることを放棄することと同じなのよ?」

 

 メイドたち全員の顔が強張っている。いやなかには、座り込んで泣きそうになっている娘もいる。ああ気づけないだろう。

 

「た、確かにそうですね。で、ですが、それなら、アルベド様も、お、同じなのでは?」

 

 メイドの一人が疑問を晴らそうと自分に問いかけてきた。確かにこれは少しでも頭が回れば聞かれる事だろう。シャルティアには聞かれなかったが。混乱から立ち直れなかった以上シャルティアが自力でモモンガの側室になる道は遠いだろう。

 

「――私は仮にタブラ・スマラグディナ様が帰還なされ、私がモモンガの側室になったことを咎めるのであれば――」

 

「――あれば?」

 

「私の手で御命を頂戴するわ」 

 

 メイドたち全員があっけにとられたかのように自分を見ている。いや怒りと困惑も感じる。特にアウラはその傾向が強い。だがそれがどうしたのだ。自分は、自分だけがアウラを弾劾することができるのだ。

 

「だから、アウラ。私はその覚悟を出さずに、安易な手段でモモンガの側室になった今のあなたを認められないわ」

 

「ちょ、ちょっと待ってよアルベド、アルベドはご自身の創造主を手に掛けるって言うの?」

 

「二言はないわ。私はそれだけの覚悟を持って、側室になったわ。モモンガの孤独を癒すために」

 

 全員の顔が青ざめている。中でもアウラは特に青ざめている。彼女は既に行動をしてしまった。結論を出す前に。哀れではある。しかし問わねばならない。これから先モモンガの孤独を癒すために……自分がいつかモモンガを独占するためにも。

 

「アウラ、あなたはネム・エモットの手を借りるという、安易な手段で側室になったわ。だから今ここで答えを出しなさい。いえ、出さなければ私があなたを許さないわ。仮にぶくぶく茶釜様が、あなたとモモンガの仲を認めないと言ったとき、あなたはどうするの?」

 

 アウラは顔を俯かせている。まるで私を直視できないかのように。よく見れば悩みに悩んで涙の跡も見える。そこにメイド長からアウラへの助けが入った。

 

「アルベド様。アルベド様の御覚悟には胸を打たれました、わん。私たちも安易な方向に考えていたようです。しかし私の創造主である餡ころもっちもち様は女性であります。それにアウラ様の創造主も女性です。伯父上様との仲を反対する恐れはないのではないでしょうか?わん」

 

「確かにメイド長の言う通りよ。私はご自身の創造主が女性である者に関しては側室になっても構わないと思っているわ。パンドラズ・アクターに確認した限りではお三方は同性愛者ではないとのことですし……そう言った面からモモンガとの婚姻を反対されることもないと思うわ」

 

 その言葉にアウラが嬉しそうに目を挙げる。先程までの泣きそうな顔は無くなっている。尤も涙で顔は濡れているが。

 

「なら問題ないじゃない。はーよかった。それにぶくぶく茶釜様はお優しいし、私と伯父さんとの関係も認めてくれると思うし……とりあえず安心した」

 

 アウラが大きく息を吐き出す。その息遣いには安堵が心から溢れていた。アウラとモモンガの仲が切り裂かれる未来はないと思ったのだろう。

 

 実際はどうか分からないがアウラがそう判断したのならまぁ今はそこは置いておこう。それより重要な事があるのだから。

 

「ただね、アウラ。私たちはモモンガの側室になったわ、だから私たちには義務があるの。モモンガの孤独を癒すという義務が」

 

「孤独を癒す? 前もいってたけど、モモンガ伯父さんが孤独? ちょっと待って、具体的に教えて。じゃないと意味が分かんないんだけど」

 

 確かに意味が分からないだろう。これは自分とデミウルゴス、パンドラズ・アクターのみが理解している事実なのだから。いや少しは守護者であるアウラは知っている。そこまで理解ができるほど頭が回らないのだろう。

 

「いい、モモンガは小さいときにお義母様を亡くされているわ。パンドラズ・アクターによればリアルは地獄だったとも……我々の創造主に会われるまでは」

 

 そうだ、41人がいなければモモンガは死を選んでいたのかも知れない。そう考えるとアルベドでも恐れを感じる。震えてしまう。モモンガが死んでしまったかもしれない可能性に。

 

「しかし他の方々はお隠れになってしまった。残ったのは小さな鈴木悟と名付けられた子供のモモンガなのよ」

 

 恐らくではあるが、アルベドは察している。察してしまった。モモンガは精神年齢が幼いのだ。普段は必死に仮面をつけて隠している。その仮面を外せるのが、ネム・エモットとの間だけなのだろうと。

 

「モモンガの精神年齢は恐らく、ネム・エモットとそう変わらないわ。だから彼女だけがモモンガの素顔を見ることができるのよ」

 

 苦々しく思ってしまう。自分では幼女の姿になっても所詮はまがい物……アウラなら素顔を覗くことも可能かもしれない。精神年齢は近いのだから。だから安易な手段で側室になったアウラに怒りは感じるが同時に期待も感じている。同じNPCが素顔を見ることが可能になればアルベドもモモンガの素顔を見ることが可能になるかもしれないのだから。

 

 周りを見る。全員が意気消沈していた。ここからさらに彼女たちを地獄へと私は導かなければならない。これは私にしかできない役目だ。

 

「――長々と自分の創造主が帰還なされた時どうするかと話したけど、実は私はあまりそこには不安を感じていないの」

 

「何故です? 至高の御方々がご帰還なされるのは伯父上様も望んでいるはずです!」

 

「これはね、パンドラズ・アクターから聞いた話よ、モモンガを除く至高の御方々はお亡くなりになっているわ」

 

「――え」

 

 そのアルベドの言葉が切っ掛けになって、全員が立っていられないかのように座り込んでいた。メイド長も同じだ。アウラだけは事前に知っていたから傷は深くないようだ。

 

「う、嘘よパンドラズ・アクター様がアルベド様に嘘をつかれただけだわ!! だって至高の御方々を探すのが今のナザリックの方針のはずです!」

 

 悲鳴のような子どもの癇癪のような言葉が部屋に広まった。全員が頷いている。

 

「これも、パンドラズ・アクターから聞いた話よ。この世界に転移されるとき、本来ならモモンガもお亡くなりになるはずだったの」

 

 沈黙が世界を支配した。そして直後にはメイドたち全員が泣き出していた。自分の創造主とモモンガのことを呼びながら。

 

「この言葉を聞けばすべてのNPCがモモンガに依存するはずよ。当然の話ね。でもねそれじゃダメなのよ。私たちはこれ以上モモンガに依存してはいけないの。対等に家族になって孤独を癒さなければならないの」

 

 尤もと前置きを置く。

 

「その役割を、ネム・エモットに奪われた私が、言えたことじゃないんだけどね」

 

 部屋に奇妙な沈黙が広まった。長い長い、沈黙であった。これで目的の一つである側室の数を減らすことは実行できただろう。

 

 側室は可能な限り限定させる。アウラだけだ。側室にさせるのは。万が一があったとしてもメイドたちから一人だけだ。シャルティアには入る隙を与えない。ライバルは可能な限り減らす。妨害してやる。モモンガはロリコンだ。だがアウラは何れ成長してロリじゃなくなる。だから長い目で見れば利用したほうが旨味があるのだ。支配者の仮面を脱ぎ捨てさせるという役割を果たさせてやるのだ。

 

 だが、シャルティアは成長をしないエターナル・ロリータだ。絶対にハーレムに入れてやらない。

 

★ ★ ★

 

 アウラは混乱の極みに達していた。アルベドが自分達に話した言葉は暴力的過ぎた。至高の御方々が亡くなっている。以前も聞いたが改めて言われると、それだけが全員の頭を支配した。側室になる話もどこかに行ったかのように。だが伯父さんが孤独に襲われていることだけは認識できた。認識した。まるで暗い部屋に一人ぼっちで立たされているみたいだ。

 

「だからね、アウラ。私はあなたに期待しているの。あなたならモモンガがつけている支配者としての仮面を取り払えるはずよ。いいえこれはネム・エモットにも可能なことだわ。彼女は既に素顔を常見ているはずなんだから」

 

 ああ、ネムなら可能だろう。彼女はいい友人だ。だがそれ以上に伯父さんの孤独を癒したのは話を聞いただけでもわかる。だが、自分に同じ真似ができるだろうか? ぶくぶく茶釜の許可を得ずに側室になった私が素顔を見れるのだろうか。いやそもそも、お亡くなりになっているのになぜ探しているのか。疑問だけがアウラを支配した。

 

「――アルベド一つだけ確認させて? ぶくぶく茶釜様たちがお亡くなりになっているなら、何で伯父さんは探しているの?」

 

「ヒントは出しているわ。答えは自分で出しなさい」

 

 そう言われアウラは必死になって考える。アルベドが語った情報を必死に咀嚼する。ヒントと言ったが何がヒントなのだろうか。以前デミウルゴスが言っていた、守護者同士での話し合いの時に言った言葉……家族が必要ということであった。そして今回話したのは側室になったことを責められたこと。伯父さんがお亡くなりになる運命だったということ。その運命を何かの流れで乗り越えたこと。自分の創造主たちが……あっ。

 

「もしかして、ぶくぶく茶釜様たちも亡くなる運命を乗り越えたからかもしれないから?」

 

「そう言うことよ。だから目印として帝国の支配領域ではあなた達が言ったように、男の子は女の子の格好を女の子は男の子の格好をさせるの。ぶくぶく茶釜様が定めたこととしてね。他の至高の御方々にも分かる格好の目印になるわ」

 

 そこは以前も聞いたから理解できる。私たちの姿格好以上の目印は存在しないだろう。だが一つだけ疑問に思う。何故アルベドは自分のことを期待しているのだろうか? 率直に聞いてみることにした。

 

「何でアルベドは私に期待してくれるの?」

 

「それはあなたがシャルティアよりも頭がいいからよ。シャルティアにも同じことを話したわ。でも彼女は混乱するだけで、答えを出せなかった。それに大人だわ。モモンガの側室になってもモモンガの素顔を晒す行動ができるとも思えないわ」

 

 でもね。と、一拍おかれる。

 

「アウラなら私たちには劣るにせよ頭が回るわ。だからあなたが側室として、モモンガの仮面を剥ぎ取ってほしいの。そうすれば、私達ナザリックに住む者全員がモモンガと家族になれるわ」

 

 頭が回る。確かにアルベド達よりは劣るだろうが……それなりに頭は回るのだろう。そして私の役目が非常に大きい物であることが分かった。少しだけ体が震える。だが自分はアルベドに期待されているのだ。いや違う、アルベドだけじゃない。ここにいるすべてのメイドたちからも託されているのだ。伯父さんの仮面を剥ぎ取ることを。

 

 体に震えが走った。怖い。とても怖い。だが逃げ出せるわけがない。ネムに頼って側室になったのだ。ここで逃げ出すわけにはいかない。

 

「……分かった。頑張る」

 

「そう言ってくれて嬉しいわ。じゃあ私が言いたい事は言い終わったから。メイド長、話を続けて」

 

「畏まりました、わん。ではどうすれば伯父上様の家族になれるか、議論を再開したいと思います」

 

 その言葉にメイドたちが周りの者たちと話し合う。そこからシズ・デルタから意見が言われる。

 

「メイドたちからも一人側室を出すべき、ユリ姉を推薦する」

 

「ちょっとシズ、何を言っているの! ボ、私が伯父上様の側室になるなんて」

 

 その言葉にアウラは納得する。確かにユリ・アルファなら自分とも仲がいいし協力ができるだろう。それに創造主も自分と同じように女性だ。創造主が帰ってきた時のいざこざも少ないはずだ。

 

 そしてそれをアルベドが面白そうに見ている。いや見ているだけじゃなくて、言葉に出した。

 

「それは私と同じようにミニマムの指輪を装備させてということかしら?」

 

 シズが頷く。なるほど肉体年齢を精神年齢に近づけて話すのは既にアルベドが実施している。アルベドが側室になっていることからも一定の成果が得られるのであろう。

 

 その事にすべてのメイドたちが気付いて頷く。どうやらユリに逃げ場はないようだ。視線に力があるかのように顔を青くしているが静かにユリ・アルファが頷いた。

 

「畏まりました。皆様の推薦を受けて、伯父上様の側室を、家族を目指します」

 

 メイド長が頷く。

 

「ではこれを持って第1回ナザリック、メイド会議を終了いたします。わん。一つだけ付け加えるなら全員が家族になれるように伯父上様に親しみを持つように、わん」

 

「あっそれと補足しておくけど、仮に私たちが妊娠して子どもを産んだら、あなた達が妃になる可能性も高いから、その当たりも考慮したうえで、どういった形で家族になるか考えてね」

 

 アルベドが最後に爆弾を落としてメイド会議1回目は終了した。

 

★ ★ ★

 

 シャルティアは悩む。自分がどうすればモモンガの家族になれるかを必死に考える。アルベドに言われたこと……ペロロンチーノか伯父上を選ばなければならない……その通りだ。自分はそこを考えていなかった。だが自分にとってどっちが大切なのかと言われれば……ペロロンチーノと応えるだろう。どちらかしか選べないなら……。

 

 だがデミウルゴスに言われた通りこれはアルベドの謀略なのだろう。伯父上と自分を家族にさせないための……必死に頭を振り絞る。何か何かないか? やはりデミウルゴスの助言の通り子どもとして義父上とお呼びしたほうがいいのだろうか。

 

 どちらかしか選べないなら? 何かいいアイディアが……あ!

 

「そうでありんす!!」

 

 何故気づかなかったのだろう。すでに自分は実施しているじゃないか。ヴァンパイア・ブライドたちでハーレムを築いているではないか!

 

 ならば至高の41人でハーレムを作ってもいいのではないだろうか?

 

 伯父上を筆頭にペロロンチーノ……そしてぶくぶく茶釜……何て素晴らしい光景なのだろう。この41人に愛されるなんて。義父上と呼んで疑似的近親相姦プレイもできる。最高だ。

 

 こんなことを思いつく自分は天才になったんじゃないかと思ってしまう。

 

「となると、まずは伯父上の側室になるところから、始めるべきでありんすね」

 

 そこで愛されて至高の41人が帰ってきたら、怒らせないようにしながら全員と関係を持つ。

 

 恐らく困難を伴うだろう。だがシャルティアに諦めはない。このハーレム道は決して間違っていないのだからっ。

 

★ ★ ★

 

 現在モモンガは鈴木悟の姿でナザリックスパリゾートを訪れていた。一人ではない。マーレと一緒にである。

 

 この間アウラとの間で取り返しのつかないことをしてしまった。それを謝罪することもできない。何よりもアウラが自発的意思で望んできた以上、サトルには拒絶ができない……ネムの協力もあったようだし……いつかぶくぶく茶釜に叱られるだろうが、それは仕方ない。甘んじて受け入れよう。というより叱られる未来が欲しい。仲間たちとの再会は一番の願いなのだから。

 

 マーレと一緒に来たのは、前回アウラにはぶくぶく茶釜のリアルの世界でのことを話してあげることができたが、マーレには話してあげられていないからだ。

 

 だからネムと話し合ってお風呂で話し合うと言った言葉を取り入れて、全男性守護者と裸の付き合いを一対一で行おうと思ったのだ。一番最初に選ばれたのはマーレである。

 

(そう言えば、アウラとあれをしたってことはマーレは義弟になるのだろうか)

 

 そう思いつつマーレを見る。女の子の格好をしているが、体は付は子どもの者であり、普通の男の子に見えた。自分の業も深いと思うが、ぶくぶく茶釜の業も深いと思う。さすがはペロロンチーノの姉である。

 

「マーレ? 準備は完了したか?」

 

「は、はい伯父さん。お風呂に入る準備は出来ました」

 

「よし、なら風呂に入るか」

 

 マーレが頷くのを見ながらお風呂のドアを開けて入っていく。

 

 そしてその世界は百花繚乱の世界であった。男女合わせて9種17浴槽を持つ素晴らしい場所だ。

 

 そこをマーレと二人で独占する。リアルではありえないことだ。悟はこの世界に来てよかったと本当に思っている。仲間の子どもたちが動き出した。妻もできた。料理もおいしい物も食べられている。

 

 尤も体に関してはリアルと肉付は変わっていないが。

 

(ふむ、そう言えば自分の姿はリアルの時と変化がないな? もしかして固定なのか?)

 

 超位魔法での一時的な変化に過ぎない。そのためリアルの世界から成長はしないのではないかと考えられる。

 

 まぁ固定なら固定で構わない。使うのは性欲の解消と美食面だけだ。前者は可能な限りネムで解消しているし、後者は美味しい物ばかりなので太りそうだ。太らないのは魅力だ。

 

 ああそう考えると……母はどんな気持ちだったのだろうか。亡くなる前に自分に好物を作ろうとしてくれていた母は。

 

 母に美味しい物を食べさせてあげたかった。気づけば目から涙が溢れそうになっていた。

 

「伯父さん? どうしました?」

 

 マーレから疑問の声が上がる。自分が雰囲気を悪くしていたようだ。首を横に振る。振り払うように。

 

「ああ、すまない。マーレ。昔のことを思い出していたんだ。そうもうずっと昔のことを、な」

 

「昔って、ぶくぶく茶釜様たちと一緒に冒険をされていたころですか?」

 

 マーレから疑問を解消するというよりも、ぶくぶく茶釜の話が聞きたいような話し方をされる。そうだな、自分の過去なんて変えることもできないし、話す意味も……。

 

 あっ、話す必要があった。人間と仲良くさせるにはマーレにも自分の母親の話を少しだけしておいた方がいいだろう。

 

「いやそれよりも昔のことだ。私の母が生きていたころを不意に思い出してな、すまない人間に戻るようになってから少し感情の動きが大きくなってな」

 

「いいえ、何も問題ないです! その、どんな方だったんですか?」

 

「そうだな、姿格好はカルネ村の村長夫人によく似ている。優しいところも似ているから私も勘違いしてしまったんだろうな」

 

 奇妙な沈黙がマーレとの間を支配する。この空気を消し去るためにシャワーを浴びる。同じようにマーレも隣でシャワーを浴びている。

 

(よし、背中を流してやるか)

 

 シャワーを止めて体を洗っているマーレの後ろに回る。そして息つく暇もなく、マーレの体を洗ってやる。

 

「うぇえ! そんな悪いですよ、伯父さん」

 

「何気にするな、私がしたいからしているだけだ」

 

 マーレの体を洗いながらアウラのこと思い出す。そしてネムのことも思い出す……。

 

(あの二人何であんなに体力があるんだ?)

 

 エッチをしている時まるで二人はサキュバスのようであった。いつも自分は搾り取られている。1対1なら互角だが2対1になると負ける。自分の威信のためにも何か対策を作らなければならないだろう。

 

「マーレは可愛いな」

 

 思わず、マーレを抱きしめてしまう。どんなに強くともマーレやNPCたちは子どもなのだ。仲間たちの残していった子どもなのだ。

 

「――ぇえ!」

 

「ああ、すまない驚かせてしまたな。マーレが余りにも可愛くてな」

 

「いや、えっと、その嫌じゃないです! 嬉しいです!」

 

「そうか、ならよかった」

 

 そうしてマーレの背中洗いを再開する。数分で終わった。

 

「えっと伯父さん。よければ僕が背中を洗いましょうか?」

 

「そうか? なら頼む」

 

 マーレに鈴木悟の背中を洗ってもらう。ぶくぶく茶釜が見たら嫉妬するかもしれない。だが粘液スライムと一緒にお風呂に入る……襲われているようにしか見えなかった。

 

 体を洗い終わり一緒に普通のお風呂に入る。そして話を切り出す。

 

「さて、マーレ今回一緒に風呂に入った訳なんだが……」

 

 一旦言葉を切る。マーレは不思議そうに自分を見ている。

 

「私の知っている限りのぶくぶく茶釜さんのことを話してあげようと思ってな」

 

「――ぶくぶく茶釜様のですが! 聞かせてください!」

 

 おっとりしておどおどしているマーレだが、やはり自分の創造主のことになると変わるようだ。しっかりと話に食いついてきた。アウラと同じだ。

 

「ぶくぶく茶釜さんは、まず防御力があった。だから私たちがアインズ・ウール・ゴウンとして動くときは防御役(タンク)として行動してくれていた。我々後衛や前衛の攻撃役を指示して指揮官役として活動していたんだ――」

 

 そしてリアルでのことも少し話す。声優として声を吹き込む仕事をしていることと、アウラやマーレを見ればきっと喜びで二人を可愛がるだろうと。

 

「――と以上のようにぶくぶく茶釜さんは偉大な人物なんだ。分かったか? マーレ?」

 

「はい! よくわかりました! 話して頂いてありがとうございます!」

 

 そしてマーレとのお風呂が終わった。一緒に牛乳を飲み、着替えて、マーレと別れる。足は自然と自分の部屋に向かっていた。

 

(さて、次は誰と一緒にお風呂に入るか)

 

 やはり一番貢献してくれているデミウルゴスかもしれない。パンドラズ・アクターも貢献度では鈴木悟にとってデミウルゴスを上回っているが、自分が創造したNPCだ。依怙贔屓をしているように見られてはパンドラズ・アクターも動きにくいだろう。仮にパンドラズ・アクターと一緒にお風呂に入るならすべての守護者たちと一緒にお風呂に入った後だろう。

 

 そして自分の部屋に辿り着く。ドアを開けると。

 

「サトル~お帰り~」

 

「ああ。ただいま、ネム」

 

 今日はネム、一人のようだ。さて今日はどんなことをしようか。




今回は準備編

次話以降のためのラストスパートのための助走期間。

感想お待ちしております!

シャルティアのハーレム道は始まったばかりだ!

クリスマスとクリスマスイブ、どっちが最終話に相応しいですか?

  • クリスマス
  • クリスマスイブ

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