東方転猫録   作:グイド

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こんにちはグイドです。

深夜テンションで書いたのでおかしなところがあるかもしれません('ω'`)

ではどうぞ


第8話 猫、服をプロデュースする

楽しくいこう楽しく

 

 

 

「ハフッ...ほろほろ大和と戦争だな...」

 

 

鍋の中でグツグツと煮えているきりたんぽを1つ頬張って呟く。

 

 

「(´〜`)モグモグ..ゴクンッ...そうだね、そろそろ時間だなぁ」

 

 

諏訪子は幸せそうな顔できりたんぽを喉の奥に押し込み、少し難しい顔で話してからまた鍋に箸を伸ばす。

 

 

早いもので俺がここに来てから約半年が経ってしまった。明日には大和の国に返事を出さなければいけない。

 

 

「明日には使者を出さないとねー」

 

 

諏訪子と初めて会った時、大和のことで泣いていたのが嘘のような毅然とした口調で諏訪子が言う。これは相当自信があるのだろう。

 

 

まあそれもそのはずであり、この半年の修行は諏訪子を格段に強くした。今では俺と初めて戦った時とは次元が違う強さになっている。

 

 

今の諏訪子とあの時の俺が戦ったら、恐らく俺は避けれもせずに敗れるだろう。それくらい今の諏訪子は能力を使いこなし、神力も高まっている。

 

 

俺はと言うと能力が家事向けなのもあり、妖術と合わせて戦うことを今の戦闘スタイルとしている。この半年で使えるようになった妖術は、"猫火"、そして"呪縛"の2つ。あとは人化が上達したくらいである。

 

 

まず猫火だが、これは明かりと目眩しにしか使えない。昔幻庵が狐火を出して燃やしてたのを思い出してやってみたのだが、まず熱くない。そして燃え広がらない。なのでいきなり敵の目の前に出現させての目眩しとして使っているのだ。

 

 

だが2つ目の呪縛はなかなかに使える。俺と同等、もしくは上位の存在には効かないのだが、俺より下位の存在には効果がある。妖力の縄で縛って尻尾でタコ殴りにすれば大体の妖怪は片付けられる。ちなみに諏訪子にも最初の方は効いていたのだが、今ではもう効かなくなってしまった。

 

 

まぁそんなこんなで数は少ないが妖術も覚え(結局あんま使わないが)妖力も前と比べて格段に増えたので俺も結構自信がついた。

 

「その使者、妖怪が行ってもいいなら俺が行こうか?」

 

 

大和の国でも俺ならまあ死にはしないだろうと思い聞いてみると、どうやらダメらしい。苦笑いをして諏訪子が言った。

 

 

「それはありがたいんだけど、使者は人間じゃないとダメなんだよね。大和の国からの使者も人間だったし。あとはまぁ、大和までは歩いても2日はかかるから、こちらとしても人間に任せた方がいいんだよね。」

 

 

「なるほどね。ん、こちらとしてもってのはどういうこと?」

 

 

「ああ、ほらこの国には能力持ちの人間が何人かいるって言ったでしょ?その中の1人の能力が、"速度を操る程度の能力"でね、普通なら2日かかるとこを2~3時間で行けるんだ。」

 

「おお、なかなか便利な能力だね。じゃあ明日その人に硬化でもかけてあげるか」

 

 

使者だから殺されることはないとは思うが、万が一ということがある。恐らく向こうの神々はこちらが降伏すると思っているだろう。そんなとこに徹底抗戦を突きつければ逆上した奴に殺されるかもしれない。そうなれば諏訪子は悲しむだろう。

 

 

「うん、そうしてもらえるとありがたいな。東郷さんも安心すると思う。ありがとね京助」

 

「え、東郷さん?」

 

 

「うん、東郷平八っていう人だよ。」

 

 

思わずゴ〇ゴ13が頭に浮かんだ。たしか苗字が東郷だったな。そして俺のオタク魂に火がついた。是非平八君には渋い格好で行ってほしい。

 

 

「諏訪子、その人の家ってどこ?」

 

 

「ん、ああ。神社の階段降りてすぐのとこに豪邸あるでしょ?そこに住んでるよ。え、会いにいくの?」

 

 

「ああ、せっかくだから挨拶をな」

 

 

「そっか、なら私も行くよ。使者をやってもらうんだしね。」

 

 

俺達は残りのきりたんぽ鍋を平らげ、東郷宅へと階段を降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

東郷宅に到着し、諏訪子が扉を叩く。すると中から老婆が出てきた。

 

 

「これはこれは洩矢様と英様。このような場所へようこそおいでくださいました。」

 

 

諏訪子が威厳をもって話す。

 

 

「うむ。明日使者として大和に遣わさせて頂く東郷 平八に挨拶にきた。」

 

 

老婆は諏訪子に頭を下げて言った。

 

 

「これはすみません洩矢様、こちらから明日ご挨拶に行かせようと思っていたのですが、わざわざ御足労させてしまいまして」

 

 

「いや、こちらが頼む立場上、こちらから挨拶に来るのが筋だろう。だから気にするでない。それより平八はいるか?」

 

 

「おお、なんとお優しい...平八は明日の準備をしています。ささ、中へどうぞ。」

 

 

と、俺と諏訪子を中へ招く。中へ行くと、洩矢神社には負けるが、とても豪華な内装であった。そして、彼は部屋で瞑想していた。

 

 

「平八、洩矢様がいらっしゃったよ!」

 

 

老婆は平八に声をかける。すると平八はゆっくりと目を開き、立ち上がってこちらに頭を下げた。身長は約180cmで俺より高く、髪型は角刈り。そして鍛えているのか、筋肉隆々である。

 

 

「これはこれは洩矢様と、英様。御足労させてしまい、申し訳ありません。明日ご挨拶に伺おうと思っていたのですが。」

 

 

「いや、気にしないでくれ。ここにいる京助がお前にどうしても挨拶したいと言ってきてな。」

 

 

と、諏訪子は俺を見る。

 

 

「貴殿が東郷 平八殿か、知っていると思うが私は洩矢様の式神をしている英 京助だ。ここへは貴殿を一目見たくて来た。」

 

 

「お噂はかねがね伺っています。明日はしっかりと役目を果たしたいと思います。」

 

 

そう言う平八は少し震えていた。戦争だということを言えば自分が殺されるかもしれないということを薄々勘づいていたのかもしれない。いくら能力を持っていようが、所詮は人の身だ。神にかなうはずがない。

 

 

「まぁ、貴殿も薄々勘づいているのかもしれないだろうが向こうの神は逆上して貴殿に攻撃するかもしれない。だが安心してくれ。それを防ぐために術をしっかりとかける。ああ、それと明日着ていく礼服を作ろうと思うから服を1着貸してくれ。」

 

 

「え、礼服をですか?一応父の使っていた礼服を着ていこうと思っていたのですが...」

 

 

「いやなに、術を練りこんだ服を作ろうと思ってな。」

 

 

「あ、ありがとうございます!実は使者の役目が決まった時から自信がなくなってしまいまして...」

 

 

「うむ、そうだろうな。だが安心してくれ。何としても貴殿を死なせたりはしない。」

 

 

その後、3人で作戦会議のようなものをし、礼服を作る用に平八の服を1着借りて神社へ帰ってきた。

 

 

「諏訪子、礼服の話なんだが、どうせ戦争に持ち込むわけだし、少し派手でもいいかな?舐められないためにも」

 

 

一応諏訪子に確認をとる。諏訪子はうーん..と悩んだ後、吹っ切れたようで了承してくれた。

 

 

「そうだね、どうせ戦争するんだしね。京助、かっこいいの頼むよ?」

 

 

「おう、任せとけ。バッチリきめてやる。」

 

 

俺はそう言って自室に引きこもり、服の制作を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

___翌朝。

 

 

「よしあとは墨汁を入れた水を薄く伸ばして硬化させて.....これを2枚作って....フレーム型に切った紙を変質させてっ...と......」

 

 

最後に黒く着色した薄いガラス状の板を紙を変質させて作ったメガネフレームに入れてそれは完成した。

 

 

「よし、グラサン完成!」

 

 

俺は徹夜で礼服とアクセサリーを作っていた。作った礼服は、社会人の戦闘服と言っても過言ではない黒のスーツ&ネクタイ、そして相手にプレッシャーを与えるため、グラサンを作ったのだ。

 

これらは能力を使って耐刃・耐火・耐衝撃仕様にしてあり、破れることはまずなく、着用者をしっかりと守ってくれる。

 

 

朝食後、社に東郷家を呼び平八にこれを着てもらった。上から下まで黒であり、グラサンをかけた平八はとても渋く、とても強そうな雰囲気を醸し出していた。

 

 

「なんていうか...強そうだな...」

 

 

諏訪子が驚いたように言う。東郷家の方々も口々に

 

 

「平八...立派になったな...」

 

 

「平八兄ちゃんかっけー!」

 

 

などと言っている。もちろん作った俺としても大変満足である。俺は平八に語りかけた。

 

 

「自信もってけよ平八」

 

 

「ありがとうございます。これを着たら何故か不思議と怖くなくなりました。必ずやこの書簡を届け、徹底抗戦を宣言して参ります。」

 

 

「うん、頼んだぞ」

 

 

俺は平八自身にも硬化をかけ、準備が整ったところで皆で送り出す。

 

 

「では行って参ります!」

 

 

「おう!安心して喧嘩売ってこい!」

 

 

「はい!!」

 

 

そういうと平八の姿は一瞬で見えなくなった。さあ、こちらも戦闘の準備を整えなければ。

 

 

 

______________________________________________

 

 

八坂 神奈子side

 

 

 

私は天照大御神様から諏訪の国の侵攻の総大将を任されていた。我々大和の神は信仰を増やすため、日本全国を征服するという悲願がある。そのためこれまで幾度となく戦争しては、勝ち続けてきた。

 

 

だがそんな戦争も終わりに近づき、残すは諏訪の国のみとなっていた。諏訪の国の領土は広く人口も多いため、侵攻は必ず成功させなければいけない。

 

 

「八坂様!諏訪の国の使者が来ました!」

 

 

「!そうか、いまいく。」

 

 

さて使者が来た。まあ十中八九答えは降伏だろう。諏訪の国の神である洩矢諏訪子は土着神の頂点であり強力な力を持っているが、こちらの戦力と比べると断然あっちは弱い。戦うにはリスクがありすぎる。

 

 

そんなことを思っているうちに会議場に到着する。天照大御神様を始めとする大和の神や、降伏し、こちらに加わった神々が来ていた。私は軽く会釈し、席につく。

 

 

そして使者らしき男が入ってきた時、会場が一気にざわついた。周りからは明らかに男に戦慄した声が聞こえる。

 

 

「な、なんだあの男の格好は!人間の分際で無礼な!」

 

 

「な、なぜ礼服を着てこないのだ!それと目に付けているのはなんだ!」

 

 

男は高身長であり、その身体をピッタリ包むような黒の光沢ある衣と首から下げている布。そしてなんといっても目にかけている黒くて光沢ある鏡。今まで見たことのない服装である。私もその男に驚いていると、天照大御神様が男に語りかける。

 

 

「諏訪の使者よ、それが貴国の礼服なのですか?...まぁいいです。書簡を読み上げなさい。」

 

 

すると男は臆せずに読み上げ始める。

 

 

「我が名は東郷 平八!我が国の神、洩矢諏訪子様のご意向をここに述べる!...我が諏訪の国は貴国の支配下になど下らない!信仰、そして民を守るため、我々は貴国の卑劣で悪逆な侵略行為に対して徹底抗戦することをここに宣言する!」

 

 

すると戦慄していた者達は怒り狂って騒ぎ立てる。

 

 

「気でも狂ったか!洩矢諏訪子!これだけの戦力差がありながら抗戦など!」

 

 

「悪逆だと?!無礼な!」

 

 

「こいつを殺して首を送り付けてやれ!」

 

 

すると

 

「黙りなさい!!」と天照大御神様が一喝する。騒いでいた者達は渋々口を閉ざす。会議場が静まったところで彼女は口を開いた。

 

 

「わかりました。それが洩矢の意向ですね?まったく、戦争になるとそちらの犠牲が増えるだけだというのに....」

 

 

すると男は口を開いた。

 

 

「1箇所違いますね。天照大御神様。」

 

 

一瞬ざわつくが、彼女が手で制して男に問う。

 

 

「...どういうことですか?」

 

 

「恐れながら、戦争になって犠牲が増えるのはこちらだけの話ではございません。洩矢様は土着神の頂点におわすお方。先程からそこらで猿のように騒ぎ立てている方々とは格が違うのです。もし彼等が先導となって攻めてくるとしても、洩矢様には到底適わないでしょう。失礼ながら見当違いもいいところです。」

 

 

男が話終えると、会場は一瞬静まり、すぐに怒声の嵐となった。

 

 

「この男を殺せ!」

 

 

「首を送りつけろ!」

 

 

それを手で制し、天照大御神様は哀れみを込めた目で男に話した。

 

 

「それほどまでに侮辱されては、貴方を生かして返す訳にはいかなくなりますね。洩矢諏訪子は少々、驕りが過ぎるようです」

 

 

すると数名の神が、それぞれ剣をもって男を取り囲んだ。男は毅然と振舞っているが、手が震えている。

 

 

「我らを侮辱したこと、あの世で後悔するがいい!」

 

1人がそう言うと、数名の神は一斉に男に切りかかる。ああ、死んだな...と思ったその時、全員が目を見開いた。

 

 

金属音が鳴り響き、男には傷の一つもなく、それどころか服も切れていない。それどころか切りかかった剣が全て折れてしまったのだ。

 

 

「な、なんだこいつは!」

 

 

と切りかかった者達が驚いているが、1番驚いているのはその男だった。自分の身体で剣が止まっているのを見て驚愕している。

 

すると、

 

 

「き、貴様何者だ!ただの人間ではないな?!」

 

 

という声に男は正気に戻る。そして傷がないのを確認し、ニヤッと笑って話し出す。

 

 

「これはこれは...いきなり切りかかられたもので少々驚きましたが、大和の神とはこんなものですか。多勢に無勢の状況にも関わらず人間の1人も倒せないとは、案外これは勝ち戦かもしれませんな...。では、私はこれにて帰らせて頂きます。」

 

 

男はそう笑うと、踵を返して歩き出し、すぐに見えなくなった。

 

 

「この大和の恥晒し共が!」

 

 

男を殺し損なった者達に対して怒声が飛び交う中で、私は1人興奮していた。今まで征服してきた国はそのほとんどが戦う前にこちらの戦力に怯え、降伏してきた。

 

 

だが諏訪の国はどうだ?人間の使者でさえ神を恐れず、徹底抗戦の意を唱え、なおかつ神の攻撃をものともしない。こんなことは今までなかった。こんな使者を送ってきた洩矢諏訪子とはどんなに強い神なのか。闘いたい。そして破りたい。そんな欲望が私の中にうずまき始めた。

 

 

すると騒ぎを静めた天照大御神様が多少の怒気を含ませた声で私に言った。

 

 

「八坂神奈子。今回の戦、なにがなんでも勝ちなさい。そして洩矢から信仰を勝ち取りなさい。」

 

 

私は間髪入れずに返事をした。

 

 

「勿論でございます!」

 

 

__ああ、はやく闘いたい。出来れば洩矢諏訪子と1対1で。私をこんなにした責任はとってもらうよ?洩矢諏訪子

 

 

私の名前は八坂神奈子。まだ見ぬ洩矢諏訪子との闘いに思いを馳せる、年齢秘密の戦神である。

 

 

 

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場所は変わって諏訪の国

 

 

俺と諏訪子は腹を抱えて笑っていた。原因はもちろん平八の活躍を聞いてである。話を聞くと、向こうの神に盛大に喧嘩を売り、殺されるかと思ったが攻撃が通らず、向こうの神々は赤っ恥をかいたらしい。諏訪子がヒーヒー言いながら言った。

 

 

「ふ、ふー...いやーやるなぁ平八も...くくっ」

 

 

「ご期待に添えて何よりです。洩矢様を馬鹿にされたので、つい相手方を挑発してしまいました。ですがこんなことができたのも英様のお力のお陰です。守って頂いてありがとうございました。」

 

 

「ふーふー、い、いや君やってくれるねぇ!期待どうりというか想像以上だよ!よくやってくれた!うん、その服はご褒美にあげるから着て帰りなさい」

 

すると相当嬉しかったのか、

 

 

「本当ですか?!ありがとうございます!一生うちの家宝にします!では!」

 

 

と言って帰っていった。しかしあの青年は煽りのセンスがある。思い出したらまた笑えてきた。

 

 

「ふー、、いやーこんな笑ったのは久々だよ!」

 

 

「そうだなー..くくっ...ふー...。よし、平八も景気よく喧嘩売ってきてくれたし、あとは俺達の出番だな!」

 

 

そう、平八はよくやってくれた。後は俺と諏訪子とミシャグジ達で迎え撃つだけである。

 

 

「うん、そうだね!祟神の力を見せつけてやろう!」

 

 

その後大和の話を肴に酒を飲み、また笑いが止まらなくなったのは言うまでもない。

 

 




英・諏訪子「「君は才能がある!!」」

平八「ど、どうも...」


ではまた次回

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