Fate/GODEATER   作:ユウレスカ

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シオの説明会

・シオの口調はひらがなカタカナで統一されています
・なので大変読みにくいです
・読みづらい等ありましたら、感想欄までご連絡お願い致します


第1章—バーサーカー—

 突然の事態に茫然とする雁夜を尻目に、サーヴァント――シオは、臓硯に触れていた掌を見る。そこに乗っているのは、一体の蟲。

「んー、やっぱり、ひとじゃなかったのか?でも、ひとっぽいかんじするしなー」

 何やら雁夜にはよくわからない言葉を呟きながら、どこからか取り出した容器に蟲を放り込む。びたん!と痛そうな音が響いたが、蟲はぴくりとも動かない。

 様子を確認してから、シオはしっかりとふたをし、雁夜に向き直った。

「な、これ、さっきのやつ!これなんなのか、マスター、わかるか?」

「は?」

 ずい、と彼女が見せてきた蟲。それが臓硯だと彼女は宣う。確かにあの性格や見た目から、中身は人外のそれなんじゃないかと思ってはいたが、それにしたって本当にそうだったのは、予想外すぎる。

 蟲は容器の中で動かず、死んでいるのか生きているのかも分からない。ぱっと見、他の蟲と同じに見えるが、微妙に違う部分もあり、もしかすると本当に、これが臓硯なんじゃないかとも思えてくる。

 ん?ん?とまるで幼児のようにしつこく答えを催促してくる少女に、雁夜はため息をつきながら口を開く。

「たぶん、刻印蟲の特別製だろうな。ほら、この部屋の中にもたくさんいるだろ?それの親玉とか、そんな感じのやつに、ジジイは入ってるんだろ」

 入っている、という表現があってるかはさっぱり分からない。というか展開にいまだに脳内が追いついていない。

 が、シオはその解答に満足したようで、ふーん、と相槌を打つと、また蟲を観察し始める。相変わらず、臓硯らしい蟲は動かない。

「そいつ、生きてるのか?」

「いきてるぞ?ちょっと、おもいでのなかにいってもらってるんだ!」

 かんのうげんしょーってすごいよな!と笑うシオ。いや、かんのうげんしょうってなんだ。漢字を当てはめるなら感応現象だろうが、それと今の臓硯の状態がどう関係しているのだろうか。

 よくわからない、という雁夜の様子を感じ取ったのか、シオが説明しようとする――が、

「なぁ、そろそろ上に上がってもいいか?」

「ん?」

――まだ、蟲蔵の中。長話にこの石畳は大変つらいです。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「おお!でっかいなー!」

 マスター、ここでっかい!

 蟲蔵から出るや否や、屋敷の広さに感動したのか、臓硯が入った容器をもったまま駆け回るシオ。それを見ながらふと、雁夜は自身の体の中で、蟲が暴れないことに疑問を抱いていた。

 サーヴァントは使い魔の一種だ。実体化している間は、霊体を維持している間より格段に魔力を必要とする――はずだ。だのに、自身の体内の蟲は暴れる様子を見せない。これは一体どういうことなのだろう。

「マスターマスター!ちっこいやついた!このこだれだー?」

「って桜ちゃーん!?」

 思考に耽っていると突然、桜を背負ってやってきたシオ。桜は相変わらず無表情に、されるがままになっている。

「こいつ、シオがあいさつしても、へんじしてくれないんだ!あいさつにはあいさつなのに、してくれない!えらくないぞ!」

「いや、偉いとかそういうんじゃなくてだな……」

 桜は今現在、外の世界に関して心を閉ざしているようなもの。雁夜以外にまともな反応を返したことは、ここに来てから数える位にしか見ていない。ましてや、見知らぬ不審者相手だ、はきはきと受け答えができる状態ではないのだ。

 そこを説明すべきか。見た目に反して、このサーヴァントは幼い。難しい言葉を並べて、きちんと理解できるのかどうか。数瞬悩んだのち、雁夜は一先ず、桜を寝室に返してから話すことにした。

「一先ず、この子――桜ちゃんは寝る時間だから、部屋に送るぞ」

「むー……わかったぞ」

 納得いかないという表情をしながらも、シオは雁夜に従い、桜を寝室まで送ることに。おんぶの状態から、容器を持っていない左手に、抱える体制に変える。少女一人分の重さをものともしないところを見るに、力は見た目とは裏腹にかなりあるらしい。

 雁夜の、半ば引きずるようなゆったりとした歩調に合わせ、のんびりとシオは歩く。時折気遣わしげに雁夜に視線を寄越すが、雁夜はそれを今は無視した。

 桜の自室までやってくると、扉を開けて中に入る。殺風景な室内をきょろきょろと見回すシオ。

「……おい、桜ちゃんを早く寝かせるぞ」

「お、ごめんなー」

 不機嫌そうな声色から、怒られたと思ったのだろう。謝罪しながら、シオは桜をベッドに寝かせる。

「ごめんな桜ちゃん、騒がしい奴で……おやすみ」

「……おやすみなさい、雁夜おじさん」

 小さく聞こえた返事を確認し、頭を一撫でしてから、雁夜はシオを伴って寝室を後にした。向かうは自分の寝室。そこで互いの話をしっかりとする。

「くらいなー。いま、よるなのか?」

「ああ、いまは深夜の2時くらいだ」

「そんなおそかったのか!マスター、ねむくないのか?」

「大丈夫だ、問題ない」

「シオしってる!それだいじょうぶじゃないときにいうセリフだ!」

「大丈夫だって」

「ほんとか?むちゃしてないか?えっと、ぱふぱふするか?」

「お前どこでそんな言葉覚えてきたんだ!?」

「コウタからおしえてもらった!」

「こうたって誰だ……」

 ……しっかりと、できるのだろうか。頭痛がしてきた。

 痛む頭を押さえながら、自室へと戻る。本来なら、魔力の行使の影響で死に体の状態で戻る予定だったのに、普通に歩いて戻ってこられたのは奇跡だろう。

 ベッドに腰掛ける雁夜から少し距離を置いた場所に、シオが座り込む。それを確認してから、雁夜はゆっくりと口を開いた。

「お前はバーサーカー、で合ってるんだよな」

「ん!シオのクラス、バーサーカーらしいぞ!」

「じゃあ、なんで話せるんだ?」

 雁夜のもっともな疑問に、ん?と首を傾げるシオ。どういうことかわかっていないらしい。ため息を1つ吐いて、雁夜は説明を始めた。

「バーサーカーに付与される狂化は、ステータスを底上げしてくれる代わりに言語能力とか、思考能力を奪うスキルのはずだ。なのにお前は話せるし、さっきの行動を見るに考えて行動もできる。その理由が知りたいんだ」

 ほうほう、と相槌を打つシオ。暫し考え込むと、もしかして、と口を開く。

「シオが、もともとひとじゃないから、とかかなー」

「人じゃない?」

 鸚鵡返しにしたセリフに、シオが頷く。

「シオは、アラガミっていうんだ。んーと、さっきのやつみたいなかんじのからだなんだぞ、ほんとは」

「じじいみたいな……?」

「じじーみたいに、たくさんのコクインチュウ、じゃなくて、オラクルさいぼーってので、できてるんだ」

 待て。そもそも臓硯は刻印蟲でできていたのか。そこから初耳だ。

 そう言うとシオは瞠目し、そうだったのか!?と大げさなリアクションをとった。そもそも、目の前にいるのが蟲の塊だなんて誰も思うわけがないだろう。

「えっと、んーと、じゃあ、うん。シオは、ちっこいいきものがかたまって、シオにみせてる、ぐんたい!っていったらわかるか?」

 目は目の役割、耳は耳の役割。手は手として動き、口は口として動く。

「オラクルさいぼーは、そんなふうに、カタチをいろいろなのにかえられるせーしつをしてるんだ。いっぱいあつまって、カタチをひとみたいにしたのが、シオだ」

 最初見た時、人を真似て作られた造形品と思ったのは、あながち間違っていなかったらしい。

「シオのいちばんだいじなのは、そのたくさんのオラクルさいぼーにめいれいしてる、コアってやつ。シオだと、それはむねのなかにあるんだ」

 だから、あたまがなくなっても、コアがだいじょうぶなら、シオはしなないんだぞ。

 えっへん!と胸を張るシオ。とことん人外じみている、他の英霊もこんなものばかりなのか?いや、それよりも、シオがその言動とは裏腹に、きちんと分かりやすく、理知的に説明できているのに驚いた。相変わらず言動は幼いが、その中身は見た目の年齢相応にあるとみていいのかもしれない。

「で、シオがきょうかってののえいきょうをうけないのは、たぶん、それがあんまりことばとかにでないからだとおもうんだ」

「言葉に出ない……言動に影響しないが、他のところに出ているってことか?」

 確かめるように訊ねると、うんうんと頷かれた。どうやら合っているらしい。

「アラガミは、イタダキマスをして、それからいろんなことをまなぶんだ。イタダキマスするのに、スキキライあるけど、それをなくしたら、ぜんぶイタダキマスできる」

 全部、食べられる。そう言う瞳からは、冗談といった様子はない。本当になんの比喩でもなく、何でも食べてしまうという事か。

「さっき、ほんとはすごくおなかすいてたんだ。だから、その、じじーちょっとイタダキマスしたんだけど」

「はぁ!?」

「しちゃったんだぞ。えっと、そしたらシオ、ちょっとだけのつもりだったのに、いっぱいイタダキマスしちゃって、それでマリョク?がぼうそうして、じじーがばくはつしたんだぞ」

 だからたぶん、シオ、いまのほうがしょくよくおーせーだ!

 そう言い切ったシオに、頭痛がひどくなった気がした。

 

 

――食料、足りるかな

 

 

 

 




やせいの はらぺこが あらわれた !

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