Fate/GODEATER   作:ユウレスカ

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難産どころの話ではなかった
今回ちょびっと捏造設定入ってます

あとライダーに夢を見過ぎている

ちょっと矛盾を発見したので訂正しました


第18章—べんきょうかい—

 間桐の書庫へ案内され、ケイネスとウェイバーは調査を開始した。ライダーはその傍らで興味の赴くまま本を漁り、シオはケイネス達が示す資料を取ってきながら、合間にライダーや雁夜とキャスターについて対策を建てている。聖杯戦争の続行が危険であると推測されるため、たとえ魔術師的にアウトな行為を行っているキャスターといえども、殺すわけにはいかなくなったのだ。

「捕らえるにしたって、相手の実力は未知数。情報を探りたいが時間が惜しいし、何より先に別勢力が討ち取るのも危ない」

「ふむ、随分と難易度の高い戦いよな。危険性があるとはいえ、死なせずに捕まえるなど」

「ほんきょちがわかんないからなー」

 そう、相手がどこを拠点としているかが分からない以上、奇襲をしかけてとらえるという策が使えない。じっくり調査して捕まえたいところだが、時間をかけることもできない。その場その場での対応が求められる事態となっていた。

「拠点を探すか、マスターかキャスターを探すか」

「でもシオたち、そいつらのことなんにもしらないぞ」

「……いや、今出ておる情報である程度はつかめるかもしれん」

 そう言ってライダーが広げたのは、今朝方の新聞。

「それ、新聞か?でも魔術に関しては載っていないだろ」

「お主、記者であろう。自身の職の情報能力を侮ってはならん」

 そう言ってライダーが新聞のある一点を示そうとした時、ふいに書庫の扉が開いた。そこにいたのは、自室に帰ったはずの桜と鶴野。見知らぬ人物にケイネス達は眉を顰め、シオと雁夜は目を見開いた。雁夜に至っては鶴野に非難の目を向けている。

 見知らぬ人間が多くて驚いたのは桜達も同じだったのだろう、入り口で固まった桜を、鶴野がほら、と言って促している。

 と、小さく、桜が呟いた。

「……おかえりなさい。おじさん、と、バーサーカー」

「あ、ああ!ただいま、桜ちゃん」

「おー、ただいまだぞ。サクラにビャクヤ!」

 桜からの挨拶に、雁夜とシオはにこやかな表情で返事をする。それにどこかほっとした様子の桜に、だから言っただろう、と鶴野は内心で呟いた。

 怪訝そうにしているケイネスに向かって、鶴野は大人として礼儀正しく一礼する。顔を出してしまった以上、自己紹介をしないわけにはいかなかった。

「挨拶が遅れて申し訳ない。私は間桐 鶴野、間桐の名義上の当主だ。こっちは義理の娘の桜」

 挨拶、と鶴野が促すより前に、桜は雁夜に近づき、他の面々から見られないように背中に隠れてしまう。やはり見知らぬ人間に関しては、まだ恐ろしいようだ。

 そんな桜の様子に、ケイネスはまだ怪訝そうな瞳を向けている。

「養子ということか。見たところ、妙な調練の跡が見えるが……」

 何やら観察するように桜を見るケイネスを警戒し、雁夜がケイネスを睨む。協力体制にあるとはいえ、魔術師に対する嫌悪感が消えたわけではないのだ。

 が、そんな雁夜を気にすることなく、ケイネスは1つの提案をする。

「サクラと言ったか。少々その体を診させてくれないか」

「桜ちゃんに何をするつもりだ」

 まさかジジイのように拷問にでもかけるつもりか。桜を守るように抱きしめて距離を置く雁夜に対し、シオは落ち着いた様子でケイネスが理由を言うのを待っている。

「なに、別に害を成したり実験をすることもない。ただ魔力の流れをみるだけだ。先ほども言ったが、無理やりに変質させたような跡がある。どういう経緯があってここに養子に出されたかは知らないが、成長する中で何か妙な事態が起きる可能性が高い」

 見込みがあれば伸ばす。妙な痕跡があれば調べる。独自の価値観による基準ではあるが、ケイネスはそういう男だ。

「なにより、魔力の扱いを知らなければ、近い将来、厄介ごとに襲われる危険もある。書庫を開けてくれた礼だ、特別に無償で診てやらんこともない」

 相変わらず高圧的な態度に内心でむかついた雁夜だが、彼の言葉は正論のようにも聞こえた。桜自身の資質については雁夜自身よくわからないが、もしそれが事実なら、確かに今後、厄介なことに見舞われる可能性は高い。巨大な力は、早めに使い方を覚えなくてはいけない――偏食因子による体の変化に適合するために、訓練をしていた雁夜は、それを実感していた。

「……条件として、俺を立ち会わせろ。いいな」

「そのくらいならいいだろう。ああ、彼女を養子として引き取った時の資料があれば見ておきたいから、後で持ってきたまえ」

「日本語だが、読めるか?」

 鶴野からの最もな疑問に、ケイネスは一笑でもって返す。どうやらいらぬ心配だったらしい。

 これで話は仕舞だと言わんばかりに、ケイネスは作業を再開する。もくもくと作業をこなしていたウェイバーが選定した資料に目を通しているのを確認すると、雁夜は桜に向き直った。

「あいつが何かしようとしたら、俺がとめるからな、大丈夫だ」

 雁夜の言葉に、桜はこくりと頷く。雁夜に対する信頼度は、やはり高い。

 鶴野に再度桜のお守を頼み――なんで連れてきたんだと非難の目を向けながらだが――、雁夜は先ほど、ライダーが言いかけたことを訊ねる。

「で、さっき何を言おうとしていたんだ」

「これだよこれ」

 そう言って示したのは、冬木で発生している児童行方不明の記事だ。これがキャスター陣営によるものだというのは周知の事実である。

「あやつらは童ばかりを拐しておる。非力な女性や老人ではなく、童のみを、だ。そしてこれは、キャスターが召喚されたと思しき日より始まっておる。そして、それより前の数日間だが……」

 そう言っていくつかの新聞を広げる。先ほど話している間にかなり調べていたようだ、興味のあることにはとことん調べる性質らしい。

「一家殺人事件が1件発生しておる。それも、この冬木の近郊でだ」

「それはたまたまじゃないか?」

「それはなかろう。ほれ、今度はこっちだ」

 そう言ってライダーが取り出したのは情報誌、というよりもゴシップ誌に近いものだ。どこで手に入れたんだ。

「これは教会へ向かう道すがらに、たまたま購入していた書物なのだがな。これによると、この事件の現場にはなんらかの儀式を行っていたような痕跡があったというのだ」

「……お前、それゴシップ誌だぞ。裏もとれていないものでも記事として扱う、グレーな雑誌だ」

「だが、火のない所に煙は立たぬ、だろう?」

 その諺を持ち出されてしまったら、否定する明確な材料がない雁夜には何の反論もできない。黙り込んだ雁夜と、感心した様子で目を輝かせているシオに、ライダーは得意げに推測を述べていく。

「恐らく、これでキャスターのマスターはキャスターを召喚した。殺人の片手間に儀式を行ったのか、それとも儀式をするために殺人を行ったのか、それはわからん」

 目的がどちらであれ、一家を惨殺したことは確かなのだから。

「そして、ターゲットが童に変わったということは、それはキャスターの嗜好の可能性が高い」

 ここで、サーヴァント個人の情報が出てくる。たとえ小さなことでも、真名の材料としては大切だ。

「キャスターが童を拐すのを容認している時点で――それ以前に殺人犯だというなら――、魔術師としても、まっとうな人間としてもまともではなかろう。そして、殺人犯だとすると、1つ懸念がある」

「けねん?」

「件のマスターが、隠蔽能力に長けている可能性だ。この国の治安維持組織は、それなりに有能なのだろう?」

 ライダーの疑問に、雁夜が頷く。世界中で見比べてみても、日本の治安はいい方だ。

「だというのに、この新聞とやらの情報によると、犯人の見当も、痕跡すら残っていないときた。ならば、相手は相当優秀な殺人鬼(仕事人)と言えるだろう」

 まぁ、つまりは追跡が困難と言うことだ。

 ライダーの結論に、しかし2人の表情は暗い。推測の域を出ないとはいえ、かなり残酷な情報だ。相手取るのは隠蔽能力に優れているであろう殺人鬼と、幼子を殺すことも厭わないサーヴァント。自分も規格外なサーヴァントだが、向こうもまた、違った意味で厄介な人物像だ。

 おまけに、今間桐の家には桜という、キャスター陣営のターゲットにぴったりなるであろう少女もいる。早くつかまえて、安全にしてやらないといけない。

 痕跡をたどるのが難しいなら、どうやればいいか。

「現行犯、しかないか」

「でも、どうやったらみつかるかなー」

 隠蔽能力に長けているというなら、犯行の瞬間は猶更、人には見せないようにしているだろう。

「見回るしかないか」

 だが、誰を見回りに向かわせるべきか。雁夜はそれぞれの面々を見て考える。と、シオが手を挙げた。

「みまわりなら、シオがやるぞ」

「お前がか?確かに、適任はお前か俺くらいだけど……」

 ウェイバーとケイネスは、資料の整理で動くのは難しい。ライダーは彼らのサーヴァントだから、ライダー本人が是としてもマスター組がとめるだろう。そうなると、確かに後は雁夜とシオのみなのだが。

「シオ、もとのときよりいろいろさがってるけど、それなりにはなもみみもきくぞ。だから、たぶんだいじょうぶだ」

 めは、マスターよりもいいしな!

 そう言って笑うシオ。五感の話を持ち出されては、雁夜も納得せざるを得ない。しょうがない、と1つ溜息を吐いて、雁夜はシオに見回りを頼むことにした。

「いいな。キャスターらしき人物を見かけたら即、パスに連絡を入れろ。すぐに向かうから、いいな?」

「はーい」

「その折は、余達も向かうとしよう。何かあってからでは遅いからな」

「うん!」

「は、ライダー何勝手に決めてるんだよ!」

「何を言うか、余とてまだ暴れたりないのだぞ?」

「そこか本音は!」

 もう何言ってるのさー!

 ウェイバーの叫びを背に、シオは屋敷を飛び出し、キャスター陣営の捜索に乗り出した。




難産過ぎて死ぬかと思いました(2回目)

後半の流れがなんだか自分でももやもやしてるんですが、これ以上どうしようもなかったりしてます
もししっくりくることがあったら書き換えるかもしれません

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