Fate/GODEATER   作:ユウレスカ

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序章—マスター—

――それは、偶然だったのか、必然だったのか

 

 

 間桐 雁夜は、地下の蟲蔵で、召喚陣の前に立っていた。後方にいる、忌々しい存在である父親のことは今は敢えて無視し、教えられた召喚の祝詞を唱え始める。

「――素に銀と鉄 礎に石と契約の大公

 降り立つ風には壁を 四方の門は閉じ

 王冠より出で 王国に至る三叉路は循環せよ

 閉じよ 閉じよ 閉じよ 閉じよ 閉じよ(みたせ みたせ みたせ みたせ みたせ)

 繰り返すつどに五度 ただ満たされる刻を破却する」

 召喚の魔力に、急ごしらえの魔術回路が悲鳴を上げ、体内の蟲が蠢きだす。だが、そんな痛みは感じないとばかりに、雁夜は詠唱を続ける。

「――Anfang(つげる)

 汝の身は我が下に 我が命運は汝の剣に

 聖杯の寄るべに従い この意この理に従うならば応えよ

――誓いを此処に

 我は常世総ての善と成る者 我は常世総ての悪を敷く者」

 脳裏に浮かぶのはかつて見た日常。つい一年前まで、それが自分の届かぬ場所で保たれていると思っていた平穏。

「――されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし 

 汝、狂乱の檻に囚われし者 我はその鎖を手繰る者」

 ああ、憎い。自分が恋い焦がれていた相手を奪ったくせに、その子どもを引き離してのうのうとしているあいつが。殺さなければ、殺して、勝って、あの子を彼女のもとへ返さなくては。

「――汝三大の言霊を纏う七天

 抑止の輪より来たれ 天秤の守り手よ――!」

 詠唱が終わると同時に、召喚陣の中心から強大な魔力の奔流と、衝撃による煙が巻き上がる。そして雁夜の中の蟲も、そちらに供給される大量の魔力を補うように、体内で雁夜の体を貪っていく。

「ぐ、あぁぁぁぁっ!!!」

 今度こそは耐え切れず、その場に倒れこむ。気を失いそうになるが、だが、召喚が成功したのかを確認しなくてはならない。激痛に耐え、雁夜が目を陣の中央に目を向けると、だんだん晴れてきた視界の中、小柄な影が見えた。

 どうやら、召喚――聖杯戦争の僕、サーヴァントはきちんと呼べたようだ。

 ぺた、ぺた、と、素足なのか、そんな足音とともに、召喚されたサーヴァントが近づいてくる。その為か、徐々にその、変わりすぎた容姿が見えてきた。

 透き通るような――いや、いっそそれを通り越して死人のような白い肌。うずくまった状態ではその顔は見えないが、身にまとっているのがぼろ布だというのは分かる。サーヴァントは雁夜のすぐ近くで止まると、しゃがんで雁夜の顔を覗き込んできた。

 容貌は非常に整っている――が、その瞳は金色、髪はどこか無機質な形状をしており、とても人間とは思えない。むしろ――神様か何かが、一生懸命人間を真似て作った造形品、と言われた方が納得する。

 見た目は10代前半くらいだろうか。性別はおそらく女。本当に、彼女が、英霊と呼ばれる人外の存在なのか……?

 そう思っていた時、目の前の彼女が口を開いた。

「なー、おまえが、シオをよんだマスターってやつか?」

「――は?」

 思わず零れた言葉。それもそうだろう、見た目不相応な、拙い口調。それに加え、このサーヴァントは自らをシオと名乗ったのだ。

 真名がこの聖杯戦争において重要なのは、雁夜も事前に勉強していたので覚えている。だからこそ、簡単に口にした目の前の存在に驚いたのだ。

 一方、目の前の少女は答えない雁夜に不思議に思ったのか、もう一度同じ言葉を繰り返す。

「なーな、シオをよんだマスターって、おまえか?」

「……っ、あぁ、俺が、君のマスターだ」

 見た目より幼さを感じる少女の再度の問いに、やっとの思いで返事を返す。と、彼女はそっか!と笑いかけてきた。

「じゃあ、シオ……えーっと、バーサーカーは、マスターのサーヴァントだな!」

 パスがより深く交わる感覚。どうやら無事に契約は済んだらしい。と、

「カッカッカ!出来損ないの魔術師が、どこの馬の骨とも分からんモノを半端なカタチで呼び出しおったわ!」

 気絶しかかっている雁夜のことも、今しがた召喚されたサーヴァントのことも馬鹿にしたように嘲る父――間桐 臓硯に、息も絶え絶えな雁夜は言い返せない。

 が、サーヴァントの彼女、シオは違った。

「なぁ、おまえ、マスターのかぞくじゃないのか?なんで、わらってるんだ?マスター、くるしんでるんだぞ!」

 きっ、と臓硯を睨むシオ。召喚されたばかりだというのに、マスターを守ろうとする心構えはしっかりとしているようだ。

 だが、そんなことも知らぬとばかりに、臓硯は鼻で笑う。

「そのバカ息子が、桜に対する教育に反対したからこうなっただけ、そいつの自業自得じゃ」

 その言葉に、シオが立ち上がると臓硯に近づいていく。パスから流れ出る魔力量は変わっていないところを見るに、戦う様子はない。だめだ、危険だ。そう、雁夜がシオを止める前に。

「おまえ、へんだ。なかみも、カタチも」

 そう言い放つと、迷うことなく、シオは臓硯に触れた。途端、臓硯が静かになる。一体、何をしたのだろうか。漸く落ち着いてきた痛みを堪え、雁夜が起き上がろうとした時。

「――ガッ!?」

「え―—」

――臓硯が突如、爆発した




臓硯を爆破していくスタイル

チートなんじゃないかとかそんな馬鹿な


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