そして後半はランサー陣営
自分、FGOのZEROコラボのせいか、ケイネス先生に夢を見過ぎている気がします
「ああっ、くそ、アイツそう簡単にやられるわけじゃないからって余裕ぶって……!」
雁夜はシオの視界から様子を覗きながら、誰にも見つからぬよう下水道にもぐりこんで戦いの中心地に近づいて行っていた。パスから流れ込んでくる光景では、ようやく我に還ったシオがいつもの調子で謝り、それに対して激昂したアーチャーが武器を射出しているところだった。
このアーチャー、武器が強いだけで本人の力量が分からないな。雁夜は混乱のなかでも分析する。時臣のサーヴァントだからすぐにでも討ち取りたいが、迂闊にそれをしてはいけないと、さんざ鍛錬に付き合ってもらったシオから言い含められていた。
「目標は死なないこと。桜ちゃんの隣にいて、生きること。時臣を殺すのは、二の次……」
さんざ言われたことを繰り返し、なんとか平静を保つ。
恨みを忘れろとは言わず、ただ桜の為に生きろと、シオは言った。それを最優先事項にしてくれと。
時臣は殺したい、だが無茶をして自分が死んでは桜が悲しむ。だから慎重に、時臣のサーヴァントを殺す為、初日は情報の収集に徹すると示し合わせたのだ。それをシオ本人がぶち壊してしまったわけだが。
再びシオの視界に集中すると、何故だか世界が横になっていた。何したんだと思っていると、ゆっくりと通常の視界に戻る。どうやら体をくねらせてアーチャーの攻撃を避けたようだ。周りに刺さっている武器のどこにそんな体をくねらせる隙間があるんだという、脳内のツッコミは無視した。あいつに人の常識を求めてはいけない。
「シオあやまったぞ!いきなりしにさらせはひどいぞ、おうさま!」
ぷんぷんと地団太を踏むシオ。敵同士だから何されてもおかしくないんだが、という雁夜の思いは聞こえるはずもない。
アーチャーはそんなシオの様子を鼻で笑うと、高慢な態度を崩さずに話し始めた。
「ほう、貴様でも我が偉大なる王ということは分かるのか、獣」
「シオけものじゃなーい!シオはバーサーカー、セイハイセンソウによばれた、ちゃんとしたサーヴァントなんだぞ!」
「ハ、人の形を真似ただけの群れが何をいうか」
その言葉に、シオが固まったのが分かる。雁夜も同様に固まっていた。今、あいつは何を言った?群れ、と表現しなかったか?
「群れぇ?あのアーチャー、何言ってるんだ」
「さてなぁ……だが、あ奴は何かを掴んでおるようだ」
シオの常人より優れた聴覚が、外野の声を拾う。そう――あいつはシオと数分接しただけで、恐らくシオの中身をある程度掴んでいる可能性がある。
――バーサーカー、これ以上はまずい。退くんだ
パスからの雁夜の指令に、シオは素直に従う。それもそうだ、見た目は人であり、アラガミの特性を知られないのが彼女の最大の利点。それを覆されるのは非常によろしくない。
一気に飛び、その場から距離を置き、踵を返して去っていく。
「逃げるか、獣。まぁそれが常套よな。貴様のようなものがこの時代にいるということは、随分と星にとって、この聖杯戦争は宜しくないようだな」
精々己を失うことがなければいいな、星の使い魔。
去っていくシオの後を追うことなく言い放った、アーチャーの言葉。それが頭に引っかかりながらも、雁夜はシオを誘導して下水道で合流した。
「大丈夫だったか、バーサーカー」
「ん、だいじょうぶ。ごめんなマスター、とびだしちゃって」
「いやあれは仕方ないだろ、むしろ制御できてる分まだマシなんじゃないか?」
雁夜のフォローに、そうかなぁと照れ臭そうに頬を掻くシオ。やはり、そうしていれば人にしか見えない。アーチャーは、どうやってシオの体について見破ったのだろう。
「バーサーカー、アーチャーと面識は?」
「ない。きょうはじめてあったぞ」
「あれがお前と同じ時代の出身の可能性は?」
「それもないぞ。シオがトクイテンだってしってるのは、ハカセたちだけだ」
「待て、特異点ってなんだ。あいつが言ったこととなにか関係するのか」
あ、と口に手をやるシオ。まだ言い忘れていたことがあったらしい、このうっかり癖は治らないものだろうか。
ここにずっといたら気分が悪くなるので、間桐邸がある方面へ向かいながら、シオは説明をし始めた。
「シオのホウグ、つかえないのがあるだろ?あれが、シオがトクイテンだってアカシなんだ――」
―――――――――――――――――――
シオが去った倉庫街では、アーチャーを警戒し、セイバー、ライダー、ランサーが相対していた。とはいっても、ライダーはどっしりと構えているだけだったが。
それに対し、アーチャーは興が削がれたと言わんばかりに1つ溜息を吐く。
「ふん、まぁ精々我が相手するまでに、有象無象を間引いておくことだ。
――ああ、あのバーサーカーは聖杯を欲するのなら真っ先に潰さねばならぬだろう」
ククク、と笑って去ろうとするアーチャー。その発言に待ったをかけたのは、聖杯に人一倍執着するセイバーだ。
「待ってくださいアーチャー!貴様はバーサーカーが何か知っているのですか、先ほどの言動といい、今といい」
「この世のすべては我の庭だ、庭に現れる獣を把握していなくてどうする」
相変わらず高慢な態度をもって質問に答えるアーチャーに、今度はライダーが質問を投げかける。
「先ほどからあ奴を獣と呼称しておるが、あれはどうみても人ではないか?」
「ハ、見た目でしかものを判断できぬとは、征服王の名が泣ける」
アーチャーの返しを気にする様子もなく、ライダーは回答を視線で要求する。暫し視線を交わし、アーチャーは捨て台詞のように言葉を吐き捨てた。
「あれのどこが人だ。喰らう事しか能のない星の使い魔が、人の形を真似るために集まった群れであろう。あれはガイア――
その言葉を最後に、アーチャーは今度こそその場を去る。残された三陣営は、アーチャーによってもたらされた情報を整理する為、その場で戦うことをせずにそれぞれの拠点へと帰っていった。
「未来においてその力を振るった星の使い魔。……気に喰わんな、あれがあいつと似た存在というのは」
霊体化し、己が拠点ではなく興味の赴く場所に向かうアーチャーの言葉は、誰に拾われることもなかった。
「ガイア……星の抑止力だって?」
切嗣は混乱していた。抑止力というものの存在について、知っているものは少ない。資料そのものが少ないのもあるが、抑止力による使い――守護者から逃れられるのは稀だからだ。魔術を嗜む程度の人間である切嗣は、その存在を知るはずがなかった。
また、それは他陣営にも言えることであり。
「抑止力……か。だが、第4回の今になって抑止力の使いが現れるのも妙だな。以前にもあったのかどうか、調べてみるとしよう。どちらにしろ、聖杯を手に入れれば問題ないけれど……」
遠坂 時臣は自邸の書庫から資料を洗い出そうとし。
「抑止力の権化……?なんだそれ、どんな存在だよもう!」
「落ち着かんかウェイバー、ほれ、ゲーム一緒にやろう」
ウェイバー・ベルベットはライダーに宥められ。
「抑止力、だと……!?なぜそんなものが、この極東の地に呼ばれている!……まさか、この儀式に何か裏があるのか?調べる必要があるな……」
ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは唯一、その違和感に気づき、動き始める。
「ソラウ」
「あら、何かしらケイネス」
相変わらず冷たい態度の婚約者――ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ。いつもならそれにたじろぐケイネスだが、今はそれどころではなかった。
「事情が変わった、今すぐこの拠点を出る。できれば君にはすぐに、時計塔へ戻ってもらいたい」
「あら、どうしてかしら?私とランサーを引き離してしまうの?」
「ソラウ様……」
ランサーに懸想する婚約者は、彼と離れたがらない。魅了の黒子の効果は彼女ならば防げると考えたというのに、と過去の自分を責めるが、今はなりふり構っていられなかった。
「いや、どうせならばランサーを連れて行ってもいい。最悪こちらで戦力が必要になるならば、令呪で呼び戻し、用が済めばまた令呪で君のもとに帰そう」
「主!?」
「……意外ね、ケイネス。普段のあなたなら渋い顔をして、反対するかと思ったのだけれど」
「抑止力が出てくる事態になっているのだ。君を危険な場所に置いておくより、たとえ気に喰わなくとも、ランサーと共に帰還してもらった方が安心する」
ソラウの言葉にそうしたいのは山々なのだが、と内心で呟きながらそう答えるケイネス。その表情は苦悶に満ちていた。
抑止力――カウンターガーディアン。人類、あるいは星にとって危機的状況になった際に出てくる存在。アーチャーが星の、と言っていたところを見るに、あのバーサーカーは星側の抑止力。この極東の辺鄙な土地で行われる聖杯戦争が、星の根幹にかかわる事態を生む可能性が高いということだ。
「あのバーサーカーが星の抑止力だというなら、ここ冬木で起きている聖杯戦争は、私の予想をはるかに上回る危険をはらんでいる。最悪、この地に何か大きな災厄が起きてしまうのも考えられるくらいにな」
「なら、あなたも一緒に逃げればいいじゃない」
「それは出来んさ」
ソラウの率直な疑問に、けれどケイネスは首を横に振る。
「恐らくだが、抑止力と言う存在を知っているのは、サーヴァントを除いて私くらいだろう。いや、この儀式を作り上げた御三家なら知っているかもしれないが、それに伴う危険性について気づいていない可能性もある。事態の深刻性を把握した私がいなくなるのは、宜しくない」
何より、この不明確な事態に迅速に対応できなければ、アーチボルトの名が廃るというものだ。
真剣な表情でそう理由を述べるケイネス。結局最後はプライドなのね、と半ば呆れながらも、ソラウはその理由に納得すると同時に感心していた。
「だからソラウ、君には時計塔へ戻ると同時に、聖杯戦争に抑止力が介入していることを知らせてほしい。殆どの魔術師は戯言をだとか極東等に現れるわけないだとか言うだろうがなに、ロードの誰かしら、あるいは気まぐれに訪れるゼルレッチ老師は親身になるだろう。君の地位もあって、彼らに会えなくとも発言は無下にされまい。
それに……ああ、やはりランサーは連れていくべきだ。サーヴァントという目に見える証拠があれば、私が耄碌したわけではなく、正式に聖杯戦争が行われていることが、頭の固い連中でもわかるだろう」
非常に不本意な提案を自分でしながらも、ケイネスは努めて冷静に話を進める。どのような事項よりも、まずは愛しい婚約者を守る。これは彼の中での絶対条件だった。
その提案に、ソラウが出した答えは――
――数時間後、彼らが泊まっていたホテル、冬木ハイアットが炎に包まれる
だがそこにすでに彼らはおらず。ダミー用の礼装がいくつか燃えたのみで、彼らの影はどこにもなかった。
――ランサー陣営、サーヴァントを伴いソラウが時計塔へ帰還した為、実質戦闘続行不可
抑止力について知っている人間が聖杯戦争にいるとしたら、それは誰か
考えるとやっぱり御三家の魔術師かケイネス先生に行きつくんですよね
アインツベルンはアイリも切嗣も知らないでしょう、アハト翁は知ってそうだけど
間桐は雁夜だから除外
遠坂は多分資料を漁れば記述はあるだろうけど遠坂うっかりで時臣が辿り着くまで時間かかりそうだし、危険視してくれない可能性もある
ケイネス先生は魔術師としての地位も高いですし、色位貰ってますから、たぶん知ってるし危険度も把握してそう、天才肌ですし
そんな先生がそれを知ったらどう行動するか考えたらこうなりました
ランサーとの不仲は解消されてませんが、死亡フラグは回避。なおキャスター退治の時どうなるかが問題に
こんなの先生じゃないってなったかもしれませんが、自分はこれが一番あり得ると思ったのです
うん、キャラが勝手に動くって気持ちいいですね
追記:指摘をいただき、よくよく考えてみたらあれだったので、時臣の部分を微修正しました
追記の追記:ケイネス先生の言動も修正しました