異星艦娘と新任提督(事務員)   作:対艦ヘリ骸龍

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まずは一年以上更新が停止していた事を深くお詫び申し上げます

ちょっと色々個人的に忙しく、続きを中々書けず気付いたら一年経ってました。
ちびちび書きため、ようやく1話として挙げられるだけの量になったので投稿します。
ある程度暇もできてきたので、徐々に連載を再開します。別世界の軍艦達の紡ぐ物語を読んでいただければ幸いです。


第二十七話  蒼き突風①

 

 

 

 

「なんか、静かですね?」

 

「……いつもこんな感じ。私は任務に集中できるから良い、けど、やっぱり、変?」

 

「いいえ、雪風のいる鎮守府と全然違うのでびっくりしました」

 

「……兵器だから、指示以外のことはしちゃいけない、って言ってる。一理あるから私も従ってる」

 

 

 

喋っても注意されないけどね、と彼女は無表情だが恐らくおどけて言っているのだろう。

 

 

 

「命令以外の事はするな、ですか」

 

 

 

ブラック鎮守府に良くある事だ。新しく神崎が提督として着任してから、既に1ヶ月。改善されているかと思ったが全く改善されていないようだ。

 

 

 

「彼は、敵の陣中に居る割には良くやっている。むしろ艦娘側に歩み寄りが見られないのが問題。ひいては前任の愚劣さが問題」

 

 

 

まるで雪風の思考を読んだかのような発言。

 

 

 

「この国の指揮官は無能が多過ぎる。自ら思考し行動できる、艦娘の利点を潰してる。そんなんじゃ勝てる戦争にも勝てないしむしろ負けに行ってる」

 

 

 

感情を持ち、自分で考える事が出来る兵器。それは現代の水準の遥か先を行く。おまけにそれに至るまでの積み重ねが存在しないのだ。ならばその扱いが覚束ないのも理解はできる。だが

 

 

 

「艦娘が登場して10年は経過している。もう指針が立っててもおかしくはない」

 

 

 

10年だ。兵器の開発競争、それも戦時中ともなれば10年は長い、長すぎる。

 

 

 

「未だに艦娘の定義すら決まっていないのは問題。まあ分からなくもないけど」

 

 

 

人か兵器か。未だに海軍では派閥に別れており、統一すら出来ていない。今のところ、両者の比率は半々くらいだろうか。

 

そして兵器派の中でも一番の過激派が、ブラック鎮守府である。つまり艦娘は兵器であるから物として扱ってよい、と言う思想の下、艦娘が使い潰されていく鎮守府である。

 

 

 

(そもそも艦娘を単体としてとらえるから……)

 

 

 

霧は、口に出さずに、呟いた。艦娘は基本人間と同じだと考えて良いが、本来、艦娘は一つの個体ではなく、群体あるいは複合生命体と考えるべきである。それが合同艦隊所属艦の出した結論。この世界の、本来の艦娘たちの在り方を聞いて、自らと比較し導き出した論理。

 

 

 

「……一番しっくりくるのは、私達が兵士だっていう考え方」

 

「兵士?」

 

「そう。歩兵部隊に例えるのがわかりやすいと……?」

 

「どうかしました?」

 

「いや、今一瞬、何か嫌な予感が……」

 

「予感、ですか」

 

 

 

予感、と言うが彼女のそれは、そこまで不確実なものではない。現時点での観測結果から、計算によって生み出されるれっきとした予測。

 

何かしら、彼女自身すら自覚できない小さな異変を拾ったのだろう。

 

だからこそそれを自覚するために警戒を集中させる。それが幸いした。

 

 

 

「艤装<生駒>緊急起動!」

 

 

 

対空レーダーが、敵の攻撃を捉える。瞬時に最も防御力の高い装甲巡洋艦<生駒>の艤装を展開。

 

対象を中口径砲弾と断定。口径は20センチ。対水上レーダーに反応無し、超水平線攻撃と断定。広範囲警戒対空レーダーに砲弾以外の反応なし。以上より多弾頭もしくは特殊分類弾頭と推定。

 

迎撃を開始する。

 

 

 

「対空戦闘、始めてください」

 

 

 

装甲板が開き、VLSからミサイルが放たれる。起動を急いだ上にレーダー系統に出力を絞ったため、光学兵器類は使用不能。実弾兵器のみでの迎撃になる。

 

 

 

「迎撃に成功。どこからでしょうか」

 

「……艤装の換装、ですか」

 

「艤装<穂高>通常起動」

 

 

 

探知能力と攻撃能力が一番高い<穂高>の艤装を展開。

 

 

 

「深海棲艦の攻撃とは思えない……不味いか?」

 

「深海棲艦じゃない? まさか……!」

 

「……いや、目標はこちらじゃないのか?」

 

 

 

第二撃が来ない。

 

 

 

「こちら横須賀第三、南方遠征第一艦隊所属戦艦<穂高>。付近を航行中の全艦隊へ、超水平線攻撃を受けた。目標を探知できず。射程延伸砲弾による超長距離射撃と推定。電波照射は無いため、特殊分類弾頭と思われる。各位警戒を厳にされたし」

 

『こちら呉第一、南方遠征第二艦隊所属駆逐艦<琴風>。緊急事態に伴い指揮系統は無視する。撤退は?』

 

「……<琴風>、お前艦載機は居るか?」

 

『牙龍を一機借りてる』

 

「対艦兵装で南に出せ。俺も南に出す。警戒線を敷いて行く。今のところ超兵器ノイズは観測できない以上判断できん」

 

撤退の判断基準は一応超兵器ノイズの確認となっている。

『了解』 

 

「ノイズを確認次第撤退する。牙龍全機発艦、対空対水上戦闘用意。二機は南下、一機はこのまま上空待機。第二撃があった場合の迎撃を」

 

 

 

呉第一南方遠征第二艦隊の位置は横須賀第三南方遠征第一艦隊のやや西側。二艦隊合計三機のヘリは心許ないが、それなりの警戒線は引けるはずである。

 

 

 

「水偵、出そうか?」

 

「……お願いします。艦隊の南方に出す形で展開させてください。ただ牙龍の警戒線よりは北方に」

 

 

 

一機だけとはいえ、目は多い方が良いはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「牙龍発艦、南方へ展開後<穂高>所属機と連携して警戒線を、っ対空戦闘!」

 

 

 

第二撃は牙龍発進中の<琴風>側にやって来た。

 

 

 

「目標は対空目標、数は9、速度から砲弾と推定。対空戦闘を開始します」

 

 

 

VLS及び牙龍が対空ミサイルを発射。

 

 

 

「発射地点の概算を開始」

 

 

 

弾道から発射地点を予測、牙龍を向かわせる。

 

 

 

「敵弾探知、第三撃もこっちに来たんですね……こちら<琴風>、本命はこっちです。第三撃がこちらに来ました。事前手順通りに行動に移ります」

 

『了解した。震洋を先行させる。可能な限り急行させるが想定より遠いぞ』

 

「お願いします。私達だけでは場合によっては受けるだけで精一杯なので……」

 

 

 

答えながら、出撃前に艦隊内ネットワークを通じて行われた行動説明を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず遠征に付く艦は合わせることができた」

 

 

 

呉側に付くのが軽巡洋艦以下なら横須賀側に大型艦が、横須賀側に軽巡洋艦以下が付くなら呉側に大型艦が付くように調整をしてもらった。

 

合同艦隊所属艦はいずれも通常の戦争に加え超兵器との戦闘を経験した精鋭ばかりであるが、単艦で超兵器を相手どれる艦は多くない。超兵器を単艦で相手取り相討ち以上に持ち込めるのは<須磨><三河><常陸><伊吹><雫>くらいだ。

 

特に駆逐艦は<雫>と<琴風>を除き、いずれも対空戦がメインである。<雫>を除き、超兵器に対抗することはできない。

 

 

 

しかし現状確認されている超兵器はヴィントシリーズと呼ばれる高速艦型超兵器。その超高速を武器とする超兵器で、兵装と装甲はほどほどしかないため、速度に目を瞑り、兵装と装甲だけ考えるなら<穂高>でも勝利できるだろう。そして速度を埋めるための方策もあった。

 

 

 

「どちらに来ても遠征艦は可能な場合は逃がせ。可能でない場合は超過艤装のCICに入れろ。大型艦に来た場合はそのまま相手をして、隙があれば震洋で撃沈を狙っても良い。小型艦に来た場合は震洋ともども時間稼ぎに徹しろ。魚雷ロケット弾全部使い果たして構わない。大型艦が来るまで敵を引き付け、釘付けにしつつ戦闘状態を維持しろ」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「超過艤装、展開」

 

 

 

付けている艤装が光に包まれ、そのまま目の前で艦体が顕現する。艦橋から外の見張り台に出る。

 

 

 

「超過艤装、展開」

 

 

 

もう一隻、時間稼ぎの要になる改<島風>型を展開。その一方で<太刀風>級の艤装からタラップを出す。

 

 

 

「全員、こちら側に乗ってください。多分超兵器が来ます」

 

 

 

未だノイズを探知できていない事に内心首を傾げながらも告げた。

 

 

 

「わかったわ」

 

「あと、まだ甲板で待機していてください。連中が目視出来たら、例の兵装を各自の判断で撃ってください。撃ったら艦内へ退避を。場所は入ればわかります。撃つまでは死ぬ気で防御回すのでご安心を」

 

 

 

そういうと、タラップを横付けした状態の改<島風>級へ伸ばし、そちらへ移動する。

 

 

 

「待って、琴風はどうするの?」

 

「私はこっちで戦闘を行います。大丈夫です。そう簡単に沈みませんよ、お姉ちゃん。あ、あと、そっちは自動で動きます。心配なく」

 

 

 

そういって笑うと、琴風は艦内へ消えて行った。

 

 

 

『<琴風>より全艦、対水上戦闘用意。我に続け』

 

 

 

ややあってスピーカーから少し上ずった琴風の声が聞こえた。ほぼ同時に改<島風>級が動き出す。

 

 

 

『全戦闘艇展開。本艦は超兵器出現の緊急事態に基づき、これより原隊の指揮を離脱、U級艦隊型駆逐艦<ウロボロス>の指揮下に入る。全速前進、対水上艦戦闘用意。<ウロボロス>後方にて距離をとり突撃の援護を行う』

 

 

 

そしてスピーカーから再び琴風の声。先ほどと違うのは、その声がとても冷静である事。気付けば両舷に浮かぶ四隻の小型艇――小型無人戦闘艇<震洋>。それらはゆっくりと動き出した<太刀風>級を追い抜き、改<島風>級の前に出た。

 

 

 

 

『敵艦第四射弾探知、対空戦闘』

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず蒼き突風までは何となく出来てます。
そのあとはまた暇があるときに少しずつ、少なくとも一年掛かることはもう流石に無いと思います……


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