第零話 物語の始まりと終わり
「リヴォルバー2より、敵艦発見の報告です!」
「来たか…こちら対超兵器総司令部。全艦隊へ、敵超兵器を発見。事前計画通りに動く。阻止艦隊全艦、第一級戦闘体勢。主力隊全艦、第一級戦闘体勢。良いか、この世界の未来がかかっている。帝国も連邦もない。我らの生存と未来のために全力を尽くせ!」
『了解!こちら阻止艦隊司令連邦海軍中佐ベイル。主力艦隊へ。あとは任せる。支援艦隊へ、よろしく頼む』
『こちら支援艦隊司令帝国海軍中佐ファラゴット。承知した。旧式艦と舐めるなよ?』
『リヴォルバー2より全隊へ。敵艦は予定海域に入った。繰り返す、敵艦は予定海域に入った』
『阻止艦隊、全艦出撃せよ!』
海上を微速で進む複数の単縦陣。そのうちの2つが速度を上げ、動き始めた。その2つのうち1つは小型艦─駆逐艦のみで構成され、もう1つは大型艦ではあるものの、速度が出ていない。旧式艦のようだ。さらに別の単縦陣も別の方向へ速度を上げ始めた。こちらは空母ばかりが集められている。
そして空母群から航空機が発艦し始めた頃、残された最後の単縦陣─文句なしの大型艦で構成された単縦陣が動き始めた。
それだけの戦力をつぎ込む相手は、たった1隻の、だが圧倒的な強さと速さを誇る軍艦。その名を、超兵器、"シュトルムヴィント"といった。
真っ先に分離した小型艦の単縦陣、その先頭にたつ駆逐艦の艦橋で、連邦海軍中佐、ベイル・ゴラスは、今、自分が死地へ向かっていることを理解していた。数ヵ月前に現れた、同型の超兵器"ヴィルベルヴィント"を撃沈するために、数十隻単位の軍艦が沈んでいた。今回は作戦をくみ、ある程度訓練も積んでいる。また、この任務に投入された軍艦も、連邦海軍の、そして一部ではあるが帝国海軍の、精鋭中の精鋭であった。現に彼が乗るヴィローネも、連邦海軍最新鋭の駆逐艦であり、この艦隊の中で最強の戦闘艦であった。しかし、任務はそれを加味しても、生還を期しがたい任務だった。
彼らに与えられた任務は、"シュトルムヴィントの進路を、あらゆる手段で塞ぎ、加速を許さないこと"だった。最大速力180ノットという速度を誇るシュトルムヴィント。その速度を活かさせない為に、妨害すること。それが彼らの役目。
『司令、大丈夫です。ヴィローネを信じてください!』
そう呼び掛けるのは、メインモニターに映る少女。この駆逐艦、V級艦隊随伴用大型駆逐艦三番艦ヴィローネが搭載する自律進化型AIのインターフェース。この駆逐艦に"移って"僅か数ヵ月であるが、その"前"に積み重ねた経験が、ヴィローネの性能を引き出していた。
「…ああ、そうだな。今回も、全員で生きて帰ろう」
『リヴォルバー2よりディフェンダー、まもなく接敵する。幸運を祈る、貴艦のもとに神の加護の有らんことを。』
「ディフェンダーよりリヴォルバー2。神の加護の有らんことを。」
『ホークアイよりディフェンダー。シェパードとグリフォン、エルダーを援護に回す。好きに使ってくれ』
「ディフェンダーよりホークアイ。感謝するが…だいぶ増えてないか?」
『皇帝陛下から直々のお達しだ。出せるすべての戦力を回す。新鋭艦を主力隊に回した分、航空兵力は阻害艦隊に回すそうだ。無人機で申し訳ないが魚雷とASMの標準装備だ。精々使い潰してくれ』
「了解した。ディフェンダー全艦へ、聞いたか?直々のお達しだそうだ、気合い入れていくぞ!全艦、作戦行動開始!」
惑星ボラヴィル史暦2760年3月26日。
超兵器シュトルムヴィント撃沈。
被害 阻害艦隊駆逐艦ヴィローネ ヴァインズ
ヴェルゼン クィラフ
フォーレン 撃沈
駆逐艦ユニティー クロニクル
リウェイク 大破
支援艦隊戦艦 アドミラル・ヴェルディ
クルヴィニク
巡洋艦 インフィニ フェルディ
ナルファイタ 撃沈
航空機48 撃墜
主力隊、航空艦隊 被害艦、喪失艦無し
駆逐艦ヴィローネはその身を散らせた。被弾数、38㎝砲弾18発、魚雷5本をその身に受け、爆散した。生存者はいない。
───時は過ぎ、物語が再び始まる。
戦闘描写全部入れたらそれだけで1つの物語になりそうだったので止めました。一応前座です。