今回のお話は、前半は横須賀第三、途中から呉第一となります。
それでは 異星艦娘と新任提督 第二十四話、どうぞ!
「超兵器、ですか、そんなものが……」
「ああ、今俺の指揮下にいる軍艦で、対超兵器戦を潜り抜けたのはこいつだけだ。あとは全員どれかに沈められている。ああ、琴風と霧の別人格は除くぞ」
「そして一度、大日本帝国の軍艦として転生したあとに、またここに現れたんですか」
「そうだ」
「道理でやたら聞き覚えない名詞が出てきたわけですよ……帝国はまだしも連邦なんて……てことはその皇太子閣下も……」
「当然、そっちの方だな。ああ、安心してくれ、俺を除いて殆どの艦の帰属意識は日本にある……はずだ」
「貴方はどうなのです?」
「残念ながら、未だに、<常陸>である実感は湧かないな。琴風の話だと、<常陸>が参戦した戦いは二度、それも片方は10分とかからなかったらしいからな、戦闘時間が長かった故に、軍艦である自覚もまた<アドミラル・ヴェルス>が強い」
「超兵器相手の、ですか」
「そうだな。一応、俺は艦隊所属艦の中で2番目に多く超兵器と戦っている軍艦だしな」
「ちなみに一番は?」
「雹ことR級防空駆逐艦、レイラだ。あの艦は確認された中で最初の超兵器、ヴィルベルヴィントから、超兵器播磨に沈められるまで、出現した全ての超兵器との戦闘に参加し、そのほぼ全てで無傷で帰還している。経験と戦闘技術だけなら、一番は間違いなくアレだ」
R級防空駆逐艦Ⅰ型四番艦Ⅲ型仕様改装型、レイラ。砲熕兵器を主力とし、高性能な火器管制システムを搭載し、高速と、駆逐艦としては高い瞬間火力を発揮できるR級は、対超兵器戦において、戦力としてかなり多く運用されていた。
そのせいで戦没艦も多い。
レイラはそのなかで一番長く生き残り続けた艦である。
まあそれはさておき。
「この超兵器だが、転生した今だから言えることだが、おそらく地球産だ。それがどうやって俺達の惑星に現れたのかはしらん」
「それは既に解明されました。対超兵器戦争終結七年目に実施された、フィンブルヴィンテルの残骸調査により、フィンブルヴィンテルが超兵器の祖であったこと、超兵器同士で争った時代があったこと、そしてその能力についてなど、多くの事が判明しました」
「ついでだ。それも話してくれ、サイレン」
「了解しました、ヴェルス。まず、超兵器とは、超兵器機関を搭載し、何かしら、常識を超えた兵器の総称です。しかし、この時点で既に違いが存在するのです。超兵器機関も、いくつか種類があり、名称は同じですが、
「まて、開発経緯が完全に異なる、だと?」
「ええ、それについてですが、何隻か戦闘・航行不能状態で鹵獲した艦船型超兵器艦内から回収した資料から、歴史及び世界規模の出来事で
「……お前を連れてきて正解だったな。そんなの俺も知らんぞ……さて、話を元に戻すとしよう。この超兵器は、恐らくその搭載機関──サイレン言うところの超兵器機関により、電磁的ノイズを発する。このノイズを探知する機械も存在するのだが、その機械に、昨日、演習中に反応が現れた」
「それで戦闘が一気に終結したわけですか。おかしいとは思ったんですよ、あのままなら戦闘終了はまだ先だろうと思っていたのに、かなり早く決着がついたものですから」
「といっても俺は特になにもしてないな。やったとすれば駆逐二人組だろ」
「感情リソースをカットして、演算領域を全部戦闘に回したそうですよ」
「なるほどね……」
そう言って常陸は遠い目をした。
「えっと……すいません、
「「え?」」
「ふむ、戦艦の方は特に何も変化は無かったか」
「はい。ですが、練度がやはり異常です。恐らく
「実際には?」
「どの艦にも指輪は認められなかったと、各艦隊より報告を受けております。ケッコンカッコカリはしていないでしょう」
「……システムの壁を打ち破ったのか?!」
「あの距離で、最初から斉射、しかも初弾命中です。我々からすれば射程外ですが、あの艦にとっても有効射程ギリギリでしょう。それに最後、水平線の向こうから撃ったのも同様に、です。観測機が居たとはいえ、並大抵の練度で可能なことではありません」
第一、第二艦隊の面々の話から、二隻の
70㎝砲を搭載する戦艦常陸、150㎝砲を搭載する戦艦三河。圧倒的投射火力を誇るこの2隻の戦艦。通常であればその口径と破壊力に目がいくが、精度が低ければ、いくら破壊力が大きかろうが、遠距離から撃てようが意味がない。あれほど大威力の砲弾を、命中させる精度があって初めて脅威となりうる。
そして彼等はそれを初弾でやってのけた。紛れもなく、脅威だ。兵器の目云々を抜きに脅威だ。そう植野は即断した。
だが一方で、駆逐艦のような変化は見られなかったという。
『悪いがちょっと用事ができた。手早く終わらせてもらう』
あの謎の警報と、意味のわからない警告音声が流れた直後にこう言ったのだから、まず何かしら面倒事が発生したと考えて良い。その面倒事は、あの艦隊の構成員に共通して通じるものである。兵器の目も寧ろ急ぐことより、警報の内容に依る可能性もある。
が、推測できるのは精々その程度。そこから先は直接聞くしかないのだが、
「直接会うのは厳しいな……」
「有り得ないとは思いますが、提督の身の安全と、鎮守府運営を考えると直接は……同じ地方の鎮守府なら日帰りなのでどうにか……」
一番簡単なのは、きっぱり忘れて気にしないことである。
しかし植野はソレに多大な興味を持ってしまった。そして、それを解決する策ももたらされる。
大淀と二人で考え込んでいるところに、解決策を提示したのはなんと金剛であった。
「HEYテートク、つまりあの艦隊の構成員から話を聞きたいんデショー?」
「そうだな。出来たらそれが一番なんだが……」
「出来ないから困ってるんですよ……」
「ナラ、"鎮守府間交換訓練"で呼んだらどうデスカー?」
以上です。次話も早めに投稿します。
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