異星艦娘と新任提督(事務員)   作:対艦ヘリ骸龍

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お待たせしました!
え、待ってる人居ないって?
ですよねー

暇潰しにでもなれば良いです!


第十六話  防空戦闘

第一哨戒線、高度7000で陣風が、高度2万で蒼電が待機していた。

 

『コマンダーよりイーグル、ロングアロー、目標はまもなく有視界圏内。』

 

「イーグル了解」

 

「ロングアロー了解」

 

「ロングアロー・リーダーより各機。全弾頭のシーカーを起動。戦闘機を可能な限り潰せ。……行くぞ。ロングアロー降下開始!」

 

 

 

 

「イーグル、交戦開始。」

 

「何機抜けてくるかな?」

 

「攻撃機は大体が抜けてくると思いますけど。」

 

「目標、二手に分離。イーグルへおよそ20機。ロングアローまもなく攻撃開始点。」

 

「第一と第二の間で艦隊から迎撃を挟むわ。湧別、雫、劔、VLS用意。」

 

指示を出すと、自らも飛行甲板の一部を展開する伊吹。

「了解。防空戦システム全データリンク完了。」

 

「ロングアロー交戦開始。」

 

 

 

 

高度2万から急降下を始めた蒼電隊。翼の下に下げられた熱誘導型対空誘導弾(AAM)は一機につき4基。狙いを定めた目標──空母赤城搭載の烈風隊は、目の前を全力で逃げ回る陣風隊に全注意を注いでいた。そもそも高度差が1万3000あるので見つけきれないのだが。

 

 

「ロングアロー・リーダーより全機、FOX2!」

 

 

こうして奇襲は成功する。陣風(イーグル)が編隊を解き、一瞬で散開。突然の挙動に、動きが一瞬固まった、空母赤城の戦闘機隊は何が何やらわからぬままに、上空から降ってきた鉄の槍(ミサイル)で落とされた。

 

 

赤城隊が瞬殺されたことに気づいたのか、他の戦闘機隊がやって来るが、正面からAAMか30㎜弾を叩き込まれ、落とされる。何機か後ろを取ることに成功したものの、銃撃をかける前に急上昇され、あっさりと射程から消え去る。そして気づけば、後ろから、あるいは上から、30㎜弾を、AAMを叩き込まれる。

 

攻撃隊の直援についた空母飛龍、蒼龍の戦闘機隊を除く、烈風隊計78機はこうやってかなり早い段階で全滅している。蒼電側の被害は、撃墜2機、陣風隊は撃墜1機のみ。何がとは言わないが酷い。

 

 

 

 

 

「目標まもなくSAM迎撃ライン。全艦発射用意。」

 

「VLSハッチオープン。」

 

「迎撃ラインに到達。」

 

「全艦発射始め!」

 

湧別から12発、劔から8発、伊吹から8発、雫から12発の計40発のAAM。

 

 

「主砲射撃用意完了。」

 

 

さらに劔の主砲が蠢く。装填されているのは、気化弾頭の射程延伸弾。とは言え、今回はそこまで伸ばす必要もない。ミサイル着弾と同時に発砲するので、必要な射程は30キロ。

 

「着弾5秒前、4、3、2、1、今。」

 

「撃て!」

 

砲弾同士の余計な干渉を避けるため、知覚できないレベルでタイミングをずらした発砲。

 

 

 

 

 

 

 

その航空機搭乗妖精からすると、今の状況を一言で言うなら

 

『どうしてこうなった?!』

 

であった。まず、最初に現れた10機足らずの戦闘機隊に襲い掛かった、空母赤城の烈風隊が、直後に降り注いだ何かによって撃墜される。直後に降ってきた、震電に似た、だが速度が段違いの高速機。それらに殲滅される烈風隊。

烈風隊が全滅するまでに稼いだ時間のお陰で、振り切る事が出来た。

 

 

 

そう思ったら次は、恐らく、敵艦隊のいる方向から煙を引いて飛んできた、ものすごい速度の何かに貫かれ、40機ほどが落とされていた。

 

さらに飛んできたもの─恐らく砲弾─が、広い範囲を巻き込み起爆。

 

「なんなんだ一体!」

 

見たものは敵機の姿と謎の兵器。敵の艦隊すら視界に入っていないのだ。

 

と、数の減った直衛機群が増速し、急上昇をかける。その先には、

 

 

「敵機?!」

 

第二哨戒線、コールサイン・ファルコンこと陣風24機のお目見えである。果敢に突っ掛ける烈風隊。数は互角。性能もほぼ同格クラスの戦闘機。その為、烈風隊が、ギリギリで押さえきれているように見えた。

 

 

 

が、第二哨戒線に待機しているのは陣風だけではない。尚も進撃を続ける攻撃隊の真下から火線が伸びて、一機の流星に突き刺さる。翼が折れ、墜ちていく流星。それを合図としたかのように、次々と真下から、火線が伸びる。それが()()()に続く。

 

普通ならそろそろ上昇してきてもおかしくはない。が、一向に上昇して隊形の間をすり抜ける機影はない。それどころか、銃撃はますます激しさを増し、謎の高速飛行体も飛んできていた。

 

 

当然ながらそんな芸当は普通の航空機には不可能である。

 

だが普通ではない航空機──例えばヘリなら?

 

第二哨戒線には、コールサイン・フェニックスこと対空特化型戦闘ヘリ(牙龍)の部隊が待機していた。上を向き、ホバリングしたままで、搭載する1機当たり20近いAAMと、二門の30㎜機関砲を、相次いで攻撃隊に叩き込む。

 

 

戦闘機隊も引き返そうとするが、陣風がそれを許さない。

 

攻撃機が回避しても、AAMは射程の限り追尾していく。それでも数に任せて突破する機体は居たが、最終防衛ラインで待ち構える、戦闘爆撃機の編隊を振り切る事ができない。あるいはそれすらすり抜けて、水平線上に艦影をとらえても、その直後に、雫が放った陽電子と光学兵器によって何が何だかわからぬうちに落とされていた。

 

「見られてしまいましたね…」

 

「いや、上出来よ。みんな良くやったわ。どうせまだいるでしょうけど。」

 

雫が残念そうに呟いたが、伊吹が警戒続行を呼び掛ける。

 

 

 

演習はまだ終わってはいない。




完了です。かなり説明が多くなってしまいました。次は空母部隊二つ目、そして水上砲戦部隊の激突です。

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