常陸達の今回のモットーは、<アウトレンジ>です。
第十五話 一方的に
演習当日。演習場に到着した常陸達。彼らを出迎えたのは、軽巡神通。
「おはようございます。」
「はじめまして、おはよう。常陸と言う。今日はよろしく頼む。」
どちらかと言うと(主に手加減を)頼むのは呉の皆さんなのだが。
「面倒なことは出来るだけちゃっちゃと終わらせたい。そちらの旗艦は?」
「大和さんならあちらに。」
「そうか。ありがとう、君も準備があるだろう。行ってくれ。」
「わかりました、では失礼します。」
神通を下がらせた常陸はそのまま大和の方へ向かう。
「君が大和か、合同艦隊旗艦、戦艦常陸だ。今日はよろしく。」
「常陸…ですか、よろしくお願いします。」
一号艦級戦艦一番艦大和、スペック上は46㎝三連装3基9門搭載の高速戦艦。二番艦武蔵もいるらしい。恐らく51㎝砲を搭載するはずなので、穂高と三河では正面から殴り合うのは厳しい。だから今回とれる戦法はただ1つ。
大いに勘違いしている常陸。だが、その戦法は今だ有効である。
『では、ただいまより、横須賀第三鎮守府第4、第5艦隊と、呉鎮守府との演習を開始します。』
「全艦第一種戦闘配置、伊310は事前会議通りに遊撃にはいれ。他各艦隊に別れ散開。」
「「「「「「「「「了解。」」」」」」」」」」
常陸達は二手に別れた。片方は、湧別を戦闘に置き、須磨と伊吹を中心に、両側に霙と雹、殿に雫を配した輪形陣をもつ機動部隊。もう1つは、<島風>改級の艤装を纏った琴風を先頭に、常陸、穂高、暮風、音風の順に単縦陣を組んだ水上打撃群。ちなみに旗艦は伊吹と常陸。
両部隊が別れて5分後。
「レーダーに反応。数1、方位0-0-2」
「その方向にトゥーラ…雷雲を向かわせる。CAPは全機上げてるわね?敵の後続が来たら残り全部上げるわよ。」
「敵機、まもなく視界内。」
「敵機より電波発信を確認。」
「
「雷雲より、敵艦隊を発見。航空機動部隊らしいです。」
「三河、射撃準備。」
「はいはーい、待ってましたあ~」
その軽い口調とは裏腹に、重苦しい音と共に、左腕に付けられた、巨大な砲塔が動き出す。
「照準よし、データリンク準備良し。射撃準備完了~」
「雷雲より目標の座標を捉えました。」
「三河」
「はいはーい、主砲、撃てぇ!」
辺りを圧する轟音と共に放たれる巨弾。
「第二射~、てぇ~!」
最終的に6発放たれた巨弾。それらは全てが、先程雷雲が発見した航空機動部隊に向いていた。
「レーダーに反応…うへぇ成層圏ですねこれ…」
「トラウマ物だよな。視界外から一方的に百発百中の巨弾が飛来するって。」
伊吹から見て左前方に出ていた水上打撃群。そのレーダーに映る6個の光点。言わずもがな、三河の放った150㎝砲の砲弾。
途中までは順調だった。敵艦隊を先に発見し、攻撃隊を送り出せた。敵は艦隊を分割したのか6隻しか居なかったが、海軍の中でも精鋭クラスの部隊の攻撃。殲滅はできたも同然と考えていた。
そんな彼女等に、成層圏から駆け降りてきた巨弾が突き刺さる。文字どおり、突き刺さる。至近弾ではない、直撃弾。
とはいえ、演習弾でも、直撃すればただではすまないので、今回砲弾は高度2メートルで炸裂し、大量のペンキを撒き散らした。
『呉鎮守府、航空母艦、赤城、加賀、飛龍、蒼龍、翔鶴、瑞鶴、撃沈判定。』
演習開始30分。呉鎮守府は、まだ何もしないうちに、一個艦隊を喪失した。
「間に合ったかしら?」
「いえ、攻撃隊と思われる目標は現在、第一哨戒線の20キロ先です。第一哨戒線でイーグルが迎撃態勢。ドラゴンが穴埋めに、ファルコンは第二哨戒線の前方に展開。ロングアロー現在最終防衛ライン付近です。」
三河の射撃は残念ながら、攻撃隊発艦には間に合わず、結果として、雷雲及び湧別のレーダーに迫り来る300以上の光点が映っていた。
これに対し、伊吹達は三重の防空ラインを形成していた。最初にかかるのは第一哨戒線に展開するコールサイン・イーグルことCAPの陣風8機、及び現在急行中のロングアローこと蒼電16機。
第二哨戒線にはコールサイン・ファルコンことCAPを除いた残りの陣風16機とコールサイン・フェニックスこと戦闘ヘリ牙龍8機。
最終防衛ラインにはコールサイン・ファントムこと戦闘爆撃機遊星が待機。
さらに陣形を変更する。湧別を先頭に、電子巡洋戦艦<劔>に艤装を変えた須磨が続き、その両サイドを霙と雹が固める。次いで、雫、伊吹の順に並ぶ。
とはいえ、彼らは最終防衛ラインを通らせる気は全くなかった。艦隊の姿さえ晒さないつもりですらいた。
先程の一方的な
航空機と戦闘艦って普通攻撃半径は航空機が広いですけど、演習場って、艦娘が人間の大きさであることも考えると、大口径砲だったら届きそうだよね?っていう想像です。
相手も見えないうちに突然降ってくる百発百中の巨弾ってトラウマになりそう…