異星艦娘と新任提督(事務員)   作:対艦ヘリ骸龍

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ちょっと長くなりました。




それではどうぞ!


第十二話  会議

常陸達合同艦隊12隻が横須賀第三鎮守府に配備され、一週間が過ぎたころ、大本営では、各地方第一鎮守府ならびに泊地、諸島警備府の司令官を集めた定例会議が行われていた。

 

 

 

この会議は、通常3ヶ月に1回行われ、各方面における戦況、勢力分布を確認し、場合によっては大規模作戦などの打ち合わせが行われる事もあった。今回の会議は、新たに艦隊を組んだ状態で発見されたドロップ艦について、緊急に招集されていた。

 

 

そのため、本来ならば出席しない、神崎、そして艦息常陸、艦娘雹、琴風も当事者として出席していた。勿論全員艤装は格納しているが、3人とも帝国あるいは連邦海軍の制服を着ていた。

 

それに対応できるよう、各司令官も秘書艦を連れていた。

 

そのほとんどが戦艦の艦娘である。

 

「厳重すぎじゃないか?高々戦艦と駆逐2に対して」

 

神崎の後ろで秘匿無線で話す3人。

 

「いえ、この程度で互角でしょう。戦艦とはいえ全て一号艦(大和)級以下。いえ、何隻か…何人か五号艦(紀伊)級が混じってます。姿は変わらないので砲塔だけ換装してあるのでしょう。艦娘の艤装もなかなか面白いですね。琴風。」

 

「はい、雹、呼びました?」

 

「最悪貴女だけ逃げなさい。私と常陸でも押さえきれない可能性があります。その場合、神崎提督を連れて逃げなさい。そして、鎮守府残存全艦に、全力での戦闘を指示してください。」

 

全力での戦闘、それは伊吹、須磨、琴風、常陸、伊310、霧にしか通じない一種の符号のようなものだ。雹も、使ってはいるが、言葉そのものの意味で、本質は理解していない。

 

「!私がですか?!」

 

防空駆逐艦(DDG)ではなく、高速駆逐艦として。良いでしょう常陸?」

 

つまり<太刀風>級としてではなく、<島風>改級として動けという事だ。

 

「ああ、さすがに五号艦(紀伊)級をこの距離で複数相手は厳しい。現時刻を以て俺の持つ権限を全て琴風に預ける。……(穂高)須磨(三河)を連れてくるべきだったか。」

 

「いえ、変わらないと思います。」

 

 

 

 

 

自分の後ろで、もしかしたらこの国が滅ぶかもしれない作戦の会議を行っているとはつゆも知らず、神崎は目の前の会議の行方を追っていた。

 

「では、南洋諸島方面は一進一退というところか。いずれ大規模作戦を行う必要があるな。……では続いて、本日招集したメインの議題について話そう。」

 

「横須賀第三鎮守府の特殊ドロップ艦についてだな。」

 

「左様。そのために本人達を呼んだ。合流の経緯等については配布資料にあるのでそれを見てもらおう。今回彼らを呼んだのは、合流するまでと、彼等の艦としての記憶を聞くためだ。では神崎少佐。」

 

「はい、では僭越ながら、ここからは私が議事進行を行います。まず合流するまでについて、艦隊旗艦、戦艦<常陸>より説明を行ってもらいます。常陸。」

 

「はい、私が艦息常陸です。性別については自分でもわからないので放置してくれるとありがたいです。では説明に移ります。」

 

「まず海上で意識を持ったとき、私の周囲には既に11名の艦娘が倒れて浮かんでいました。全員を起こし、艦の確認を行ったあと、空母<伊吹>を中心に輪形陣を、駆逐艦<霧>を旗艦として4隻で前衛艦隊を組み、南西方向へと航行を開始しました。理由は、そちらの方向に電波発信源が有ったからです。」

 

「ちょっと良いだろうか?」

 

「構いません。合流前はそれだけしかしていませんから。何か疑問が?」

 

「資料には前衛は巡洋戦艦<穂高>を旗艦として、駆逐艦<琴風><音風><暮風>で編成とあり、どこを探しても駆逐艦<霧>とは無いが?」

 

「その旗艦巡戦<穂高>が<霧>です。」

 

「どういうことだ?」

 

「そのままです。ああ、そちらから説明すべきでしたかね?我々の艦隊には3隻、複数の艤装を顕現させることが出来ます。」

 

一瞬の沈黙のあと、騒然となる会議場。当たり前だ。普通艦娘一人につき、顕現させられる艤装は1つだけなのだから。それが、複数の艤装を、しかも艦種も異なる艤装を顕現させられるという。理論上は一人で何人か分の働きが出来ることになる。

 

 

「その他の二人は誰かね?」

 

「一人は特務艦<須磨>、そしてもう一人はここに連れてきている<琴風>です。一応機密なので、この二人については顕現させられる艤装は伏せさせていただきます。」

 

これは情報を秘匿するためである。

 

「他に質問はありますか?無いのであれば、常陸には、軍艦時代について話してもらいますが…」

 

「無さそうですね。次へ進みます。それでは私の歴史についてお話しします。私は、第二次世界大戦の勃発と英国の降伏により…」

 

「ちょっと待て!」

 

「質問は説明が終わってからにさせていただきます。…続けます。第二次世界大戦の勃発と英国の降伏により大きく変更された九九九艦隊計画、その要となる新造戦艦9隻の最終番艦である七号艦級3隻、およびその後継艦2隻、その5隻の資材と予算を転用し建造されました。就役は1950年、第三次世界大戦の勃発から2年後です。予備艦へ編入されたのは1998年、その後一時現役に復帰しましたが、2015年退役、記念艦として残されました。」

 

自分達が、そして既出の艦娘が軍艦時代に辿ってきた歴史とは大きく異なる歴史。

 

「…それは、事実なのかね…?」

 

「はい。これは私が、そして大なり小なり相違点はありますが、本艦隊の所属艦娘が辿った歴史でもあります。」

 

実はその1つ前にはまた全く異なる、というかそもそも舞台が地球ですらない歴史を辿ってきたりしてるのだが、そこまでは言わない。

 

「他に質問は無いでしょうか?」

 

「君達のスペックを教えてほしい。」

 

「具体的には?」

 

「ふむ…では4倍の敵を叩き潰せるその火力を。」

 

「いくつか我々の中での機密が入るため、全員の火力はお話しできません。お話しするのは私の火力のみになります。」

 

「…ふむ、まあ良いだろう。」

 

「私は、日本の象徴として建造されました故に、過剰な火力を有します。主砲に55口径71㎝砲を三連装4基12門、副砲に60口径30㎝三連装2基を、搭載しております。」

 

一番化け物なのは常陸でもない(雫である)し、常陸が化け物じみている点も、そこではない(速力と機動力な)のだが、場は再び騒然となり、一瞬で静まる。

 

「質問はこれくらいでしょうか?それではこれで臨時会議を…」

 

「待て。」

 

神崎の宣言を途中で止めたのは、舞鶴第一鎮守府提督の林真人大将。

 

「何か、ありますか?」

 

「単刀直入に言わせてもらうが、彼等はなぜ横須賀第三鎮守府所属なのかね?」

 

「それは、艦娘の取り扱いに関する規定第12条から…」

 

「あの横須賀第三鎮守府所属になったのか?楠木大将、小官は、彼等は横須賀第三鎮守府に所属させるに些か過剰であると思いますが!」

 

「ふむ、その理由は?」

 

「横須賀第三鎮守府は前任提督の不祥事により、所属艦娘の対人感情は最悪であります。現に神崎少佐も、提督ではなく事務員として働いているという情報を得ました。」

 

「それで?」

 

「そのような艦娘達に、彼等が取り込まれてしまえば、その火力は我等に向きます。そのような危険は未然に防止すべきです。今であればまだ所属してから1週間、対人感情の矯正は間に合います。」

 

たった今最悪になったわてめえの発言でな。そう呟く常陸。

 

(矯正だ?冗談じゃねえ。俺たちは兵器だが人形じゃない。)

 

実際林の発言は、一部を除いて正論であり、何もなければ確かに通る意見ではあった。

 

「では林大将、貴官はどうするべきと考える?」

 

「それぞれの第一鎮守府、南洋諸島の拠点に分散配備すべきと考えます。」

 

勿論何隻かはウチがもらう。そう林は心の中で呟いた。

 

(出来れば常陸と、艤装を換装できるという3隻が欲しい。そうすれば演習でも勝てるだろう。大将筆頭の座がいずれは…)

 

そしてしばし沈黙に包まれる。

 

 

 

 

「却下だ。」

 

そう言って静寂を切り裂いたのは他でもない、常陸だった。

 




常陸さんが半分キレかかってます。

時系列は一応外伝等の記述から、ある程度の予測と余裕を持たせて組んでいるつもりです。


本気になったら一番怖いのは影が薄い伊310です。

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