異星艦娘と新任提督(事務員)   作:対艦ヘリ骸龍

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遅くなりました。ファーストコンタクトです。


第十話  接触

「こんなもんか?」

 

音風の目の前には155㎜砲弾を数十発叩き込まれて瀕死体の軽巡がいた。駆逐?琴風に12.7㎝砲弾を山のように叩き込まれるか、生駒の30㎝砲弾を喰らって文字通り消滅している。大型艦は、まだ視界に入らぬ内に空中哨戒機に見つかり、対艦誘導弾か魚雷を喰らって沈められている。

 

というわけで戦闘訓練を兼ねて中小型艦のみ視界内に入っていた。

 

「な、なあ、さっきから小型艦が押し寄せる割りに大型艦が居ないのは何でだ?」

 

「来る前に潰してるからです。」

 

天龍の疑問ももっともだろう。

 

 

 

 

戦闘をこなしながら航行すること数時間、彼らは横須賀第三鎮守府正面海域に到着した。

 

「ここの司令官を常陸が気に入れば良いんだけど…天龍、ここの司令官ってどんな人?」

 

「人間の司令官は居ないぞ?」

 

「え?でも鎮守府って人間の提督が指揮執ってるんじゃないの?」

 

「うちは少々訳アリでな。」

 

「ってことは今は…」

 

「一応艦娘の長門が司令官だな。」

 

「その人って下手打つ人?」

 

「うん?」

 

暮風の問いに疑問形の返事をした天龍。

 

「ランス・ツーより全艦。水中に潜水艦の反応を探知。音紋データに記録ありません。数4。距離5000、なおも接近中。」

 

『アーセナルよりランス・ツー。既に探知済、マインより攻撃許可の要請。至急対象の敵味方を調べろ。』

 

「との事ですけど天龍さん、下のはお仲間です?」

 

「…いや、わからない。」

 

「ランス・ツーよりアーセナル、敵味方は不明。訓練魚雷による警告の実施を進言します。」

 

『アーセナル了解。マインへ、訓練魚雷発射。』

 

マイン──艦隊前方海中にて航行、警戒に当たっていた伊310──が、有線誘導の訓練用魚雷を4発発射。艦隊周囲に存在する音源──横須賀第三鎮守府所属の潜水艦群──へ向ける。潜水艦は慌てて舵を切り、速度を上げるが、誘導魚雷なのでそのまま追尾。命中したところで、大量の水溶性塗料を散布。ついでにソナーのピンを放つと同時に水中スピーカーから浮上、投降を呼び掛けてみた。

 

「浮上してくるかな?」

 

「攻撃したところで、返り討ちに出来るんですがね。というよりもう少し歓迎ムードにはしてくれないんですかね?」

 

などと音風と琴風が話している横で、

 

「天龍さん、下手って言うのは、我々に敵対しようとすることですよ。何も敵対行動を取らなくても、潜航したまま接近しようっていうのは準戦闘行為なので。今回は天龍さん達がいるから警告になりましたけど、いなかったら沈めてました。まあ、天龍さん達が居なければそもそも来ることがないんですが。」

 

「…味方かも知れないとは思わないのかよ?」

 

「潜航しながら接近してくる味方とか不気味すぎます。というよりこの世界だとこちらを見つけていながら浮上しない時点で敵だと思います。」

 

暮風が珍しく、敬語で正論を言った。

 

「ああ、浮上してきたな。艦娘か。おい天龍。」

 

「なんだ?」

 

「コレは味方か?敵か?」

 

「味方だ。」

 

「ランス・スリーよりアーセナル、味方らしい。」

 

『了解した。アーセナルより全艦、これより横須賀第三鎮守府に入港する。無いとは思うが自分の身は自分で守れ。全艦準戦闘態勢。』

 

一応港に着いたというのに、先程より警戒レベルが一段階上がった常陸達。天龍の誘導により、入港、上陸を果たし、取り敢えず艤装を仕舞ったところで、一人の艦娘と一人の人間の男が近付いてきた。

 

「初めまして。横須賀第三鎮守府提督代理の戦艦長門だ。」

 

「同じく初めまして。同鎮守府所属の事務員、神崎啓斗です。この度はこの鎮守府所属の艦娘を助けていただきありがとうございました。また先程の無礼も謝らせていただきたいのですが。」

 

「初めまして、一応この艦隊の旗艦を引き受けている、戦艦常陸だ。さっきのアレについては…まあ、対潜訓練になったということでかまわない。」

 

実際、他の艦娘とお喋りもせず、単独で突出し、黙々と警戒任務をこなしていた伊310にはいい気晴らしにはなっただろう、と常陸は思う。

 

 

 

 

「で、神崎さん、それから長門さんか、ここの鎮守府は一体何があった?少々雰囲気が物々しいが。」

 

 

早期警戒管制機は既に着艦させていたが、代わりに到着前に高高度周回戦闘偵察機を上げていた。伊吹には1機しか搭載されていない虎の子だが丸一日滞空し続けられる高性能偵察機である。

 

 

その機体の隊内秘匿暗号無線によると、鎮守府周辺になぜか戦車が、それに対応してか、門付近の艦娘は艤装を展開させていた。

 

「人間に襲われてでもいるのか?なら俺たちも応援に入るが。」

 

応援なんてものじゃない。伊吹が攻撃機出して燃料気化爆弾(FAE)集束爆弾(クラスター)落として終わりである。戦闘ではなく蹂躙。

 

「いいえ、彼らはこちらを警戒しているだけですから、気にしないでください。良ければこの鎮守府についてお話させていただきたいのですが。」

 

「そうか、ちょうどいいな。聞かせてもらおう。伊吹、所属機の半数を出して警戒に当たらせろ。須磨、試製兵器に地上兵器が有るならいくつか出せ。他の全員は伊吹と須磨の護衛…いや、雹と琴風は俺についてこい。」

 

「「了解。」」

 

常陸の指示を受け、伊吹は警戒に向いている戦爆と航続距離が長い陣風を中心に航空部隊を展開させ始めた。同時に須磨はなぜか搭載していた七式指揮戦闘車を展開。それは地面につくと同時に通常サイズに拡大し、須磨はそれに乗り込む。搭載する120㎜砲に砲弾が装填された。さらに二両の戦車も取り出し、配置に付ける。

 

それを見計らい、他の艦娘は両者を囲むように立つと艤装を半分展開した。すなわち主兵装のみの状態を維持。

 

鎮守府に着いたのだからわざわざそこまでする必要も無いように思えるが、彼等にとってまだここは、敵でも味方でもない場所なのだ。だからこその準戦闘態勢であった。




何気に初登場の伊310さんです。


須磨さんは大抵の兵器を乗せてます。ヘリも載ってたりします。戦車は……

ちなみに戦車出した意味は、人類への対抗の意味を込めてます。
ドラッヘン級の化け物出そうか迷ったんですが艦載でそれはないなと思いました。

つまり特に意味はありません。

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