特に何もない素晴らしい1日だった。   作:緋月夜

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飛我くんが最初に向かうのは紅魔館、異変などは1通り過ぎた後です。
能力を使いつつ、紅魔館の住人を観察、コミュニケーションを取っていきます。



……イチャラブって難しいね((


日常編
紅魔館の場合


――ここは幻想郷。

霧の湖の辺に佇む館――紅魔館。

この館は、今日も平和であった。

 

 

――ある春の穏やかな日差しの中、これまた穏やかな寝息を立てる1人の女性の姿があった。

彼女の名は、紅美鈴。

ここ、紅魔館の門番を務める妖怪である。

「すぴー……すぴー…えへへぇ」

と、緊張感も無く、涎を垂らし寝ていた。

「しゃくやしゃぁん……もう食べられまへんよぅ…」

……どうやら幸せそうな夢を見ているようだ、起こすのは可哀想だと思うレベルである。

―しかし、どこからとも無く飛んできたナイフにより、彼女は夢から覚めざるを得なかった。

「こらぁ、美鈴!ちゃんと仕事しなさい!」

そんな怒声と共に現れたのは、紅魔館のメイド長―十六夜咲夜だ。

「ひゃあっ!?痛い!あれ?咲夜さんのご馳走は……?」

どうやらこの門番、寝ぼけているようだ。

それを見た咲夜は、少し呆れた顔をして

「全くもう…いつまでも寝ぼけてないで、ちゃんと仕事をなさいな」

と、言った。

「あ、あはは…ごめんなさい…」

そんな咲夜の様子を見て、シュンとなる美鈴。

「全く…あと三十分くらいでお昼ごはん出来るから、それまで寝ないでちゃんと仕事しなさい?じゃないとお昼抜きよ」

と、片目を閉じ、悪戯っぽく笑って咲夜が言う。

「えぇ!?そんなぁ、困りますよぉ…咲夜さぁん」

と、今にも泣きそうな美鈴。

「それじゃ、しっかりね」

そんな言葉を言い残し、ふっと消える咲夜、能力を使ったのだろう。

「うぅ…ご飯抜きはやだなぁ……はぁ」

がくっと肩を落としつつも、今度は寝ずに門番を続けていた。

お昼にはあり付けたのだろうか?

 

 

――紅魔館内、大図書館。

ここには、大量の魔導書を始めとする、有り余った書籍が保管されている。

この大図書館は、半地下構造になっているので、窓がない。

よって埃っぽいのが難点である。

そんな大図書館の主――紅魔館の内部施設なので主というのもおかしいが――パチュリー・ノーレッジが、机の上に乱雑に置かれた魔導書を読み漁っていた。

「……むぅ…」

本を読みながら、難しい顔をするパチュリー。

どうやら求めている魔導書が見当たらないようだ。

「ふぅ…こあー、こあー?」

と、彼女の使い魔である小悪魔を呼ぶ。

「はぁい、パチュリーさま、なんでございましょう?」

と、ひょっこり顔を出して、ふふふと微笑む女性が一人。

「何かお探しの本でも?」

と、慣れている様子で尋ねる小悪魔。

「そうなの…水属性の魔法について書かれている魔導書が無くてね…知らないかしら?」

どうやら、魔法の強化の為に使うようだ。

「うーん……そうですねぇ…水関連ですか……」

顎に手を添え、記憶を辿っている様子。

「あ、そうでした、水属性に関する魔導書なら貸し出してますよ」

と、答える小悪魔。

「え?そうなの?いつよ、それ」

と、少し驚いた様子で尋ねるパチュリー

「一昨日ですよ、珍しく魔理沙さんが、貸してくれーって言うものですから、3日ほどの期限付きで貸し出してます、明日には戻ってきますよ」

と、微笑みながら告げる。

もっと早く言いなさいよ、と彼女は呟き、別の魔導書を手に取り読み始めた。

今度のは、どうやらお気に入りの魔導書の様である。

時折咳をしているので、心配なところではあるが、彼女も彼女で気をつけているはずなので、こちらからの過度な干渉は避けよう。

 

 

―――紅魔館内、2階廊下。

紅魔館の内部は、見た目よりも広くなっている。

なぜかと言うと、先程も紹介したこの館のメイド長である、十六夜咲夜の能力による空間操作の結果である。

彼女の能力は時間を操る程度の能力。

そして、時間は空間と密接な関係――詳しいことは分からないので省くが――にあるため、空間の操作も可能である。

そのため、紅魔館内は彼女のおかげで広くなっているという訳である。

最も、前に聞いた時に―「館が必要以上に広くて、掃除が大変なの」―等と言っていたので彼女にとってはマイナスなのかもしれない。

そんな彼女が、廊下を歩いている。

それだけではなく、館のあちこちにいる妖精メイド達に、軽く指示を与えて回っている様だ。

彼女の事を一言で表すならば、出来る女、だろうか。

彼女の様な家事スキルを磨きたい所である。

「…ふぅ……」

と、軽く息をつき、椅子に座って寂しそうな顔をする彼女。

そんな顔を見たら話しかけたくなってしまうのは仕方ないと思う。

 

 

―――紅魔館、2階テラス

「どうしたんです、ため息なんてついて」

と、話しかけてみた。

「…っ…!あぁ、飛我くん…居たのね」

肩をビクッと震わせた後、微笑みながらこちらを振り向く咲夜さん。

しかし、その顔から寂しさの色は消えない。

そのまま彼女の隣に座って、

「まぁ、皆さんの日常を見ていたんですけどね、あ、勿論覗きなんてしてませんからね?」

と、おどけながら話を広げてみる。

「それくらい、分かってるわよ…そんなに必死になって、かえって不自然よ?」

ふふ、と笑って答えてくれる

「それにしても、門から入ってこないなんて美鈴が可哀想ね、貴方に会いたがってたのよ?あの娘」

と、教えてくれる、そうだったのか…((

「帰りは門から出ていきますよ、そういうことなら」

こちらも微笑みながら返して、軽く聞いてみた。

「しかし咲夜さん、これは僕の客観的な意見なんですが、人肌恋しいとか…最近思ったりしませんか?僕は度々あるんですよ」

そう言うと、咲夜さんは俯き呟くように言った。

「…それは…そうね…あるわ、寂しいもの」

そんなことを言う咲夜さんは、普段見せない弱々しさが全面に現れていた。

「……それに、貴方とも暫く会えてなかったでしょう?…嬉しいのよ?こうやって貴方と2人で話せるのは」

顔を上げて、加えてそんなことを言ってくる。

…そういうの反則だと思いますけど。

「咲夜さんは頑張り過ぎなんです、もっと肩の力を抜いてください」

と、彼女の髪を優しく撫でて言う。

「咲夜さんが無理をしすぎて体を壊してしまわないか、いつも心配なんですよ」

彼女のさらさらとした銀色の髪を撫でていれば、更に分かることがあった。

「それに、髪の手入れも怠っていませんよね、咲夜さんは」

そうして撫で続けていると、彼女の顔は少し赤くなっていた。

「……貴方の優しさに対して、ここの幻想郷に住む人たちは好意を持っているわ」

私もその1人よ、と照れ笑いしながら言ってくれた。

「確かに、仕事は大変よ…でもね、これが私の生きがいでもあるから」

と、ハッキリとした口調で告げる。

「…それに、手入れもしてない髪を、貴方になでて欲しくないもの」

と、小声で呟く咲夜さんは、とても可愛く見えた…って違う、今回そういうのじゃないから違うかr(ry

 

 

 

―――紅魔館、レミリアの部屋

咲夜さんと話をして互いに別れた後、僕はこの館の主――レミリア・スカーレットの自室を訪れていた。

彼女の部屋に入る前に、必ずすることがある。

それは、彼女の部屋のドアを2回、1回、4回とノックすることだ。

別に何ら意味は無い、適当に決めただけである。

コンコン、コン、コンコンコンコン。

すると、中からドアが開き、レミリアが顔を出してくれた。

「あら、やっぱり飛我だったのね、いらっしゃい」

入って、と中に招いてくれる。

「久しぶり、レミリア」

と声をかけると、彼女はニコニコしながら

「ふふふ、そうね、貴方に会うのは…一ヶ月ぶりくらいね、元気にしていたかしら?」

と、言ってくれた。

「もちろん、体を簡単に壊すほどやわじゃないよ、僕は」

と、微笑みながら返す。

「そうだったわね、貴方の生命力と回復力は異常だもの」

と、笑いながら言う。

まぁ、座ってと彼女が椅子を指すので、レミリアと向かい合う様に座った。

「咲夜ー?いるー?」

と、レミリアが声をかけると、即座に咲夜さんが現れた。

「はい、お嬢さま」

「紅茶を淹れてくれないかしら?私と飛我の分」

「かしこまりました」

と、言った瞬間テーブルには紅茶とクッキーが置かれていた。

「ん、完璧ね、ありがと咲夜」

「いえ、これもメイドの勤めですわ」

やっぱり出来る女だ、咲夜さんは。

「ありがとう、咲夜さん」

と、目を見てお礼を言った。

すると彼女は、先ほどのこともあって少し顔を赤くし

「…どういたしまして」

と、小声で呟いたあと、失礼します、と何処かへ移動してしまった。

 

そんな様子を見てレミリアは、

「何?咲夜と何かあったの?」

と、キョトンとしながら尋ねてくる。

何かがあった訳では無いので、特に何も、と答えると彼女は納得し紅茶に口をつけた。

僕も目の前に置かれたティーカップを持ち、一口紅茶を飲んだ。

紅茶の味の好みとして、無糖のさっぱりした味が好みなのだが、咲夜さんが淹れてくれる紅茶は、少し甘みを含んでいた。

その後、レミリアとクッキーを食べながら近況を話して、時間を過ごした。

そんな時、ふとレミリアが言った。

「そう言えば、あの子には会った?今日はまだ地下にいると思うけれど」

「あぁ…フランちゃんか、まだ会いに行ってないかな」

そう、ここの主には妹がいる、たった1人の妹が。

名をフランドール・スカーレット、愛称はフラン。

彼女は基本的に館から出ないらしい、もっとも最近は外の世界に興味を持ち、出かけたりしているようだが。

「まだ寝てるのかな、ちょっと会ってくるよ」

と、席を立ち扉に向かう。

「そう、じゃあ続きはまた今度ね、気をつけてね飛我」

と、見送ってくれるレミリアの頭を撫で、部屋から出た。

 

 

―――紅魔館、1階ロビー

レミリアの部屋を後にし、1階に戻ってきた。

道中廊下で、レミリアの真似をし咲夜さんを呼んでみた。

すると、本当に来てくれたので、先程の紅茶とクッキーについてのお礼を言ったら、少し顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。

フランちゃんの部屋の場所と、行き方を教わって今に至る。

 

(さて……ここの壁を押し込めば…と)

ガコン、と音を立て壁が横にずれ、階段が現れた。

(暗いな…フランちゃんの部屋に行くのは初めてだけど…大丈夫かな)

道順は記憶した、暗さは……慣れよう。

よし、行くか。

 

 

 

―――紅魔館、地下室

暗闇の中を進み、少し大きめな扉の前に出た。

多分此処がフランちゃんの部屋なんだろう、入るのは初めてだ。

コンコン、と一応ノックをする……反応はない。

「…入るよー……?」

と、ゆっくりドアを開け中に入る。

部屋の中は全体的に紅を基調としているようだ、奥には大きな天蓋付きのベッドが。

ゆっくりと近寄ってみると、ベッドには丸まって眠るフランちゃんがいた。

「んん……すぅ……すぅ…」

と、穏やかな寝息を立てているその無邪気な顔は、多分誰が見ても可愛いと言うだろう、僕だって可愛いと言いたくなる。

「……」

ベッドに腰掛け、フランちゃんの髪を撫でてみる。

「んん…えへへ…」

眠りながら微笑む……だと…!?

……恐ろしや悪魔の妹、などと1人で考えながら撫で続けていると、

「ん…ふぁ……あ……んん?あれ、ひゅーが…?」

と、眠そうに目を擦りながらフランちゃんが目を覚ました。

「っと…起こしちゃったかな、おはようフランちゃん」

「んむ……おはよー、ひゅーがー」

にぱーと笑うフランちゃん、可愛い。

「ごめんね、昼間なのに起こしちゃって」

と苦笑いしてみると、擦り寄ってきたフランちゃんが、

「…んー…なんだ、まだ夜じゃないのね…なら寝ようかしら…」

と、眠そうに目をこすりながら囁いてくる。

「せっかくだから…一緒に…ね?」

と、どうやら一緒に寝たいらしい……萌え死にまs…じゃなくて

「んー…いいの?フランちゃん」

と、恐る恐る聞いてみる。

「……聞かなくても、答えはイエスよ、ひゅーが♡」

と、押し倒して抱き着いてくる。

「うわ…っ、びっくりした、急に抱き着かないでフランちゃん…」

「んー……ふふ、いい匂いね…ひゅーが…」

と、胸元に顔を擦り付けてくるフランちゃん、ちょっと痛い…。

「私ね……貴方のこと好きよ、ひゅーが…」

と、耳元で囁いてくる。

「貴方の匂いも、貴方の体温も…全部」

「フランちゃん……」

…こんなに想いをぶつけられたのは初めてだ…どうしたらいいのかな……

「答えなくて良いわ…だって、貴方の事が好きなのは…他にもいるもの…独り占めなんて出来ないわ…それに、貴方自身が辛くなっちゃうでしょう…?そんなひゅーが見たくないもの…」

「……」

ぎゅう…と抱き締めてくるフランちゃんは、とても愛おしく思えた。

「でも……今だけは、私だけのひゅーがだから…ね?」

「フランちゃ…んむ…!?」

そこから先はフランちゃんの手で遮られてしまった。

「しーっ…これ以上の言葉は不要よ…眠気が覚めてしまうもの」

…だから、おやすみ。

そう言ってフランちゃんは、僕の腕の中で眠りについた。

そこから先は覚えていない、目が覚めた時には朝だったから。

 

 

――翌日早朝、紅魔館、正門付近

フランちゃんはまだ寝ていたけれど、目が覚めたので少し敷地内を歩いてみることにした。

館内では、数人の妖精メイドが歩いていたが、その他の住人はまだ寝ているようだった。

ただ咲夜さんは起きていて、会ったときに

『貴方の寝顔、可愛らしいのね…ふふ』

と、意地悪そうに微笑んできた。

『み、見たんですか咲夜さん…』

昨日の彼女の様に顔が赤くなるのが自分で分かって、さらに恥ずかしくなった。

 

(そう言えば、昨日咲夜さんが言ってたっけ…美鈴が会いたがってたって)

……行ってみるかな。

 

紅魔館の正門を開けると、外には昨日見た門番の美鈴が立っていた。

「やぁ、美鈴、久しぶり」

と、声をかけると

「うわっ、びっくりしたぁ…あれ、飛我さん?なんで内側から?」

「あぁ、いや、実は昨日から居たんだけど…昨夜フランちゃんの部屋で寝ちゃってね…早くに目が覚めたからちょっと歩いてたんだ」

と、説明した。

「それに、美鈴が会いたがってたって聞いたからね」

と、言ってみると、

「そうなんですよー、会いたかったんです飛我さん…」

と近付いてくる。

「皆さんばかり狡いです…私だって飛我さんに撫でて欲しいです」

そう言って俯く美鈴、素直さがかわi(ry

「そっか…美鈴も頑張ってるもんね…僕が撫でるだけでも良いの?」

と聞いてみると

「はい!もうそれだけで充分過ぎますって…それだけで頑張れちゃいます」と、笑顔で答えてくれた。

なので、さらに近寄って抱き寄せてみた。

「ひゃあっ…!?ひゅ、ひゅーがひゃん…?」

と、顔を真っ赤にする美鈴、可愛い。

「ご褒美とか、そんなんじゃなくてね、ただこうしてあげたいって思ったんだけど…嫌だったかな?」

と、小声で聞いてみる。

「い、いえ…!でも…こんな…不意打ち過ぎます…」

そう言いながら美鈴は強く抱きついてきた、何がとは言わないが当たる、やわらk((自重

 

 

―――こんな穏やかな毎日が続くなら、それ以上の望みはない。

そう強く思った出来事だった。

恋愛云々を抜きにして、平和で充実したこの日常が壊れないことを切に願う。

 

……To be continued




次回は……どうしたらいいですか?((←
白玉楼編…( ´・ω・` )
決めた、白玉楼編だ( ՞ةڼ )


それではまた次回。

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