役人転生IFルート〜先生になった私はどうしたらいいのだろうか〜 作:トマホーク
しずかside
ふむ。困った。職員室や教員室にも姿が無いとなると先生は何処に居られるのであろうか?
「えぇ、ですから……そのね?はい、はい。ケイ君の言う事も分かりますけど……うっ……黙って姿を消した事については申し訳なかったです」
……む、あちらから微かに先生らしき声が。
「しかし、姿を消さ――え?会いに来ないと楯無高校に居る事を皆にバラす?ちょ、ちょっと待ってください!!そんな事をされたら大変な事に!!」
おぉ、そこに居られたか。うん?携帯を片手にワタワタと何やら取り込み中のご様子……仕切りなおすか?
「……わ、分かりました。時間を作って会いに行きますから落ち着いて下さい。はい、はい。え?あの……何でサンダースの第3戦車倉庫で待ち合わせなんですか?第3戦車倉庫ってほとんど物置状態でいつも人気が無いとか聞いて……え?細かい事はどうでもいい?いや、そうは言っても――ッ!?分かりました、分かりましたから。それで構いません……えぇ、では……また。はぁ、困りましたね」
いや、まぁ……ちょうど終わったみたいであるし、よいか。
「失礼します、先生。少し宜しいでしょうか?」
「っ!?はい、構いませんよ。何ですか、しずか君?」
「次の戦――対戦相手がBC自由学園に決まりました故、そのご報告を」
「ほぅ。BC自由学園……ですか」
うん?先生はBC自由学園と何か関わりがおありなのだろうか?
何やら懐かしむような悔いるような筆舌に尽くし難い表情を浮かべておられているが。
「えぇ、それでそのBC自由学園の物見に鈴と共に明日行く予定なのですが、先生もご一緒に如何かと」
専門的な知識がある先生に見てもらえばBC自由学園の弱点等が分かるかも知れぬし、是非とも付いて来て頂きたいのだが。
「明日……ですか。すみません、明日は先約がありまして」
「む、そうでしたか……」
残念ではあるが先約となれば致し方なしか。
「また今度誘って下さいね。あぁ、そうだ。BC自由学園は色々と面白いチームですからしっかり見て勉強してきて下さい」
「? 承知致しました」
――さて。というわけで鈴と共にBC自由学園が試合を行っている会場にやって来たのだが。
おぉ、やっておる。しかし……。
「解せぬ」
「え?どうかした?姫」
「いや、あそこの部隊を何故動かさぬのかと思ってな。今投入すれば一息で勝負がつくというのに」
出し惜しをしている訳ではなさそうだが。
「お、お前さん“通”だね」
「え!?嘘!?」
うん?誰ぞ?鈴は相手の事を知っているようだが。
「ありゃ旧BC高校側だからさ」
「ペパロニ!!出店をさぼるな!!」
「あ、いけね」
「アンツィオ高校のアンチョビさんにペパロニさん!?何でここに!?」
ほぅ。この方々が彼のアンツィオ高校の隊長殿と副隊長殿であるか。
「全く、ペパロニのやつはちょっと目を離すとすぐにさぼる……あぁ、すまない。ウチもタンカスロンはちょくちょくやってるから偵察兼資金稼ぎにな。――で、BC自由学園の話だけど……“お客さん、ご注文は?”」
む?……あぁ、なるほど。そういう事か。
「この店で一番いいモノを」
「了解。――でだ。“今の”あいつらは要するに味方同士で足蹴り合いながら戦車道をしてるんだ」
「それは何とも穏やかな話ではないな。しかし、今のとはどういう意味か」
“今の”をやけに強調していたが。
「あぁ、それを説明するとなるとちょっと話が長くなるんだが……その昔BC自由学園は元々BC高校と自由学園というマジノ女学院の分校――独立した2つの学園だったんだがな、生徒数の減少と学園艦の老朽化が原因で生徒達の意思を無視して無理やり統合されてしまったんだ」
「ふむ」
それが尾を引いたという訳――いや、それでは話の辻褄が合わぬな。
「まぁ、統合自体はとある人の尽力があったお陰で結果的には上手く行ったんだが……」
「そうそう。上手く行ったお陰で両校で培われてきた伝統や校風を失わないようにって互いに互いを尊重し合う形で右舷と左舷で分かれて暮らしていたりとかっすね。あ、で面白いのが戦車道チーム。書類上はBC自由学園という1つの戦車道チームなんすけど実際はBC高校と自由学園の伝統を踏襲している2人の隊長とその仲間達で構成されている2つで1つの特殊なチームになっているんすよ」
「ほぅ、それは面白い」
「ペパロニの言ったように2つで1つの特殊なチームなもんだからオルトロスって渾名があった程だ」
オルトロス……双頭の犬か。話が事実だとすると言い得て妙であるな。
「であるならばなおさら解せぬ。それほど仲が良かった者達が何故今は反目しあっているのか?」
「……お前達も知っているとは思うが大洗廃校の一件でBC自由学園の統合計画を最終的に上手く収めたその人、先輩――辻元局長がクビになった事が原因だ」
「……辻元局長……」
おぉ、大洗廃校を撤回するため、そして腐りきった国賊共を誅するために獅子身中の虫となり己が身命をとして生徒に忠を尽くした彼の御仁が関係しておられたか。
「全責任を負わされてクビになった先輩の仇を討とうと、文科省討つべしを唱えたタカ派――アスパラガス率いる旧自由学園勢と自らが引くことで事態の沈静化を図った先輩の意思を汲み、動く事をよしとしなかったハト派――ボルドー率いる旧BC高校勢の間で意見の食い違いが起きて喧嘩が始まり、そして今じゃ学園艦全体が旧BC高校と旧自由学園に別れて喧嘩状態っていう顛末さ」
「なるほど。そうであったか」
「まぁ、雲隠れしてしまった先輩が見つかれば解決するだろうけどな。あいつら単純だし。あ、そうだ。お前達、先輩について何か知ってないか?あの人の事だから戦車に関係する所に必ずいるはずなんだ」
「いや、知らぬな」
彼の御仁には私も一度会ってみたいものだが、姿を消しておるというのであればそれも容易い事では無かろうな。
アスパラガスside
「アスパラガス殿、御身にとってタンカスロンとは……何ぞや?」
誰ざますか、こいつは。
役立たずの旧BC高校の連中がアンチョビの出店で買い食いをしているのを叱り付けに来たら妙な奴に絡まれたざます。
……まぁ、いいざます。質問に答えてやるざます。
「決まっているざます。全力を……全身全霊を賭けるべき戦場ざます!!」
「ほぅ……」
やっぱり妙な奴ざますね。私の答えを聞いてまるで好敵手とでも相見えたような嬉しそうな顔をしているざます。
「最もそれはタンカスロンだけでなく、戦車道全般に言える事ざますが」
あの方のご指導を受けた者として当然の心構えざます。
「それは頼もしい。応援しておりますぞ」
「? メルシー」
「では、我らはこれで」
……何だか最後まで妙な奴だったざますね。
しかし、あのリボン……どこかで。
次回は意外?なキャラが登場します(´∀`)