役人転生IFルート〜先生になった私はどうしたらいいのだろうか〜 作:トマホーク
さてはて。あっという間にしずか君がアリサ君と試合をする日になってしまいました。
本音を言えばもう少し練習を積んでから試合に挑んで欲しかったのですが。
まぁ、こればっかりは言っても仕方ありませんね。
とりあえず一定の技量が身に付いただけでも良しとしましょう。
……おや?B-29に牽引されたグライダーに乗って空からとはまたド派手な登場の仕方でアリサ君達はやって来ましたね。
サンダースらしいと言えばサンダースらしい登場の仕方ですけど。
「これでよし。感謝致します、先生。甲冑を着るにはどうしても人の手を借りねばなりません故」
「構いませんよ」
それにしても用意があるからと言って陣幕を張ったかと思えば、いきなり甲冑を着込み始めるとは……実に個性的な子ですね。しずか君は。
しかも、弓矢まで持ち出して。
……弓矢は絶対にアリサ君から文句を言われそうな気がしますけど。
「失礼します。対戦相手の方々が揃いましたのでそろそろ出てきて頂けますか?」
ほぅ。今日の審判兼監視員を務めるのは榛名君ですか。
いやはや久しぶりにお会いました。
しかし、すっかり監視員が板に付いてますね。私が出会った時は典型的な不良少女だったのですが。
今はまさしく出来るキャリアウーマンと言った感じです。
「これは失礼。すぐに参ります」
「……ちょっと待って下さい。それは何です?」
「戦には必須のモノ他」
「……こちらでは判断致しかねますので対戦相手の方に使用の判断を仰いで下さい」
「分かり申した」
まぁ、弓矢についてはそうなりますよね。
私が作ったのは管理運営の組織だけで実際の試合ルールは一部(安全面)を除いて以前のまま――何でもありなんですから。
今のように相手の許諾を取るように指導するのが精々といった所でしょう。
「――姫!!しずか姫出てきて!!」
「応ッ!!では行って参ります」
「えぇ、頑張ってきて下さいね」
さてと。しずか君が出陣した事ですし私はこのまま陣幕の中から試合を見させて頂きましょうか。
さっき陣幕の向こうからケイ君の声が聞こえていたので外に出るのは危険ですしね。
「全く最近の子は……それで先生?今度は何をなさるおつもりなんですか?」
「え、えっと……どなたかと勘違いされていませんか?」
あ、あれぇ?サングラスとマスクをして更にロン毛のカツラまでしてきたのに一発で正体を見破られてしまっているような。
「その程度の変装で私の目を誤魔化せると?」
「ひ、人違い――」
「余分なモノを無理やり剥ぎ取っても構わないんですよ?」
「すみません。許して下さい」
流石元ヤン。眼光が怖いです。
「全く。突然姿を消したと思ったら楯無高校で先生をやっているなんて。みんな心配したんですよ?」
「いや、まぁ……色々とありまして」
「存じています。試合後の痴話騒動は私もテレビで見ていましたから」
「……」
痴話騒動って……いや、確かに端から見たらそうなのかも知れませんが。
しかし、あの一件がテレビに流れたがために世間から身を隠さねばならなくなったんですがね。
まぁ、記者の方が大洗廃校の真実とかいう記事を書いた事も影響していますが。
「しかし、だからと言っていきなり雲隠れするのはやり過ぎです。あ、まさかまた何かするつもりなんですか?」
「いや、そんなに毎回毎回何かをするつもりは無いです」
「そうですか。……だったら私にぐらい居場所を教えてくれてもいいじゃないですか」
「え?何か言いましたか?」
「……そういう所が変わって無いのがムカつきます」
「……?」
何か榛名君が怒っているんですけど……。
「まぁ、いいです。こうして会えた事ですし。あ、そうだ。どうせならこのまま2人で試合を見ませんか?」
「それは構いませんけど……審判と監視員の務めを放棄するのは感心しませんよ」
「ご心配なく。今回私は遠方監視の副審判ですからここに居ても問題はありません。だから良いですよね?」
「……それならまぁ」
「では決まりです」
……さっきまで怒っていたと思ったら今度はウキウキしているんですけど、榛名君。
一体どういう事なんでしょうね?
「あ、それはそうと私が楯無高校で教師をしているというのはくれぐれも内密に……」
「分かっています。私だって恩人を売ろうとは思いませんから」
「助かります」
ありがたい事です。
「……誰が教えるもんですか」
凄い小さな声で何かをボソッと呟いた榛名君の顔が怖いんですけど。
本当に黙っていてくれるんですよね?……不安です。
お知らせ。
次次回ぐらいに修羅場予定(愉悦)
(´∀`)