役人転生IFルート〜先生になった私はどうしたらいいのだろうか〜 作:トマホーク
さて。しずか君に大至急タンカスロンに参加するための必要書類を揃えて欲しいとお願いされたので急ぎ揃えて持って来ましたが、ここですかね?しずか君のお宅は。
「すみませーん。どなたかいらっしゃいませんかー?」
「少々待たれよ――お待たせ致し……あぁ、先生でしたか。無理を言ったばかりか休日にご足労痛み入ります」
「いえいえ、構いませんよ。はいこれ。頼まれていたものです」
「おぉ、感謝致します。これでようやく……」
ハハハッ。目を爛々と輝かせてもうウキウキですね、しずか君は。タンカスロンがやりたくてやりたくて仕方ないみたいです。
「姫ー?お客さんが来たんだったらちょっと休憩してていいからねー……って、先生だったんですか。こんにちは」
「はい、こんにちは。鈴君もしずか君のお宅にいらしていたんですね。うん?」
何か油まみれになっていますけど鈴君。大丈夫なんでしょうか?
「あ、これですか?ちょうど今タンカスロンで使う戦車の整備をしていた所なんです。そうだ、先生も戦車見てみます?」
「はい。是非とも」
ほぅ……事前に戦車はあるとお聞きしていましたが九七式装甲車――テケ車ですか。
2人しか乗員が居ないしずか君と鈴君には色々な意味でピッタリの戦車ですね。
しかし、長い間放置されていたのか所々くたびれています。
まぁ、無理をしなければこのままでも暫くは使えますかね。それにいざとなったらパーツを取り替えれば問題は無いでしょう。
「……姫、これどうするの?」
「ううむ……困った」
「どうかしましたか?」
テケ車のエンジンルームに頭を突っ込んでエンジンの状態を確かめていたら、何やら後ろでしずか君達が神妙な顔して唸ってます。
「えっと、それが……この書類のここなんですけど。タンカスロンに参加する車輌は戦車道連盟の認定試験を合格している一級整備士の方に車輌を確認してもらって使用の許可をもらわないと試合に出てはいけないって事になってるんですけど……」
「少々調べた所、その必要経費が高い故。どうするか頭を悩ませていたのです」
「……ふむ」
あぁ、その件でしたか。
「はぁ……学校に部の設立申請はしたけど部員数が少ないっていう理由で同好会扱いにしかならなかったから部費なんて出ないし」
「これでは資金集めから始めねばなるまいか」
「それでしたら私が一級整備士の資格を持っていますから大丈夫ですよ?」
「なんと!?」
「嘘!?」
そんなにビックリしなくても。
「せ、先生って以前は戦車道の整備士だったんですか?」
「いえ、違いますよ。元々趣味の一環で2級整備士の資格を取っていましてね。その後、西住流の門下で戦車道をやる事になった時に1級も取ったんです」
「2級でも趣味の一環で取れるような資格じゃないと思うんですけど……」
「お待ちくだされ!!資格云々よりも先生が戦車道の経験者!?しかも……しかもあの西住流の門下というのは誠ですか!!」
西住流と聞いた途端にしずか君の目の色が変わったんですが……。
しずか君は西住流に憧れでもあるんでしょうか?
「えぇ、まぁ」
「なんという僥倖。先生!!私に砲術の稽古を付けてはもらえませぬか!!」
「わ、私も整備の事とか戦車の操縦を教えて下さい!!」
「はい、構いませんよ。というか、顧問なんですから当然です」
「おぉ、これで我々も色々と技を磨く事が出来るというもの」
「やったね、姫」
うーん。本当はちょっと離れた場所から見守るだけの名前だけ顧問のつもりでしたが……お願いされた以上はしっかり教育を施してあげねばいけませんね。しっかりと。
……姫の口調が難し過ぎる(滝汗)