役人転生IFルート〜先生になった私はどうしたらいいのだろうか〜 作:トマホーク
そのため3作品同時更新となっています。
「あぁ、誤解が無いように言っておきますが私のために怒ってくれたアスパラガス君や私の意を汲んでくれたボルドー君、君達2人の意見自体はとても嬉しく思っていますからね」
「コーチ……」
「先生……」
危ない危ない。
溝を埋めに来たのにもう少しで溝を深めてしまう所でした。
「しかしながら私如きの事で対立し、チームを……引いては学園全体の分裂を招いてしまった事については頂けません」
慕ってくれるのは嬉しいですしありがたい話ですが、部外者の問題で内紛を起こすのはいけません。
「……ですが、ですが!!あのような無体はあまりに酷すぎるざます!!コーチ1人に全てを押し付け安穏としている愚物共には思い知らせてやる必要があるざます!!だからこそコーチに大恩のある我々が革命を起こし、この閉塞しきった戦車道の世界に風穴を空け、時ここに到っても平気で惰眠を貪る奴らを叩き起こし、この不条理に満ちた世界に鉄槌を下さねばならないざます!!」
何か我慢ならぬとばかりに声を上げ目をギラギラさせたアスパラガス君が革命家の様な演説をしているのですが、私の様な者の事よりも戦車道に情熱を燃やし青春を楽しんで欲しい所です。
「お、おい、アスパラガス!!やめろ!!」
「君の気持ちはよく分かりました。アスパラガス君。しかし、君は1つ勘違いをしています」
「勘違いざますか?」
「えぇ、責任を取るのが私の仕事なんです」
「「「「……」」」」
うん?場が静まり返ってしまい――いや、なんでそんなに私の事をキラキラとした目で見詰めているんですか、君達。
当然の事を言ったのに何か好意的な解釈をされているような……。
「……では、コーチはあれで良かったざますか?」
「うーん。欲を言えばもう少し局長として皆を見守っていたかったですかね。……っと。私の個人的な事はどうでもいいんです。今回の本題は君達の事なんですから。」
「……」
「……」
本音をポロッと漏らしたら今度は見るからにしゅんとなりましたね。何だか悪戯をして怒られた子犬達みたいです。
「まぁ、本当なら他にも色々と言いたい事はありますが、以前なら露知らず今の私は完全な外部者ですし、今回の件の引き金となった原因でもあり、語る資格がありません。ですから今一度君達にはチームとは何なのかを試合の中で学んで頂きます」
「試合の中で学ぶ……ざますか?それは……つまり!!コーチがまた我々のコーチとして――」
「いえ、先も言いましたが私にはその資格も立場もありません。ですから私の教え子との試合の中で学んで頂きます」
「教え子?まさか……ッ!?」
「えぇ、訳あって今は楯無高校で教師兼戦車道のコーチをしています。あぁ、この事はくれぐれも内密に」
「「「「ッ!?」」」」
「な、何ぞ!?」
「ヒッ!?こ、怖いよ、姫!!」
あれ?今度は何故かアスパラガス君達が一斉にしずか君と鈴君を睨んでいるんですけど。
「そういう事ざますか……通りで戦い方が似ていたはずざます……ッ!!」
「姿を消す前にいくら頼んでもウチには来てくれなかったのに……ッ!!」
うーん。分かりません。
ほぼ無名のしずか君達から学ぶ事なんて無い!!みたいなプライドですかね。
「それではアスパラガス君、ボルドー君。君達の活躍を楽しみにしていますよ」
さて。挨拶も無事に終わりましたし、後はしずか君と鈴君にお任せしましょう。