部屋に朝日が差し込み、いつものようにアラームが鳴る
「ん……もうこんな時間……」
仮眠用に設置してたソファーから起き上がり薬を飲む
吐き気を押さえつつ、机の上を見る
普通の物より黒く輝いているスライム状の水銀
心を繋げるように手を近づけると
水銀は、スライム状から瞬間的に形を変えた
その変化に満足していると
「あら、お目覚め?」
背中から声がした
この部屋に泊まったのは私ひとり
扉が開く音は聞いていない
そしてなにより
そんな人は私は一人しか知らない
「どうかなさいましたか?、ーーーーーーーーー」
(バスジャックねぇ……)
アリアから
この件はアリアにキンジ、それと
でも私の居場所はちょっと集合場所から遠いみたい
一旦合流すると、時間がかかりすぎる
それなら……
『私は現地で合流させてもらうね』
『え、ちょっとソラ?』
『分かった』
『ちょっと、キンジ!話はまだ終わってない!……』
インカムを通じて伝わる会話から意識を遠ざけ
心とこの子を繋げる
(グレイブ、出番だよ)
声に応えるかのように
いや、声に応えエンジンがうなる
(うん、調子よさそうだね
防弾ベスト、ヘルメット準備ヨシ!
武器は、えーっと
B /V2でいいかな?
それとこの子もだね……)
手に乗せたARMに、拳銃のイメージを固着させる
拳銃状になったそれを右のホルスター
腰のホルスターにサブマシンガンを収納する
グレイブに跨がり、風となる
「こちらバスを発見、追跡開始します」
『こっちもレキが確認した』
『だから、リーダーは私だって!』
上のヘリから二人が落下をするのを確認
私は追走をグレイブに任せながら
だけど何か違和感を感じた
キンジの時も爆弾の他に……
ハッとして、近くを確認
一台のオープンカー
その座席に……
「猟犬ってわけだ」
弾丸を発射したのを確認
(でも私なら……!)
思考を入れ替える
異能を切り替える
グレイブの座席に立ち
車に向けて飛び込む
右手でホルスターから拳銃を抜く
ARMと心を繋げ
その形を銃から盾に変える
その所要時間0.1秒にも満たない
射線上に飛び込んだ私は
また切り替える
UZIの弾丸を盾で全て受け止める
「私が、そんなモノを通すわけない!」
左手でV/B2抜き取り撃ち抜く
「おめでとう、けど動いたら爆発するよ」
「……まさかこっちもかぁ」
『どうしたソラ?』
「あー、私ちょっと動けなくなっちゃった」
『……まさか』
「うん、多分そっちより炸薬多いよ」
座席にはUZIの他に携帯電話と爆弾があった
「こっちはこっちで頑張るからまた後でね」
『わかったわ、何かあれば連絡ちょうだい』
さて、今とれる選択肢は二択
一つはこの爆弾の解体
左道玩笑を使えば時間がかかるけど
多分安全に対処できる
だけと、この車は遠隔操作
車ごと建物に突っ込んでもおかしくはない
そしてもう一つは……
(悩んでる場合じゃない……か)
懐からアンプルと注射器を取り出す
注射器にアンプルの中身を装填し
腕に注入する
私が内側から犯されていく感覚を感じつつ
(空間認識)
この車の全体像を頭に描く
細部まで描き
捉える
(捻転開始)
車の周囲の空間が
歪み、捻れ、曲がり始める
そして、私と車は
ここから消えた
用語解説
B/V2
リボルバー式のマガジンを備えた6発の弾を
瞬時に射出するサブマシンガン
ぶっちゃけると、WA3のジェットのARM
アガートラームの名が無いのは仕様
異能の大半はオリジナルより劣化しているが
真紅なる貴人だけは強化されてます