遊戯王ARC-V ある脱走兵の話   作:白烏

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素良

協力者になって数日後

リョウジは3人のオベリスクフォースに追われていた

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「逃げるな臆病者!」

「くそっ!どこまで逃げる気だ!」

 

オベリスクフォースは追っていた・・・と言うよりは息を切らして追いすがっていた

 

リョウジとオベリスクフォース、どちらも訓練を受けた身ではあるが、リョウジはここ数日この周辺を見回っており、地の利はリョウジにあった

ふいにリョウジが足を止める

 

「さてとこの辺でいいか」

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・やっと観念したか」

「ああ、ここなら・・・周りに被害が出ない、やれ!サイバードラゴン!」

 

 

・・・・・・

 

 

「ふぅ・・・おわったか・・・」

 

LPを失ったオベリスクフォースの体が消えて行く

その姿に内心胸を撫で下ろすリョウジ

 

パチパチパチ、と拍手の音がする

音の方向を見れば青い髪の少年がいた

 

「おみごと、赤服の落ちこぼれにしてはよくやるじゃん」

「お前・・・紫雲院か、なんでお前がここにいる、お前はまだ中等部だろう」

 

エクシーズ次元侵攻に参加するのは高等部以上と決まっており、それより前の中等部は侵攻には加わらない筈だった

 

「僕は優秀だからね、リョウジと違ってさぁ」

 

かたや中等部ながら青服のエリート、かたや高等部でありながら赤服の落ちこぼれだ

 

「赤服が裏切ったって聞いてたけど、やっぱりリョウジだったね、エクシーズ側についた気分はどう?やっぱり負け犬同士居心地いいでしょ?」

 

素良とリョウジは決して友人などではなかった

徹底的に赤服のリョウジを見下す素良

エリートであるが故に落伍者に対するあたりは強かった

 

「まぁそれも今日で終わり、安心しなよ、寂しくないように、すぐにお仲間も同じ所に送ってあげるから!」

 

そう言い放つと決闘盤を起動させる

 

「なるほどね・・・しょうがないか」

 

リョウジも盤を構え、戦闘態勢になる

 

 

 

「「決闘!!」」

 

リョウジ LP4000

素良 LP4000

 

「僕が先行だ!僕は融合を発動!手札のシープとエッジインプチェーンを融合!」

 

可愛らしい羊が姿を見せる、しかしそれも一瞬のこと

その直後に現れた鎖が羊に次々と突き刺さり、その姿を異形のものへと変えていく

 

「悪魔の鎖よ、角持つ獣と一つとなりて新たな力と姿を見せよ、融合召喚!現れでちゃえ!全てを封じる鎖の獣!デストーイチェーンシープ!」

 

デストーイチェーンシープ 守2000

 

何本もの鎖が突き刺さり、虚ろな目になった羊がそこにはあった

これが素良のデッキ、可愛らしいファーニマルモンスター達は子供受けするだろうがエッジインプは禍々しいの一言、デストーイモンスターは子供がみたら泣くことうけあいだ

 

「エッジインプチェーンの効果、デッキからデストーイカードを一枚手札に加える、僕はデストーイリニッチを手札に!」

「・・・守備表示か」

 

先行は攻撃出来ない、ほとんどの決闘者は地味なバーンをするか、次のターンへの仕込みをするかだ

しかし素良はあえて守りを固めた、これが意味することは

 

「・・・俺のことはリサーチ済みってことか」

 

リョウジと素良は決闘したことはない

リョウジの速攻に対する壁を立てたということは任務にあたりアカデミア側のデータを渡されたのだろう

 

「僕はこれでターンエンド!」

「俺のターン!ドロー!」

 

リョウジ 手札6枚

 

「俺は融合を発動!手札のサイバードラゴン2枚を融合!進化する2体の機械竜よ、一つとなりて2筋の閃光を生み出せ!融合召喚!レベル8、サイバーツインドラゴン!」

 

サイバーツインドラゴン 攻2800

 

「サイバーツインドラゴン・・・やっぱり来たね」

「バトル!サイバーツインドラゴンでデストーイチェーンシープを攻撃!エボリューションツインバースト!」

 

二つの口から放たれた光線が異形の羊を吹き飛ばす

しかし

 

「デストーイチェーンシープの効果!破壊された時1ターンに1度だけ攻撃力を800上げて復活できる!」

 

飛び散った綿状のものを鎖がまとめてゆき、元の形へと縛り上げる

破壊されたことに対する恨みからか負のエネルギーがその体には満ちていた

 

デストーイチェーンシープ 攻2800

 

「さて?サイバーツインドラゴンには二回攻撃があるけどどうする?」

「くっ・・・サイバーツイン!デストーイチェーンシープを攻撃!」

 

再び光線が異形の羊を襲う

しかしただではやられないとばかりに鎖が伸ばされ、サイバーツインドラゴンを締め上げる

結果、お互いに破壊された

 

「正解、なかなかやるじゃん」

「・・・くっ」

 

これはリョウジにとっては厳しい選択だった

しかし相打ちさせなければ次のターンにシープから相打ちを取り復活、そして直接攻撃を受けることになっていた

 

「バトル終了、俺はサイバーヴァリーを召喚!そして機械複製術を発動!攻撃力500以下のモンスターと同じモンスターを2体特殊召喚!」

 

サイバーヴァリー 攻0

サイバーヴァリー 守0

サイバーヴァリー 守0

 

低ステータスのモンスターで壁を作る

 

「カードを一枚伏せてターンエンド!」

「サイバーヴァリーねぇ・・・」

 

素良の口がニヤリと歪む

 

「その程度で時間稼ぎが出来ると思ってるの?僕のターン!」

 

素良 手札6枚

 

「僕はデストーイリニッチを発動!墓地からデストーイチェーンシープを特殊召喚!さらにファーニマルオウルを召喚!効果でデッキから融合を手札に!」

 

デストーイチェーンシープ 攻2000

ファーニマルオウル 攻1000

 

「そして僕は融合を発動!手札のエッジインプソウとファーニマルライオを融合!悪魔宿りし鉄の歯よ、牙剥く野獣と一つとなりて新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ!すべてを切り裂く百獣の王!デストーイホイールソウライオ!」

 

デストーイホイールソウライオ 攻2400

 

また新たに融合モンスターが現れる

だがリョウジの表情は崩れない

 

「まだ余裕そうな顔だね?そのモンスター達の効果のお陰かな?」

 

素良はポケットから棒付き飴を取り出し、舐め始める

 

「でもねぇ・・・そのカードもとっくにリサーチ済なんだよ!ホイールソウライオの効果!1ターンに1度相手モンスター1体を破壊する!」

 

ホイールソウライオから丸鋸が飛び出し、守備表示だったサイバーヴァリーを切り裂く

 

「くっ!」

「この時そのモンスターの攻撃力分のダメージ・・・なんだけど、0だからねぇ、バトル!デストーイチェーンシープで攻撃表示のサイバーヴァリーを攻撃!」

 

チェーンシープがサイバーヴァリーに突撃する

 

「この瞬間サイバーヴァリーの効果発動!攻撃対象になった時、このカードをゲームから除外することで、一枚ドローしてバトルを終了する!」

「させないよ!」

 

除外ゾーンに消えようとしたサイバーヴァリーだったが、その前にチェーンシープから伸びた鎖に縛られてしまう

 

「なっ!?」

「デストーイチェーンシープのバトル中、相手は効果を発動出来ないのさ!やれ!チェーンシープ!」

 

鎖に縛られたヴァリーをシープが体当たりで粉砕する

ヴァリーの細身の身体では攻撃を止めることなどできるはずもなく軽々と粉砕された

 

「ぐああっ!」

 

リョウジ LP4000→2000

 

「ホイールソウライオ!残ったサイバーヴァリーに攻撃!」

「サイバーヴァリーの効果発動!」

 

続く悪魔の鋸は間一髪で避け、ドローへと変わる

 

「これで場はがら空き、次のターンの攻撃は耐えられないよ?僕はカードを2枚伏せてターンエンド」

「くっ・・・」

 

 

 

素良はリョウジ討伐の任務を受けた時にアカデミアでのリョウジのデータに目を通していた

攻撃するときの傾向、それがダメだったときの凌ぎ方

そして・・・奥の手の存在さえも

 

(僕の伏せカードの1枚は大番狂わせ、レベル2以下のモンスターをリリースして特殊召喚されたレベル7以上のモンスターをすべて手札に戻すカード・・・リョウジの融合モンスターはいずれも高レベル高パワーのモンスター達、このカードでリョウジは終わりだ)

 

 

 

 

「俺の・・・・・・ターン!!」

 

リョウジ 手札2枚

 

ドローカードを確認する

 

「これは・・・」

「どう?逆転のカードは引けた?」

「ああ・・・とびっきりのがな、リバースカードオープン!リビングデッドの呼び声!蘇れ!サイバードラゴン!」

 

地面を割り、白銀の機械竜が蘇る

 

「さらに手札からプロトサイバードラゴンを召喚!」

 

サイバードラゴン 攻2100

プロトサイバードラゴン 攻1100

 

「わざわざ場にモンスターを並べた?」

 

素良は情報の戦法とは違う行動に戸惑う

 

「そして俺は手札から魔法発動!共振装置!!」

「っ!?なんだそのカードは!?」

 

場のサイバードラゴンとプロトサイバードラゴンが突如現れた機械に繋がれる

そしてサイバードラゴン側からエネルギーがプロトへと流れてゆく

 

「場の同属性、同種族モンスターを2体選び、片方のレベルに統一する!」

 

プロトサイバードラゴン ☆3→5

 

「レベルを・・・統一・・・?・・・まさか!?」

「俺は、レベル5になったプロトサイバードラゴンとサイバードラゴンで・・・オーバーレイ!!」

 

二体の機械竜が光の玉となり、地面に出来た穴の中へと吸い込まれてゆく

 

「進化する機械竜よ!新たな力をその身に宿し!敵を撃ち抜く閃光となれ!エクシーズ召喚!!」

 

地面の穴から爆発が起こり、爆炎の中から新たなモンスターが姿を現す

 

「ランク5!襲雷せよ!サイバードラゴンノヴァ!!」

 

新たな力を得たサイバードラゴンは大きく翼を広げて咆哮した

 

サイバードラゴンノヴァ 攻2100

 

「馬鹿な!アカデミアの脱走兵がエクシーズを使うなんて!」

 

素良の動揺の原因は決してデータに無いカードを使ったからと言うだけではなかった

それは融合次元のプライドでもあった

融合はエクシーズよりも優れている

盲目的にそう信じてきたが故に、融合使いがエクシーズを使うなんてことが理解出来なかった

 

「俺はサイバードラゴンノヴァの効果発動」

 

リョウジは淡々と処理を続ける

 

「ORUを1つ使い、墓地からサイバードラゴンを特殊召喚する。再び蘇れ、サイバードラゴン!」

 

サイバードラゴン 攻2100

 

ノヴァの隣にサイバードラゴンが並び立つ

 

「バトル!サイバードラゴンでファーニマルオウルを攻撃!エボリューションバースト!」

「しまった・・・!」

 

大番狂わせのコストのためにわざと放置していたことが裏目に出た

ここで大番狂わせを使い、回避することは出来るが、そうするとホイールソウライオが消える

未だ未知数のモンスターを前にどうするべきか思考を巡らせる

 

「っ・・・罠発動!大番狂わせ!!レベル2以下のモンスター、ファーニマルオウルをリリースして発動!場の特殊召喚されたレベル7以上のモンスターをすべて手札に戻す!」

 

エクシーズにはレベルがない

今この条件に当てはまっているのはホイールソウライオのみ、よって、素良のモンスターだけが2体消えた

チェーンシープならばこの場を最小限のダメージだけで凌ぐことが出来る

そう判断しての行動だった

 

「サイバードラゴン!チェーンシープに攻撃を続行だ!」

 

オウルへの攻撃こそ避けたが、攻撃は止まらない

光線が羊を撃ち抜き、破片が飛び散る

 

素良 LP4000→3900

 

「くっ!チェーンシープの効果!攻撃力を800上げて復活する!」

 

しかしすぐに鎖に纏められ、憎悪を糧に力を増す

 

デストーイチェーンシープ 攻2000→2800

 

「どうだ!これで攻撃力はチェーンシープの方が上!君のエクシーズモンスターなんかよりも上だ!」

(もしも効果で対象にしても、ボクの伏せカードはデストーイマーチ・・・デストーイが効果対象になった時その効果を無効にするカード、リョウジが相手なら使うことはないと思っていたけど、念のために伏せておいて正解だった・・・)

 

それはある意味では正しかった

攻撃力が勝っている以上処理するには効果を使うしかない

未知の相手に対しての対抗策になり得るカードを伏せていたことは幸運だった

 

最も、この場合は何の役にもたたないが

 

「サイバードラゴンノヴァの効果!場か手札のサイバードラゴンを除外することでエンドフェイズまで攻撃力を2100ポイントアップする!」

 

ノヴァの隣にいるサイバードラゴンの体が粒子となり、ノヴァに取り込まれる

 

サイバードラゴンノヴァ 攻2100→4200

 

「こっ!攻撃力4200!?」

「これで攻撃力はこっちが上!サイバードラゴンノヴァ!デストーイチェーンシープを攻撃!!」

 

サイバードラゴンノヴァの口にエネルギーが集中し、紫電が迸る

 

「エボリューション・ノヴァ・バーストォ!!」

 

サイバードラゴンの時とは違う、雷の特性を得たブレスが羊へと降り注ぐ

羊は一瞬の抵抗も許されず、その身を焼却された

その余波が素良に襲いかかる

 

「うっ!?ぐああああっ!?」

 

素良 LP3900→2500

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

サイバードラゴンノヴァ 攻4200→2100

 

ノヴァの体から粒子が霧散し、元のスペックに戻る

 

「・・・許さない」

 

バキッ!と飴を噛み砕く音が聞こえる

 

「落ちこぼれの赤服風情が・・・アカデミアに逆らうだけでも許されないのにエクシーズに寝返って!あまつさえ融合使いとしての誇りさえ捨てて、エクシーズなんてものを使うなんて!」

 

ドローカードに手をかける

 

「もうお前は救えない!そこまで堕ちきったお前には少しの慈悲も与えない!僕の本気でお前を潰す!ドロー!!」

 

素良 手札2枚

 

「僕はファーニマルドッグを召喚!ファーニマルドッグの効果発動!デッキからエッジインプシザーを手札に!そして融合を発動!手札のエッジインプシザーと場のファーニマルドッグを融合!」

 

両手を前に突き出して組み、この決闘で最も力を込めながら唱える

 

「悪魔の爪よ鋭い牙よ!神秘の渦で一つとなりて新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ!すべてを引き裂く密林の魔獣!デストーイシザータイガー!!」

 

ハサミで切り裂かれ、そのハサミごと縛られたような姿の虎の化物が姿を見せる

 

「シザータイガーが場にいる限り、デストーイモンスターはデストーイかファーニマルの数だけ攻撃力が300アップする」

 

デストーイシザータイガー 攻1900→2200

 

「さらに!このカードが融合召喚に成功した時、融合素材の数だけカードを破壊できる!消え失せろ!目障りなエクシーズ!!」

 

シザータイガーの腹部のハサミが残っていたリビングデッドの呼び声を軽々と切り裂き、続いてサイバードラゴンノヴァを挟み込む

流石に機械の体は固く、易々とは切れない

しかし、悪魔のハサミに軍配が上がり、やがて機械の体は大きくひしゃげ、爆発四散した

 

「ははは!やっぱりエクシーズなんかじゃ融合には勝てないんだよ!これで分かっただろ!」

 

後はシザータイガーの直接攻撃でリョウジのライフは0になる

すでに手札も尽きているリョウジにこれを凌ぐ手段はない・・・はずだった

 

「・・・ああ、そうだな」

 

爆煙渦巻いている中から声が聞こえる

 

「・・・俺のエクシーズじゃ、お前を倒すことは出来ない」

 

爆煙が風に流されてゆく

 

「・・・結局はコイツに頼っちまうことになったからな」

「っ!?なっ!?」

 

サイバーエンドドラゴン 攻4000

 

爆煙が消えたあと、そこには三つの首を持つ白銀の機械竜が鎮座していた

 

「馬鹿な!?なんでサイバーエンドが!?」

「サイバードラゴンノヴァの最後の効果、こいつが相手の効果で墓地に送られた場合、機械族の融合モンスターを特殊召喚出来る」

 

融合へとつなげることの出来るエクシーズ

これは元融合次元の決闘者であり、現エクシーズ次元側として戦っているリョウジにしか出来ない芸当・・・と言えば聞こえはいいが、リョウジはあまり好きではなかった

エクシーズを使おうが所詮自分は融合の人間だということを思い知らされているような気がした

 

「エクシーズから・・・融合?・・・ははは!」

「何がおかしい」

 

堰を切ったように笑い出す素良

 

「なに、君も融合使いとしての最低限の誇りはあったんだと思ってね」

「・・・誇りだと?」

「そうさ!所詮エクシーズは融合には勝てない、だったらせめて踏み台として利用してやろうってことだろ?君のエクシーズは?」

 

融合を捨ててエクシーズを選んだのではなく、融合の為にエクシーズを利用している、それならば話は変わる

 

「どうだい?その力、アカデミアの為に使う気は無い?」

「・・・なに?」

 

思いがけない言葉に戸惑うリョウジ

 

「君には抹殺命令が出てる・・・けど、アカデミアの利になるならば話は変わる、エクシーズを踏み台にした融合・・・まさに正しい姿だ、それは必ず計画達成への力となる」

 

ニヤリと笑う素良

 

「今なら僕が口添えをしてあげるよ、敗北が決まっているレジスタンスなんかやめてアカデミアに戻ってきなよ」

「・・・なるほどな」

 

 

 

リョウジの返事は一言

 

「断る」

 

簡潔に、それでいて明確に拒絶した

 

 

 

「・・・は?」

「それから二つ程訂正しておく」

 

指を一本立てる

 

「まず一つ、俺はレジスタンスではなくレジスタンスの協力者だそしてもう一つ」

 

二本指を立てる

 

「俺はエクシーズが融合に劣るだなんて微塵も思っちゃいない、エクシーズを融合に利用する?馬鹿馬鹿しい」

「っ!君は融合使いとしての誇りはないのか!」

「誇り・・・?」

 

脱走兵になった日から今日までの日々を思い返す

必死に逃げている人がいた

それを笑いながら追い回す奴がいた

仲間の仇を取ろうとする人がいた

それを嘲笑し弄んだ奴がいた

大切な人を失い、泣くことしか出来ない無力な人がいた

それを嘲笑いながらカードにした奴がいた

リョウジは激昴する

 

「・・・アカデミアに誇りなんてものは無い!どうしてそんなことも分からない!!」

 

アカデミア兵に自分が悪いことをしている自覚があるやつはいない、少なくともリョウジはそんなやつを見たことがない

力のある融合が無力なエクシーズを滅ぼすのは至極当然のこと

それが普通だった

 

「黙れ!エクシーズに魂を売った裏切り者が、融合の誇りを語るな!!」

 

2人の考えは平行線

どれだけ語り合ったとしても決して相入れることは無い

 

決闘盤がターンがリョウジに移ったことを教える、一定時間素良に動きがなかったため強制的にターンが移行した

 

「ああ・・・そうだな・・・俺のターン!!」

 

リョウジ 手札1枚

 

「魔法発動!死者蘇生!墓地から蘇れ!サイバードラゴンノヴァ!!」

 

サイバードラゴンノヴァ 攻2100

 

エンドとノヴァ

融合とエクシーズという全く異なるモンスターがリョウジの場に並び立つ

 

「僕が・・・この僕が・・・」

 

数歩後ずさる素良

 

「バトル!サイバーエンドドラゴンでデストーイシザータイガーを攻撃!!」

 

三つの首から放たれたブレスが虎の化物を吹き飛ばす

 

素良 LP2500→700

 

「赤服なんかに・・・脱走兵なんかに・・・」

「サイバードラゴンノヴァで直接攻撃!」

 

紫電が迸る

 

「エボリューション・ノヴァ・バーストォ!!」

「エクシーズなんかにぃぃぃ!!」

 

紫電が弾けた

 

「うわぁあああああ!!!」

素良 LP700→0

 

 

 

 

 

ライフが0になった事で素良の盤の次元転送装置が起動する

 

「・・・なんで僕をカードにしなかった?」

 

決闘後、倒れふしたままの素良をカードにすることは容易だった

だが、リョウジはそれをしなかった

 

「・・・お前らの同類になりたくないだけだ」

「・・・認めない!」

 

倒れたまま、怒りに満ちた目でリョウジを睨みつける

 

「僕がお前なんかに負けるわけない!僕を見逃したこと、後悔させてやる・・・必ず・・・必ずだ!次は油断なんてしない!本気でお前をたたきつぶしてやる!!リョウジ!!!」

 

恨みのこもった絶叫を残して素良の姿が消えた

 

「・・・エクシーズに魂を売った裏切り者、か」

 

決闘の余波によりガレキが散乱したその場を後にする

 

「それで結構、俺は、ただの脱走兵だ」

 


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