｢待て！俺はお前と戦う気は･･･｣
｢問答無用だ！俺のターン！｣
カイトLP4000 手札5枚
｢話を聞け･･･ああもう･･･｣
リョウジは説得を諦めた、黒咲とのやりとりで怒りに囚われた奴とは会話自体が成立しないことは身に染みて分かっていた
かといってここでやられてカードにされるわけにもいかないと盤を起動させる
リョウジ LP4000
｢俺はサイファーウィングを召喚！さらに場にサイファーがいることで手札からもう一体特殊召喚！｣
サイファーウィング 攻1400
サイファーウィング 攻1400
二体のモンスターが並ぶ、共にレベルは4
｢くるか･･･｣
｢俺はカードを一枚伏せてターンエンド！｣
身構えたリョウジだったが、カイトは何もせずにターンを終えた
｢わざわざモンスターを並べたのにエクシーズ召喚しなかった･･･｣
あれほどの気迫を出せる決闘者が手札事故を起こすはずがない、ならばこの盤面には意味があるはず
｢十中八九罠だろうが･･･俺のターン！ドロー！｣
リョウジ 手札6枚
｢俺はサイバードラゴンツヴァイを召喚！｣
サイバードラゴンツヴァイ 攻1500
｢サイバードラゴンツヴァイは手札の魔法を見せることでこのターンサイバードラゴンとして扱う、俺は手札の融合を公開する！｣
ツヴァイの体にサイバードラゴンの幻影が被さる
融合のカードを見たカイトはピクリと眉を動かした
それを見たリョウジは仕方ないと自分に言い聞かせる
この次元の人間にとっては侵略者の象徴であり、忌むべき力、しかしリョウジにとっては自分の身を守り、これから先の戦いを戦いぬくための力でもあるため、エクシーズ次元の協力者になったからと言って捨てられるものではない
｢･･･俺は手札から融合を発動！場のサイバードラゴン扱いのツヴァイと手札のサイバードラゴンを融合！融合召喚！レベル8、サイバーツインドラゴン！｣
双頭の機械竜がリョウジの場に現れる
サイバーツインドラゴン 攻2800
｢バトル！サイバーツインドラゴンでサイファーウィングを攻撃！｣
｢罠発動！サイファーシールド！俺の場に同名サイファーモンスターが2体以上いる時、そのモンスターは戦闘で破壊されず、俺は効果ダメージを受けない！｣
｢だがダメージは受けてもらう！エボリューションツインバースト！｣
｢ぐっ！｣
翼の形をした機械は破壊されなかったが、超過した分の1400ポイントのダメージを受ける
｢サイバーツインドラゴンは二回攻撃が出来る！もう一度サイファーウィングを攻撃！エボリューションツインバースト！｣
ツインドラゴンの二撃目がサイファーウィングを襲う
再び1400のダメージを受けてしまったカイト
｢ぐあっ！｣
カイト LP4000→2600→1200
｢･･･俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ｣
一ターンで相手のライフを大幅に削りとったリョウジだが、その顔に余裕は無かった
何かがおかしいという違和感があった
｢俺のターン、ドロー！｣
カイト 手札3枚
｢俺は手札から三体目のサイファーウィングを召喚！｣
サイファーウィング 攻1400
｢レベル4が３体･･･来るか･･･？｣
｢誰がレベル4でやると言った？俺は３体目のサイファーウィングの効果発動、このカードをリリースする事で場のサイファーモンスターのレベルを4つ上げる！｣
サイファーウィング ☆4→8
サイファーウィング ☆4→8
｢っ！レベル8が2体！｣
｢俺はレベル8になったサイファーウィング2体でオーバーレイ！エクシーズ召喚！｣
姿を見せたモンスターは先程までの無機質なモンスターと異なり、荒々しく吠える竜の姿を取り、その光は見るものの目を釘付けにする輝きを発していた
｢ランク8！銀河眼光波竜！｣
銀河眼光波竜 攻3000
｢攻撃力3000･･･｣
｢銀河眼光波竜の効果発動！オーバーレイユニットを一つ使い！相手モンスター1体の効果を無効にしてコントロールを奪う！｣
光の玉が光波竜の胸に吸い込まれ、光波竜の翼が輝き出す
｢我が下僕となれ！サイファープロテクション！｣
｢くっ！速攻魔法！融合解除！融合モンスターを素材に戻す！｣
輝きに飲まれる直前、ツインドラゴンは元の2体に分裂して回避した
サイバードラゴン 守1600
サイバードラゴンツヴァイ 守1000
融合解除、これは融合次元では禁止ではないが、使われないカード
融合こそが最強という考えにおいてわざわざそれを解除するなど愚行でしかないといわれていたが、異端児であるリョウジは愛用していた
｢ならば銀河眼光波竜でサイバードラゴンを攻撃！殲滅のサイファーストリーム！！｣
｢くっ！｣
光波竜の攻撃にサイバードラゴンは破壊されるが守備だったためダメージは無い
｢カードを1枚伏せてターンエンド｣
｢･･･俺のターン、ドロー！｣
リョウジ 手札2枚
リョウジの感じた違和感はまだ消えていない、ここまでの決闘はリョウジが優勢で進んでいるはず
なのに、流れを掴めている気になれなかった
｢･･･俺は伏せていた融合準備を発動！デッキから融合素材のモンスター、サイバードラゴンを1枚手札に加え、墓地から融合を手札に戻す！
さらにサイバードラゴンツヴァイの効果！手札の融合を公開し、サイバードラゴンとして扱う！｣
カード効果を駆使し、融合の準備を整える
｢俺は手札から融合を発動！場のサイバードラゴン扱いのツヴァイと手札のサイバードラゴン2枚を融合！｣
現れるのはリョウジのエースモンスター
｢進化する3体の機械竜よ！一つとなりて終焉もたらす閃光となれ！融合召喚！レベル10、サイバーエンドドラゴン！｣
三つの首を持つ機械竜が大きな翼を広げ咆哮する
サイバーエンドドラゴン 攻4000
｢攻撃力4000･･･光波竜を上回ったか･･･｣
｢バトル！サイバーエンドドラゴンで銀河眼光波竜を攻撃！｣
三つの首にエネルギーが溜まる
｢エターナルエボリューションバースト！！｣
放たれたエネルギーの奔流は光波竜を飲み込み、巨大な爆発を引き起こした
｢これでどうだ･･･｣
まだ倒せた訳では無いが、相手のエースを倒したことで流れを掴むことが出来たのではないかと期待しつつカイトの立っている辺りを見つめる
｢･･･この程度か｣
｢なっ！？｣
しかしその期待は裏切られた
カイト LP1200→200
カイトのライフは確かに削れていた、しかし
｢なぜ光波竜が･･･！｣
銀河眼光波竜 攻3000
銀河眼光波竜 攻3000
倒したはずの光波竜は健在、しかも、新たに1体増えている
｢俺は罠カード、サイファースペクトラムを発動した、ORUを持ったサイファーモンスターが破壊された時、そのカードを特殊召喚し、同名カードをEXデッキから特殊召喚する｣
｢くっ･･･だが、もうORUは無い、次のターンでおわりだ、ターンエンド！｣
｢･･･この程度か･･･貴様に次のターンはない！ドロー！｣
カイト 手札2枚
｢俺はサイファーディフュージョンを発動！攻撃力3000以上のサイファーモンスター1体の攻撃力を0にすることで別のサイファーモンスターに三回攻撃の権利を与える！｣
銀河眼光波竜 攻3000→0
｢だが、攻撃力はサイバーエンドの方が上！たとえ３回攻撃が出来ても･･･｣
｢それはどうかな？｣
この瞬間、リョウジは今まで感じていた違和感や緊張感の正体に気づいた
こいつには勝てない、リョウジの決闘者の本能がそう警鐘を鳴らしていたことに
｢魔法カード！受け継がれる力！場のモンスター1体を墓地に送り、その攻撃力を他のモンスターに与える、攻撃力が0になった方の光波竜を墓地に送る！｣
墓地に送られた時点で攻撃力の変化は元に戻る
二体の光波竜、その全ての力が1体に凝縮されていく
銀河眼光波竜 攻3000→6000
｢攻撃力･･･6000･･･｣
｢バトル！銀河眼光波竜でサイバーエンドドラゴンを攻撃！殲滅のサイファーストリーム！！｣
｢サイバーエンド！｣
迫り来る光線に対して三つの首からの光線で対抗する
しかしその抵抗は無意味に終わり、サイバーエンドは消し飛ばされた
超過ダメージ2000がリョウジを襲う
｢ぐああああ！！｣
リョウジLP4000→2000
両手を交差させて衝撃に耐えるリョウジ
だが、攻撃はまだ終わっていない
｢懺悔の用意は出来ているか！銀河眼光波竜でダイレクトアタック！殲滅のサイファーストリーム！！｣
光波竜の光線が迫る
先の攻撃はサイバーエンドが半分以上削ったが、もうサイバーエンドはいない
圧倒的な光線がリョウジに直撃した
｢ぐわぁぁぁぁ！！｣
リョウジ LP2000→0
あまりの衝撃に耐えきれずに数メートル吹き飛ばされ、瓦礫に激突する
｢ぐ･･･が･･･｣
立ちあがろうともがくが、力が入らずに倒れ込んでしまう
｢ここまでだ、アカデミア｣
｢ぐ･･･｣
カイトは倒れ伏したリョウジを見下す
｢カイト！待ってくれ！｣
その二人の間に飛び込むようにユートが割り込んだ
｢彼は俺達の協力者だ！敵ではない！｣
｢だろうな｣
｢だから･･･え？｣
思いがけないカイトの言葉にキョトンとするユート
｢クローバー校のレジスタンスにもアカデミアの脱走兵の噂は届いていた、そんな中での招集だ、大体の見当はつく｣
今日カイトを呼んだのは他でも無いユートだった
もっとも、通信手段も限られる現状においては招集の合図程度しか発せず、リョウジの事は伝わっていなかった
｢ならば何故｣
｢協力者になったからと言って、本当に信用できるかどうかは別問題だ、だから試させてもらった･･･最も、役に立ちそうにないがな｣
｢なんだと･･･｣
倒れたままのリョウジが睨みつける
しかしカイトは意に介さずに話し続ける
｢お前、諦めたな｣
｢･･･そんなこと｣
｢レジスタンスはたとえ勝てないと分かった決闘であろうと最後の最後まで抗い、勝つことを諦めてはならない、たとえ負けるとしても一人でも多くの敵を道連れにする。犠牲を無駄にしないためにも、アカデミアは絶対に倒さなければならない｣
強い語調でそう語るカイトにリョウジは何も言い返せない
｢貴様には覚悟が足りない、最後まで戦い抜くという覚悟、敵を倒すまで引かないという覚悟が｣
踵を返す
｢せいぜい足を引っ張るなよ｣
そう言い残して去っていった
残されたのは倒れたリョウジとどうしたものかと悩むユート
｢あー、リョウジ、彼は･･･｣
｢分かってる･･･多分激励なんだってことは･･･｣
｢･･･うむ、ならいいんだ、彼に悪気は無い･･･多分｣
｢･･･まぁ、言ってることは合ってたよ｣
覚悟がない
自分では覚悟を決めていたつもりだった
けれど、カイトとの決闘で覚悟が足りていなかったことが分かった
｢ユート｣
｢なんだ？｣
｢俺にエクシーズを教えて欲しい｣
カイト＞リョウジ＞モブ