遊戯王ARC-V ある脱走兵の話   作:白烏

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お待たせしました。


黒咲(3)

「俺のターン、ドロー!」

 

黒咲 手札5枚

 

「さて…打ち出の小槌を発動、手札を2枚デッキに戻してドロー…このターンはダメージを与えられん…ならば貴様のモンスターを処理させてもらう死者蘇生を発動!甦れ!ブレイズファルコン!」

 

RRブレイズファルコン 攻1000

 

「バトルだ!ブレイズファルコンでサイバー・ドラゴン・ノヴァを攻撃!」

「っ!?自爆特攻っ!?」

 

赤いハヤブサは機械龍へと襲い掛かり稲妻状のビームを放つ、サイバー・ドラゴン・ノヴァはそれに対抗して口から稲妻のビームを放ち、ブレイズファルコンの攻撃を打ち消して返り討ちにした。 一時休戦の効果でダメージこそ発生しないが無意味にそんなことをするわけがない。

 

「速攻魔法!RUMラプターズフォース!RRが破壊されたターン墓地のRRを特殊召喚し、ランクを1つ上げる!!」

 

再びブレイズファルコンは復活し、炎に包まれ、その姿を変えていく。

 

「誇り高きハヤブサよ。英雄の血潮に染まる翼翻し 革命の道を突き進め!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ!ランク6!RRレヴォリューション・ファルコン!!」

 

RR―レヴォリューション・ファルコン 攻2000

 

炎を振り払い、黒く輝く身体となり、革命の名を冠するハヤブサは飛翔する。

 

「レヴォリューション…革命…」

 

追い詰められているエクシーズ次元が融合次元を打ち倒す、その思い、その決意がそのモンスターからは感じられる。

 

「そうだ、俺たちは必ず融合次元を…アカデミアを打ち倒す!レボリューションファルコンの効果発動!エクシーズ召喚に成功したとき!相手の場のモンスターを破壊する!」

 

革命のハヤブサは高速で飛翔し光弾を放ってサイバードラゴンノヴァを破壊する。

 

「サイバー・ドラゴン・ノヴァの効果を忘れたか!相手によって墓地に送られた時融合モンスターを特殊召喚する!サイバー・エンドを特殊召喚!」

 

サイバー・エンド・ドラゴン攻4000

 

「忘れるはずがないだろう?……その忌々しい効果を!レヴォリューションファルコンは特殊召喚されたモンスターとバトルする時!バトルする相手の攻守を0にする!行けっ!レボリューションファルコン!!」

 

ノヴァを破壊した後はるか上空へと舞い上がり、身体のハッチをすべて開く

 

サイバー・エンド・ドラゴン 攻4000→0

 

「レヴォリューションファルコンでサイバー・エンド・ドラゴンを攻撃!革命の火を…受けろぉ!!」

「っ!?」

 

爆撃が三つ首の機械龍へと降り注ぎ跡形もなく破壊しつくす、一時休戦も効果でリョウジにダメージは通らないものの、余波の熱さや衝撃が周囲を襲う。

 

「くっ…」

 

爆撃の後には周囲のがれきも荒れ果てて残り火がくすぶる、その光景はまさしく戦場跡、破壊されつくされた町の跡だった。

 

「カードを二枚セット、俺はこれでターンエンド…正直言って貴様のことは好きにはなれん。貴様が得たエクシーズも融合を前提としたものだ」

「それは…」

 

リョウジは元々融合使い。だからか獲得したエクシーズもまた融合に関連した効果を持つ、融合を使うことを前提としたエクシーズモンスター。融合を毛嫌いするエクシーズ次元の人間から見ればそれを不快に感じても仕方がない。

 

「だが、貴様はまだそのエクシーズを使いこなしているとは言えない」

「…どういうことだ…?」

「まだ気がつかないか?貴様のエクシーズの可能性に。貴様のモンスターは進化する機械龍なのだろう?」

「可能性…?」

「貴様のターンだ、早くドローをしろ…脱走兵!」

「お、俺のターン、ドロー!」

 

その勢いに気おされるようにカードを引く。

 

リョウジ 手札3枚

 

手札を見て今の状況を冷静に思考する、リョウジのデッキはサイバー・ドラゴンを中心としたパワー型。大型モンスターを特殊召喚し、その攻撃力で相手を圧倒することが基本の戦術…つまり、特殊召喚されたモンスターとの戦闘では無敵の強さを誇るレヴォリューションファルコンは致命的に相性が悪い。

 

(可能性だと…?黒咲はいったい何を伝えようと…?)

 

黒咲は確かに融合を毛嫌いし、今でも融合使いであるリョウジのことは嫌っている。だが、いまさらそんなことで無意味な決闘を挑んだりするほど愚かではない。 顔を上げる…すると、黒咲と目が合った。 黒咲の目には怒りも、憎しみもない、ただまっすぐに真剣な目だ。

 

「可能性…進化…」

 

もう少しで答えが出そうな気はする、だがもう少し、最後の1ピースが足らない。

 

「…リョウジ君!!」

 

思考の迷路に陥っているとトキノの声で我に返り、振り返る。

 

「頑張れ!」

 

アドバイスでも何でもない、ありふれた声援…だが、リョウジにとっては一瞬ぽかんとする出来事。 アカデミアでも異端児だったリョウジに他人の応援などあるはずもなく、ただ孤独でいるしかなかった…けど、今は違った。

 

「…ははっ、そうだな」

 

かちりと歯車がかみ合うような感覚がした。勝手に口角が上がる、迷っていた思考がクリアになる…応援されただけで体の奥から活力が沸く。

 

「じゃあ、頑張らせてもらうか!貪欲な壺を発動!墓地のサイバー・ドラゴン・コア、ドライ、ツイン、エンド、ノヴァの5枚をデッキに戻して2枚ドロー!!…よし、サイバー・ドラゴンは相手の場にのみモンスターがいるとき特殊召喚できる!来い!」

 

サイバー・ドラゴン 攻2100

 

「そしてサイバー・ドラゴン・ドライを通常召喚!召喚成功時にその効果でレベルを5に!…レベル5のサイバー・ドラゴンとサイバー・ドラゴン・ドライでオーバーレイ!3度襲雷せよ!サイバー・ドラゴン・ノヴァ!!」

 

サイバー・ドラゴン・ノヴァ 攻2100

 

この決闘だけで3回エクシーズ召喚されるサイバー・ドラゴン・ノヴァ。だがその効果ではレヴォリューションファルコンを突破することはかなわない。

 

「そのモンスターでは俺には勝てんぞ?」

「ああ、お前はそれを教えに来てくれたんだろ?」

 

黒咲は答えない、だがそれが何よりの肯定だった。

 

「サイバー・ドラゴン・ノヴァの効果、ORUを1つ使って墓地からサイバー・ドラゴンを特殊召喚、そして…」

 

目を閉じて深呼吸をする、もうそれを呼ぶだけの力量はあった、後はそれを具現化するきっかけが必要だった。 新しい力の鼓動を感じ、カッと目を見開いて宣言する。

 

「俺はランク5のサイバー・ドラゴン・ノヴァで…オーバーレイ!!」

 

サイバー・ドラゴン・ノヴァは光の球体となり地面に穴へと吸い込まれる。黒咲はようやくかと言わんばかりにあきれながら、トキノは驚きと納得の入り混じった表情でその光景を見る。

 

「進化を続ける機械龍よ!鋼の意思をその身に重ね、無限の力を得るがいい!ランクアップ!エクシーズチェンジ!」

 

地面が爆発しその姿が現れる、基本の姿はサイバードラゴンノヴァのそれに近しいが、翼はより大きく、身体はより長くなっている。

 

「これが俺の答えだ…ランク6!サイバー・ドラゴン・インフィニティ!!」

 

進化したサイバー・ドラゴンは己の生誕をこの世界に知らしめんとばかりに大きく咆哮した。

 

 

 

「ランク…アップ…」

 

その光景を遠くから見ていたマオは双眼鏡から目を離し、輝くその機械龍に茫然と呟く。 ランクアップとはエクシーズ使いのたどり着く1つの到達点。ついぞマオがたどり着けなかった高み。

 

「…黒咲は最初からこれを?」

 

「ああ、だいぶ前から気がついていたようだがな」

 

目論見がうまくいったことに安堵のため息を吐くユート、実は以前から黒咲はサイバー・ドラゴン・ノヴァにランクアップの可能性があることを察していた。だが黒咲本人はそれを不愉快に感じ、今日の今日までユート以外には話していなかったが。

 

「だから見せつけるようにランクアップして見本を示したってわけね?」

「口で説明するより実際にやって見せる…アイツらしいやり方だな…最も、それだけじゃないようだけどな」

 

決闘者の視力でしっかりと状況を見ていたユートはトキノもきっかけをつくった要因であると見抜いていた。

なにより、RUMに頼らないランクアップは黒咲のそれではなくトキノのやり方、今までのエクシーズ次元での決闘があのモンスターを生み出したのだ。

 

「……さて、そろそろ行くか」

「あれ?今から行くの?」

 

てっきりユートもここで2人の決闘を見終えると思っており、踵を返し階段へ向かう姿に疑問を覚える。

 

「ああ、俺からも1つ伝えたいことがあるからな…」




リアルでいろいろあって長らく間が空いてしまいました。
失踪なんてしない…はず

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