遊戯王ARC-V ある脱走兵の話   作:白烏

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長くなりました


覚悟(2)

彼女を戦わせたくない

戦場での…勝利だけが目的の決闘なんてさせたくない

それが自分のわがままだとしても

彼女には平和な世界で笑って決闘をしていて欲しい

 

…そのためなら、たとえ自分が悪になっても、恨まれることになっても構わない

今この時だけ…俺は、冷酷な決闘戦士となろう

 

 

…………

 

 

「……うん、決闘…だよね」

 

薄い黄色の盤を構える、するとリアルソリッドビジョンがカードを置くプレート部分を形成し、デッキがオートでシャッフルされて決闘の準備が整う

 

結局、決闘者どうしの争いを収める方法は決闘しかない

 

トキノもこうなることは予想していた

だからここに呼んだのだ、リョウジとトキノがはじめて決闘をしたこの屋上に

 

「…いくぞ」

 

鋭い目つき、そして威圧感をトキノに向けるリョウジ

アカデミアと戦うときと同様、あるいはそれ以上の気迫をもってこの決闘に臨む

下地そのままのシルバーの盤を構え、決闘の準備を整える

 

「…トキノ…リョウジ」

 

マオはその二人を見守る

トキノの強さを知っているから、一緒に戦いってくれたら心強いと思ってしまって

トキノの弱さを知っているから、もう戦わせたくないと思ってしまって…

 

「…うん、いくよ…!」

 

「「決闘!!」」

 

 

トキノ LP4000

リョウジ LP4000

 

 

決闘盤がトキノの先行を決定する

 

「…っ!私の先行!私は、聖刻龍ドラゴンヌートを召喚!」

 

聖刻龍ドラゴンヌート 攻1700

 

相手が後攻を得意としているデッキだけに自分が先行になってしまったことに内心で焦りを覚えるが、すぐに切り替えて今できることを行う

 

「竜の霊廟を発動!その効果でデッキからドラゴン族モンスターを墓地に送る!そのカードが通常モンスターならさらにもう一枚墓地に!私は神竜ラグナロクと聖刻龍シユウドラゴンを墓地へ!」

 

淀みなく慣れた手つきで効果を使用していく

 

「さらに魔法カード!モンスタースロットを発動!私の場のモンスターを選択し同レベルの墓地のモンスターを除外して1枚ドロー!それが同じレベルのモンスターならそのまま特殊召喚する!さらに対象になったドラゴンヌートの効果!効果対象になった時手札、デッキ、墓地からドラゴン族通常モンスターを攻守0にして特殊召喚する!きて!エメラルドドラゴン!」

 

エメラルドドラゴン 守0

 

「モンスタースロットで墓地のレベル4モンスター、ラグナロクを除外してドロー!…私が引いたのはレベル4の神竜ラグナロク!よってこのまま特殊召喚!」

 

神竜ラグナロク 攻1500

 

「……レベル4が2体…」

「行くよ!私はレベル4のドラゴンヌートとラグナロクでオーバーレイ!誉れある竜の姫よ!その竪琴で我らを守り給え!エクシーズ召喚!ランク4!竜魔人クイーンドラグーン!」

 

2体のモンスターが球体となって地面の穴に飛び込み、その中から竜の下半身を持つ女性が現れトキノの場に降り立つ

 

竜魔人クイーンドラグーン 攻2200

 

「そしてクイーンドラグーンの効果!1ターンに一度ORUを一つ使うことで墓地からレベル5以上のドラゴン族モンスターを特殊召喚!墓地から聖刻龍シユウドラゴンを蘇生!」

 

聖刻龍シユウドラゴン 攻2200

 

「そして私はレベル6のエメラルドドラゴンとシユウドラゴンでオーバーレイ!!」

 

再び2体のモンスターが舞い上がり、地面の穴へと吸い込まれる

 

「聖なる証刻みし龍よ!今こそその輝きを放ち、後に続くものの道しるべとなれ!エクシーズ召喚!ランク6!聖刻龍王アトゥムス!」

 

聖刻龍王‐アトゥムス 攻2400

 

竜の姫の隣に龍王が立ち並ぶ

1ターンで2度のエクシーズ召喚、だがまだ終わらない

 

「アトゥムスの効果!ORUを一つ使ってデッキからドラゴン族モンスターを攻守0にして特殊召喚!来て!神龍の聖刻印!」

 

神龍の聖刻印 守0

 

前回の決闘でも出てきた巨大な球体が場に現れる

しかしそのステータスはやはり0、このままでは置物だが

 

「アドバンスドローを発動!場のレベル8モンスター、聖刻印をリリースして2枚ドロー!さらにエクシーズギフトを発動!私の場にエクシーズモンスターが2体以上いるときORUを2つ使って2枚ドロー!」

 

流れるようにカード効果を駆使して手札を整える、しかしまだ終わらない

 

「トレードインを発動!手札の聖刻印を墓地に送って2枚ドロー!超再生能力を発動!このターン手札から墓地に送った、またはリリースしたドラゴン族の数だけエンドフェイズにドローする!」

 

次々と手札を回す

 

「カードを2枚伏せてエンドフェイズ!超再生能力で2枚ドローして、ターンエンド!」

 

エクシーズモンスターが2体、伏せカードが2枚、手札が4枚

前回の何もできずに負けた決闘とは段違いのカード捌き

 

…だが、それらはすべてリョウジも見知っているカード達だ

 

「俺のターン、ドロー…行くぞ…!」

 

リョウジ 手札6枚

 

トキノにとって…エクシーズ次元にとって忌々しいカードを発動させる

 

「融合を発動!手札のサイバードラゴン2体を融合!」

 

両の手を広げ、胸の前で両の指を組み力を込める、その姿は紛れもなく融合次元の決闘者のそれだった

 

「進化する2体の機械龍よ、一つとなりて、二筋の閃光を生み出せ!……融合召喚!!」

 

融合モンスターがその渦より姿を現す

 

「現れろ!レベル8!サイバーツインドラゴン!!」

 

サイバーツインドラゴン 攻2800

 

2つの首がトキノに向かって大きく吠え、周囲の空気をビリビリと震わせた

 

「っ!リョウジ!あんたまさか!!」

 

その衝撃であることに気が付いたマオが叫ぶ

 

「ああそうだ、ダメージ実体化を切っていない…衝撃も、痛みも…ダメージを受ければそれがそのままお前を襲う」

 

低い唸り声をあげるツインドラゴンはソリッドビジョンとは思えないような威圧感を放ち、確かにそこに在った

 

「当然だろう、戦場で戦うということはこういうこと、本物の痛みを味わうということ…嫌なら今すぐ荷物をまとめてどっかに消えることだ」

 

スっ…と指をトキノのエクシーズモンスターへ向ける

 

「クイーンドラグーンにはほかのドラゴンに戦闘耐性を与える能力があったな?そっちから始末する」

 

ツインドラゴンの口にエネルギーが貯められる

 

「サイバーツインドラゴンで竜魔人クイーンドラグーン、続いて聖刻龍王アトゥムスを攻撃、エボリューションツインバースト!」

 

解き放たれたエネルギーがトキノのモンスターへ襲い掛かり、粉砕した

モンスターを破壊した余波が現実の衝撃となって襲う

 

「くぅっ!」

 

トキノ LP4000→3400→3000

 

サイバーツインドラゴンの2回攻撃は終わる、だがバトルは終わっていない

 

「速攻魔法、融合解除!サイバーツインドラゴンの融合を解除する!」

 

サイバードラゴン 攻2100

サイバードラゴン 攻2100

 

「行け!サイバードラゴンでダイレクトアタック!エボリューションバースト!!」

「きゃああっ!?」

 

サイバードラゴンから放たれたエネルギー光線がトキノに直接襲い掛かる、トキノは衝撃で吹き飛ばされないよう必死に耐える

 

トキノ LP3000→900

 

「…お前はこの程度だ、ただのデュエルでは確かに俺よりも強い、だが、実践で役に立たなければ意味がない…サイバードラゴン!!」

 

最後のサイバードラゴンがトキノのライフを消し去らんと光線を放つ

 

「っ!トラップ発動!!ガードブロック!受けるダメージを0にして1枚ドローする!」

 

直撃する直前、光線は掻き消える、まだ終わらない

 

「…ちっ!」

 

我知らず舌打ちが出る

今ので倒れてほしかった…そう思ってしまって

だが今は決闘中、すぐに切り替えて次のターンへの準備をする

 

「命拾いしたな…バトル終了、魔法カードアイアンドローを発動、俺の場のモンスターが機械族効果モンスター2体だけの時カードを2枚ドロー、カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

 

 

1度目の攻防が終わる

…すると屋上へつながる扉が大きな音を立てて開かれた

 

「何事だ!!…リョウジ?トキノ?」

 

建物を揺らすリアルソリッドビジョンの衝撃でこの決闘に気が付いたユートが飛び出し、その衝撃の発生源である2人を見て目を丸くした

 

「なぜおまえたちが…?それに…」

「…いろいろ言いたいことはあると思うけど」

 

何がどうなっているのか分からないといったユートにマオが話しかける

 

「今はあの二人の邪魔をしないであげて…これは必要なことなの…トキノにとっても…レジスタンスにとっても」

「……分かった…後でしっかり説明してもらうぞ」

 

ユートはトキノ、マオ、そしてリョウジにも一定以上の信頼を置いている

そしてマオからそう頼まれれば2人を見守ることに異論はなかった

 

 

 

「…ありがとう、マオちゃん」

 

友は自分の頼みを聞いてくれた

なら、自分は思いっきりやるだけ

ダメージで震える足に力を入れ、恐怖で震える手でカードを引く

 

「私のターン!ドロー!!」

 

トキノ 手札6枚

 

「私は伏せてあった補充要員を発動!効果で墓地の攻撃力1500以下の効果モンスターではないモンスターを3枚まで回収できる!私はラグナロクと聖刻印を2枚回収!トレードインを2枚発動!今回収した聖刻印2枚を墓地に送って4枚ドロー!」

 

一般的に扱いが難しいとされている通常モンスターを利用して一気にアドバンテージを稼ぎ、手札が9枚になる

 

「…私は思い出のブランコを発動!墓地から通常モンスターを特殊召喚!甦れ!神龍の聖刻印!!さらに私は黙する死者を発動!墓地から通常モンスターを守備表示で特殊召喚!もう一体神龍の聖刻印を特殊召喚!」

 

トキノの場に巨大な球体が2つ並ぶ

 

「‥‥来るか」

「うん…行くよ!私はレベル8の神龍の聖刻印2体で…オーバーレイ!!」

 

2つの球体は地面の穴に吸い込まれるようにして場から姿を消す

 

「聖なる証刻みし龍よ!今こそ太陽の輝きを解き放ち、勝利の道を照らし給え!エクシーズ召喚!」

 

地面から現れた球体は一見するともとの聖刻印と何ら変わらないように見える

しかし、球体の中から光が漏れだして全身の装甲が展開し、その姿を変えていく

 

「君臨せよ!ランク8!聖刻神龍―エネアード!!」

 

強大な光の龍が神々しい光と雄々しい咆哮を放ち、己の主人を守るようにリョウジの前に立ちはだかった

 

聖刻神龍‐エネアード 攻3000

 

「来たか…エネアード!」

「エネアードの効果を発動!ORUを1つと手札か場のモンスターを任意の枚数リリースし、その数だけ相手のカードを破壊!私は手札のモンスターを4枚リリースし、リョウジ君の場のカードをすべて破壊!」

 

エネアードは自身のORUにモンスター4体分のエネルギーを込めると一気にそれを開放する

 

「燃え尽きて…ソルフレア!!」

「ぐっ!?」

 

猟犬の火球とは比べ物にならない圧倒的な熱量にたまらず顔を腕で覆う、再び目を開けるころには2体のサイバードラゴンは塵も残らずに燃え尽きていた

 

「これで…っ!?エネアード!?」

 

だが、リョウジもただではやられない、エネアードは大きく体勢を崩して膝をついていた

 

「破壊させる直前に伏せカード…重力解除を発動していた、これにより場のモンスターの表示形式を強制的に変更される」

 

聖刻神龍エネアード 攻3000→守2400

 

「さらにもう一枚の伏せカード、融合準備も発動させてもらった、効果でデッキからサイバードラゴンを、墓地から融合を手札に加える」

「くうっ…でもいまならがら空き…聖刻龍ドラゴンゲイヴを召喚!リョウジ君にダイレクトアタック!!」

 

聖刻龍ドラゴンゲイヴ 攻1800

 

屈強な四肢を持つ龍が召喚され、リョウジに殴り掛かる

 

「ぐっ!?」

 

リアルソリッドビジョンのその重い攻撃をこらえきれずに弾き飛ばされるが、すぐに体勢を立て直す

 

リョウジLP4000→2200

 

「倒しきれなかった…カードを2枚伏せて、ターンエンド…」

 

 

 

「…どう見る、この決闘」

 

見守ると決めたユート、だが決闘者としてこの勝敗が気にならないわけはなくマオに話しかける

 

「…そうね、今んとこはトキノが優勢…って言いたいけど」

「ああ、リョウジのデッキには爆発力がある」

 

決闘の衝撃や爆発音を聞きつけて他のレジスタンスも集まりつつある、しかし、レジスタンスリーダーであるユートが見守っているのを確認すれば手出しをせずに遠巻きに傍観を決める

 

「それに…トキノは、まだ恐怖が抜けきってはいない」

 

決闘者として鍛えられた視力はトキノの体の震えを見逃さなかった

戦うことに怖がりながら戦っている、それは以前から変わっていない

 

「…トキノ」

 

心配した表情で決闘の行く末を見守る…いまのマオにはそれしかできなかった

 

 

 

「俺のターン…ドロー!!」

 

リョウジ 手札4枚

 

「…相手の場にのみモンスターが存在するとき、サイバードラゴンは特殊召喚できる!来い!サイバードラゴン!」

 

サイバードラゴン 攻2100

 

「そして死者蘇生を発動、墓地から甦れ、サイバードラゴン!」

 

サイバードラゴン 攻2100

 

場に2体の機械龍が並ぶ

リョウジは手札の融合のカードを手に取り…少し思考すると何もせずに元に戻した

 

「俺はレベル5のサイバードラゴン2体でオーバーレイ!」

 

2体の機械龍が黒い穴へと吸い込まれ、姿を変える

 

「進化する機械龍よ!新たな力をその身に宿し!敵を撃ち抜く閃光となれ!エクシーズ召喚!襲雷せよ!ランク5、サイバードラゴンノヴァ!!」

 

サイバードラゴンノヴァ 攻2100

 

融合を行うこともできた…だが、リョウジが選んだのはエクシーズだった

 

「サイバードラゴンノヴァ…」

「ノヴァの効果発動!ORU一つ使い、墓地からサイバードラゴンを蘇生する!」

 

サイバードラゴン 攻2100

 

「さらにノヴァの効果!場のサイバードラゴンを除外することでこのターン攻撃力を2100アップさせる!」

 

サイバードラゴンノヴァ 攻2100→4200

 

 

 

「…これでドラゴンゲイヴを攻撃すれば超過ダメージでトキノのライフは0になる」

 

それを見ていたマオは冷静にそう判断する

 

「いや、そうはならないだろう」

 

それに対してユートはそう切り返す

 

「どうしてそう言い切れるの?」

「リョウジのデッキの爆発力は俺たちもよく知っている…だが、だれよりもリョウジのデッキを知っているのは誰だと思う?」

「……トキノ?」

「そうだ」

 

遠い日に思いをはせるように目を細める

 

「トキノは優れた決闘者だ…昔から、相手への対策も怠らないし、何度も同じ手を喰らうほど抜けてもいない…」

「…この状況の対策もできている…と?」

「おそらくな」

 

どちらが勝つにせよ、次の攻防で勝敗が決まる

そんな確信に近い予感がして、見逃さないように2人の決闘の行く末を見守る

 

 

 

「バトルだ!サイバードラゴンノヴァで聖刻龍ドラゴンゲイヴを攻撃!」

 

サイバードラゴンノヴァの口へと雷のエネルギーが充填されていく

……だが、それが解き放たれることはなかった

 

「リバースカードオープン!罠発動!抹殺の聖刻印!!」

 

攻撃対象となったドラゴンゲイヴが当たったものを除外するエネルギーとなってサイバードラゴンノヴァへと突撃する

 

「聖刻モンスター、ドラゴンゲイヴをリリースして、相手のカードを1枚除外!!これで…!」

 

サイバードラゴンノヴァは相手の効果によって墓地へと送られた場合融合モンスターを特殊召喚する能力がある、だが、除外ならばその効果を発動させずに除去ができる

リョウジの戦法を、使用カードを知っているからこその冷静な対応だったと言える

 

「ああ、そうだな……そう来ると思っていた」

 

だが、相手の手の内を知っているのはトキノだけではない

 

「速攻魔法…イグニッション!!」

「っ!?」

 

突撃したエネルギーはサイバードラゴンノヴァへと直撃し…大きな爆発が巻き起こった

 

「除外されてない!?どうして!?」

「イグニッションの効果は相手の発動した魔法罠の効果を相手のモンスター1体を破壊する効果へと書き換える」

 

このカードはトキノも知らない…リョウジが新しくデッキに入れたカードだった

除外に使われるはずだったエネルギーはそのまま破壊のエネルギーへと変わり、サイバードラゴンノヴァを破壊した

 

「そんなカードが…それじゃあ…」

 

すなわち、サイバードラゴンノヴァの効果の発動条件を満たしてしまったということ

 

サイバーエンドドラゴン 攻4000

 

現れたサイバーエンドドラゴンは爆発の煙をその翼で吹き飛ばし自らの存在を主張するように大きく咆哮し、空気が震える

リアルソリッドビジョンのそれはもはや現実のものとかわりない、咆哮だけで周囲の窓が割れ、近くで見ていたものはたまらずに耳を抑える

 

「サイバー…エンド……」

「さあ、お前の効果処理はまだ終わってないだろう?」

「…!……私は…ドラゴンゲイヴの効果で…神龍の聖刻印を特殊召喚……!」

 

神龍の聖刻印 守0

 

ドラゴンゲイヴの効果は強制効果、トキノの意思にかかわらず発動してしまう

そして、サイバーエンドドラゴンの前でのその効果は自殺行為に等しい

 

「……サイバーエンドドラゴンには…」

「ああ、よく知っているだろう?…守備モンスターを攻撃したときにその守備力を上回った分のダメージを与える…貫通能力だ」

 

今はリョウジのバトルフェイズ、サイバードラゴンノヴァは消えたが、代わりにサイバーエンドがいる、そして、ちょうどいい的まで存在してしまっている

 

「…サレンダーしろ、今なら認めてやる」

 

このまま続ければ4000の貫通ダメージを受けてトキノが負ける

普段の…普通の決闘ならばそれで終わるだけ…だが、これはダメージが実体化する決闘

当然、ダメージ量に比例して受ける衝撃も大きくなる

このままならばトキノは4000もの大ダメージをその身で受けなければならない

 

「……」

 

きゅっと唇をかみまっすぐにリョウジの目を見据える

 

「サレンダーはしない!私は…決闘者だから…!」

「……」

 

震えている、目の前の圧倒的な威圧感に、目の前の殺気に、目の前に迫った敗北に恐怖して

そんなことは誰が見ても明らかだった

それでも、彼女は恐怖を克服しないまま、この場に立っている、目の前の敵へと立ち向かっている

その姿は紛れもなく最後まであきらめないレジスタンスそのものだった

 

「……だったら…」

 

右手を掲げる、その合図を受けたサイバーエンドドラゴンは神龍の聖刻印へ狙いを定め、その3つの口へとエネルギーを溜める

 

「っ!リョウジ!そこまでする必要があるのかっ!?」

 

たまらずにユートが叫ぶ

これまでの決闘でリョウジはトキノの覚悟を問うていたのだと思っていたユートにはもう十分なように思えた

 

「…サイバーエンドドラゴンで神龍の聖刻印を攻撃……」

 

だがリョウジは宣言を止めない

元よりこの決闘は彼女の覚悟を問いかけるために始めたわけではない

『トキノを戦わせたくない』そんなただのわがまま

…たとえその本人を傷つけようと、レジスタンスから追い出されても構わない

 

「エターナル…」

 

ゆっくり、ゆっくりと攻撃宣言を進める

もしも途中でサレンダーを宣言するようであれば攻撃を止めるつもりだった

だが、溜まったエネルギーで周囲が熱を感じるようになってもまだトキノは震えながら立ち向かっている

 

「……エボリューション……」

 

エネルギーが限界までたまり、後は解き放たれるのを待つだけ

ここまで来ると巻き添えをうけないようにと逃げるものやユートのように攻撃を止めさせようと駆け出すものも出始める…だが、攻撃を止めるにはもう遅かった

 

「…トキノ!!リョウジ!!」

 

マオの絶叫は何に対してだっただろうか

トキノに逃げてと言いたかったのか、リョウジに攻撃を止めさせたかったのか

いずれにしろ、その願いは届かない

 

「……バ―ストォ!!!!」

 

たっぷりと時間をかけた宣言とともに掲げた腕を振り下ろす

サイバーエンドドラゴンは主からの命令に従いそのエネルギーを解き放ち

 

「っ!!きゃああああああああああっ!!!」

 

圧倒的なエネルギーの奔流は神龍の聖刻印を一瞬で消し去り、一切弱まることなくトキノのライフを奪っていった

 


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