東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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-秘伝- 哀歌(エレジー) 

 

 

 

 

 

"" 関わるべきではないと余自身もわかっている

 

 

 

  余は敗北し、幻想に消え

 

  繋がりは絶えていたのだから

 

 

  そうする事が互いにとって良かった筈だ

 

  悪戯に幻想郷を脅威に怯えさせる必要は無い

 

 

  奴等にしても同じ事だろう

 

 

  しかし……余には無理だった

 

 

 

  あの顔を見てしまったら……

 

  見て見ぬ振りなど……到底出来なかった

 

 

 

  何故だ……何故余はダイがそう見えた……?

 

 

  お前達と出会い……情が芽生えたからか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

  お前の顔が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       助けを求めるように見えたのは……

 

                      "" 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガウンッ!

 

 

「くあっ!?」

 

剣での防御ごとダイは殴り飛ばされる

 

「ちっ……いいッ!?」

 

リングに着いたと同時に蹴り飛びバーンへ剣を突き入れる

 

「……」

 

何の苦慮無く左手で剣を逸らされ右手を腹へカウンターで打ち込まれる

 

「う゛っ……がっ!?」

 

悶えた一瞬に裏拳が頬を打ち、吹き飛ばす

 

手刀(これ)で攻撃せんのは慈悲と思え、今の貴様には使う価値も無い」

 

構えた手刀を解きバーンはダイを見る

 

「クッソ……!?」

 

直ぐ様立ち上がったダイは紋章閃を撃つ、竜魔人となって遥かに威力が増した光線がバーンを襲う

 

「下らん技だ」

 

手をかざしたバーンは紋章閃を受け止める、ダメージは無い

 

「いや、下らんのは貴様の方か……」

 

技ではなく技を放つ本人の力が低いのだとバーンは言っている

 

「まぁよい……好きに仕掛けて来い、悉くを捻り潰せば話す気にもなろう」

 

「ッッ……!!?」

 

余裕の顔を見せるバーンにダイは更なる怒りを燃やし斬りかかる

 

「アアアアアッー!!」

 

怒涛の連続斬り、一斬り毎に衝撃が起こる竜の五月雨斬り

 

「温い、ただ無闇に振るだけでは一生当てる事は叶わぬぞ」

 

その全てを手刀で軽々受けるバーンにはわかっていた

 

何の考えも無くただ一心不乱に攻撃しているだけなのだと

 

「……」

 

「うっ!?」

 

剣閃を掻い潜りバーンの手がダイの顔を掴んだ

 

「放せっ……!?」

 

「放してやるとも、望み通りに」

 

ダイをリングに叩き付けるように押し込み、呪文を唱える

 

「!!?」

 

唱えられたイオナズンの大爆発が唱えたバーン毎ダイを飲み込む

 

「ふん……」

 

手刀を薙ぎ爆煙を払ったバーンは鼻を鳴らす、ダメージなど勿論無い

 

「……隠れたか」

 

足元のダイが消えている、イオナズンの爆発で吹き飛ばされたのを機に身を潜めたのだ

 

「愚かとしか言いようが無いな、闘いの遺伝子が機能せぬとここまで酷いか……」

 

呆れたようにバーンはベギラゴンをリングとリングを支える大地に照射する

 

「この限りある舞台で隠れる場所等無い、地上に姿が見えぬ以上居るのは地中のみ……そんな簡単な事すらわからぬか」

 

リングが赤熱し下の大地も溶解しはじめマグマを作ろうかという時にダイが地中から飛び出してきた

 

「クソッ……!」

 

「貴様、本当に余を倒したあのダイか?偽物と言ってくれた方が余程納得出来る、フフッ……」

 

「ッッ……何がおかしいんだッ!」

 

笑うバーンにダイの怒りの形相は凄みを増す

 

「……ストラァァァッシュ!!」

 

逆手から放つ斬撃、アバンストラッシュのAタイプ

 

「オオオオッ!!」

 

それに逆手に構えたまま追従するダイ

 

「この技は……本気か?」

 

記憶に色濃く残るその技を前にバーンは一歩、その場から離れた

 

「あっ……!」

 

ダイはしまったという顔で方向を僅かに変えバーンに斬り掛かる

 

「余の腕を断った技に縋ったか?あんなモノ一対一で使えるわけなかろう」

 

「ぐっ……」

 

ダイのアバンストラッシュは容易く手刀で切り払われAタイプも空しくリングに着弾する

 

「何だ?よもや余を案山子か何かと思っていたわけではあるまいに」

 

「~~ッ!?」

 

歯噛むダイ

 

ダイが当てようとしたのはアバンストラッシュX(クロス)

 

アバンストラッシュのA(アロー)タイプとB(ブレイク)タイプを同時にぶつけるダイの持つ最高峰の技、その威力は通常の5倍以上を誇る

 

更に今は竜魔人、想像を絶する威力を秘めているのは間違いないがその難易度は極めて高くバーンのように一歩Aタイプの狙いから外れるだけで成立しないのだ

 

 

「あ、当たりさえ……」

 

「ん……?」

 

聞き間違いかと思う言葉にバーンはダイを見る

 

「当たりさえしたら……お前なんか……!」

 

「……フッ」

 

バーンは思わず笑ってしまった

 

「フハハハ!何だそれはダイ!当たりさえすればだと!ガキの駄々か!ハーッハッハッハ!!」

 

戦いにおいて強力な技が当たりさえすればなど誰もが考える、それを如何に技量や戦略で当てるかが戦いなのだ

 

それを工夫も無しにねだる様に、願う様に言うダイが酷く滑稽に見えた

 

「……よかろう、ならば当ててみよ」

 

「なっ……!?」

 

真顔に戻ったバーンの提案にダイは驚く

 

「余は此処から一歩も動かんと約束しよう、好きに仕掛けて来い、その当たりさえすれば……という技でも何でも」

 

「こ……の……ッ!」

 

ダイの怒りが爆発する

 

「後悔するなよッ!バァァァン!!」

 

竜闘気が剣に圧縮され振り抜かれる

 

「デヤアアアアアアッ!!」

 

放ったAタイプに追従し着弾する一瞬にBタイプを重ねる

 

 

「アバンストラッシュX(クロス)!!」

 

 

「……フェニックスウイング」

 

 

不死鳥の翼が迎え打った

 

 

「なっ!?そんな……バカな!?」

 

ダイは驚愕した顔で剣を見る、竜の繰り出した渾身の秘剣は受け止められていた

 

「大魔王の腕は断てれども……不死鳥の翼は断てぬようだな……」

 

笑みを浮かべてバーンは言う

 

「こんなモノだ、余がその気で相対すれば貴様の秘技とてこの程度に過ぎぬ……何より余はあの頃より更に強い、貴様は弱くなったがな」

 

相手にならない、そう言われたように思ったダイは歯軋り距離を取る

 

「ひ、卑怯だぞ!」

 

「……何?」

 

蔑む言葉にバーンは睨む

 

「一歩も動かないって……言っただろ!」

 

「だから何だ……防がないと余は言ったか?」

 

「ず、ズルいぞちくしょう!」

 

「……本気で言っているのかダイ、聞くに耐えんガキのような駄々を……本気で……」

 

自分勝手な子どものごとき言い分にバーンは呆れではない目を向ける

 

(幼児退行もしている、か……思い通りにならず癇癪を起こすガキと同様、いや……力で己の好きな事を成す魔王と本質が同じになっていると見るべきか)

 

哀れみの目、情けない勇者を見下す眼であった

 

(竜魔人になった事で潜在意識が出て来たようだな、随分と語るようになった……情けなさをな)

 

変わらない哀れみの目でダイを見る

 

「~~ッッ!!?」

 

ダイにはそれが許せない

 

「そんな目でオレを見るなぁぁぁぁ!!」

 

剣を持った手で殴り掛かる

 

「見るとも、貴様が醜態を晒し続けるならば……いつまでも」

 

顔を殴られど微動だにせずバーンは告げる

 

「ダマレ……ダマレよォォォォ!!」

 

「黙らせてみろ、出来るならばな」

 

ダイは殴り飛ばされる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、戦いになってない……」

 

「嘘でしょ……」

 

クロコダインとマァムは呆然としている

 

「やっぱな……だと思ったぜ」

 

苦い顔のポップとヒュンケル、ラーハルト、ヒムの四人

 

「何故だ!あの竜魔人でダイはバーンに勝ったのではなかったのか!?何故こんな一方的になる!?」

 

信じられないクロコダインが声を荒げる

 

「落ち着けよおっさん、勝ち負けじゃねぇだろ今は」

 

「ぬぐ……確かにそうだが、納得がいかん」

 

「まぁ気持ちはわかるさ、応援すんならダイだもんな俺達はよ……」

 

「……お前達はわかるのか?あの一方的な展開の理由が?」

 

「ああ……まぁな」

 

ポップが大きな溜め息を吐くとヒュンケルが語りだした

 

「見た目だけで中身が無い、アレでは本来の力の半分も出ていないだろう……体に芯が通っていない」

 

初めて目にしたがヒュンケルにはわかった、見た目だけのハリボテなのだと

 

続けてヒムが言う

 

「そうなんだわかんだよ、あんなモンじゃねぇって……それでも強ぇのは間違いないんだけど……よぉ」

 

理由はそれだけではない、言いにくい事を最後はポップが言った

 

「それ以上にバーンが強過ぎるんだ……」

 

相手をするバーンが想像を遥かに超えていた事を

 

「いくら何でもおかしいぜ……俺が知ってるバーンなら今のダイでも戦えるレベルの筈だ、こうも一方的になんかならねぇ」

 

ポップ達の知るバーンとは一線を画す強さを見せる今のバーンに恐れを含む疑問を浮かべる

 

「いったいどうなってやがんだ……ダイが言ってた鬼岩城みたいな状態でもねぇってのに……」

 

訳がわからないポップはバーンを見つめる

 

(……ん?よく見りゃバーンの額の眼?みたいなのが無くなってんな、まさかアレが関係して……?いや考え過ぎか……?)

 

ポップ達はそれを名前だけでしか知らない

 

バーンの秘密を……

 

それの詳細を知るのはバーン本人とダイ

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおいおーい!何っだありゃ!お話になんねぇぜ全くよぉ!」

 

魔理沙が悪態ついている

 

「そうね……私もここまで酷いとは予想してなかったわ、ああでも逆に好都合かもしれないわね、競ってない分余裕があるから」

 

パチュリーも困った顔で思案している

 

「いやでもしょうがないんじゃないか?バーンは鬼眼王な訳だろ?当時のあの状態の勇者を圧倒したっていう……なら当然じゃないか?今はもっと強いし」

 

幻想郷の主な者は皆知っている

 

今のバーンは鬼眼王の状態なのだ

 

魔帝異変の際に巨大な鬼眼王形態から永琳に人型に切り出され若さを戻した姿で鬼眼王の力で動けるようになった言わば小さな鬼眼王と言うべき状態

 

圧倒的な魔力と破壊的な魔獣の肉体を人型で操る反則とも言える状態、それが今のバーン

 

「けっ!舐めてんのか勇者コノヤロー!誰相手してると思ってんだ!バーンだぞ!仮に勇者がまともだったとしても勝てるわきゃねぇだろ!」

 

「私達が全員で挑んでも勝てないもの……それがバーンという存在、生涯を懸けて尚も届かないと思わせる……本当の頂点」

 

今のバーンは大魔王ではないただの幻想郷のバーン、勇者ごときが勝てる存在ではないと皆確信している

 

一行が勇者を信じ応援するなら頂点達は当然バーンを応援する

 

そこに善悪は無い、ただ絆を深めた相手に勝って欲しいという、ただそれだけの事

 

それに今や勇者よりも遥かに長い付き合いであり、何より友なのだから……

 

「こらこら貴方達、優劣を決めるのが目的じゃないのだからもっと真剣に見なさい」

 

レミリアが呆れたように言う

 

「ってもよ~私等バーンに任せて見るだけなんだぜ~?強さ議論くらい良いだろ別によ?」

 

「もうわかったわよ、好きになさい」

 

言ってみたものの魔理沙の言う通り見守る事しか出来ない

 

「それによ?上手く行きゃあそういうこったろ?流れ的によ」

 

「ええ……まぁ……そうなるでしょうね」

 

その通りだと苦笑を返すしか出来なかった

 

(整うまでもう少し……ってところかしらね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあっ!?」

 

ダイは打ち飛ばされる

 

「……メラミ」

 

追撃に放つは中位呪文だがバーンが最も得意とする火の呪文は中位でありながら通常のメラゾーマの数十倍の威力を出す巨大な火球

 

「こんなモノ……!」

 

逆手に構えた一閃で切り裂くダイの眼前には夥しい数の火の弾幕

 

「ッ……!?」

 

思わず身構えたダイに弾幕が当たるも竜闘気によりダメージが無い事を知り突っ切ろうと腰を落とす

 

「判断が遅い」

 

直後にバーンが肉薄していた、ダイは驚き裏拳で殴り飛ばされる

 

「~~ッッ!?クソッ……クソッ!?」

 

辛うじて剣での受けが間に合ったが良い様にやられるザマに悔しき声をあげる

 

「……」

 

バーンは手をかざしイオラを弾幕を撃つかのごとき凄まじい連射で放つ

 

「ち……いぃ!?」

 

高速のステップで躱しながら反撃の機会を探る

 

「小賢しい」

 

回避先を先読んでイオラを置くように撃ち、瞬時の切り替えでマヒャドを唱える

 

「うっ!?」

 

ステップでリングに足が着いた瞬間に足先が凍りつき動きが鈍り止まる、撃たれていたイオラを避けれず命中し爆発を起こす

 

「ぐっ……こんなモノで……ッ!?」

 

爆発のダメージは無いが衝撃に怯んだダイへバーンは既に詰めていた

 

「……強くゆくぞ」

 

繰り出された拳がダイの腹にめり込んだ

 

「ぐっうっ……おえっ!?」

 

膝を着き腹を押さえ苦しみ逆流する胃液が口から吐かれるのが効いている証拠

 

「世の無常を感じるなダイ……」

 

掛けた言葉にダイが痛みに片目を閉じながらバーンへ顔を上げる

 

「かつては大魔王を倒し一世を風靡した勇者が落ちぶれこのザマとは……何と虚しい事か」

 

「……ッ」

 

ダイの顔が歪む

 

「人を愛し、人の為に戦った男の夢は薄暗く汚された……信じた人によって」

 

「……ッッ」

 

抉られる傷が形相へと変える

 

「儚いとは人の夢と書くそうだ……まさに今の貴様の為の言葉だ……そうであろう?」

 

「~~~ッッ!!?」

 

ダイは飛び出し斬りつける

 

「うるさいんだよッ!!」

 

怒鳴る、剣は竜闘気が不十分で見切られたバーンに不動で受けられている

 

「お前が……!何でお前がそんな事を言えるッ!?人間を滅ぼそうとしたお前にッッ!!」

 

「……」

 

バーンは剣を握る

 

「何でお前にそんな事言われなくちゃならないんだ!」

 

殴ってきた、柄を握る剣を放して

 

「オレに負けたくせにッ!オレがどれだけ苦しいかなんて……わからないくせにッ!!」

 

「……」

 

殴打を意に返さずバーンは剣をリングの端へ投げ捨てる

 

「それが貴様が抱える闇……とでも言う気か?ガキの下らん駄々が闇など……そんな筈がなかろうが」

 

バーンにはわかる、こんな薄いモノが闇ではないと、中身がまだ見えていない表面的なモノだと

 

「うるさいんだよ!ウルサイウルサイ……!ダマレ……ダマレェェェ!!」

 

気が触れたかのように更に殴りつけてくるダイ

 

「……うざったいぞ」

 

手刀で払い飛ばす

 

「クソオォォォォォォ!!」

 

絶叫をあげてまた殴り掛かってるダイ、まるで向けどころが無い怒りや苦しみをぶつけているよう

 

「クッソオオオオオッ!!」

 

だがそれは解消されない、無意味だとわかっているから

 

自分が酷く情けなく醜悪な事をしていると内心でうっすらと自覚している分、自己嫌悪で闇は吐かれず溜まる一方

 

「ウアアアアアアーーッッ!!」

 

苦しみの拳が打ち付けられる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダイ……!」

 

見てられず目を逸らす一行

 

(良いのかこれで……本当に良いのか……?)

 

あんなダイを見てしまい信じると言った心が揺れてしまっていた

 

(やっぱり……今からでも止めた方が……!)

 

後悔が出てきたポップは心配で堪らなくなり舞台に向かって踏み出そうとする

 

「ッ……!?」

 

威嚇のような気を感じ気配の元を見た

 

(レミリア……)

 

気の主レミリアと目が合うとレミリアは首を横に振った、行くなと言っている

 

(ッ……そうだ)

 

ポップは自分の腕を掴みきつく握り締める

 

(信じるって決めたじゃねぇか……!レミリアを……!バーンをよ……!俺がブレてどうすんだ!)

 

再び覚悟を決め、絶対に行かない誓いとして椅子に座り、レミリアを見て頷く

 

(お前に頼むなんざ筋違いってわかってる……!わかってんだ!でも……言わせてくれ……!)

 

心で叫ぶ

 

(頼む……バーン……!!)

 

かつての敵へ祈りを込める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドシュ!

 

 

ダイは切り裂かれた

 

「グアッ!?アアッ……ヴッ!?」

 

胸から鮮血を噴き、その場で跪いたダイは蹴り飛ばされる

 

「うざったいと言った、ガキの癇癪に付き合ってくれると思うのか」

 

無慈悲な言葉だった、それは手刀を使った事にも表れている

 

「大概にしろダイ……貴様は余が出場した事で勘違いしているかもしれんが余は貴様の子守りをしに来たのではない、思うところはあるが期待出来ぬなら見限るのに躊躇いは無い」

 

バーンはダイの為に来たのではない、自分が納得いかないから来たのであって見込みが無いなら捨て置くのに躊躇は無い

 

結果に是非を問わずと言った言葉に偽りは無い

 

「ハァ……ハァ……ふざけんな……なんで……お前だけ!」

 

その言葉が聞こえていないのかダイは血走る目でバーンを睨み、立ち上がる

 

「お前だけがぁぁぁぁッッ!!」

 

殴りかかる

 

「無駄だ……権能無き竜魔人の力など余には届かぬ、通じぬ……かような弱き力など一切が無意味」

 

無防備に受けてダメージは無い、ダイがどれだけ力を込めてもバーンに通らない

 

「そんな筈ない!オレは勝ったんだお前に……そんな事があるもんか……!!」

 

「……竜魔人とはその名の通り竜の戦闘力と魔族の魔力、そして人間の心という三つの要素が限界を越えた状態、本来なら人の姿を捨て魔獣の形態となるが心の要素こそが重要、異端の竜の騎士の貴様とてそれは例外ではない」

 

ダイの胸倉を掴み頭突きを食らわせる、波紋のような衝撃が広がりダイの額が割れ青き血が流れる

 

「今の貴様には心が無い、だから弱いのだ……濁った純心ではそれが限界」

 

「うぐぅ……だ、黙れよ……!」

 

「いっそ濁りきれば往年の力も出せるものを……貴様の父バランが強かったのは人間への憎悪で心を染めきったからだ、純粋を染めきったからこそ竜の騎士の戦闘力を迷い無く発揮出来た……」

 

「ッ……!?」

 

「いくら深く堕ちようが堕ちきれていないのならどこまで行こうが半端に過ぎぬ、故にその体たらく……理解出来たか正邪どっちつかず、半端で哀れなダイよ」

 

ダイを放り投げ揺るぎ無き目で見下す

 

「……」

 

俯いたままダイは立ち上がり、憤怒の形相でバーンを睨む

 

「……ウオアアアアアアアッッ!!」

 

凄まじい竜闘気の放出、リングに亀裂が走り大地すら割る荒れ狂う竜の怒気

 

「お前だけは……お前だけは許さない……!!」

 

内に秘めた感情を爆発させ竜の逆鱗に触れたバーンへの憎悪に変えて咆哮する

 

「許してたまるかぁーーー!!」

 

竜闘気を右手に集めた会心の一撃

 

殺意からなる竜の牙

 

その凶牙が王に食らいつく

 

 

ドンッ!

 

 

「殺意すら込めてもこの程度……所詮は半端者か」

 

不死鳥の翼が牙をへし折っていた

 

「ぐあっ……ああぁ……あ……!!?」

 

フェニックスウイングに折られた手首を押さえ力無く後退するダイ

 

「くそぉ……くそぉぉ……」

 

ダイの目から打ち砕かれた殺意が消え戦気も打ちのめされ消えかけている

 

「何でだ……何で……」

 

竜魔人状態が解除され逆立つ髪が戻りながらも悔しく呻いている

 

「……」

 

バーンは近付き、ダイの前に立ち

 

「うぶっ!?」

 

掌底を打ちつける

 

「ぐうぅぅぅ……ハアッ……ハァ……」

 

痛みを堪えて立ち上がる

 

「……」

 

「がっ!?」

 

払われる、が持ちこたえる

 

「……」

 

「う゛っ!?」

 

蹴り押され倒れそうになるが耐える

 

「何で……お前だけが……!」

 

どれだけ打ち砕かれても解消されない想い

 

見苦しいと自覚して尚も想い続けてしまう哀しき呪詛

 

「気は済んだか?」

 

「……ッッ!?」

 

王の高みからの言葉が最後の決め手

 

 

「何でお前ばっかり!!」

 

 

抱えた闇を言葉に引き上げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!……パチェ」

 

様子が変わったダイを見たレミリアは合図を出す

 

「了解」

 

パチュリーが指を鳴らすと舞台に張られた結界が変化し黒く不可視化され中の音を通さなくなった

 

『あやや!?どうやら二人の戦いが激し過ぎて結界に異常が出た模様です!すぐに直しますのでご容赦を!』

 

こうする事を予め知っていた文の説明を聞いても観客は騒ぎはしなかった

 

明らかに様子がおかしかった勇者の為に仕組んでいた事だと、それを衆人環視に晒さない配慮なのだと

 

(さぁ……いよいよね)

 

事情を知る者達は見る事が出来る、頂点や協力を求めた博麗や守矢に加え力有る者達には見えている

 

そして勇者一行も当然

 

(勇者の魂がどちらに決めるのか……此処が分水嶺、岐路……)

 

運命を操る王女が紅き眼で勇者と王を見る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴオッ!!

 

 

ダイがリングに拳を叩きつける

 

 

「ズルい!ズルいぞちくしょう!!」

 

 

膨れ上がり過ぎて行き場が無くなった想いの発露

 

 

「何でお前が幸せなんだ!負けたくせにッ!オレはこんなに苦しいのにッ!!?」

 

 

それは嫉妬

 

敗者のバーンが幻想郷で望んだ平穏を手に入れている事への許し難い現状への嫉妬心

 

勝者である筈の自分がそうなる筈であろうという勇者にあるまじき醜い嫉妬心からの激情

 

さとりがバーンに話さなかった勇者自身が育てた心の闇

 

 

「何でお前ばっかり!!オレ達の世界にはあんな非道い事しようとしたくせにッ!!」

 

 

地上を消滅させようとした悪逆無道の大魔王が生きており、幻想郷を救い友や仲間と平和に暮らし受け入れられている

 

自分は勝ったのに人間に嫌われ世界に拒絶されている

 

その屈折した矛盾にダイは耐えられなかった、我慢がならなかった

 

精神が成熟していないが故に心が持たなかったのだ、それがバーンの現状を知って元々持っていた闇と合わせて加速度的に精神を不安定にさせた原因

 

「……」

 

バーンはただ静かに聞いている

 

「何でだよッ……!」

 

それは人間を信じた勇者が吐き出す涙を流す程の怒り

 

 

 

「なんでだァァァァァァァァーーーー!!」

 

 

 

悪意に傷付き道に迷った仔竜が王に謳う虚しき哀歌(エレジー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ダイ……ダイ……!)

 

ポップ等一行は悔しさに震えている

 

苦しむ勇者に何も出来ない自分達の無力を痛感し打ち震えながらバーンに任せ見守る事しか出来ない自分を恨む

 

(頼むよゴメ……あいつを助けてくれ……!)

 

縋るような願い、届きはしない、叶えはしない

 

それでも祈るしか……出来なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんな……ふざけんなッ!!」

 

「……」

 

聞き続けていたバーンは小さく息を吐き、ダイへ歩く

 

「聞くに耐えんな、黙って聞いていれば実にくだらん……たかだかその程度の嫉妬で貴様は堕ちていたとは……矮小な男よ」

 

「ッッ!?お前ッ……!」

 

目前で見下すバーンを睨み上げる

 

「まぁそれはよい、貴様の嫉妬など余にはどうでもよい話だ」

 

バーンはそんな事では何も堪えない、ダイからの嫉妬などで揺らぐバーンではない

 

その余裕の態度がダイの怒りに薪をくべる

 

「で?気は済んだのか?」

 

「済む筈ないだろッッ!!」

 

ダイの怒りと憎悪は止まらない

 

「済む筈ない……許せるか……!許せるもんか……!!」

 

無限に沸き上がる闇はダイの情緒を混沌とさせ最大の不安定を見せた

 

「……その怒りの根源は人間か」

 

「!!?」

 

ダイは反応する

 

 

「ッ……~~~~~~~ッッ!!?」

 

 

身を引き裂く辛く悲しい感情

 

 

信じた存在達に裏切られる辛さ

 

世界を救った事への虚無感

 

情けない己への自己嫌悪

 

 

無理矢理押し上げられた心の奥底が渦を巻く

 

 

「何で……」

 

拳を握り震えだした

 

 

「何でみんな……オレを嫌うんだ……!」

 

 

吐かれる言葉、拒絶された張本人の辛き本音

 

バーンへの嫉妬など言わば副因、ダイが抱える闇の根源を助長させたに過ぎない

 

これが真の闇

 

「みんながオレの事バケモノって……モンスターだって……人間じゃ……ないって……」

 

「……」

 

「オレは人間なのに……なのに違うって……怖いって……オレはそんな気……全然無かったのに……」

 

「……」

 

「お前の……言った通りになっちゃったんだ……」

 

「……」

 

「どうしてこうなるんだよ……どうして……」

 

「……」

 

「オレの事なんて忘れてくれたらいいのに……忘れてくれないし……酷くなる……探してただけなのに……オレはただ……」

 

「……」

 

「どうしたらよかったんだ、どうすればよかったんだよ……」

 

「……」

 

「頼むよ……教えてくれよ」

 

「……」

 

「教えてくれよ……バーン……」

 

語られる闇の根源、否……絶望

 

人間の悪意に晒され続けた純粋なる竜の騎士の心を黒く染める元凶

 

友や仲間には言えなかった勇者の本音

 

特別な相手だからこそ言えた……偽りない心の内

 

「……」

 

その言葉を受けて大魔王は

 

「……教えてやろうダイよ」

 

否、バーンは与えた

 

 

「人間を皆殺しにしろ」

 

 

救いを

 

 

「なっ……!!?」

 

ダイが信じられない顔でバーンを見る

 

「簡単な話だ、もはや取り返しがつかんのならば貴様が大魔王となって人間を根絶やしにすればよい、それで貴様の苦悩は全て解決する」

 

「何を……言って……」

 

「何を?人間がそう望んだのだろうが?いざそうなれば勝ち目が無いと想像も出来ぬ愚者の群れが……ならば望み通りにしてやればよいではないか、何を躊躇う必要がある?」

 

「やめろよ……」

 

「必要なのは後押しか?よかろう、余が背を押してやる」

 

「やめ……ろ……」

 

「何なら余が策も与えてやる、人間を効率良く殺す策だ……竜の牙は余が研いでやる、噛み殺す策も余が与えよう、人員も道具も余が手配しよう……」

 

「やめろ……!」

 

ダイは嘆き

 

「だが……殺すのはお前の意思だ」

 

「出来るわけないだろ!そんな事ッ!」

 

叫ぶ

 

「……何故出来ん、貴様はそう成ろうとしたのではないのか?」

 

「……ッ!?」

 

想いが揺れ

 

「成ればいい、力のままに全てを蹂躙し己が望む事を叶えればよいではないか、それが魔王の生き方……恐れや妬みすら力に変えて生きるがいい」

 

「……い、イヤだ……!そんなの……イヤだ」

 

出るのは闇に消えそうになった儚い想い

 

ダイに残っている最後の……バーンの存在が繋ぎ止めていた希望

 

「オレは……そんな事したくない……」

 

人間を信じる……愛の心

 

 

「……大魔王には成らず、勇者のままで……人間を愛する勇者のままで在りたいと、そう言うのだな」

 

「……」

 

ダイは小さく頷いた

 

それは確かに本心からの言葉だった、しかし世界がそれを許さない

 

「でもどうしていいか……わからない……わからないんだ……」

 

ダイに纏わりつく闇は消えていない、見せただけであり何の解決もしていない

 

世界が育てた闇は……消えない

 

 

「ならば証明し続けよ!!」

 

 

王の言葉が勇者を強く打った

 

「……!!」

 

呆気に取られたような、信じられない顔でダイはバーンを見る

 

「貴様が人間を愛し信じるのならば……証明し続けろ!」

 

心を強く打つ力強い言葉

 

「世界の顔色など窺うな、耳を貸すな、その生き方が己が道だと決めたのなら……疑うな!何があろうと貫き通せ!誰が相手であろうが!世界が相手だろうが!」

 

「あ……」

 

勇者の心を王が照らす

 

「竜の騎士も勇者も関係無い……ダイ、お前が望む生き方をしろ、お前の意思で」

 

「あぁ……」

 

それは焼き尽くすかのごとくとても熱き、強き想い

 

「貴様に……大魔王は似合わぬ」

 

理想の押し付けには違いない、己の自分勝手な想いだとも理解している、それでも言っておきたかった、これだけは言っておいてやりたかった

 

 

何も間違っていないと……

 

 

「う……あ……」

 

燃え尽きてしまうような熱に照らされ

 

ダイに纏わりつく闇を……

 

「勇者とは……最後まで決して諦めない者の事だと同じ勇者に聞いた、余もそう思う……ならば余を越えた正しさを示した貴様に出来ぬ筈がない」

 

「あ……あぁ……」

 

竜に掛けられた呪いを……焼き消した

 

「そうであろうが……ダイ」

 

「うぁ……あぁ……!」

 

ダイの目から大粒の涙が落ち、止めどなく零れる

 

「うああああああぁ……!!」

 

大声でダイは泣いた、人目も憚らず泣いた

 

 

ダイに本当に必要だったのは肯定

 

傷付き迷った生き方への後押し、流されていく魂に正しいと保証され確固たる自信が欲しかった

 

 

「ああああああああ……!!」

 

 

ただそれは仲間では無理だった、同じ道を進む仲間では不可能な事だった、肯定してくれるのはわかっているから、それは師であろうが友だろうが同様

 

「……今は答えずともよい、いや……答えは出たか」

 

バーンだったから

 

それが敵であったバーンだったからこそ響いたのだ

 

互いに異なる信念、夢、正義をぶつけ合った決して相容れない最大最強の敵

 

その生き方を否定し最後まで立ち塞がった恐ろしい相手だった故に……

 

存亡を賭けてまで戦った宿敵からの生き方への肯定は何にも勝る力をくれたのだ

 

「泣くな……とは言えんな、余も感涙を流した事もある……好きなだけ泣くがいい、そして洗い流せ、竜の涙で濁った純心を……絶望を」

 

この広い世界でただ一人

 

バーンだけにしかそれは出来なかったのだ

 

 

「ああああああああ……!!」

 

 

闇晴れし仔竜の泣き声が木霊する……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッッ!!」

 

ポップは立ち上がり拳を握り締める

 

「奇蹟……起こしやがったあのヤロウ……!」

 

一行にもわかった、ダイが出していた負のオーラが完全に消え去った事を

 

「やった……!やってくれやがったバーンあいつ……!」

 

ポップの目から涙が零れる、他の者も同様

 

ダイを見て感じたのだ

 

もう世界の闇にも負けないだろうという確信を繋がった事のあるダイの心から知ったから

 

「お前を信じて良かったぜ……レミリア……!」

 

運命を繋ぐ掛橋となってくれた王女へただただ……深い感謝を向けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……見たとこ上手く行ったっぽいがどうなんだぜレミリア?」

 

頂点達は9割9分望む結果になったと思っているが最後の確認にレミリアへ向く

 

「……ええ、問題無いわ、運命の岐路は勇者へ舵を取った……バーンが望み想った、理想と言うべき道へ」

 

レミリアはもはや見るまでもないと目を閉じ微笑みを見せる

 

「よかったー!ダイさん良かったですー!」

 

「……?大ちゃん何喜んでんの?バーンなら当たり前じゃない」

 

「だよね~!あ、もしかして大ちゃんバーンの事信じてなかった感じ?」

 

「そ、そんな事ないもん!私はダイさんが戻った事喜んだだけでバーンさんを疑ってなんてないもん!」

 

「ホントかな~?」

 

「あうー……フランちゃんイジワルだよぉ」

 

大妖精、チルノ、フランの三人が当然の結果だと言い

 

「よっしゃよっしゃ!ならもうちょい待つかね」

 

「そうね」

 

魔理沙とパチュリーがもう次に期待を向けている

 

「……やってくれたな、スゴイよなぁやっぱバーンは」

 

「本当にね……勇者を二人も救うなんてスゴイなんてもんじゃないよ、元大魔王なのに……本当に……」

 

ダイを本心から救いたかった妹紅とロランは成した事の大きさに感嘆の言葉を漏らす

 

(さて、目的は果たした……後は……)

 

視線は二人に注がれる、期待を込めて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……気は済んだか?」

 

長い啼泣が収まって来た頃にバーンが問うと泣き声は止まり、ダイは立ち上がった

 

「ああ……!」

 

涙を拭い、腫れた目を見せるその顔は憑物が落ちたようなとても晴れやかな顔をしていた

 

「……」

 

「大丈夫だ!」

 

バーンが問おうとする前にダイは言う

 

「オレはもう……自分を見失わない!オレが決めた生き方を……迷わず行く!そう決めた!」

 

「……そうか」

 

一点の曇りなく答えるダイにバーンは懐かしいモノを感じる

 

(そうだ……これこそ余が求めた姿、初めて敗北をよこしたあの強き……勇者の姿)

 

あの日、最期の時に焼き付いた勇者の姿がそこに在る

 

(やはりお前はその姿が似合う……そうでなければな)

 

立ち直った姿にバーンは微笑んだ

 

 

「……オマエノ」

 

小さな声でダイは何かを言おうとして口ごもる

 

「……バーン!!」

 

ダイは言う

 

 

      しよう!」

「「続きを

      するか」

 

 

二人の言葉は重なった

 

「!!」

 

ダイが驚きバーンを見る、バーンは何も動じていない

 

「まだ試合は終わっていない、いや……始まってもいなかった、始まるのは今からだ……そうであろう?」

 

「!!……ああ!そうだ!」

 

二人の思いは同じ、戦いをしよう

 

大魔王と勇者ではなく、正義も悪も主義主張も何も無く

 

何も背負わずひたすらに戦いたかった

 

「また醜態を晒すようなら次は即座に潰す、期待してよいのだな?泣き疲れたなど泣き言は聞かぬ、余の期待を裏切るでないぞ……?ダイ!」

 

「当たり前だ!さっきオレを倒しとかなかった事を後悔させてやる!」

 

ただのバーンとダイとして

 

「ほざいたなダイ……容赦はせんぞ」

 

「望むところだッ!……オレの剣よ!来い!」

 

合意が為されるとダイが投げ捨てられた剣を呼び寄せ折れていない手で掴む

 

同時に結界の不可視化と消音が解除され衆目に晒される

 

「オオッ……ウオオオオッ……!!」

 

ダイが全身に力を入れ、竜闘気を高め竜魔人となった

 

「「「!!?」」」

 

観客の誰もが驚く、何があったのかは知らないが勇者が別人のように変わり先程とは比べ物にならない力を見せたから

 

「……心を取り戻し闘いの遺伝子も機能した完全無欠の竜魔人、流石の圧よ」

 

心技体、全てが揃った竜魔人の真の力、この世の何者にも打ち勝てると思わせる強大過ぎる力

 

「ダイいけー!やっちまえー!!」

 

ポップの応援が聞こえる

 

「……ポップ!!」

 

竜魔人に匹敵する巨大な迷惑を掛けた罪悪感にダイは一瞬躊躇したが力強いサムズアップを返す

 

「行くぞッ!!」

 

ダイは剣を構えて突っ込んだ

 

「ウオオオオッーーーー!!」

 

漲る力、駆ける神速、最大の竜闘気

 

真の全力を余す事なく発揮した勇者の剣が振り下ろされた

 

 

 

ドギャ!

 

 

 

ダイは切り払われた

 

 

「「「!!?」」」

 

 

観客、勇者一行の全てが驚愕した

 

「なっ……!?」

 

ダイすらも驚いている

 

「フッ……」

 

誰しもが思っていた

 

再起し途方も無い力を見せてくれた勇者ダイの大反撃が始まるのだと

 

その予想が外されたのだ

 

「バカね……当然じゃない」

 

「調子こいてんじゃねぇぜ勇者コノヤロー!!」

 

 

そんな中で頂点達七人だけは驚く事無くしたり顔で笑っていた

 

 

「心を取り戻し竜魔人の本来の力を発揮した……たかが、そう……たかがその程度」

 

予想を外した原因、振り切った手刀を戻しながらバーンは告げる

 

「まさかとは思うが、たかだかその程度の事で余に勝てると思っていたのでは……なかろうな?」

 

「ッッ!!?」

 

ダイは思い違いを理解する

 

自己を取り戻し、高揚していたダイは忘れていた

 

相手は竜魔人になった自分を圧倒し死ぬ寸前まで追い詰めたあくまで最強、大魔王!!

 

その余りに高い力を……

 

 

「では始めるとしよう、あの日の敗北を……勝利に塗り替える為に!!」

 

 

王が竜の闇を照らし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       泣いた夜が……明ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これぞ大魔王流カウンセリング術……!ちなみにダイはゴンの要素を入れてますがダイさんにはなりません。

思うところはあると思います、わかった上で一言……御容赦ください!
私の頭ではこれが精一杯だったのです、なら書くなと言われれば……御容赦ください!としか言えません、すみません。

次はいよいよ決戦、決着……になると思います。
試合って良いですね、勝敗が本編と違って決まってないところが。

どちらが勝っても角が立ちそうですが……次回も頑張ります!

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