東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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-秘伝- 合唱(コーラス) Ⅷ

 

 

「こ、交代……?」

 

「何それ……試合で交代なんて聞いた事無いよ」

 

勇者一行の控え室は困惑している

 

「何も賭けない気楽な試合だから……と言うのもあるのだろうが自由が過ぎる、主催者の勝手と言われればそれまでだがな」

 

「しかし交代をする意味がわからん、明らかにポップは押されていたぞ?言い方は悪いが勝ち目は無かったと言っていい……なら何故そんな真似をして承認される?」

 

ヒュンケルとクロコダイン

 

「……あくまで予想だが奴等にとって勝敗は大事ではないという事だろう」

 

「武闘大会なのにか?親善試合と捉えて欲しいと言っていたのが目的だから勝敗よりも親交を……か?」

 

「そこまではわからん、武闘大会そのものが真の目的をぼかす隠れ蓑かもしれん……だがこの対戦に関しては一回戦に様相は似ている」

 

「一回戦と言えばマァムか……稽古だと言いたいのか?」

 

「ああ、稽古と言うよりは導いていると言うのが適切か……基礎は充分に出来ているポップへ更なる高みへの道を示している、そんな風に俺は見えた」

 

「成程な……ならば交代するパチュリーとやらも同じなのだろうか」

 

「……さてな」

 

ヒュンケルはパチュリーを見て答えた

 

「ポップ次第だろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ってくるわ」

 

パチュリーが舞台へ飛んで行くのと入れ代わりに魔理沙が帰って来る

 

「いやー意外だったぜアイツが行くなんてよ!」

 

「おかえり、確かに意外だったな」

 

妹紅から渡された飲み物を飲み魔理沙は一息ついてニヤける

 

「何よ気持ち悪い顔して……ポップがそんなに気に入ったの?」

 

「レミリア……ん~まぁな、将来性はピカイチにあんぜアイツ、行き方が手探りだったから遅いだけでちょいと示してやりゃ予想以上だったぜ」

 

「確かに才能は見張るモノがあったけど化けると言うにはまだ足りないわね」

 

「そりゃしゃあねぇよ、バーンでもない限り一戦で全部完璧にモノに出来る訳がねぇ、この試合はきっかけさ、化けるのは終わった後のアイツ次第だぜ……なぁレティ!」

 

呼ばれたレティが頷く

 

「パチュリー怒ってたか?」

 

「ええ……機嫌は凄く悪かったわ」

 

「やっぱりか、まぁわからんでもないか」

 

「……魔理沙は先生が機嫌悪かった理由わかるの?」

 

「まぁな、しょうもないようで結構大事な事さ」

 

魔理沙は相方を見つめる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

「パチュリー・ノーレッジよ、ここからは私が相手をするわ」

 

降り立ったパチュリーはポップを見つめる

 

「なんだってんだよ……意味がわからねぇ」

 

魔理沙と試合をしていたのに相手が代わる、ポップからすれば当然の反応

 

「深く考える必要は無いわ、次は私と試合をする……それだけの話よ」

 

「……」

 

ポップは色々と考える、交代する意味や幻想郷の狙いなど考えるもこれといった答えは出ない、一番しっくり来るのがこのパチュリーと言う頂点が自分とやりたかったからという簡単な答えだった

 

「わかったけどよ……俺ぁもうガス欠だぜ?もう少しだけ動けるけどよ」

 

「それは心配しなくていいわ」

 

パチュリーは瓶を投げ渡す

 

「……なんだいこれ?」

 

「私が調合した「エルフの飲み薬」よ、魔力と疲労回復の効果があるわ、精製するのが手間な虎の子の一本だったけれど構わないわ、飲みなさい」

 

「……わかったよ」

 

エルフの飲み薬を飲み干す

 

(……!?マジか!?魔力が全回復しやがった!疲労も……!)

 

凄まじい効果の道具にパチュリーを見つめる

 

このエルフの飲み薬はパチュリーがマダンテを使った後に使う保険の道具、入手が困難な材料に加え秘伝とされるエルフの精製法を独学で編み出し成功させた超稀少品、パチュリーも一本しか持っておらず材料の関係でもう作れないかもしれない程の消耗品だった

 

(こいつもとんでもねぇのは間違いねぇな……)

 

そこまでの品だとは知らないポップはこのレベルの品を軽くくれる凄い人物なんだと思っている

 

(……構わないと思う自分が居るのは、今この時でなければならないと私が感じているから、この……小僧に)

 

そんな大層な物をやるだけの価値が今にしかないと賢者の勘が告げたのだ

 

「回復したのなら……構えなさい」

 

「……ああ」

 

魔法使いの二人に明確な構えは無い、戦う心構えをしたのだ

 

 

『あーもう!知りません!何でもいいんで始めてくださーい!!』

 

 

 

 

 

六回戦 二戦目 ポップVSパチュリー

 

 

 

 

 

(こっちの手は粗方見られてる、まずは様子見だな)

 

ポップは未知数な相手を前に突撃せず出方を伺う

 

「……」

 

パチュリーが指を突き出し空間を水平になぞると整列された弾幕が出現する

 

「……火符「アグニシャイン」!!」

 

号令にて火属性の弾幕は発射された

 

弾幕(そいつ)は……当然だろうな!」

 

ポップはトベルーラで距離を取りながら自身も弾幕を張り応戦する

 

(メラとは原理が異なる火の魔法……か?威力は魔理沙程じゃねぇ……)

 

飛ぶ速さが増し弾幕にも力が入る

 

(けど速い!何て操作技術だよ!?おまけに気持ち悪いくらい弾が綺麗に配置されて撃たれてやがる!?んで精製速度がダンチだ!?)

 

力でなく技術で押されているのだとわかる

 

(同じ弾幕でもこんなに違うのか!?)

 

魔理沙は威力の高い弾をバラ撒いて数撃てば当たるのような感じだったがパチュリーは速い弾で正確に狙って当てに来ている

 

「……」

 

パチュリーは片手で弾幕を撃ちつつもう片手で頭程の圧縮された魔力の球体をポップの逃走方向へ撃ち出す

 

(なんだ……?)

 

目視したポップは簡単に避けられるだろうそれを注視する

 

(なんか……ヤバイ気がする!?)

 

ポップも弾幕を撃つのを右手に任せ左手に魔力を集める

 

「……」

 

魔力球がポップまで10メートルの距離に近付いた時にパチュリーは指をパチンと鳴らすと魔力球は弾けるように分裂しポップの逃げ場を無くす大量弾幕となった

 

「な、にぃぃぃ!?」

 

視界に突如現れたように広がる弾幕に驚愕するポップ

 

(え、遠隔!?魔力に遠隔起動式を仕込んでたって事なのか!?何だよ遠隔起動式って!?そんな事が出来んのか!?どんな技術だ!!?)

 

パチュリーの見た事の無い高等技術へ混乱気味に刮目するも弾幕はもう目前まで迫っている

 

「ってヤベェ!?イオナズンッ!!」

 

左手に備えていた爆発呪文を撃ち爆発が弾幕を飲み込み消滅させる

 

「ふん……」

 

弾幕の撃ち出しを止めたパチュリーが爆煙を眺め一息つく

 

(イオナズンの選択は正しい、私の弾幕の威力が低いのを測った適切な対処と言えるわね……状況判断は良し、危機感知と対応力も良し)

 

ポップの評価をしながら両手に魔力を集める

 

 

(さてどうすっか……)

 

爆煙という煙幕の中で攻撃を警戒しながらポップは思案する

 

(まだちっとしか見てねぇから確定とは言えねぇが魔理沙みたいなパワータイプじゃねぇみてぇだ、代わりに魔力の扱いが段違いにウメェ……知識偏重のテクニカルタイプってヤツだ、師匠に似てるタイプだな)

 

魔法使いとしての性質の違いを理解しその上で考える

 

(こういうタイプは力押しに弱かったりすんのが多いがあの魔理沙と同格の相手だからな……そんな甘い筈がねぇ、だけど力に対する対応と限界を測っときてぇな)

 

甘い考えはせず冷静に考えていく

 

「よし……こいつで試してみるか」

 

魔力覚醒を使い右手の指に5つの火を灯す

 

(ッ!?禁呪と併用はまだ完璧にゃ無理か……2~3割威力上昇が今は限界ってとこか、まぁそれが五発なら充分だろ)

 

爆煙から飛び出した

 

「食らえパチュリーっての!フィンガー……は?」

 

ポップは奇襲気味に撃とうとしたフィンガー・フレア・ボムズはパチュリーの両手を見て止まった

 

「あら奇遇ね」

 

パチュリー両手の指10本全てに火が灯っていたのを見てしまったから

 

「オメェ……まさかそいつは……」

 

「お先にどうぞ」

 

驚愕するポップにパチュリーは微笑んだ

 

「ッ……!?くそったれ!五指爆炎弾(フィンガー・フレア・ボムズ)!!」

 

冷や汗を浮かべながら促されるようにメラゾーマ五発を放った

 

五指(それ)で満足してるようではまだまだ……本物を見せてあげる」

 

パチュリーは両の指を構えた

 

「炎符「十指爆炎弾」!!」

 

同時に放たれた十の炎弾がポップの炎弾とぶつかる

 

魔力覚醒(それ)と併用したのは考えたわね、けれど相性が悪いのよ禁呪法と増幅式は……呪法の無理な連結式と増幅式が喧嘩してしまうの、今の貴方にはオススメしない」

 

ポップの増幅された炎弾をパチュリーの炎弾七発が相殺し残る三発がポップへ向かう

 

「ちっくしょう!?」

 

炎弾が直撃しポップは墜落した

 

「うがっ!?くっ……そっ……!?」

 

激痛走る焦げた体で呻く

 

(両手だって……!?両手で10発のメラゾーマを制御して操ったってのか……!どんな技術と脳味噌がありゃそんな事が出来んだ……ざけやがって……!?)

 

自分の倍を軽々と扱うパチュリーの技巧に戦慄するしかないポップ

 

「ちなみに言っておくと魔力覚醒は強力だけど万能なモノではない、複雑な魔法には暴走する危険が常に孕み体調にも左右される」

 

パチュリーは魔力覚醒を使っていない、使えないのではなく使わない

 

「完全に使いこなせるのは単純な魔法しか使わず気の遠くなる時間をかけて体の一部にまでに仕上げた魔理沙だけよ」

 

威力を重視する力の大魔導士の魔理沙に対し知識と技術に重きを置く技の賢者に増幅系統は必要無い、状況に応じた多種多様の魔法と技術が威力の無さを補って余りあるモノに変えているのだから

 

それに威力を出す方法もパチュリーは当然持っている

 

「……!」

 

言葉を終えたパチュリーはポップが光に包まれるのに気付く

 

「回復魔法……便利な魔法を持ってるのね貴方」

 

「まぁな……」

 

回復したはいいが彼我の差に苦い顔をポップはしている

 

「私は使えないから羨ましいわ」

 

「……お前さん程の魔法使いが使えない?そんなバカな……」

 

とんでもない技術を持つパチュリーが回復魔法を使えない事が信じられず駆け引きをしているのではないかと疑ってしまう

 

「幻想郷の魔法使いはそういうモノなのよ、それはそうと回復は済んだわね?」

 

「……ああ」

 

「よろしい、魔力が有る内は何度でも治すといいわ、尽きるまで何度でも叩きのめしてあげるから」

 

「ッ!?……よろしく頼むぜパチュリー・ノーレッジさんよぉ!」

 

大魔道士の挑戦は続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!叩き潰す気満々じゃねぇかあいつ!やり方が陰険なもやしらしいぜ」

 

魔理沙は面白そうにクツクツ笑っている

 

「珍しいよなパチュリーがあんな力の差をわからせるような戦い方するの」

 

「ですよね、ていうか戦うのが既に珍しいですよね、自分からなのが余計にです」

 

妹紅と大妖精が物珍しそうに見ている横でレミリアが魔理沙に話しかける

 

「ポップが余程癇に障ったようね」

 

「みてぇだ、あいつ魔法に関しちゃプライド高いからな……何百年も本の虫してるだけによ」

 

「貴方が原因作ったんでしょうに」

 

「まぁな、正直言うと狙ってたぜ、スゲー食い付きようだったのはビックラしたけどな」

 

「よく上手く行ったものね」

 

「パチュリーと違って私は間近でポップ見てたからな、あいつがスゲー才能迷子にしてたのは気付いてた、あとはちょいと引っ張ってやりゃこんなモンよ!予想以上だったのが面白かったけどお陰でバッチリ食い付いたぜ」

 

「振り回されるポップが可哀想な話ね」

 

「んな事ねぇよ、あいつも楽しんでるよ」

 

二人の続きを鑑賞する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて」

 

(何が来る……!)

 

構えたパチュリーに身構えるポップ

 

「水符「プリンセスウンディネ」!!」

 

水属性の弾幕が撃たれポップは飛び避ける

 

「木符「シルフィホルン」!!」

 

続いて木属性の弾幕が時間差で撃たれる

 

(当然のように二種類の魔法使ってきやがる!だけどこの属性なら!)

 

ポップはメラ系の弾幕で対抗し水を蒸発で、木を焼いて相殺させる

 

「……土符「レイジィトリリトン」!!」

 

二種類を撃ち続けながら次の土属性を撃つ

 

(三つ同時撃ちかよ……けど予想はしてたぜ!あんだけ操作が上手いんならそれくらいは出来るだろうってなぁ!)

 

見た事無い属性だが予想でバギ系の弾幕を撃ち見事に的中させ相殺する

 

「……金符「メタルファティーグ」!!」

 

金属性の弾幕を撃った

 

「んなにぃ!?」

 

ポップは仰天した

 

(四つ!?同時に四属性の魔法を正確に操るだぁ!?に、人間技じゃねぇぞ!!?)

 

二種なら器用、三種は天才、そんなイメージを持っていたポップ

 

予想を越えたまさかの四属性弾幕の同時撃ちという信じられない所業に仰天する

 

「そ、相殺が……間に合わ……うおあっ!?」

 

弾幕が命中しまた墜落する

 

「くっ、ってぇ……四つ同時使用なんてデタラメにも程があんだろ……!」

 

回復しながらパチュリーを睨む

 

「そうかしら?私は最大七つ同時に使用出来るわよ?さすがに動けなくなるから使わないけれどね、四つまでが動きながらでも扱える限界」

 

「だからそれがデタラメだってんだよ、涼しい顔して言いやがる……腹立つぜ」

 

悪態つくポップの回復が済む

 

(何とか吠え面かかせてやりてぇが無理くせぇな……実力差は魔理沙と違う意味で圧倒的、見てる分にゃ勉強になるが勝てるかとなると厳し過ぎんぜ……)

 

魔理沙には力で圧倒されパチュリーには技術で圧倒されている

 

今のままでは勝ち目は魔理沙同様無いと言える

 

(だからって降参するわけにゃいかねぇ!やってやらぁ!)

 

意思は変わらずポップは構え、両手に魔力を集める

 

(集中しろ……今までみたいに漫然と呪文を唱えるんじゃなく撃った後にも神経を通わせろ!)

 

「……来なさい」

 

パチュリーは手招きしてポップを待った

 

「まずは……こいつだ!」

 

ポップはイオナズンを唱えた

 

「火符「アグニ……」」

 

「今だ!」

 

パチュリーが迎撃しようと動いた瞬間ポップが手を握るとイオナズンの魔法球は爆発した

 

(遠隔起動……真似されたのね)

 

広がる爆煙を見て任意で起爆したのだと理解したパチュリーは次に備え気を張る

 

「む……」

 

爆煙の中から火球が五つ飛び出して来た

 

「次はこいつだ!」

 

一瞬遅れてポップが爆煙から飛び出してくる

 

「浅知恵ね、自動追尾も無いのに無闇に撃って当たる相手とでも考えたのなら見くびり過ぎてる」

 

当たらない軌道の火球は無視して当たる軌道の火球だけを見極め安全地帯へ移動する

 

「そこだッ!」

 

ポップが叫ぶと火球は一斉に静止し軌道を変えてパチュリーへ向かいだした

 

(今度は遠隔操作……それもただの遠隔操作じゃなくフィンガー・フレア・ボムズの操作!火球五つを個別に操作している……!操作はお粗末とは言え初めてでコレを操ってのけるのね)

 

見せられる自らの技の模倣、パチュリーからすればまだまだ拙いが手本を見ていたとはいえ初めてならば異常とも言える技量

 

「チッ……イライラさせてくれるわね」

 

迫る火球を見ながら舌打ちしたパチュリーは火球へ手を触れ、霧散させた

 

「なっ……!?分解だって!?」

 

「遅いから容易いわ」

 

当たると思われた火球は全て霧散させられた

 

(は、速ぇ!一瞬で……!?)

 

自分も使える技術の練度の違いに驚く

 

「少し溜飲を下げさせてもらうわ、耐えなさい」

 

驚くのも束の間にパチュリーは動いた

 

「大地に眠る力強き精霊達よ……」

 

「おまっそれ……!?」

 

良く知るベタンの詠唱に身構える

 

[天光満る処に我は在り……]

 

(は!!?何だそりゃ!?二重詠唱……!!?)

 

一つの口から同時に聞こえる二つの詠唱、方法はわからないが二つの呪文の詠唱を同時に行っているのだ

 

「今こそ我が声に耳を傾けたまえ……ベタン!!」

 

「しまっ……たっ!!?」

 

ポップは重力に圧され地面に縛り付けられた

 

[黄泉の門開く処に汝在り……出でよ、神の雷]

 

(知らねぇ魔法……デイン系か?……違う!ギガデインよりヤバイぞありゃあ!?)

 

詠唱が完了するとポップの頭上に巨大な魔方陣が描かれ雷光を帯電させている

 

(ヤベェヤベェヤベェ!?あんなの食らったら黒焦げで済むかも怪しいだろ!?どうにかしねぇと!)

 

魔理沙がやっていたように魔力で抵抗するも魔力を強く込められていて動けるも逃げるのにはとても間に合わない

 

「……これで最後よ、インディグネイション!!」

 

かかげた指を振り下ろすと深淵の魔法を冠する神雷が落ちた

 

「……やり過ぎたかしらね、まぁいいわ……生きてるから」

 

ポップには勿体無い贅沢をさせてしまったと反省のような言葉を呟き粉塵舞う場所を見つめる

 

「ゲホッ!?ッ~~~~ぐぅぅ!!?」

 

ポップが呻きをあげる、全身感電しかなり焦げている、大ダメージなのは間違いない

 

(咄嗟に魔理沙から盗んだマジックバリアを張って魔力で地面にアースを作って少しでも帯電を軽減したのね……小賢しいと言うか機転が利くと言うか)

 

致死ギリギリで気絶するように調整したものの三割は軽減されたのを見て高い才能を感じ取る

 

「くっそ……がぁ……!」

 

ベホマをかけながらヨロヨロとポップは立ち上がる

 

「へ……へへ……耐えたぜ……?どうだいノーレッジ大先生さんよぉ……?」

 

「……!」

 

不適な笑みを見せるポップ

 

「次は……何を教えてくれんだい……?」

 

「……」

 

挑発のような軽口、強がりなのは間違いない

 

なのに嫌味は感じない、むしろその目から感じるのは……

 

 

「……よろしい、次は好きにかかって来なさい」

 

紫天の賢者の表情が変わる、それはまるで出来の悪い子を見るような……

 

「行かせてもらうぜぇ!!」

 

「魔法使いの真髄とは何たるか……それを叩き込んであげる」

 

その関係はまるで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「認めたかパチュリーの奴も、あー良かったぜ!軽く捻られて終わるんじゃないかってヒヤヒヤしてたが何とかなったぜ、へへへ……」

 

想定通りの展開に魔理沙は満足そうに笑う

 

「ねぇ魔理沙?先生は何で怒ってたの?」

 

「ん~?そいつはなレティ……」

 

魔理沙はニヤケながら答えた

 

「嫉妬だぜ」

 

「嫉妬……?先生が?嘘でしょ……?」

 

パチュリーからは想像も出来ない答えにレティは信じきれない

 

「嘘じゃねぇさ、そうだな……わかりやすく言ってやるか、あいつが何年魔法の知識集めて研究してるか知ってるだろ?」

 

「それは何百年もだけど」

 

「だろ?あいつはそれが積み重なってプライドになってんだ、魔法に関しちゃそれこそバーンに引け取らねぇくらいになってるからな、私だって魔法知識じゃ絶対勝てねぇ」

 

「……それで?」

 

「そんな何百年も勉強した賢者様の前に現れた二十歳辺りのひよっこが自分のレベルまで駆け上がって来れる才能を見せた、そらたまんねぇんだぜ、いくら私達って手本があるとはいえ何百年を楽に駆け登られちゃ許せねぇもんがある」

 

「……魔理沙は違うじゃない」

 

「私は人間で寿命は長くないし一度死んでるからな、そういうの無くなったんだぜ、むしろそういう奴みたら強くしてやりてぇって気になんだぜ」

 

「……」

 

「でもあいつは違う、私が生まれる前から魔法に関わってて私が死んでた時も変わらずずっと魔法を勉強してた……そんなプライドと誇りの何百年を僅か数日で手にされそうなの見たら……そら気に入らねぇだろうぜ」

 

「……そう、なのね」

 

パチュリーの機嫌が悪かった理由を知りレティも自分が同じ立場なら自分も面白くはないだろうと納得する

 

「そんな先生のプライドを刺激するあのポップって人間……本当に凄い」

 

「だろ?ポップは私の事天才って言ったけどよ、私もパチュリーも実際は凡才さ……何十、何百年も努力してまだバーンに及ばない程度なんだからな!あ、バーンは何千年か!実は皆凡才で天才はポップだけなのかもな!ハハッ!」

 

「そんな事……ないよ」

 

師であるパチュリーと偉大な先輩である魔理沙の努力と強さを知るからレティは魔理沙の凡才という言葉を否定し、ポップの天才も否定する

 

「スゥー……先生!!」

 

突然レティは立ち上がり叫んだ

 

「その田舎魔法使いに見せつけてやってください!幻想郷の魔女の最高峰!魔女の二天、紫天の賢者!パチュリー・ノーレッジとの格の差を!!」

 

「ハッ……ハハハッ!いいぜレティ!そうだよなぁ!パチュリー応援しなきゃなぁ!……オラァ紫もやし!私と代わっといて負けたら承知しねぇからなコノヤロー!!」

 

応援に熱が入り二人へ届く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言われてんぜ大先生……羨ましいこった、よっ!!」

 

呪文の撃ち合いが続いている

 

「……レティ、魔理沙……わかってるわよ」

 

ポップの呪文を軽く捌きながらパチュリーは微笑む

 

「火&土符「ラーヴァクロムレク」!!」

 

「合体!?……じゃねぇ、けど近い……何だ!?」

 

「複合魔法、合体魔法より威力は落ちるけれど即座に使える利点があるわ」

 

「そんなのもあんのか……くっ!?」

 

対処するポップへパチュリーは次の魔法を撃つ

 

「日符「ロイヤルフレア」!!」

 

[月符「サイレントセレナ」!!]

 

二重詠唱からなる同時撃ちによる大量弾幕

 

「ヤベェ!?イオナズンで一掃して仕切り直す……ッ!?」

 

イオナズンの光球を投げた時に気付いた

 

(速い弾と極端に遅い弾がありやがる……まさか!?)

 

イオナズンが爆発し弾幕を飲み込み爆煙を広げた次の瞬間に爆煙を突き抜け弾幕がポップを襲う

 

(弾速を変えて爆発の直後に突っ込ませる為にタイミングを計ってやがった!?)

 

何発か被弾しながら辛くも凌ぐ

 

(緩急……んな細かい操作もあんのか、操作ってよりは応用か)

 

爆煙を避けて飛び出し弾幕を張る

 

(面白れぇ……!こいつからは学ぶ事ばっかりだ!)

 

圧倒されているにも関わらず込み上げるのは楽しさ

 

(久し振りだぜ……誰かから学ぶなんてよ……!)

 

ポップは実のところ最終決戦から大した成長をしていなかった

 

その理由はポップは若輩の身でありながら最後は師を超えてしまった事にある、その瞬間にその世界で魔法使いとしては最高となったのだ

 

同時に導き手を失った

 

アバンに始まりマトリフという師に育てられたポップにとって道の無い暗闇を手探りで進むには魔法の知識が足りないのとあまりにも若過ぎた

 

15、6の教えを受けていただけの青年には道が見えないというのは不安過ぎたのだ

 

合っているかもわからない、相談出来る人にも限界がある中では伸び悩むのは当然

 

(白蓮さんの言った通りだったよ……俺にとって益になったぜ……マジでよ)

 

平和になった事で力を求められなかったのは逆に幸いではあった、もし戦時中なら期待されるプレッシャーで潰れていたかもしれないのだから悪い事ばかりではなかったが結果的にポップは魔力量の増加など魔法使いの基礎鍛練しかほぼしてこなかったのだ

 

 

(やはり筋が良い、魔力操作に意識を向け始めてから魔法毎に良くなって来ている……最初とはもう比べ物にならない)

 

パチュリーも技を見て盗んでどんどん良くなるポップに楽しくなってくる

 

(なんつーか……魔理沙よりもこっちの方が俺向きだな)

 

同じ技術タイプ故にポップも波長が合うのだろう

 

その二人が奏でるのは輪唱(カノン)であり遁走曲(フーガ)

 

先を行く紫天の音色に追いつかんとする勇気の旋律

 

「右手にマヒャド、左手にバギクロス……!」

 

「……!なら俺は右手にイオナズンと左手にバギクロスだ……!」

 

幻想の賢者と異界の大魔道士が奏でる魔法の旋律はまるで一瞬に煌めく閃光のような音色

 

名付けるならば閃光の円舞曲(ワルツ)

 

 

「氷刃嵐舞!「マヒアロス」!!」

 

「……爆裂旋風!イオナロス!!」

 

 

合体魔法がぶつかり合う

 

(撃つのが遅れた……!俺が断然遅ぇ!?それに……完成度が向こうの方……が……!?)

 

パチュリーの造り出した無数の氷の刃に対し強烈な爆風を繰り出したが技量で劣るポップが合体に時間が掛かり遅れた事に加え合体魔法自体の練度の差で爆風ごと押し切られる

 

「があっ!!?」

 

氷刃に体を裂かれ、突き刺さり押し戻された爆風に肉を抉られる

 

「はぁ……はぁ……スゲェや……」

 

自分の何もかもを上回るパチュリーに尊敬の念を抱く

 

「大先生よぉ……あんた……メドローア使えんだろ?」

 

「ええ、使えるわ……バーンから概念予想だけ教えて貰って習得したわ」

 

「やっぱそうか……こんなスゲェ合体魔法を楽々使えんだ、あんただと思ったよ」

 

回復しながら大会の禁止事項にあるメドローアの存在はパチュリーに対してなんだと納得しポップは微笑む

 

「言っておくけれど使わないわよ?例えレミィに頼み込まれたとしても使わないわ、貴方が使おうとすれば殺す」

 

「わかってる!そんなつもりで言ったんじゃねぇ!ただの答え合わせさ……俺だって使う気は一切ねぇさ」

 

「ならいいのよ……それで?」

 

一瞬見せた本気の殺意を静めパチュリーは問うた

 

「いやなに……俺もそろそろ魔力が限界近くてね、キツくなってんだわ」

 

「魔力のロスがまだ多いのよ、変換しきれてない無駄な魔力があるから息切れが早いの、魔理沙は魔術で補ってるけど本来は自分で調整するものよ」

 

「成程ねぇ……どうりでまだ余力あんのか、魔法ってのは奥が深ぇなぁ大先生……へへへ」

 

「当然、魔法の深淵に底は無い……その深淵により深く潜る為に魔法使いとは知識を集め続けるのよ、それが魔法使いの真髄、持つべき絶対要素よ」

 

「……世界は広いぜ、勉強不足だって思い知ったよ」

 

「その辺りも含めて次の機会に教えてあげましょう、貴方ならすぐ会得出来るわ」

 

「……!嬉しいねぇ……ホント……会えて良かったよ」

 

久しく感じなかった懐かしい感覚をポップは感じる

 

道がわからなくなった迷子が親に見つけられて手を引かれるような……嬉しさと安心が同居した込み上げるような感覚

 

「じゃあよ、決着はつけとこうや……格付けは済んでるけど試合だからな」

 

「降参を選ぶのは恥ではないわ、貴方は充分に力を示したし冷静に考えれば勝ち目の無い状況でこれ以上は不毛と言える……それでもやると言うのね?」

 

「ああ、理屈じゃわかってんだけどよ……たまにゃバカやったっていいだろ?せっかくの試合なんだしよ?」

 

「私がどれだけバカ達、特に魔理沙の相手をしていると思っているの?それくらい構わないわ、わかっているのなら私は構わない……付き合ってあげる」

 

「話がわかるぜ大先生……!」

 

勇気の大魔道士の余興に紫天の賢者も乗った

 

 

「どの道負けなんだ……だったら賭けに出るぜ俺ァ……!!」

 

ポップは残る魔力を全て捻り出し、両手に集めた

 

(魔力を右手に増幅魔術で強化した魔力を左手に……魔理沙から学んだ事を含めた最大威力の合体魔法を使う気ね、今日試合で学んだ事の集大成……)

 

パチュリーは賭けの意味を理解する、疲労が蓄積した乱れた体調で増幅した扱い難い魔力で合体魔法をするなんて行為はパチュリーからすれば自殺行為なのだ

 

暴走した魔力が爆発する危険が多分にある危険行為、パチュリーならば絶対にしない

 

「危なかったら止めてあげる、好きにやってみなさい」

 

パチュリーが見守るのを見てポップは微笑み、動いた

 

「右手に五指爆炎弾(フィンガー・フレア・ボムズ)、左手に増幅ベギラゴン……!!」

 

(禁呪法!?まさか禁呪法を合体させるつもりなの……!?出来ない事はないけれど難易度はメドローアに匹敵する……今の貴方の力量では例え万全でもまだ不可能)

 

それはパチュリーでも足を止めて集中しなければならないレベルの難度、呪文を纏めているとはいえメラゾーマ五発分と増幅された呪文の合体の難度は恐ろしく高いのだ

 

「……合……体……させる……!!」

 

開始された合体、異なる魔力が組み合わされようとするが反発現象が起きバチバチと拒絶の音を出している

 

「んぐぐぐぐぅ……!!」

 

全身から汗を滴らせ反発に負けないよう力を入れる、集中し過ぎた脳に負荷が掛かり鼻血が垂れるもポップは続ける

 

(これ以上は危険……処理が追いつかない脳が焼けついてブラックアウト、その直後に待つのは暴走魔力の爆発……!)

 

結果は失敗すれば死が容易に見える事態にパチュリーは止めようと手をかざす

 

「止めねぇでくれッ!!」

 

怒鳴るポップの目が語る、覚悟は出来ていると

 

「……意地があるわよね、男の子には……やり遂げて見せなさい」

 

小さくパチュリーは呟き、手を降ろす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫なのポップ!?無茶しないで!!」

 

心配するマァムが声をあげる

 

「違うぞマァム、今あいつに掛けるべき言葉は心配ではなく、後押しだ」

 

止めようとするマァムの肩を引きヒュンケルが言う

 

「どうして!?たかが試合でしょう!?終わったらいつだって練習出来るじゃない!いくら生き返れるからって今する事なんて……!」

 

慈愛のマァムだからこそ自殺に近い行為に悲鳴をあげる

 

「確かにバカな意地だ、パーティーの司令塔である魔法使いが取る行動ではない……が、俺にはあいつの気持ちがよくわかる、なぁクロコダイン?」

 

「ああ、俺もよくわかる」

 

続いてクロコダインが肩に手を乗せる

 

「試合だろうが退けぬ時があるのだマァム、男にはな……つまらん意地だ、臆病で弱っちぃ小さな意地だ、だが……閃光のように一瞬輝く意地だ」

 

「……」

 

二人に諭されマァムは納得は出来ないが理解はした苦難しい顔で俯く

 

「応援してやれマァム、お前の肯定が成功の何よりの秘訣になる」

 

「……わかったわよ」

 

意地を見届けると決めたマァムは声を張り上げる

 

 

「失敗したら承知しないわよバカァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(マァム……!あいつ……!!)

 

どんな声もかき消されそうな歓声の中でもポップは確かにその声を聞いた

 

「言われてるわよポップ……ガールフレンド?」

 

「へっ……!んないいモンじゃねぇさ……女神だよ、ただの……勝利の女神、さ……!」

 

「そうなの……えらく荒っぽい勝利の女神ね、微笑むなんてしなさそう」

 

「うぎぐ……ッ!?そりゃあ……当然……さっ!」

 

ポップは嬉しそうに言った

 

 

「俺の女神は……横っ面をひっぱたくんだからなぁ!!」

 

 

女神の声に後押しされ、集大成は完成した

 

「ハァ……ハァ……へへ……出来たぜ……へへへ……!」

 

ポップは合わせた両手を前に苦しく笑う

 

「お見事、素晴らしい結果よポップ……満点をあげる」

 

意地だけで立っているポップへパチュリーは優しく微笑んだ

 

「へへ……んじゃあよ……満点の御褒美に、大先生も何かやってくれよ……あるよな……?とっておきの魔法……ってやつ……?見てぇなぁ……」

 

「ふふっ……よろしい、いいでしょうポップ……私の最高魔法を見せてあげましょう」

 

応えたパチュリーは残る魔力を最大に両手を天地に構えた

 

「選びし七曜の星、天の魔を受け、極まる星と成れ……」

 

天地に構えた両手が順転に回されると魔法球が次々と出現しパチュリーの前で極大化する、その数七つ

 

それぞれがパチュリーの得意とする七曜の魔法、月、火、水、木、金、土、日の属性を持っている

 

「我が意思に集え七星よ……パチュリー・ノーレッジの名において、今……深淵の極星へとならん……!!」

 

魔法球が星となり七芒の魔方陣を展開する

 

「……スゲェ……ハハッ……ホントにスゲェや……」

 

七つの属性魔法を一度に操り一つに束ねる、想像を絶する神業にポップは語彙力を失い乾いた笑いしか出せない程

 

「用意は出来たわ……来なさい」

 

「ああ……行かせてもらうぜ……!」

 

賢者と大魔道士の最後の二重奏

 

 

「閃光五竜炎!ドルメゾラゴン!!」

 

 

ポップの放った最後の合体魔法は禁断の魔力が五匹の竜の形を成し、触れたモノ全て焼滅させる閃光のように一瞬燃える究極の炎熱魔法

 

「どぉぉりゃああああーーーーッ!!」

 

何故竜なのかは親友のダイにある、世界最強の勇者が竜の騎士だったから、それより強い者を知らないからその炎の形は自然と竜となったのだ

 

 

そして五匹の炎竜は大魔道士の意思により集束され、巨大な一匹の炎竜となった

 

 

「貴方は素晴らしい才能を持っている……故にその才に慢心する事なく常に邁進しなさい、これは私が貴方に贈る……餞よ」

 

パチュリーは炎竜など気にも止めず、ポップを見ながら魔理沙と同じ事を呟き……その魔法を唱えた

 

 

「極大七曜星「マダンテ」!!」

 

 

七つの魔法球が合わさった究極の魔法が放たれ、竜が食らいついた

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 

特大の魔法球が弾け、一瞬の魔力爆発を引き起こし、静寂が訪れた

 

「……」

 

「……」

 

互いにダメージは無い、無いのは互いの放った魔法、二人の間にあった竜と魔法球だけが消えていた

 

「はぁ……降参だよ大先生」

 

ポップが先に言った

 

「やろうと思ったら魔法ごと俺も巻き込める威力があったのにきっちり俺の魔法だけ消すに留めるなんて真似されちゃあな……逆立ちしたって勝てねぇよ」

 

「青二才にムキになる程熱くはないわ、あの場合は殺したら私の負けだし当然」

 

「試合に負けて勝負にも負けか……完膚なきまでに完敗ってやつだな……こりゃ」

 

 

『決着ーーー!壮絶な魔法戦を制したのは魔女の二天!紫天の賢者パチュリー・ノーレッジだー!っていうかこの試合判定はどうなるの?私にはわかりません!』

 

 

 

 

 

六回戦 勝者 魔女の二天

 

 

 

 

 

「はぁ~もうダメだ……動けねぇ」

 

力を使い果たしたポップは仰向けに倒れた

 

「邪魔になるからこれ飲んで早く退きなさい」

 

パチュリーはポップへ取り出した三つの小さな瓶のうち二つを投げ渡す

 

「さっきの魔法薬か?二つもくれんのか?」

 

「違う、それは魔法の聖水とアモールの水よ、飲めば少し魔力と体力が回復するわ、さっさと飲んで戻りなさい」

 

「へーへー」

 

ポップは両方を、パチュリーは魔法の聖水だけを飲み、ポップが立ち上がる

 

「ありがとよ……スゲェ感謝してる、また教えてくれ……大先生」

 

「その生意気な言葉使いを直してからいらっしゃい……魔理沙と待ってるわ」

 

パチュリーが満更でもないような顔で踵を返してレミリア達の場所へ飛んでいく

 

「次はいよいよか……」

 

ポップも控え室へ歩いて戻って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワリィ!二連敗もしちまった!」

 

「いいわよそんなの……ねぇ皆?」

 

手を合わせて謝るポップに皆は気にするな、良い試合だったと頷いてくれる

 

「次は絶対勝つんでしょポップ?」

 

「参ったぜこりゃ……横っ面ひっぱたくどころか尻蹴られてらぁ、ホンットにおっかねぇ女だよなオメーって」

 

「ちょっと!今のどういう意味よ!心配して損したわ!!」

 

「おいやめろバカ!俺は怪我人だぞ!?ぐえあっ!?」

 

しばき倒されるポップに一人除いて皆笑う

 

「……」

 

ポップは見つめる、俯いたままのダイを

 

(いつもの顔で笑ってくれよ……何か言ってくれよ……なぁ……頼むよ……ダイ……)

 

その想いはポップだけではなく全員が持っている

 

(…………)

 

その純粋なる魂に秘める未来は人に仇なす魔竜か、人を愛する聖竜か……

 

その天秤はまだ揺れているのか既に止まっているのか定かではないがあの抑えきれない負のオーラを見る限りもう……魂の行く末は決めているのかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れパチェ、楽しかった?」

 

「ええ、私もうかうかしてられないと思う程には楽しい相手だったわ……ごめんねレミィ、いきなり交代なんて無理言って」

 

「私とパチェの仲でそんな事は言いっこ無しよ、パチェの為ならこの位いつでも通すわ」

 

「レミィ、ありがと」

 

「御安い御用よ」

 

心で通じ合う親友の二人

 

「よ~うお疲れさん……大先生」

 

「……」

 

意地悪そうな魔理沙の笑顔にパチュリーはバツが悪そうに睨む

 

「楽しそうだったなお前よぉ……?私から横取りして大先生なんて呼ばせて教師プレイかよ?なぁ淫乱もやしさんよぉ?おーん?」

 

「……」

 

「私が先にあいつの才能に気付いてたのによぉ~後から来て師匠面かよテメ~?私がそのポジションだったのにどうしてくれんだあ~ん?」

 

「……」

 

「何とか言えやコルァ?そのデカイおっぱいもぎ取っちまうぞオッパチュリーちゃんよぉ?」

 

「……」

 

「だんまりたぁ上等だぜ泥棒猫……貸し返せテメー、謝罪と感謝を要求すんぜ!」

 

「……悪かったわ」

 

「感謝は?」

 

「……」

 

「か・ん・しゃ・は!?」

 

「……感謝するわ……あ……ありがとう……魔理沙……」

 

「ん……!お疲れさんだぜパチュリー、流石は紫天の賢者……だぜ!」

 

「ええ、貴方もね魔理沙……流石は黒白天の大魔導士、ね」

 

二天の魔女の拳合わせで幕を下ろした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石は余に恐怖を覚えさせた男……とでも評するべきか、頂点の域にはまだ早いが遠からず、と言ったところか」

 

彼の王が強き男を称える

 

誰よりも成長し自らを追い詰めた臆病で弱っちぃ人間の強さを……

 

「一瞬、されど閃光のように……その閃光は一瞬だからこそその刹那に万物を霞ませる光を放つ、か……嫌な記憶を呼び起こされたものだ」

 

微笑む王の顔が毅然へと変わる

 

「いよいよ……か」

 

その時は遂に来たのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一万くらいで纏めようと思ったら何故か4000程増えたでござる……

ポップが強くなる方法を考えたら合体魔法しかしっくり来るのが思い付かなかったです。
負けたけどヒュンケルよりも強くなる可能性がある、そんな感じをイメージしてます。

次で遂に……ようやく漕ぎ着けた感があります。

次回も頑張ります!

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