東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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-秘伝- 合唱(コーラス) Ⅰ

 

 

 

幻想郷は……良い所だよ

 

 

 

 

自然が沢山あって……人間も妖怪も元気だし仲が良い

 

 

差別……迫害が無い……

 

 

 

それが居れば居る程……凄くわかるんだ

 

 

 

 

だからかな……凄く苦しいんだ

 

オレの世界とは……違い過ぎるから

 

 

 

 

あいつが居るから……余計に……

 

 

 

 

もう……オレはダメなのかもしれない

 

わかるんだ……オレの中で嫌な何かが膨れ上がって

 

止まらないって……

 

 

 

 

 

 

 

 

……どうすればいいんだオレは

 

 

わかるなら教えてくれよ……

 

 

オレは……オレは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-会場前-

 

「来たわね」

 

レミリアはやって来た勇者一行を見て口角を上げる

 

「来たいわけじゃなかったっての!来ねぇと何が何でも引き摺り出すだろお前」

 

「そんな酷い事するわけないじゃない、失礼しちゃうわポップ」

 

傍には咲夜と美鈴が控えている

 

「けっ!どの口が抜かしやがる!……つーかドえらいモン作ったな、わざわざ武闘大会の為だけに……」

 

ポップは観戦席付きの巨大な円形闘技場を見上げながら呆れるように呟く

 

「にとりがやってくれたのよ「河童の建築技術は世界一ィィィ!!」みたいですぐ作ってくれたわ」

 

「何なんだよおめぇ等ってよぉ……」

 

「そんな事はどうでもいい事よ、では行きましょう……あら?二人足りてないわね」

 

「ああ……ヒュンケルとヒムは此処で合流になってんだ、もう来る筈だけどよ……お!丁度来たぜ!……なんか引き摺ってんな、何だアリャ?」

 

何かを引き摺りながらやってきたヒュンケルとヒム、そして永遠亭組

 

「土産だ」

 

ヒュンケルがレミリアの前に引き摺っていた者、リハビリに無理矢理付き合わさせられて疲れ果てたボロボロの正邪を置いた

 

「あらあらこれはこれは……外来人を騙して私達に迷惑を掛けた元凶、怖い者知らずの鬼人正邪じゃない、会いたかったわ」

 

「ヒッ!?待て待て落ち着けってレミリア!な?謝るからさ!お仕置きはやめてくれよ!頼むよ!私達仲間じゃないか!そうだろ?」

 

「調子良い事言ってるがこれで何度目だアバズレ……問答無用、連れていけ」

 

「イヤだー!死にたくなーい!逝きたくなーい!」

 

無表情の咲夜に正邪は引き摺られて行った

 

「……放っとけって言ったのお前だろ?鬼畜になっちまったのかヒュンケルお前」

 

「俺としては放っておいても良かったんだが永琳に正邪の捕獲依頼が来てな……正邪をけしかけた責任を取る形で捕まえる事になった」

 

「あっそう……まぁ同情は出来ねぇなぁ」

 

何やら物騒な事を言ってたが死ぬ事はないだろうとポップは気にするのをやめる

 

「それはそうとよヒュンケル……どうだ調子は?」

 

「ああ、万全だ……俺は完全に治った」

 

「っしゃあ!」

 

皆が完治を祝う

 

「それだけじゃねぇんだぜこいつよ~」

 

「あん?どういうこったヒム?」

 

「そいつは試合でわかる、それまでお楽しみだ」

 

「んだよ言えよ~」

 

談笑する一行を永遠亭組が先に行こうと横を通り過ぎる

 

「ヒュンケル」

 

永琳に呼ばれて振り向く

 

「手術の対価の話……覚えているわね?」

 

「勿論だ、決まったのか?」

 

ヒュンケルの身体を治す対価として永琳が示した「何でもしてもらう」と言う約束

 

「ええ、この大会で貴方が完治したと証明する結果を出しなさい、それが対価で良いわ」

 

「……そんな事で良いのか?」

 

ヒュンケルは聞き返す、それはそうだろう、戦うのが決まっている大会なのだから対価は無しと言っているのと同義だったから

 

「良いのよ、私だけでは出来なかった手術だし面白そうな催しの一助になれたと思えば充分よ」

 

「わかった、必ず果たす」

 

「頑張りなさい」

 

永遠亭組は中へ入って行った

 

「では私達も行きましょう」

 

レミリアに連れられて中へ入って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お待たせしました幻想郷の皆様!記念すべき第一回「夢幻闘宴」開催ですッッッ!!』

 

幻想郷のほぼ全てが集まる会場の中、実況席から文の声が響く

 

『ちなみに第二回はありません!今回!今回限り!なので盛り上がって行きましょーーー!!』

 

歓声が上がり埋め尽くされた会場のボルテージは一気に上がる

 

『ではッ!今回我々が挑戦する対戦相手……勇者御一行入場ッッ!!』

 

派手な爆発と音楽隊による演奏の中、選手は入場してきた

 

『まずはこの人!全身脅威のオリハルコン!最硬の金属男、ヒムだー!』

 

『続いて紅一点!武神流からの刺客!可憐なバトルガール、武道家マァム!』

 

『デカァァァァいッ!説明不要!!先代獣王クロコダインーッ!』

 

『再起不能から帰って来た男!不死身は俺の代名詞だ!戦士ヒュンケルーッ!』

 

『ちゃらけた雰囲気に騙されるな!その名に違わぬ勇者も認める大天才!大魔道士ポップーッ!』

 

『主が望むなら神とだって戦う!忠義の竜騎衆が来てくれた!陸戦騎ラーハルト推参ッ!』

 

『その小さな体に秘めるは百獣の魂!勇者一行のマスコット!現獣王チウッッ!』

 

 

『……そしてェッ!』

 

歓声があがる中、最後の文の言葉に会場は静かになり最後の一人が入ってくるのを待ちわびる

 

『さぁ地上最強は目の前だ!大魔王を倒した竜の騎士!伝説に名を刻みし最大最強の男が幻想郷に降臨したぞォォー!その名は勇者ダイだァァァーーーッッッ!!』

 

直後に起きる凄まじい歓声に思わずダイは萎縮してしまう、それ程の大歓声

 

「何だこりゃ、まるで見せ物じゃねぇか……見せ物だったわ」

 

「直前に取材だと言って色々聞かれたのはこの為だったのか」

 

「ロモスの武術大会を思い出すわねダイ」

 

「マスコットってどういう事だー!」

 

各々多様な反応を見せる中

 

「……」

 

ダイは観客席を見回す、見知った顔もちらほら見つけながら一際豪華な団体席に座るレミリア達を見つけた

 

(居ない……)

 

レミリアの隣の空席を見てバーンが来ていない事を知り安堵のような残念な気分になる

 

 

『では主催者のレミリア・スカーレットよりルールの説明を行います、どうぞ!』

 

文に促されレミリアは立ち上がった

 

「対戦方式は一対一の決闘方式、リングは一応あるけれど場外による負けは無し、降伏か気絶もしくは死亡が負けとなるわ、死亡と言っても故意の殺害は厳禁よ、確認した場合粛清するから気を付けるように」

 

「医療スタッフに永琳、蘇生に世界樹の葉を用意しているから気兼ねなく戦ってちょうだい、禁じ手はメドローアだけで後は何をしてもいいわ!」

 

要約すると

 

・一対一

 

・勝敗は降伏か気絶か死亡(場外負けは無し)

 

・武器防具の使用自由、魔法特技に関しても度を越えなければ制限無し

 

・禁じ手は現時点ではメドローアのみ(その都度追加)

 

 

「観客席にはパチュリーと魔理沙、霊夢と紫の協力で強力な結界を張ってるから余程の事がない限りは安全を保証するから安心して見るといいわ!以上!」

 

観戦者の安全を宣言しレミリアの観客を主に勇者一行への再度と出場しようと考えている幻想郷の強者達への説明を終え座る

 

「おいポップ、今メドローアが禁じ手と……」

 

「ああおっさん、俺もちゃんと聞いてたぜ……まさか使える奴が幻想郷に居んのか?師匠の超絶大魔法だぞ……?」

 

「あのメドローアとは限らんが禁じ手にするくらいだからな……おそらく同じ魔法だろう」

 

「まさかバーンか?月日が経ってるみてぇだし出来るようになったって考えりゃわかるがよ……」

 

「考えたくないなそれは……」

 

まさかの事柄に想像の根を伸ばして勝手に青冷める一行

 

『ありがとうございました!それでは勇者御一行は一回戦に出る選手を決めてもらい残りの方は控えてくださーい』

 

最初の出場選択の先行は勇者一行となった

 

「まっお祭りみてぇなもんだし気楽に行こうや、誰か一番槍やりたい奴いるか?」

 

「じゃあ私が行くわ」

 

マァムが手を挙げた

 

「大丈夫なのかよマァム?」

 

「何がよ?体調は問題無いわよ?」

 

「いやそこじゃなくてだな……あーまぁいいか、良いか皆?」

 

皆マァムが出る事を了承するように頷く

 

「頑張ってよマァム!」

 

「任せといてダイ!」

 

マァムを残して円形リングから降り特設の控えスペースに移動する

 

「お!最初は武道家が出るみたいだぞ!」

 

「可愛いわねあの子、若くて羨ましいわぁ」

 

「幻想郷からは誰が出るんだ?」

 

「特に決まってないらしいわよ、幻想郷の全員から戦いたい人が好きに出るんだって」

 

「へー!じゃ誰が出るんだろうなぁ……あ、武道家と言えば……」

 

観客が幻想郷側の対戦相手が誰なのか心待ちにしている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……最初は彼女ですか)

 

レミリアの後ろで立って控える美鈴は片目を開けてマァムを見ていた

 

(よし……寝てましょう)

 

開いていた片目も閉じて立ち寝をする気満々

 

「……美鈴」

 

不意にレミリアに呼ばれて美鈴は寝ようとしたのがバレたと思って体が跳ねる

 

「な、何でしょうお嬢様……」

 

「貴方行ってきなさい」

 

だが来たのは予想外の対戦指名だった

 

「えー……イヤです」

 

しかし美鈴は面倒臭そうに断った

 

「どうして?」

 

「それは……」

 

美鈴はマァムとは戦いたくないようである

 

「まぁわかってるわ、それくらいあの子を見たらわかる」

 

「それでも行けと?」

 

レミリアも美鈴の食指が動かない理由をわかっている、それでも行けと言っているのだ

 

「ちょっと引き締めて来て欲しいのよ……ついでに先達として手解きしてあげなさい」

 

「ああ成程……そういう事でしたらわかりました」

 

了承した美鈴は手を背に組んだ直立の体勢のまま飛び跳ねた

 

「……!!」

 

リングに着地した相手をマァムは見据える

 

『おっと来ました来ましたよぉ!舞台に上がったのは紅魔館が誇る居眠り中国!紅美鈴だぁーーー!!』

 

文の実況にまた盛り上がる観客達

 

「貴方、門番の……」

 

「はい、よろしくお願いしますねマァムさん」

 

気の良さそうな笑顔で礼をする美鈴

 

「貴方も武道家……よね?」

 

「はい、御察しの通り私は武道家です、流派東方不敗の紅美鈴と申します」

 

礼儀正しい姿勢にマァムの顔も綻ぶ

 

「武神流のマァムよ、良い戦いにしましょう美鈴さん!」

 

だが美鈴の顔は困ったようにはにかんでいる

 

「なれば……良いですね」

 

「……え?」

 

思わぬ返事に困惑し理解が追い付かないマァム

 

「では……始めましょうか」

 

「ッ……ええ、わかったわ!」

 

マァムが武神流の構えを取る

 

 

一回戦 マァムVS美鈴

 

 

『準備はよろしいですね?では第一回戦……始めぇ!!』

 

巨大な銅鑼の音が鳴り響き試合は開始された

 

 

 

「……ッ!?」

 

距離を詰めようと駆け出そうとしたマァムだったが止まった

 

「試合……始まりましたよ?」

 

美鈴が試合が開始されたにも関わらず今だ手を背に組んだままだったからだ

 

「わかってます、お気になさらずどうぞ」

 

だが美鈴は構えようとしない

 

「……舐められたものねッ!」

 

ふざけた態度に怒ったマァムが一気に詰め寄り正拳を繰り出す

 

「……」

 

しかしその正拳は僅かに体を逸らした美鈴によって空を切る

 

「どんどん来てください」

 

「ッ!?」

 

至近距離で余裕気に告げられてカッとなったマァムは両手を駆使した連続殴打を繰り出す

 

「その調子です」

 

その全てが空を切る、掠りもしない

 

「~~~ッ!?」

 

それでも打ち続けるマァムだったが突如美鈴が視界から消えた

 

「足下がお留守ですよ」

 

「あっ!?」

 

しゃがんだ美鈴の足払いを食らい受け身を取りながらマァムは距離を離す

 

「くっ……強い!」

 

得意とする徒手で軽くあしらわれた事実がマァムにショックを与えている

 

「どうぞ続けてください」

 

美鈴は変わらず背に手を組んだまま

 

「ッ……ならッ!」

 

マァムは高速で動きフェイントを織り混ぜながら美鈴の周囲を動き回る

 

「ふーむ、小賢しいですねぇ」

 

顔色一つ変わらない美鈴はあろうことか目を閉じる

 

(この……バカにしてッ!)

 

それを見たマァムが美鈴の背後から飛び蹴りを放った

 

「なっ……!?」

 

上半身を逸らした美鈴に飛び蹴りは避けられ背に組む手に掴まれていた

 

「素直ですねマァムさん、照れちゃうくらい素直です」

 

「うっ!?」

 

もう片方の腕から放たれた肘打ちがマァムの腹に命中し打ち飛ばす

 

「痛ぅ……!?」

 

膝を着いて体を起こし打たれた腹に手を当てる

 

(急所は外してる、ダメージはあまり無い……)

 

ダメージを確認したが軽微、動くのに支障は無い事を確認したマァムの脳裏にある疑問が浮かぶ

 

(まさか……)

 

もしそうなら……と考えたところで振り払うように頭を左右に振った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて見るとやっぱり中々……いやかなりってとこか」

 

「そうだな、美鈴がって訳じゃなくて向こうがだな」

 

頂点達や親しき者達が集まる豪華な観客席で魔理沙と妹紅

 

「それに姿勢というか心構えが気に入らないわね」

 

「やっぱりパチェもそう思うわよね?ここまで条件を揃えたのだからもう少し頑張って欲しいのよね」

 

パチュリーとレミリア

 

「次あたいが出るからね!」

 

「チルノはダメー!」

 

「何でよ!?いいじゃん別に!」

 

「相手が可哀想だからダメー!」

 

「可哀想って何よ!?そんなの知らないわよ!あたいは出るからね!」

 

「まぁまぁチルノちゃん落ち着いて……チルノちゃんは幻想郷の秘密兵器だから隠しとかないとダメなの、ここぞって時に出たら格好良いでしょ?」

 

「秘密兵器……何それサイッコーじゃない!わかったわ!あたいは秘密兵器だから出番が来るまで秘密にしとくわ!」

 

 

 

「大ちゃんナーイス!チルノは出たら多分つまんない試合になりそうだもん、ファインプレー!」

 

「えへへ、ありがとフランちゃん」

 

チルノはフランと大妖精に上手く丸め込まれている、おそらく出番は無い

 

「……」

 

無言のミストは二人の戦いを見据え続けていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「休憩ですか?では次は私から行かせてもらいましょう」

 

美鈴はマァムへ歩いて行く、まるで猶予を与えるように

 

「……!!」

 

すぐさま立ち上がりマァムは構えを取る

 

「行きますよ」

 

わざわざ宣言をして背に組んでいた手を解き、今から打ちますよと言うように握った右腕を小さく構える

 

 

パンッ

 

 

炸裂音が鳴る

 

「……ッッ!?」

 

美鈴の右拳は頬で止まっていた、マァムの手を挟んで

 

(うっくっ……は……速い……!)

 

辛うじてマァムは防いでいた、しかし本当にギリギリだった、殆ど反射で防いだと言ってもいい

 

「……意外でした」

 

攻撃を繰り出した美鈴も予想外という顔を一瞬見せた

 

「反応速度は素晴らしいモノをお持ちですね、惜しむらくは体が追い付いていない事です」

 

「うっ!!?」

 

直後に右拳を引いて繰り出す美鈴の左拳が迫る

 

「くっ……うぅ……!」

 

それも辛うじて紙一重で躱すも避けた先を見透かしたように繰り出されていた右拳に反撃も考える間も無く全力の回避を余儀無くされる

 

「反射に頼って躱すようではまだまだ……一流の武道家の身体とは武の理によって自然と動き体現するモノ、その反射の動きにすら武を内包させるという事です、貴方のそれはただのセンスに過ぎません」

 

マァムの動きを先読みし繰り出す拳

 

「貴方……鍛練をサボっていましたね?だから身体から武が離れてしまっているんです」

 

「……あっ!?」

 

回避に限界が迫り美鈴の拳がマァムの頬を掠る

 

「また足下がお留守になってますよ」

 

足払いを掛けられ体勢を崩されたマァムの腹にはいつの間にか拳が置かれていた

 

「ふっ!」

 

ダイにも食らわせた一拍子で放つ寸勁がマァムを打ち飛ばす

 

「うぅ……!?」

 

腹を押さえながらマァムはすぐに立ち上がる

 

(派手だけどダメージは少ししか無い、飛ばしただけ……やっぱりこの人……)

 

マァムは追撃をして来ない美鈴に確信する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおいヤベェぞ!全然相手になってねぇぞマァムの奴」

 

「頑張れマァムさーん!」

 

ヒムが慌てチウが応援する勇者一行の待機所

 

「まっこんなもんだろ、マァムにゃ悪いけどよ」

 

「むしろ相手に感謝すべきだ」

 

ポップとヒュンケルは特に驚く事無く見ている

 

「どういう事だポップ?ヒュンケル?」

 

クロコダインが問う

 

「マァムの奴、弱くなってんだよ……最終決戦のあん時よりよ」

 

「何だと?……今思えば心当たりはあるな」

 

クロコダインは先日の旧都から帰ってきた時の疲れているマァムの言葉を思い出す

 

「だろおっさん?あいつ破邪の洞窟でも言ってたろ?軽い鍛練しかしてねぇって……修行してねぇんだよ全然」

 

「だから動きが鈍く体力も落ちているのか」

 

「そういう事、平和だったからなぁ」

 

「修行する必要も意味も無かったと言う事か」

 

「それが悪いとは言わねぇよ?平和なのは良いこった、戦いが無いのに越したこたぁねぇさ……けど今に関しちゃ完全に裏目に出てるって事」

 

マァムはバーンを倒し世界が平和になった後、戦いの無い日常に戻った事で武から心が離れた

 

平和の為に鍛えた力は平和になった後に意味を失ったからだ

 

それでも培った力を捨てる気は無かったマァムは最低限とも言えるような軽い鍛練しかしてこなかったのだ

 

力量が落ちて当然である

 

「酷な言い方だけどよ、中途半端だったんだマァムはよ……捨てたくはないけどこれ以上鍛える気も無いじゃあこうなって然りってもんよ」

 

マァムは元より戦いが好きではなく魂の性質も根本的に戦いに向かない慈愛、故に平和になった以上避けられない事だったのだろう

 

「相手はそれに気付いてわざと手加減している、舐めているのではなく稽古に俺は見える、そうでなければマァムはとうに立ってはいない……それ程相手の力量は見張るモノがある」

 

ヒュンケルをして脅威と感じる美鈴の実力

 

「強いのは間違ってないと思うよ、あの人めちゃくちゃ体調悪い時にオレ一撃貰っちゃったから」

 

「やはりな、ならば尚更あれは稽古がしっくりくる」

 

美鈴の本来の実力を見抜いた一行だが見ている事しか出来ない、せいぜい出来て応援程度が精一杯

 

(これがマジで稽古なんだとしたらだ……レミリアが許すとは思えねぇな、あの門番の独断か?まさかレミリアの指示……?だとすりゃ稽古はついでか?他に意味があんのか……?)

 

主であるレミリアがこの状況に黙っているのが気になった、レミリアなら圧倒しろぐらいのオーダーはしそうだから

 

ポップはレミリアの様子を見ようと顔を向けるがクロコダインの声がそれを遮った

 

「む……マァムが動くぞ、何か仕掛ける気だ」

 

二人を注視する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フゥゥゥ……ハアッ!」

 

気迫を高めたマァムの右手が光を灯す

 

「んん……?」

 

美鈴は眉をひそめて光る拳を睨む

 

「武神流……閃華裂光拳ッ!!」

 

明らかに異質だとわかる拳

 

これがマァムの……否、武神流の奥義の一つ

 

「先に言っておくわ、この技は受けたらタダじゃ済まないから」

 

「……の様ですね」

 

美鈴もマァムの光る拳を脅威と感じている

 

「わかりました、少しはその気になったようで何より……続けましょうか」

 

しかし美鈴の表情は崩れない

 

「さぁどうぞ」

 

「ッ……ハアアアアッ!」

 

マァムは駆け、美鈴に肉薄し右拳を放つ

 

(ふむ……効果範囲は拳のみですがやはり触れるのは避けた方がよさそうですね)

 

軽やかに避け目の前でマァムの光る拳を観察する美鈴

 

効果の程は美鈴にはわからなかったが触れぬに越した事はなく触れぬのも容易

 

その美鈴に瞬脚が迫る

 

「……!ハアアッ!」

 

脚も避けられたがマァムは攻撃の手を緩めず攻め続ける

 

「……おっと危ない」

 

光る右拳が打つ直前に止まり直後に来た左拳を言葉とは裏腹に難無く避ける

 

「成程、少し知恵を絞ったみたいですね……ですがどうという事はありません、当たらなければ」

 

「くぅ……!?」

 

マァムは歯噛みながら当たらない攻撃を続けるしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつ閃華裂光拳使ってやがるぞ!?何考えてんだあのバカ!」

 

ポップは慌てた

 

「マズイぞポップ、当たれば最悪の事態になりかねん……止めるか?」

 

「ああ……事故が起きる前に止めねぇとレミリアに殺されるぞ」

 

クロコダインとポップは止めようと動こうとする

 

「いや……おそらく大丈夫だろう」

 

ヒュンケルがそれを止めた

 

「何でだよヒュンケル?おめぇもあの技の恐ろしさは知ってんだろうがよ」

 

「無論わかっている、それでも俺が止めるのはマァムのアレは苦肉の策に見えるからだ」

 

「苦肉の策だぁ?どういう事だよ?」

 

「当たらないのをわかっていて使っているという事だポップ」

 

「ああ?意味わかんねぇ……いや待てよ?……駆け引きに使ってるって事か?」

 

「そうだ、あの技の詳細は知らずも脅威を見抜けぬ相手ではない、あの技に意識を割かせて他を当てようとしているんだ」

 

ヒュンケルが言う通りマァムは閃華裂光拳を駆け引きに使っていた

 

彼我の差は絶対、正攻法では当てる事は到底叶わないのは今までで理解したマァムはその差を駆け引きで埋めようと使ったのだ

 

絶対に避けなければならない閃華裂光拳に意識を使わせて他を活かす為に

 

「……現実は甘くはなかったがな」

 

それでも軽々と捌く美鈴に厳しい顔をヒュンケルはする

 

「……理由はわかったぜ、だがよ?レミリアがどう捉えるかは別問題なんだぜ……」

 

ヤバイ事にならない事を祈りながらポップはレミリアの居る観客席を見る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何……アレ?危険な感じがするけど?」

 

マァムの光る拳を見てレミリアは顔をしかめていた

 

「あの拳に纏ってるのは回復魔法ね」

 

「回復魔法?殴れば回復させるって事パチェ?そんなマヌケな技じゃないでしょうにアレは?」

 

「でなければ美鈴が避ける理由が無いわね……ちょっと待ってレミィ、回復魔法……ああそういう事……わかったわ」

 

パチュリーはあの技の詳細を理解したようだ

 

「回復魔法には過剰な回復促進エネルギーを与えて相手の生体組織を壊死させて破壊する「マホイミ」と呼ばれる技術があるのよ、彼女はそれを武術に昇華しているみたいね」

 

「それって……当たれば打撃の威力に関係無い防御不能の決殺技って事じゃない」

 

技の詳細を知ったレミリアの表情に怒りが滲む、故意の殺害を禁止にしたのに必殺の技を使っているのだから当然

 

「まぁ落ち着いてレミィ、見る限りあの二人はお互い理解し納得して戦ってるわ……当てれない、当たらないのは承知の上でね」

 

「……私は美鈴を信頼しているわ、あんな腑抜けた小娘なんかに負けるなんて絶対に有り得ないと確信するくらいにはね」

 

パチュリーにやんわり抑えられて落ち着いたレミリアは言う

 

「それでもねパチェ……ほんの僅かでも危険な可能性が有るなら私は見過ごせない、美鈴は私の家族だから」

 

長年慕ってくれる者への想いを語ったレミリアは文へ合図を飛ばす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セアアッ!」

 

閃華裂光拳を囮に使った渾身の前蹴りも美鈴には避けられた

 

「はぁ……はぁ……!?」

 

「息が切れてきましたね、少し休憩としますか」

 

息も切らさず余裕の美鈴は自分から距離を取る

 

 

『両者一旦中断してください!レミリアさんから主催者権限が発動されました!』

 

 

文の声が響き、内容にマァムはドキリと胸を鳴らす

 

『今マァム選手が使用している技は禁止になりました!理由は死に至る可能性が非常に高いからです!』

 

『互いに納得済みなのを考慮し試合は没収しないし粛清もしないが次に使用した場合は容赦しない、との事です!以上です!では再開してください!』

 

要は閃華裂光拳が使用禁止になっただけ

 

「わかったわ……ふぅ」

 

それだけで済んだとも言える

 

マァムは賭けで使っていたのだ、最悪を覚悟しながらもこのいかんともし難い差をどうにかしたかった

 

(無駄だったわね……)

 

結果はどうにもならなかった、禁止された分不利になったとも言える

 

「さて……そろそろ厳しく行きましょうか」

 

「……!!」

 

しかしその胸中には変わったモノが在った

 

(よろしくお願いします……!)

 

武へ対する意識の変化が……

 

 

 

 

 

 

「う"っ!?」

 

美鈴の裏拳が頬を打つ

 

「っ……くっ!?」

 

堪らず離れたマァムだが美鈴がわかっていたように間を置かず付いてくる

 

「イッツゥ!?」

 

更に離れようとしたマァムを痛みが襲う、足に痛みの原因を知り踏まれ離脱を阻止されたのだと理解する

 

「身体操作もサボっていた割にはですがまだまだ未熟」

 

「うぐっ!?」

 

掌底が顎に入る

 

「ですがそれよりも何より……読みが甘い」

 

反撃に繰り出した腕を掴まれ、力の流れを操作され宙を舞いリングに叩きつけられる

 

「うあっ……!?」

 

何とか受身は間に合わせたもののダメージは低くない

 

「ッ!!?」

 

苦悶のマァムの眼前には脚を上げる美鈴の姿、踏みつける気だ

 

「くっ……!?」

 

転がり避けた瞬間、大きな音が響き、美鈴が震脚を放った箇所は陥没していた

 

「危なかったですね」

 

「……」

 

涼しい顔をする美鈴とは逆に踏まれていた時を想像し青冷めるマァム

 

(……未熟を恥じるばかりだわ)

 

胸中には激しい後悔

 

(強力な技を持っている、それだけじゃまるで不十分……!)

 

閃華裂光拳

 

確かに強力な技である、だがそれだけで戦いに勝てるかと言われたら違う

 

どんな技も適材適所、使うべき瞬間に使わなければ効果的にはならない

 

そして武において強力な技に繋げる為には基本技、流派によって異なる基礎と言うべき要、言うなら小技が重要

 

それを用いて相手を崩し、必殺の技まで繋げる事こそ武道家の真髄なのだ

 

(全盛期のブロキーナ師匠もこんな感じだったのかしら……)

 

今目の前に居る女性は武の全てにおいて極めて高いレベルに立っている、今だ技らしい技を使わず基本のみで自分をあしらっている事実がマァムを震えさせる

 

(凄い、本当に……凄い……)

 

感動すら覚える相手への惜しみ無き称賛

 

そう成りたいと思わせる武の高みに相手をして貰える歓喜がマァムを震えさせ、立ち上がらせる

 

「……常在戦場、武道家とは常に如何なる時も修行と心得よ」

 

そんなマァムを見た美鈴は言う

 

「私と同じ東方不敗を掲げる友人が言っていた言葉です」

 

マァムは受け入れるように構えを解く

 

「私もその通りだと思います、武は一日にして成らず、長く過酷な鍛練を経てもほんの一端しか身に付けれず怠ればすぐ落ちてしまう……武とは、道を極めるとはそんなモノですよ、私とてまだまだ修行中の身です」

 

「……はい」

 

自分より武道家として遥かに強く気高い美鈴の言葉はマァムの心に強烈に刺さる

 

「あの……お願いがあります」

 

「何でしょう?」

 

「……本気を、貴方の本気を見せてくれませんか」

 

願うのは高みの正確な位置、手加減された状態から推察する朧気な位置ではなく、身体で体感する美鈴の真の実力

 

「ふふっ……いい顔になりましたねマァムさん、武神流を背負う武道家の顔に……わかりました、お見せしましょう」

 

少し嬉し気に美鈴は指を一本立てる

 

「ただし、それまで立って居られれば……になりますが」

 

これも稽古の内だと言うように笑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……フンッ、美鈴め余計な世話を……」

 

ミストは悪態ついた

 

「何だよミスト?怒ってんのか?」

 

「当然だ妹紅、バーン様の敵に成り得る者に塩を送るなど私からすれば愚か過ぎる行為だ」

 

「あーそうか、お前はそういう立場だもんなぁ……だけどよ、バーンが立ち直らせたいって言ったんだぞ?」

 

「それはダイに対してのみだ、他の使徒共に施しをする必要は無い……バーン様が何も言わぬから私も言わぬだけ、了承はしたが納得はしていないという事だ」

 

「お前らしいよホント……そんなお前だからバーンも信頼するんだろうな」

 

美鈴を見るミスト

 

「嬉しいか?お前の師匠が圧倒してて」

 

「美鈴の実力を考えれば当然の結果だ、嬉しさなど有りはしない……だが、アバンの使徒共には散々苦渋を舐めさせられた事を思えば多少は胸が空く思いではある」

 

「理由が卑屈過ぎんだろ、素直に美鈴の方が強くて嬉しいって言えよなお前はよ~」

 

「……強いて言うなら、誇らしいが正しいな」

 

「お?美鈴が相手より強い武道家なのがって事だろ?終わったら美鈴に言っといてやるよ」

 

「やめろ、調子に乗る」

 

「ハハハ!……つーかよ、バーンは何処にいんだよミスト?」

 

「……すまんが私にもわからん、先に行けと命令されてから見ていないのだ」

 

「何やってんだあいつ……?まぁ来るって言ってたしどっかにはいんのか?」

 

バーンの姿は観客席の何処にも無い

 

「おっと……もう佳境かな?」

 

「ああ……佳境だ」

 

戦う二人を注視する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かはっ……!?」

 

マァムの鳩尾に美鈴の前蹴りがメリ込む

 

「まだ6割ですよ、限界ですか?」

 

徐々に加減の段階を下げていく美鈴はその度に手痛いダメージをマァムに与え続けていた

 

「ッ……まだ……!」

 

マァムは攻撃をするが容易く捌かれ返す反撃で全身を滅多打ちにされ吹き飛び倒れる

 

「よろしい、では立てれば本気を見せましょう、流派東方不敗の全力を」

 

美鈴は言うがもうマァムは限界で立てないともわかっている、わかっていて鼓舞するように敢えて言うのだ

 

「ハァ……ハァ……うぅぅ……」

 

酷いダメージに体が動かない

 

「ぐぅぅ……うぅぅ……!?」

 

(意思は認めますがさすがに無理か……)

 

もはや気絶していてもおかしくないマァムに終わりを悟る美鈴の前で突如、マァムが輝き出した

 

(……これは、回復魔法……)

 

癒しの光が数度明滅しマァムの傷が癒えていく

 

「ふぅ……よし、魔法力は空になったけど充分ね」

 

武道家故に魔法力自体は少ないがダメージを大幅に回復させたマァムが立ち上がる

 

「立ちました、見せてくれるんですよね?貴方の本気を……」

 

「!!」

 

美鈴は驚いた顔を見せた

 

(武術においてあまり褒められた行為ではない魔法を使ってまで私の本気を見たいのですか……)

 

その想いを知り、笑った

 

「言ってしまいましたからね、今更吐いた唾は飲めません……わかりました、本気を出しましょう」

 

熱意を感じた美鈴は穏やかな表情から一変し武道家の顔になり、集中する

 

「……ッ!?」

 

マァムは美鈴から見てわかる程の恐ろしい集中力と内から高まる凄まじい闘気を感じ取り戦慄する

 

「黄金の……闘気……」

 

美鈴から収まらず立ち昇る金色の闘気・聖光気に視覚から圧倒される

 

「凄い……なんて凄さなの……」

 

饒舌に表せない美鈴の力にただただ見入るばかり

 

 

「さて、このまま戦ってもいいですがそれだと味気無いので技をお見せしましょうか」

 

 

「……!!」

 

マァムはハッとし冷や汗を浮かべる

 

美鈴はまだ技らしい技を使っていない、今のままでも充分過ぎるのにも関わらず

 

それがマァムをこれ以上無く戦慄させた

 

 

「せっかくですから私の最高の技をお見せしましょう、加減はしますので御安心を……」

 

美鈴の気が高まっていく

 

荒れ狂う黄金の気が美鈴の内に留まりその力を最大限に高め

 

構えを解いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい……何だよありゃあ!?」

 

ポップが声をあげる

 

「凄まじい闘気を内に留め威力を上げているんだ、次に放つ技の威力を!」

 

「なんという集中力だ……!」

 

ヒュンケルがまだ前段階だと察しクロコダインが驚愕する

 

「おいダイ……アレ、なんかよ……」

 

「わかるよポップ……構えてないけど感じがそっくりだ、あの……「天地魔闘の構え」に……」

 

美鈴からあの難攻不落だった恐ろしい技を思い出す

 

「いや……だけどよ、同系統の技なら動けないカウンター技だ、マァムから攻撃しなけりゃ……」

 

「いや、ポップ……動く!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この技はバーンさんに教えて貰った天地魔闘の構えを私なりに昇華させた技、構えず動く事を可能にした私だけの……天地魔闘です」

 

留めるのも難しい力を内包しながら美鈴は歩く

 

「天地魔闘の構えを……!?そんな……」

 

美鈴の最高の技たる無構の武神技

 

それをまだ表面だけしか見ていないのにも関わらずマァムはその高みの果てしなき高さにもはや驚きを通り越した顔をしている

 

「当然昔はこの技の元である構えすらおぼつきませんでしたよ?これもまた修行の成果です」

 

「……ッ!!?」

 

間合いに入りマァムの眼前で立つ美鈴

 

「……ハアアアアッ!!」

 

マァムの拳に全闘気が集中されていく

 

もはや手の打ちようはマァムには無かった、だが何もしないのは違う、例え破れかぶれだろうと戦う意思は最後まで絶やさない

 

それが礼儀だと思ったから

 

 

「武神流!猛虎破砕拳!!」

 

 

閃華裂光拳に並ぶ武神流のもう一つの奥義、それを放つ

 

 

 

「お疲れ様でしたマァムさん、この後にどうするかは貴方次第です」

 

 

限りなく凝縮された時の中でマァムは美鈴の声を聞いた

 

 

 

 

 

 

「紅符「天地魔闘」!!」

 

 

 

 

 

 

 

刹那の三連撃は終わっていた

 

 

 

 

「…………」

 

吹き飛んだマァムは動かない、完全に気絶している

 

 

 

「相変わらず神技だな……見えたか妖夢?俺には見えなかった」

 

「はいロン・ベルクさん、まず正拳を躱し彩光蓮華掌で腹部を打ちました、打つと同時に掌から星脈地転弾が炸裂、炸裂を追うように地龍天龍脚が入り……終わらせました」

 

「3秒にも満たんあの一瞬で……流石と言うべきか」

 

「私と一緒にバーンさんに稽古をつけて貰ったんです、当然ですよ」

 

妖夢はやる気を更に焚き付けられて剣を強く握る

 

 

 

 

 

 

 

『マァム選手気絶!よって勝者は紅美鈴選手だーーーッ!!』

 

文の宣言によって一回戦は幻想郷の勝利にて終了した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありません、少しやり過ぎてしまいました」

 

マァムを抱え永琳と共に来た美鈴が一行の控えスペースでマァムを寝かせる

 

「いやいや気にしないでくれ美鈴さん、こいつにゃ良い機会になったろうさ、自分を見つめ直す……な」

 

寝かされたマァムへベホマを掛けながらポップは笑う

 

「これでよし、すぐに目も覚めんだろ」

 

「では私はこれで失礼します」

 

「私も要らなかったわね」

 

美鈴と永琳が戻って行くのを見送りポップはしばらくレミリアを見て苦い顔をすると皆に振り向いた

 

「あー皆……今レミリアからお叱りを受けたぜ、真面目にやれってよ」

 

ポップはレミリアに目でそう言われたのだ

 

「遊びでも本気でやれって言ってんだ、その為に永琳さんやら世界樹の葉を準備してんだからってよ……それをわからせる為の対戦でもあったみてぇだ」

 

気楽にやろうと言った張本人のポップは気まずそうに頬を掻いた

 

「つーわけで残り全部勝ちにいくつもりでやるぞオメーら!!」

 

「俺は元よりそのつもりだった」

 

「俺もだ、やるからには本気だぜ」

 

「オレもだよ」

 

「な、何だよオメーら……俺だけ悪者にすんなよなぁ」

 

ポップはいじけたように拗ねて皆が笑う

 

「ガハハ!やる気が出て結構ではないか!さて次の対戦だが……む?既に誰か居るな……アレは確か……」

 

クロコダインの気付きに皆がリングを見る

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ次に行きましょう……と言う前に既にリングに誰かスタンバってるぞー!あれは白玉楼の魂魄妖夢だー!』

 

 

 

 

「フゥゥ……よし!」

 

精神統一をした幻想郷唯一の剣士妖夢は目を開け勇者一行の方を睨んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が出る……指名のようだ」

 

ラーハルトが立ち上がる

 

「手合わせ願われたもんなおめーは」

 

「俺が行きたいところだが指名なら仕方ない……行ってこいラーハルト」

 

皆が出るのに納得する中、ラーハルトはダイの前で膝をついた

 

「ダイ様、御命令をください」

 

「えぇ!?命令ってどういう事だよラーハルト?」

 

いきなり跪き命令しろと言うラーハルトにダイは困惑する

 

「勝て、と命令して欲しいのです、それだけで俺の勝利は揺るがないものになるのです」

 

それはラーハルトなりの勝利への誓い

 

何よりも優先される竜の騎士からの命令を持って仲間へ勝利を持たらすと決めた絶対の誓い

 

「……わかったよ、勝ってよ……ラーハルト」

 

「はっ!」

 

主君への誓いを決めて立ち上がったラーハルトの姿が消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『来ましたー!勇者一行からの次の刺客は陸戦騎ラーハルトーーー!!ちなみに私はこの人嫌いです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二回戦 魂魄妖夢VSラーハルト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中々の見せ物だ……久方振りに、楽しめそうではあるな」

 

 

何処かで……王が一人呟く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は早かった!いよいよバトルとの事でテンションが上がり頑張りました!

今回から勇者一行と幻想郷の合唱という事で続いていきます。

さてこの結果はどうでしたでしょうか?
最終決戦後に慈愛と母性の象徴たるマァムはこうなってもおかしくはないんじゃないか?という考えのもと弱体化、敗北となりました。
決してマァムが嫌いで虐めようとした訳ではないです。

次回も頑張ります!

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