東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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-秘伝- 幻想曲(ファンタジア) Ⅵ

 

 

 

時は少し戻り

 

 

-人間の里-

 

「やっと戻って来れた……もう歩きっぱなしで疲れたわ、ルーラって凄く便利って改めてわかるわね」

 

旧都から戻ってきた6人は武器類を門番に預け里の中へ入る

 

「なんだマァムこれぐらいで音をあげて?昔はこれぐらい日常茶飯事だっただろうに……ポップが言ったように鈍ったか?」

 

「しょうがないじゃないクロコダイン、魔物は大人しくなって争いが無いって意味では平和だったんだから……デルムリン島で生活してる人達と一緒にしないでよね」

 

「ガハハハ!あそこの生活は肉体労働が基本だからな、鈍る暇は無い」

 

「むしろ鍛えられるまでありますもんね」

 

宿に向かって進む6人だがダイだけ足取りが鈍い

 

「……まだ気にしてるのかダイ?」

 

「……」

 

クロコダインが話しかけるがダイは答えない、無視しているのではなく無言が肯定という意味である

 

「大丈夫だ、勇儀はあれくらい気にする奴ではない」

 

「……うん」

 

ダイは返事をするがそれは空返事

 

勇儀に迷惑を掛けた事は勿論悪いと思っているがそれよりも迷惑を掛けてしまう自分の事に嫌気を感じていたのだ

 

(何でオレはあんな事言っちゃったんだ……)

 

少々強引ではあったが勇儀は悪い事をしていない、なのに自分でも知らずの内に沸いた敵意を向けてしまった事がダイを悩ませる

 

(オレは……おかしくなっちゃったのか……?)

 

まるで自分が自分でない様

 

バーンに敗北し自信を失った時に似てはいるが比にならない程酷い

 

(みんなに迷惑掛けてばっかり……今までも……多分、これからもずっと……)

 

暗雲しか見えない未来に心は荒む

 

(なんでオレばっかり……なんでだよ……なんでこうなるんだよ……)

 

理不尽を一身に受けた幼い純心は穢れていく

 

(なんで……あいつばっかり……)

 

幻想郷に来てから加速度的に進んでいる

 

(オレは……誰なの?人間を守る竜の騎士?人間に恐れられる化物?どっちなんだ……)

 

内に孕まされた呪いの芽が蠢く

 

人間の底無しの欲望が育てた悪の華

 

咲けば否応無く人間は食い殺されるだろう

 

自ら育てた魔竜によって人間は滅ぶのだ……

 

(オレは……オレがわからない……教えてくれ……助けてくれよ……ポップ……)

 

親友へ声無き悲鳴があがる

 

その悲鳴は親友も聞こえている、聞こえているがどうにも出来ない

 

虚しき想いだけが幻想の空へ消えていく

 

 

 

 

「宿の主人に伝言があったぜ、ヒュンケルは今日手術するみてぇだ、ポップは付き添いだってよ、今日は戻らねぇかもって言ってんな」

 

「時間が掛かるのにえらく急ね……何かあったのかしら?何だか心配になって来たわ……私も見に行こうかしら、皆はどうする?」

 

「確かにそうだな、俺達が帰った後でも良い筈だが……少しでも早く治したいとヒュンケルが焦ったか?」

 

「いや、いくら焦ったところでたかが数日だヒュンケルならばそんな勝手な真似はすまい、医者の都合ではないか?」

 

「ポップも同意してる辺りそれっぽいな~」

 

「ならば誰か様子を見に行くか?」

 

「んじゃ俺が見に行ってやるよ、永遠亭には一応行った事があるしよ」

 

「じゃあヒム……頼んでいいかしら?」

 

「あいよ、任せとけ!そんじゃ行ってくるぜ!」

 

「コラ何勝手に決めてんだいヒムちゃん!ボクも行くよ!一人じゃ心配だからね!隊長としてボクも一緒に行こう!」

 

「お?じゃ行こうぜ隊長さんよ!」

 

ヒムとチウが抜けて永遠亭へ向かう

 

「ふむ、なら俺達はどうするか……」

 

「夕食でも食べない?クロコダインが星熊さんと出会った屋台に行ってみたいわ」

 

「おお!良い店だぞ彼処は!俺は構わんがダイとラーハルトはどうだ?」

 

「オレも良いよ!行こうよ!」

 

「俺はダイ様に従う」

 

「なら決定だ、では探すか……屋台だからな、前と同じ場所とは限らん」

 

4人はミスティアの屋台を探して里内の探索を始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-人間の里・寺子屋-

 

「今日は助かったロラン、子ども達も大喜びだったよ」

 

「だと良かった、僕も楽しかったよ」

 

子ども達が皆帰った寺子屋の前で慧音とロランは談笑していた

 

「人気だったなお前は、次はいつ来てくれるのかとせっつかれて困ったよ」

 

「本当かい?それは嬉しいな……じゃあまた誘ってくれ、いつでも良いよ」

 

「助かるよ、また近い内に頼むと思う……おや?迎えが来てるぞロラン、丁度良いタイミングだ」

 

慧音が指を向けた先にはルナが二人に向けて走ってきていた

 

「やっと見つけた!ロランさーん!」

 

二人の前で止まるとまずは慧音に挨拶する、しっかり常識を身に付けている様で慧音も笑顔で頷き挨拶を交わす

 

「妹紅は?」

 

「まだ紅魔館に居ると思うよ、私だけ先に帰らされてロランさんと合流しとけって言われたの、里に居る筈だからって、それで置いていってごめんって言っといてくれって」

 

「やっぱり紅魔館だったか」

 

慧音とロランは顔を見合わせて苦笑する

 

「妹紅はまだ時間が掛かりそうだったかい?」

 

「わかんない、だから先に帰ってろって言われたよ」

 

「そうか……じゃあ何か夕食の材料を買って帰ろうか、今日は僕が作ろう」

 

「私も手伝います!」

 

慧音に別れの挨拶を交わして二人は里の商店へ向け談笑しながら歩いていく

 

(妹紅が紅魔館で時間が掛かってるという事は多分……外来人達の事だろうな)

 

魔理沙から簡単な事情を聞いているのでロランは知っている

 

外来人達はバーンを倒した勇者一行である事を

 

(バーンを倒した勇者……)

 

ロランの胸中に込み上げるモノがある

 

(僕が勝てなかった……竜の騎士……)

 

悔しさ

 

太陽神異変の際に戦い敗北した苦き経験から来る強い悔しさの感情

 

(ダメだな……いつまで経っても悔しい、負ける事は許されなかった戦いだったから余計にだ……)

 

ロランはあの当時ダイを知らなかった、名前はおろか竜の騎士など当然知らない

 

あの戦いの後に妹紅から聞いてそこで知ったのだ、バーンを倒した勇者であり竜の騎士である事を

 

だから尚更悔しかった、同じ勇者に負けてしまった事が何より悔しかった

 

無意識の対抗心、ライバルに負けてしまった様な異常な悔しさがあったのだ

 

(次に戦う時は……負けない!)

 

それが叶う日は限り無く無いのかもしれないがその悔しさを糧に今も鍛え続けているのだ

 

「あ!ミスティアさんこんばんわー!……何買うのロランさん?」

 

「ん?ああ……そうだね、ルナは何が食べたい?」

 

「私カレーが良い!」

 

「好きだねカレー、わかったよ、えーと家に有る材料は何があったかな……ああ肉が無いね、買おうかルナ」

 

「はーい!」

 

店を目指して歩く二人

 

「あ!」

 

ルナが気付いて声をあげる

 

「クロコダインさんだー!」

 

「あ!ルナ……」

 

知り合いを見つけ走って行きロランも慌てて追いかけていく

 

「クロコダインさーん!」

 

「おおルナか!昨日ぶりだな!」

 

掛け寄って来たルナの頭を大きな手で撫でてやるクロコダイン

 

「皆さんもこんばんわ!」

 

他の3人にも挨拶したところでロランが追い付いてきた

 

「この人達が昨日言ってた人達かな?」

 

「そうだよ!昨日はご馳走さまでした!」

 

「ああやっぱりそうか……」

 

ロランは話題に上がった外来人だと確信しほんの僅かに緊張する

 

「ちゃんと礼が言えて偉いなルナは」

 

クロコダインに褒められて嬉しそうにルナは笑う

 

「僕からもお礼を……」

 

「いやいや!気にしないでくれ父殿!こちらも色々と教えて貰って助かった、あまり気を使われると逆に困る」

 

「……でしたら感謝だけでも伝えさせてください」

 

ロランが御礼を言葉にしようと息を整える

 

「ありがとう……」

 

頭を下げようと動いた視線

 

「……!!?」

 

それがクロコダインの後ろに居る3人を写し、一人の青年を強く捉え、固まった

 

「……?」

 

見据えられたダイは戸惑いながらもロランから妙な感覚がするのを自覚する

 

「君か……バーンを倒した勇者は……竜の騎士……!」

 

ロランは一目でわかったのだ

 

面影は残しながらも成長し背格好はまるで違うがあの自身が敗北したナイトバーン、竜の騎士であると

 

「誰……?この人も……勇者……?」

 

一方でダイはロランとは初対面

 

見ただけで自分とは異なるが何か特別なモノを感じたダイはそんな初対面の人が何故敵と遭遇したかの様な目で見てくるのかわからず戸惑い、後退し構えとは言えぬレベルで身構える

 

「ッ!!」

 

その動きに反射で反応したロランがロトの剣に手を掛ける

 

「えっちょっ!?どうしたのロランさん!?」

 

ロランは幻想郷から信頼を得ているので有事の際にすぐ動ける様に里内でも武器の携帯を許可されている

 

それが今回は悪い方へ作用した

 

「ダイ様!!」

 

直ぐ様ラーハルトがダイの前に盾の様に立つ、クロコダインとマァムも臨戦態勢に入るのだがダイ達は武器類は預けているので丸腰

 

「……」

 

「……」

 

一瞬の静寂、緊迫した空気が張り詰める

 

「ロランさん!!」

 

「……ッ!?」

 

ルナの叫びにハッと我に帰ったロランはすぐに剣から手を離し頭を下げた

 

「申し訳ない、敵意は無いんだ僕の勘違いで大変な非礼を行った事を謝らせて欲しい……すまなかった」

 

姿勢正しく深い謝罪を許しが得るまで続ける

 

「……よくわからんが敵ではないという認識で良いんだな?」

 

「はい、ロトの名に誓って」

 

また静寂が訪れる、その間もロランは謝罪の姿勢を一切崩さない

 

「……だそうだがどうするダイ?」

 

クロコダインが問う

 

「勘違いだったんでしょ?ならオレはもう大丈夫だから許してあげようよ」

 

「だそうだ」

 

「……感謝します、本当にすまなかった」

 

許しを得てようやくロランは顔を上げ再度非礼を詫びた

 

 

 

 

 

 

「まさかダイによく似た敵と戦った事があるとは驚きだ」

 

勘違いの事情を話し4人は驚きながらもロランの人柄を知り納得していた

 

「ええ、負けてしまった悔しさが燻っていたみたいで……似ているダイ君を見て混乱してしまったみたいです」

 

ロランは虚実を混ぜて説明していた、その方が面倒にならないと思ったからだ、平行とは言えダイ本人と戦った事実は特に言う必要は無い

 

「ビックリしたよオレ」

 

「ごめんなさい……」

 

「ルナちゃんが謝る必要ないわよ、けどルナちゃんが居なかったら危なかったわね」

 

「だね、ありがとねルナ」

 

誤解も解けて緊張も弛み談笑が出来るまでになった

 

「そろそろ帰らないとお母さん帰って来ちゃうよ?」

 

「ああそうだね……すみませんが僕達はそろそろ帰るとします、非礼の御詫びも出来ず心苦しいですが……」

 

「もう気にしないでくれて結構だロラン殿、だが気が済まぬ気持ちも俺はわかる……そうだな、俺達はあと数日は幻想郷に居るから飯でも奢ってくれ、それで遺恨無しとしよう」

 

「わかりました、必ず果たします」

 

「さようならー!またねー!」

 

また会う事を約束しルナが店の方角へ向けて歩きだす

 

「……」

 

だがロランは立ち止まってダイを見つめていた

 

「……最後に、ダイ君……少しいいかな?」

 

「え……?うん……はい」

 

何だろうと戸惑いながらも了承したダイへロランは近付いて行き、真っ直ぐにダイを見つめた

 

「ッ……!?」

 

強い瞳に堪えきれずダイは目を逸らす

 

「……僕の目を見てくれ、ダイ君」

 

「……!」

 

優しく語り掛けたロランにおずおずと顔を向けるダイ

 

「……」

 

「……」

 

互いの視線が交差する

 

「……涙を流す時もある、冷たい雨に震えながら……太陽を見失って」

 

ロランが呟く

 

「だけど……雨はいつか止む、誰かが晴らしてくれるかもしれない、それまで雨に打たれないように傘を広げたり雨宿りしたっていい」

 

ダイの肩を軽く叩き、ロランは踵を返す

 

「勇者とは……諦めない者の事だ、それを忘れるな」

 

最後にそう言うと遠目に早くと急かすルナの元へ歩いて行った

 

「……」

 

その背をダイは見えなくなるまで見つめていた

 

「……大丈夫かダイ?」

 

「うん……大丈夫だよ、行こう」

 

4人もミスティアの屋台へ向けて歩きだしていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-夜・迷いの竹林-

 

「ポップ!」

 

ヒムとチウは昨日てゐに案内された竹林の入口でポップを見つけた

 

「お?なんだおめぇ達来たのか」

 

「いきなり今日するなんて言うから心配になってよ、それよりなんでお前こんな所にいんだよ?」

 

「ああ、永琳さんが手術に集中するってんで追い出されたんだよ」

 

「ふーん……で?どうなんだヒュンケルの手術は?上手く行きそうかよ?」

 

「邪魔されなきゃ成功率は98%って言ってたから大丈夫だろ」

 

「98ぃ?何か絶妙に不安が残る数だなオイ」

 

「絶対とは言えないからだってよ、2%の内訳は永琳さんのミスが1%、助手のミスが1%だ」

 

「ほー……まっ実際そんだけありゃ充分か、こういう事は絶対成功するって言う方が胡散臭いわな」

 

「そういうこった、ああそうそう!手術の方法が変わってよ、早い回復魔法の方になったぜ」

 

「はぁ!?それを先に言えよなテメーはよぉ!」

 

「悪い悪い、でも朗報だったろ?」

 

「まぁな、じゃあ終わるまで待つか」

 

「ありがたいぜ、俺一人じゃ暇だったからなぁ」

 

一応と持ってきた軽食をポップに渡し談笑に入る

 

「あ!そうだポップ!聞いてくれた?」

 

「何をだよチウ?」

 

「レミリアに月に行けるかどうかさ」

 

「あ……忘れてたわ、わりぃ」

 

「忘れるなよバカポップ!」

 

夜は過ぎてゆく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-永遠亭-

 

「……」

 

永琳は麻酔で眠らせたヒュンケルを見ている、準備は既に完了している

 

(そろそろ来る時間ね)

 

そう思った矢先に手術室の戸が開いた

 

「時間通り……ね……」

 

振り向いた永琳は硬直する

 

「すぐに済ませる、準備は出来ているだろうな?」

 

緑を基調とした神官服を着た男を見たからだった

 

「どうした何を呆けておる永琳?」

 

「……ごめんなさい、あまりに完璧なカモフラージュだったからわかっていたのに別人が来たのかと勘違いしてしまったのよ……バーン」

 

「マヌーサに加え幻術と認識阻害の魔術も併用しているからな、お前と言えど無理もない」

 

この男の中身はバーン

 

ヒュンケルの治療にバーンが関わる事を勇者一行に知られない様に徹底して偽装した姿だった、もし永遠亭に入るまでに勇者一行の誰に見られても永琳がそういう設定で呼んだクリフトで通せる様に

 

「約束通り来たかバーン」

 

手術室の入口から声が聞こえバーンは振り向く

 

「お前も来ていたのかロン・ベルク」

 

「お前が代金をちゃんと払うか見届けにな」

 

酒瓶を片手に若干意地悪そうにロンは微笑む

 

「……心配せずともお前が打ってくれた魔剣の代金は必ず払ってやる、反古にはせぬ」

 

バーンがヒュンケルの治療に協力するのはその昔にバーンがロンに遥かな先に生まれるだろう二人の子の為に打って貰った血統の剣と称される2本の魔剣にある

 

「当然だ、結局お前は頼んだだけで何もしてないんだからな」

 

剣を打つのにオリハルコンが必要でバーンは確保を約束したが光の教団を撃滅した際にロンが手に入れていたのだ

 

言わば代金の代わりである材料をロン自身が用意した為にバーンは対価を払っていないのだ

 

そしてヒュンケルの治療にバーンの協力があれば早く治せると知ったロンがこれ幸いと利用し無理矢理協力させていたのだ

 

「言っておくが余の望みを叶えてくれた他ならぬお前だからきいてやるのだ、本来なら余がヒュンケルを治療してやる義理は無い、例え頭を下げて来ようが拒否していた」

 

「だろうな、貸しを作っておいて良かったぜ」

 

ロンは面白そうに笑う

 

(幻想郷に来る前じゃ貸しがあろうがお前は絶対にやらなかっただろうよ)

 

もう2年は経つ今更の要求

 

それでも渋々とは言え協力してくれる事がバーンの昔と今を知るロンには愉快なのだ

 

「ふん……さっさと済ませるぞ」

 

バーンは寝ているヒュンケルの前に立つ

 

「もう処置は済んでいるわ、後は貴方のベホマだけよ」

 

「……わかった」

 

手をかざし魔力を集中させる

 

(もはや風化した事とは言え……よもや裏切り者を助ける事になろうとはな……)

 

その魔力に僅かな乱れも無い、稚気も込められていない完全な癒しの魔力

 

(だが不思議とそれ程嫌悪は無い、この程度の事ならば構わぬと思えるくらいに……ロン・ベルクには見透かされているのが気に食わんがな)

 

面白くはないが約束は約束、宣言した通り反古にする気は一切無い

 

「……ベホマ」

 

暖かな光がヒュンケルの全身を包み傷を瞬間的に癒すように強く発光する

 

「終わった、な」

 

光が消えたヒュンケルを見てロンが呟き確認の意味を込めて永琳を見る

 

「ええ、完璧ね」

 

無事に完治した事を確認し永琳も頷く

 

「後は永琳の仕事だ、さらばだ」

 

直ぐ様踵を返し手術室を出て行ったバーンは外でルーラを使い紅魔館へと帰って行った

 

「さて、患者をベッドに移しましょうか……その後に付き添いを呼ぶから貴方も帰って」

 

「なら俺がポップを呼んで来てやろう」

 

「やめといた方が良いわ、貴方が居る事で要らぬ勘繰りをされると面倒だもの」

 

「それもそうか、手術をする事を知らない筈の俺が居る事がバーンに繋がる邪推へ繋がるかもしれん、か」

 

「その邪推は当たってるけれどね」

 

「わかった、じゃあ俺も見つからんように帰るとする、後日また来る……てゐから手術をしたと聞いた体にでもするか」

 

「そうして、てゐには私から言っておくわ」

 

「頼む……じゃあな」

 

ロンも白玉楼へと帰って行き残ったのは永琳と麻酔で寝ているヒュンケル

 

「何やら……面白そうな予感がするのは気のせいかしら」

 

まだひと波乱有りそうな気がしている永琳は一人呟く

 

大きそうな出来事だが自分は傍観者の立場で楽しく眺める事が出来そうなそんな予感

 

「飽きないわ本当に此処は……」

 

微笑みを浮かべてヒュンケルを運んで行った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-迷いの竹林・妹紅の家-

 

「……」

 

ロランは縁側で月の光も通さない竹林の暗闇を見つめていた

 

「お茶飲むか?」

 

妹紅が湯飲みを二つ持って横に座る

 

「貰うよ、ありがとう」

 

小さくも嬉しそうに笑みを出してお茶を受けとる

 

「ルナは?」

 

「さっき寝たよ」

 

ちなみに3人はポップ達に会っていない、竹林を熟知して何処からでも帰れる3人の家への最短の入口はポップ達の居る場所とは違う所だったからである

 

 

「勇者……見たんだろ?どうだった?」

 

妹紅がロランと同じく暗闇を見ながら問う

 

ロランがダイと出会ったのは夕食時にルナが話していたから知っているがその時は適当に流しただけで終わらせている、まだ子どものルナの前では話せない内容だったからだ

 

「……彼、僕と同じで迫害を受けてるね」

 

「……!わかるのか」

 

妹紅は驚く、まだダイの事情はロランに言ってない、これから言うつもりだったからだ

 

「彼の雰囲気が昔の自分と重なったんだよ、目を見て確信した……僕と同じだって」

 

同じ境遇を味わった故にロランはダイの置かれている状況を察していた

 

「状況は同じだけど……僕より酷い」

 

ロランは苦々しく闇を睨む

 

そこへ妹紅がバーンから聞いたダイの現状を説明した

 

「神々が造った人間に最も近い人在らざる者……それが竜の騎士、人の闇がそれを浮き彫りにしたんだ……竜の騎士という存在が闇をより醜悪にさせた」

 

厳密に言えば竜の騎士とは人間ではない、悪い言い方をすれば神々が造った生体兵器なのだ

 

ダイは竜の騎士バランと人間のソアラから生まれた竜の騎士の力を受け継ぐ人間だと言えるがそんな事は力の無い人間達には関係無い

 

強過ぎる力は恐怖を生むのだ、その力を向けられた時を想像し恐怖の虚像を内に生む

 

それが肥大し過ぎた結果がダイの今を作っている

 

「それに……彼は幼過ぎる」

 

ダイが何故ロランより酷いのか?

 

それはダイの心に理由がある

 

「竜の騎士の性質もあるんだろうけど多分彼は幼少時代に他の人間とほとんど接してなかったんじゃないかな、だから心の成長が見た目より拙い」

 

ロランはローレシアの王子として幼少の頃から教育され数多くの他者と接して心身を成長させていった、だから迫害された際に病みはしたが人間に敵対する気は無かったしバーンの言葉で救われた、言わばその程度で済んだと言える

 

しかしダイは違う

 

ダイはロランの推察通りに赤ん坊の頃に魔物であるブラスに拾われて幼少時代は魔物と過ごし他の人間など見た事も無かった

 

それ故に精神の、心の成長が出来なかった、年齢に比べ幼く、受け止める器量が育ってない脆い心に竜の騎士の性質とも言える純粋さが拍車をかけ必要以上に傷付き、どうすれば良いかわからないから余計に悩む事態になっているのだ

 

 

「僕では……どうにも出来ない」

 

ダイを直に見てロランが出した結論は不可能、であった

 

「僕が何かをしてやれるレベルじゃ無かったよ、下手に触れれば最悪へより近付くって確信出来るくらいに」

 

事実、勇儀が触れかけて肝を冷やしたのだから間違っていない

 

「……僕が出来たのは気休めのような言葉を掛けてやるだけだったよ、そんな事しか……出来なかった」

 

放っておけないが何も出来ない虚しさがロランの視線を下に下げる

 

「お前でも無理だった……か」

 

妹紅は大きな溜め息を吐いて続けて言う

 

「バーンから勇者の話を聞いた時にさ、私より酷いと思ったけどそれ以上にお前と一緒だって思ったんだ、だからさ……同じ痛みを知るお前ならもしかしたら……って思ったけど……ダメだったか」

 

自分よりもダイに近いロランならばダイを立ち直らせる事が出来るのではないかと考えていた妹紅の想いは挫かれていた

 

それは同時に妹紅とロランに可能性を見ていたレミリアの想いも挫いた事になる

 

「私達は何もしてやれない、か……」

 

「だね……歯痒いよ」

 

現状、幻想郷ではダイの置かれている状況も心も良くする事は出来ない

 

幻想郷がそれをする義理も責任も有るわけではないが心を痛めるのは優しさからだろう

 

 

(もし……唯一可能性があるとすれば……)

 

ロトの勇者のほんの僅かな願いの様な想いを胸に一人の男を思い浮かべる

 

(それは友でも仲間でも同じ境遇の者でもなく、敵……なのかもしれない、何の負い目も無く本心をぶつけられて……難無く受け止めてくれるくらいの……最強の敵……)

 

 

夜は更けていく

 

こうして勇者一行が幻想郷に来て3日目の夜が終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-永遠亭-

 

「……!」

 

4日目の朝、ヒュンケルは目を覚ました

 

「おはよう、お疲れ様」

 

目を向けると永琳が本を読んでいた

 

「動いても大丈夫だけどまだ動かない方が良いわ、一先ず横になったままで聞いてちょうだい」

 

「……わかった」

 

永琳は大袈裟に咳払いをするとカルテを見ながら結果を告げる

 

「手術は無事成功、貴方の身体は最盛期の状態へ完治しているわ」

 

「そうか……恩に着る」

 

喜びを表すようにヒュンケルは拳を握る

 

「今後の予定は前に言った通りリハビリになるわ、身体と感覚のズレを直す作業よ、貴方が思う以上に大変だから覚悟しておいて」

 

「了解した、今から始めるのか?」

 

「先に朝食を済ませてからね、やってみればわかるけど食事もリハビリの内に入っているわよ」

 

「?……それはどういう意味だ?」

 

「では起き上がってみなさい、ただしゆっくりよ、貴方が思うゆっくりの100倍を意識してやりなさい」

 

「ああ……わかっ!!?」

 

起き上がろうとしたヒュンケルは凄い勢いで上半身を起こしそのまま股下のベッドに頭突きを食らわせようとして永琳の手で止められた

 

「理解出来たかしら?完治した今の身体を治療前の染み付いた感覚で動かすとそうなるのよ、別の身体みたいでしょう?レベルで例えたら一気に50くらい上がったってところかしらね」

 

「ッ……確かにこれでは食事も満足に出来なさそうだな、歩くのも難しいだろう」

 

漲る力に驚きを通り越し困惑するヒュンケル、良く見ると先ほど握った拳も強く握り締め過ぎて爪が皮膚を裂いて血が出ていた

 

「すぐに慣れるわ貴方の身体だもの、では行きましょうか、貴方のお仲間さん達全員来ているから皆で食べましょう」

 

永琳の補助を受けながら皆の待つ場所へ辿り着く

 

「ヒュンケル!!」

 

皆が熱く迎えてくれた

 

「治って良かったね!」

 

「ああ……!」

 

皆我が事のように喜んでくれている

 

「飯食おうぜヒュンケル!何も食ってないから腹減っただろ!」

 

永遠亭の3人も加えて朝食が始まる、ちなみに正邪は今だけ逃げている、騙した手前一行が全員揃った状況は怖過ぎるから

 

「食べ辛そうだな」

 

「ああ……それにこの箸と言う物も初めて使うからな、繊細な動きを要求される……リハビリに最適だろうから文句は言えん」

 

箸を使うのはヒュンケルと永遠亭組だけ、他はスプーンとフォークを用意されている

 

「ヒュンケルさん!身体が動かせるようになったら私が組手をしてあげますよ!」

 

「ありがたい、頼む鈴仙」

 

「俺も手伝ってやるよ」

 

「すまん、助かるヒム」

 

会話の途中、ポップが思い出したように手を叩いた

 

「そうだったヒュンケル、俺達この後紅魔館に行かなきゃなんねぇんだ」

 

「紅魔館に?何かあったのか?」

 

「いやさっき、お前が起きる少し前に紅魔館のメイドの咲夜さんが来てレミリアが呼んでるからヒュンケル以外は来てくれって言うんだ、内容は知らねぇ」

 

「俺はリハビリ途中だからか……しかし気になるな」

 

「悪い事じゃあねぇと思うけどよ、まぁそんな訳でこれ食ったら俺達は行くからよ、また来てやるから寂しそうな顔すんなって」

 

「ふん、誰がだ……了解だ、気をつけてな」

 

朝食を食べ終えた後、7人は紅魔館へと向かって行った

 

「さて、では本格的に始めましょうか、覚悟はよろしいかしら?」

 

「無論だ、よろしく頼む」

 

そしてヒュンケルのリハビリは続いていく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-紅魔館・客室-

 

「来たわね、いらっしゃい」

 

大人数の来訪に警戒レベル最大のミストに武器類と道具を預け通された一行が客室に入るとレミリアが迎えた

 

「紅茶を淹れるわ」

 

レミリアが指を鳴らすと人数分の紅茶が瞬時に並ぶ様を見て慣れない一行は驚きを顔に出す

 

「そんで?どうしたんだよレミリア?」

 

ポップが代表して話を始めるとレミリアはニコリと綺麗な笑顔を見せた

 

「武闘大会を開くから貴方達も参加してね」

 

一行は理解に少し時間が掛かった、理解と言うよりは武闘大会をする意図を計りかねている感じだが

 

「いや、あのようレミリア……」

 

「何?質問なら受け付けるわ」

 

「じゃあまずはシンプルに……なんでだ?」

 

核心である武闘大会を開く理由を知りたい至極当然の質問

 

「私がやりたいから、以上」

 

「何だそりゃ……」

 

ズッコケそうになるがポップは意図を強引にはぐらかされたと内心思うがレミリアなら気分でやりそうだしやれそうな力を持つから何とも言い難いが乗る事にする

 

「んじゃあどんな大会なんだ?まさかバトルロワイヤルなんて事ぁねぇだろ?」

 

「その通りよ、大会の内容を簡単に言うと幻想郷対貴方達、一対一の合計8戦を予定しているわ」

 

「なるほどねぇ、俺達を虐めたい訳か」

 

「まさか、親善試合と捉えて欲しいわ、貴方達の事はもう幻想郷全てが知っていてね、血の気の多い奴も居て手合わせしたいって奴もいるのよ、身に覚えもあるんじゃない?」

 

一行はラーハルトに手合わせを願った妖夢を思い浮かべる

 

「バーンを倒した貴方達に興味があるのよ皆ね、決して恥を掻かせるつもりではないわ、スカーレットの名に誓いましょう」

 

「……ああそうかい、わかったよ」

 

あのレミリアが家名を出して誓うのだから本当にそういった目的ではないとポップは思った

 

「皆も聞いたな?どうするよ?やるか?」

 

やはり自分だけの一存では決められないから皆の意見を聞いて決を決める

 

「ああそうそう言い忘れてたわ」

 

レミリアが遮り告げる

 

「貴方達に拒否権ないから」

 

一行が見たレミリアの顔は小悪魔の様な邪悪で魅惑的な笑みを浮かべていた

 

「はぁ?またかよレミリアおめーよー」

 

「それはそうよ、貴方達が主賓の武闘大会なのよ?貴方達が居ないならただの大きな身内の喧嘩祭りじゃない、強制権を行使するのは当然よねぇ?」

 

「こんの性悪吸血鬼め……偉そうにしやがって!」

 

「偉いのよ実際ね、少なくとも貴方達を帰れなく出来るくらいには……ね♪」

 

諦めろと言わんばかりのとても嫌らしい笑みを受けてポップの顔はヒクつく

 

(くっそ……立場が悪過ぎる……)

 

地位の高いレミリアが紫と霊夢に帰すなと言うだけで一行は幻想郷から帰れなくなる

 

実際は出来るならばすぐにでも帰したいのが紫の本音なのでそこまで困難ではないのだが如何せんポップ達はその辺りの事情を全く知らない

 

「……はぁぁぁ」

 

とてもとても深い溜め息を吐いたポップはうんざりした顔で拳を上げた

 

「やるぞーみんなー……」

 

全く覇気の無い言わされている感しかないポップの宣言にやるしかない一行は苦笑を返すしか出来ない

 

「やる気になってくれてとても嬉しく思うわ、感謝の意をくれてあげる」

 

「けっ!抜かしやがるぜこいつ!」

 

「まぁそう怒らないの、では軽くルールでも話しましょうか」

 

紅茶を一口飲んで一息ついたレミリアは武闘大会の説明に入る

 

「まずさっきも言ったように一対一の試合形式よ、誰から出るかは自由に決めて、こちらもそうするわ、相手が出た後に決めてもいいし指名したっていいわ、こちらから指名する奴もいるかもね」

 

「それだけか?武器防具はどうなんだ?」

 

「勿論装備してくれて構わないわよ」

 

「それだと危ないんじゃねぇか?剣なんて刺さったら死ぬぞ?」

 

「当然の疑念ね、でもそれも問題は無いわ永琳が医療スタッフとして待機してくれるし世界樹の葉もまだ沢山残ってるから最悪死んでも大丈夫……あぁ故意に殺そうとしたら話は変わるわ、その時は私達頂点が然るべき制裁を加える、それがどちらの陣営だろうとね」

 

「……わかったぜ、ちなみに世界樹の葉って何だ?」

 

「知らないの?貴方達の世界には無いのね……死者を生き返らせる道具よ、ザオリクは知ってる?それの道具版と思ってくれればいいわ」

 

「そんな伝説みたいなアイテムがあんのかよ……しかも沢山って……どうなってんだ幻想郷って所はよ……」

 

「ん~まぁ……色々あったのよ」

 

太陽神異変の際にバベルボブルから譲り受けた1万枚の残りなのだが説明も面倒なので省略する

 

「こんなところかしらね、何か質問はある?」

 

「安全な事がわかった俺は特にねぇな……あ、ヒュンケルはリハビリ中だから出れねぇぞ?」

 

「それも考えてるわ、咲夜に永琳へ確認させたけどそのヒュンケルのリハビリが終わるのに5日掛かるのでしょう?だから武闘大会の開催はリハビリが終わった翌日にするわ」

 

「……用意がよろしいみたいで結構なこったよ」

 

筒抜けだなとポップは渇いた笑みを浮かべる

 

「皆はまだあるか?」

 

問いかけに一人手を上げた、チウである

 

「ボク……調子悪いんで辞退していいかな?」

 

顔色悪そうに言った

 

実際はやりたくないだけである

 

「あー……レミリア、俺からも頼む」

 

ポップも願い出た

 

鍛えたとはチウがあまり強くないのは一行なら皆知っている、そんなチウを戦わせるのは衆人環視の中で恥を掻かせる可能性が高い、だからそれを避ける為に頼む

 

チウに求めるのは戦闘力ではないのだから

 

「いいわよ、では7戦ね」

 

レミリアは即答で了承した

 

(即決か……嬢ちゃんの性格なら余興だからって全員戦わせようとしそうなもんだが……戦いの場に引き摺り出したい奴が居る?それはチウじゃないから了承した?……どうもその辺りに武闘大会の理由がありそうだな、まっ……普通に考えりゃダイだろうけどよ)

 

ポップは考えるもレミリアの機嫌を損ねるわけにはいかず辞退をほのめかして反応を探る事も出来ない

 

「……あの、レミリアさん」

 

ポップの思考を切ったのはダイの声だった

 

「……何?貴方も辞退したいの?」

 

レミリアの顔が真顔になったのを見てポップは息を飲む

 

「違うよ、武闘大会には出るよ」

 

辞退ではないのを知りレミリアの顔が緩む

 

「では何なのかしら?」

 

「あの……出るんですか?その……」

 

ダイは恐る恐ると言った様子で聞いた

 

「バーン……は……?」

 

皆が気になっていた事、ダイが武闘大会の話を聞いた時から一番気になっていた事を

 

「……気になるところよねそこは、貴方達にとってそれはとても重要な事だものね」

 

一行にとって重要だと理解している前置きをしてレミリアは答えた

 

「見に行くとは言ってたわ、前回ピクニックをすっぽかしたから来いって言ったのよ、出るかどうかまではわからないけどね」

 

「そう……なんだ、わかった……」

 

バーンが来る事を知ったダイは何とも言えぬ顔で俯く

 

(出るかどうかを考えてるのは事実なのよね、私達に任せるのが良いのか吟味中なのよ)

 

レミリア達の目的はダイなのだが誰が戦うかまではまだ思案途中、開催までに詰めるつもりなのである

 

「もう質問は無い?なら用は以上だからもういいわよ、前日に咲夜を連絡に寄越すわ」

 

「わぁーったよ、今日は何すっかね……あ、そうだレミリア、月って行けんのか?」

 

「行けるわよ、妖怪の山の河城にとりの研究所を訪ねてみなさいな、私の名前を出したら転移装置で送ってくれるから」

 

「マジで行けんのかよ……じゃあ今日は月に行ってみっか皆?」

 

「賛成!!」

 

「私はヒュンケルの所に行くわ」

 

「了解だぜマァム、じゃあ行くか」

 

一行は紅魔館を出ていく

 

「……ふぅ」

 

残るレミリアは紅茶を飲み、運命の向かう先を感じて笑みを浮かべる

 

「さぁ……どうなるかしらね」

 

良いか悪いかはレミリアにしかわからない

 

わからないが……少なくとも希望はあるのだと思わせる笑みだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからの時間はあっという間に過ぎて行った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かなり動けるようになりましたねヒュンケルさん!そろそろ実戦形式のリハビリに移りましょうか」

 

「待ってたぜ!俺の出番だな!……そうだ!正邪のヤローも手伝わせようぜ!騙した詫びだって言ってよ!ボコボコにしてやれ!」

 

「もう少し動けるようになったら俺が剣のリハビリに付き合ってやる」

 

「鈴仙、ヒム、ロン・ベルク……恩に着る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暇だぜオーイ……誰か喧嘩しようぜー」

 

「相手してやってチルノ」

 

「良いわよ!」

 

「チルノは嫌だぜー相手してくれよ紫もやしー」

 

「……ブッ飛ばしていいわよチルノ、煩いから大会まで凍らせといて」

 

「わかったわ!覚悟すんのね魔理沙!」

 

「おわっ!?そりゃ反則だバカヤロー!逃げるぜ私は!」

 

「待てー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は天界に行ってみるか」

 

「賛成!」

 

「どんな所か気になるわね」

 

(……いい加減ダイを幻想郷に住ませられる理由見つけねぇといよいよ時間がねぇな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どう?もう明日が武闘大会だけど……どうするか決まった?」

 

「……まだ決めかねている」

 

「そう……まだ時間はあるからゆっくり考えるといいわ、アップルパイ食べる?」

 

「貰おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日……か、バーンは……出るのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……武闘大会の日が来た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遅くなって申し訳ない、身内の不幸とかありまして……
今回は頭の中の構想では短い筈だったんですが肉付けすると何故かやたらと膨らんでしまう……

と言う事で遂に次回から今回の外伝の基礎となる武闘大会となります、いやぁ長かった……まだここから長いんですがね、ようやく本格的なバトルになります。

今話で二作目の合計文字数を越えてしまいました、そんなに書いたのか私は……

次回も頑張ります!

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