東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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-秘伝- 幻想曲(ファンタジア) Ⅱ

 

 

 

どうして……また会うんだ……

 

 

 

 

終わった筈なのに……

 

終わらせた筈なのに……

 

 

 

お前を見てしまったから……

 

強く思い出すんだ……

 

お前が言った……あの言葉を……

 

 

 

 

こんなに辛くて苦しいのに……

 

なのに……どうしてお前は……

 

どうしてお前は……今……こんなにも……

 

 

 

 

どうして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしたらいいんだ……オレは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-太陽の畑-

 

「も~お母さん起きてよ~」

 

ルナが妹紅を揺さぶっている、時刻はもう昼になろうというところ

 

「ロランさんも~」

 

酒を飲んでおらず日が変わる辺りで寝てしまっていたルナは朝から起きて片付けをしていた

 

「ほっときなさいよルナ、そのうち起きるわよ」

 

「みんなすっごく飲んでたから仕方ないよルナちゃん」

 

「片付け終わったのだー!」

 

チルノ、大妖精、ルーミアの元気いっぱい子ども組も起きて既に片付けを終わらしていた、終わってないのは酔っぱらい達の片付けだけ

 

「どっか行く?」

 

「お腹減ったのだー!」

 

「じゃあ里に何か食べに行こっか、ルナちゃんも行く?」

 

「行きます!もー知らないからねお母さん!」

 

酔い潰れた者達を置いて4人は里へ向かって飛んで行くのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーおー見事にブッ潰れてんねぇ」

 

ルナ達が行ってしばらくすると陽気に鼻唄を鳴らしながら一人の鬼が太陽の畑にやって来た

 

「ハハッ!こう見ると戦場みたいだね、死屍累々ってか」

 

勇儀である

 

クロコダインが帰った後もミスティアの屋台で飲み続けていた勇儀は朝になって店を畳もうとしたミスティアを無視して酒が無くなるまで居座っていたのだ

 

そして無くなって暇になったからようやく当初の目的である此処に来たのだった

 

「うぃ~……よっ!とぉ!」

 

勇儀が脚を踏み鳴らすと花を傷つけないように衝撃が広がり寝ていた全員が浮き上がって、落ちた

 

「イテテ……なんだぁ?」

 

寝ていた全員が目を覚ます

 

「おう、おはよう!いや?もう遅いからおそよう?何でもいいか!」

 

笑いながら勇儀はさとりの所へ歩いていき首襟を掴んで持ち上げ頭に乗せる

 

「帰るよ~」

 

「わざわざありがとうございます、お願いします勇儀……う~頭が痛い……ゆっくり、ゆっくり行ってくださいね……」

 

「あいよ、おっとと~!」

 

「イタッイタタッ!?ちょ、ちょっと大丈夫なんですか!?」

 

「らいじょーぶらいじょーぶ!あらしにまらせときあ~!」

 

「呂律回ってないですよ勇儀!?待ってください……うっ気分が……」

 

酔っぱらいが二日酔いを連れて帰っていく

 

「あー皆漏れ無く二日酔いだな、ハハッ……うー頭イテェ……片付けは……してくれてるみてぇだぜ」

 

魔理沙がガンガンする頭を押さえながら周囲を見渡している

 

「ルナが居ないな……親分と大妖精とルーミアもか、4人が片付けてくれたみたいだ、悪い事したな……あ"ー頭痛ヤバイ……」

 

妹紅も凶悪な頭痛に頭を抱えている

 

「起きたならさっさと帰れ酔いどれ共……」

 

「幽香ぁ布団借りるよ~」

 

最悪の気分で今にも誰かを刺しそうなヤバイ顔をした幽香と返事も聞かず幽香の家に既にフラフラ歩き始めている萃香

 

「幽々子様帰りますよ……ロン・ベルクさんが私を待ってます」

 

「帰ったらお昼ご飯にしてね妖夢……」

 

「嘘ですよね?まだ食べるんですか……?」

 

妖夢が幽々子をおぶってフラフラしながら飛んでいく

 

「帰るわよ……靈夢……」

 

「はいぃ霊夢様……」

 

 

 

「早苗帰るよ……ってまだ寝てるよこの子、ホントどんな神経してんだろうねこの子は……どうする神奈子?」

 

「起こすのも面倒ね……引きずって帰るわよ諏訪子」

 

 

 

「気分悪い……一回死んでスッキリしようかしら……」

 

「バカ輝夜お前やめろや、寝起きでグロ画像見せんなアンポンタン……ロビーン乗せてー」

 

「リョウカイニトリ」

 

他に集まった者達も帰って行く

 

「お前はどうすんだ妹紅?」

 

「そうだなぁ、紅魔館に行こうかな……ダメだ、気分悪いからやっぱり家に帰る……ルナもそのうち帰ってくるだろ……お前は魔理沙?」

 

「私も家に帰るぜ、って言いたいとこだけど今かなり散らかってんだよな……家よりちょっと遠いけど私は紅魔館に行ってもう一眠りでもすんぜ」

 

「わかった、レミリアに礼言っといてくれ楽しかったって、バーンにもよろしくな……ルナ居たら遅くならない内に帰って来いって言っといてくれ」

 

「了解だぜ~んじゃな妹紅~」

 

「ああ、またな魔理沙」

 

箒に跨がり魔理沙はゆっくり飛んでいく

 

「……私達も行くかロラン、慧音」

 

「行こう妹紅……足元がおぼつかないなんて久し振りだよ……ふぅ」

 

「全然記憶が無い……なぁ妹紅?変な事言ってないよな私?」

 

妹紅達を最後に宴会は解散となり各々は散っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

ミストに睨まれながら紅魔館の門を抜けた一行は里に向けて歩いていた

 

「……」

 

ルーラを使えばすぐなのに全員が示し会わせたかの様に歩いていた

 

「……」

 

誰も喋らない、黙したまま歩き続けていた

 

「……」

 

誰もがバーンのこれまでを聞いて言葉が出せなかったのだ

 

魔界に太陽を与える為に人間を地上ごと消滅させようとした大魔王が生きていた

 

そして幻想郷に流れ、ただのバーンとして人間と妖怪の為に幾度となく戦い、共存していたなどと聞かされては……

 

「なぁみんな……」

 

意を決したかのようにポップが問う

 

「バーンの事……どう思うよ?」

 

その問いに一瞬だけ空気が張りつめる

 

「……」

 

誰も答えない

 

ポップとしてはここで皆の意思の確認をしておきたかった、擦れ違いでダイの様に暴走する前にハッキリと滞在中はもちろん帰った後のバーンの扱いについて決めときたかったのだ

 

「……私の気持ちは前と同じよ、あの時バーンを助けたいと思った、それは変わってない……もう助けが要らないのならこのままで良いと思うわ」

 

前に事情を知っていたマァムが最初に答え、ポップが頷く

 

「俺もだ、もう大魔王バーンの事はダイが倒したあの時終わった事なんだ、今はただのバーンとして此処でしか生きられねぇんなら俺はもうそっとしておいてやりてぇ」

 

ポップも考えを伝え残る6人を見る

 

「俺は……何も言えん」

 

そう言ったのはヒュンケル

 

「俺も誤解だったとはいえ元は魔王軍、奴の命令で非道をした事もある……何かを言う権利は無い、無論何かをする気も無い」

 

「そうかよ……つーかよく考えてみりゃあ今居るメンバーの半分は元魔王軍じゃねぇか」

 

元はバーンの部下だったのが皮肉だなと苦笑するポップにラーハルトが言う

 

「俺は魔王軍に所属したつもりは無い、バラン様に仕えていたのだ」

 

「そういやおめーはミストにそんな事言ってたな、そんで?結局どう思うんだ?」

 

「何も思わん、ダイ様に従うのみ……ダイ様が倒せと言うなら大魔王だろうが神だろうと戦うまでだ」

 

「へーへー、おめーはそうだろうよ、言っとくが戦うつもりはねぇからな?頼むぜ?」

 

予想通りの答えにポップは呆れた顔でヒムへ向く

 

「俺か?俺も別にほっといて良いと思ってるぜ?ヒュンケルの言葉を借りたら俺も言う権利は無いからな、隊長も悪いけどそういう訳だから戦えって言ってもやらねぇからよろしく」

 

「いいよヒムちゃん、ボクも戦う気無いし」

 

ヒムに加えチウもバーンに何かをするつもりは無い

 

「おっさんはどうだ?」

 

「俺も皆と同じだ、戦う気は無い、だが……」

 

クロコダインは少し違った

 

「話をしてみたいと……思ったな」

 

袂を別ったかつての主の今に興味を持ったクロコダインは叶うならばバーンと話がしてみたいと思ったのだ

 

「おっさんらしいな」

 

「機会があれば程度のささやかな希望だ……無理にとは言わん」

 

叶う事は無さそうだと苦笑するクロコダインにポップも苦笑を返す

 

「後はおめぇだダイ」

 

最後にポップはダイを見た

 

「オレは……」

 

聞かれたダイは俯き拳を握る

 

「……」

 

それ以上は語らない、だが間違いなく何か言いたい事があるのだと思わせる

 

「言ってみろよ、怒りゃしねぇ」

 

ポップも促すがダイは語ろうとしない

 

「ッ……」

 

それはぐちゃぐちゃになった感情を言葉に出来ないだけなのか、それとも言うのも憚られる事なのかポップ達にはわからない

 

「……わかったよ、無理しなくていい……話せる様になったら話してくれや」

 

ただバーンと再会しレミリアから話を聞いた後からダイの様子が更に沈んでいるのは確かであった

 

「うん……ごめん」

 

「謝るような事してねぇだろ、気にすんなダイ……行こうぜ」

 

里へ向かって一行はまた歩きだす

 

バーンへの解消出来ない想いだけを秘めて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-紅魔館・図書館-

 

「……」

 

自分の体を枕に寝るレミリアにバーンは動けないでいた

 

「……」

 

動く気も無かったがレミリアの寝顔に落ち着いたバーンは微笑みを浮かべ、時折レミリアの髪を撫でながら物思いだけがふけていく

 

(レミリアが奴等を滞在させたのは何らかの意味があると能力が導いた結果なのだろう……ならば意味を与えるのは余だけとは限らん、幻想郷の誰かという事もある)

 

バーンはレミリアがこういった事態に無意味な事をするとは思っていない、必ず何かに繋がる事を知っている

 

この場合はおそらくは自分の為の行動だと思う、そしてそれを益とするか不利益に変えるかは自身次第だと言う事も

 

(わからぬ……余にどうさせたいのだレミリア、お前は……)

 

起こして問いたい気もあるが気持ちよく寝ているレミリアを起こすのも気が引けるバーンは起きるのを待ちながら眺めているしか出来ない

 

そんな時であった

 

 

 

「ここかレミリアー!?」

 

 

 

図書館のドアが乱暴に押し開けられ大声が響いた

 

「ふぇ!?え……?」

 

ビクッと跳ねたレミリアが目を覚ました

 

「何?また襲撃?」

 

寝惚けと混乱でキョロキョロしていると軽快な足音が近付いてくる

 

「お前起きてたのか?部屋で寝てると思って行ったらいなかったからよー!せっかくこの魔理沙様が添い寝してやろうと思ったのにテメーコノヤロー!眠くねぇのかお前?」

 

馴染みの声が聞こえてくる、魔理沙なのは間違いない

 

「まぁいいや、私は眠いからベッド借りる……ぜ……?」

 

案の定魔理沙であったが二人の状態を見た瞬間、動きが止まった

 

「お前なにやってんだぜ?」

 

「あ……あ……」

 

見られたレミリアは固まったあと、みるみる顔が真っ赤になっていく

 

「あー……邪魔しちまったみたいだぜ、ごめんな~?ベッドは勝手に借りるから後はごゆっくりだぜ~」

 

全てを理解した魔理沙は素晴らしい笑顔をしながら踵を返す

 

「待って!待ちなさい魔理沙!こ、これは違うの!」

 

「言うなレミリア!私もこれ以上野暮な事ぁ言わないからよ!好きなだけイチャついたらいいぜ!」

 

「待ちなさいって!コラ!待てっ!」

 

バーンの膝から飛び立ったレミリアは魔理沙を追いかける

 

「んだよ?邪魔したのは悪かったって言ってんだろ?」

 

「いいからこっちに来て座れ!」

 

無理矢理引っ張られた魔理沙は強引に椅子に座らされる

 

「違うから」

 

「あー?お前がバーンを枕に寝てたんだろ?何が違うんだぜ?アホなんじゃねぇのか?」

 

「~~~~ッ!?バーン!貴方からも言ってやって!誤解だって!」

 

誤魔化す事が出来ないレミリアはバーンに助けを求めた

 

「……」

 

だがバーンは心此処に在らずと言った様子で応えない

 

「……?何かあったのかバーン?」

 

様子がおかしい事に気付いた魔理沙が問うもバーンは返さない

 

「どうしたんだぜレミリア?」

 

「……さっき色々とあったのよ」

 

心配そうにバーンをレミリアは見ている

 

「バーン、席を外すわ」

 

「ああ……わかった」

 

気の無い空返事に溜め息を吐いたレミリアは立ち上がり魔理沙へ一緒に来る様に指で手招く

 

「後で紫を呼んでおいて欲しいのだけど頼めるかしら?」

 

「……やっておこう」

 

また気の無い返事だったがバーンに限って聞いていない事は無いとレミリアは信じて魔理沙と図書館を出ていく

 

 

 

 

 

「どうしたんだよバーンは?」

 

「説明が少し長くなるから部屋で話すわ」

 

図書館を出て廊下を進む

 

「あら、来てたの魔理沙……おはようレミィ」

 

起きて図書館を目指していたパチュリーと遭遇する

 

「おはようパチェ、丁度良かったわパチェも一緒に来て」

 

「さっきの奴等の事ね?わかったわ」

 

勇者一行と話した部屋へ3人は入っていく

 

 

ブゥン……

 

 

部屋に入ったと同時にスキマが開いた

 

「お久し振り、バーンに呼ばれてレミリアに会えと言われたのだけど……何か異変?」

 

紫が姿を現した

 

「良いタイミングね、手間が省けて助かるわ……とりあえず座って」

 

全員が座り呼ばれた咲夜が紅茶を配る

 

「何から言うべきか……そうね、外来人が幻想郷に迷い混んだわ、8人よ」

 

「それがさっきの奴等ね」

 

「ふーん……そんで?」

 

「その8人に何かされたから対処が遅れた責を私に求める……そういう事かしら?」

 

「そんな小さい事言わないわ紫、問題はその8人の実態、バーンが幻想郷に来る切欠を作った者達、と言えばわかるわよね?」

 

「「「……!?」」」

 

意味を理解した三人が驚愕の表情をする

 

「成程……それでさっきのバーンに繋がるのね」

 

「そいつは……ヤベェな」

 

「まさか……出会ってしまったの!?」

 

納得したパチュリーと深刻さを知った魔理沙、戦慄する紫

 

「落ち着きなさい紫、危なかったけれど戦いにはなっていないわ」

 

「……そう、良かったわ」

 

バーンを幻想郷に連れてきた紫はあの悲惨だったバーンを見ている

 

生きながら石になったあの姿を

 

更には大願を阻んだ怨敵達なのだ、殺し合いになっても何らおかしくないと思ったのだ

 

そしてそんな者達が争えば幻想郷に被害が出るのは火を見るより明らか

 

戦いにならなかった事を心底安堵した

 

「今そいつ等は?」

 

「今は里に居る筈よ、里を拠点にしたからあの辺りに居ると思うわ」

 

紫の表情が変わった

 

「待ちなさいレミリア……拠点?まさか滞在する気なの!?私を呼んだのは帰らせる為ではないの!?」

 

焦燥と怒気が混じった顔、明らかに穏やかではない

 

「ええ、私が許可したわ」

 

「何故!?そんな危険な奴等を幻想郷に放逐?冗談では無いわ!!」

 

紫は今すぐにでも帰す為にスキマを開こうとする

 

「奴等の身は私が預かっている、余計な事はするな」

 

だがレミリアの圧が止めた

 

「……正気、の様ね……では責任は貴方が?」

 

「当然私が取るわ、奴等が幻想郷に危害を与えるなら私が始末する」

 

「……与えてからでは遅いのはわかっているわね?」

 

「ええ……その時は責任を取って紅魔館は幻想郷から出ていくわ」

 

「……」

 

扇子で口元を隠した紫はレミリアを睨む

 

「……わかりました、貴方がそこまでの覚悟でいるのなら了承しましょう、そして協力も」

 

「我儘を言っているのは自覚してる、悪いわね……そして感謝を」

 

「何か……意味があるからなのでしょう?」

 

「必ずあるわ……どんな意味があるかはわからないけれどね」

 

「そう……願わくば貴方達が幻想郷から去る、そんな事にならない事を祈りましょう」

 

幻想郷の管理者たる紫の了承を得て一息つく四人

 

「そっちの話は終わったな?んじゃあよ?私等はどうすりゃ良いんだぜ?」

 

魔理沙が言いたいのは勇者一行の扱いについて

 

腫れ物の様に扱うのかいつも外来人が来た時の様に普段通りにするのかを聞きたいのだ

 

「特に変える必要は無いわ、いつも通り好きにさせて貴方達も好きにしたら良いわ、何なら手合わせしても構わないわよ」

 

レミリアは普段通りと言った、特別扱いする必要は無いと

 

「良いのかよ?」

 

「大丈夫よ、幻想郷に敵対するなら容赦はしないと奴等には言ったから、話はわかる奴等だったしこれで敵対するなら大したものよ……その時は本当に容赦はしないから覚悟して」

 

「わかったぜ」

 

レミリアの本気の言葉に魔理沙も真剣に返事を返す

 

「貴方達には今回の外来人がバーンにとって重要な人物なのだという事を理解だけして欲しいだけよ、それだけで文みたいなバカな真似する奴はいないでしょうしね」

 

「まぁな~、今の幻想郷に知っててバカする奴ぁいねぇわな、バーンを倒した奴って知っててな……つか発端はあいつかよ、懲りねぇよなあいつもよ」

 

「あと正邪ね、見つけたらシメといて」

 

「あいよ……この事は皆に知らせるんだろ?」

 

「ええ、頼んで良いかしら?紫も?」

 

「了解だぜ、任せとけ」

 

紫も頷き勇者一行の対応は決まった

 

「私は興味がそこまで無いのよね、積極的に関わるつもりも無いからあまり関係は無いわね」

 

パチュリーが紅茶を飲みながら言う

 

「それならそれで全然構わないわパチェ、関われとは言ってないからね」

 

「はぁ?お前マジかよパチュリー!?」

 

呆れた声で異論を唱えたのは魔理沙

 

「興味無いとか嘘だろ?バーンを倒した奴等なんだぜ?気になるだろ!」

 

「全く無いとは言ってないじゃない、でも倒したのは昔のバーンでしょう?今のバーンの方が遥かに強い、だからそこまでなのよ」

 

「いやまぁ……そうなんだけどよ、そいつ等も強くなってる可能性だってあるじゃねぇかよ……チッ、クールな奴だぜほんとお前はよ」

 

「貴方が熱過ぎるから私が冷静にならざるを得ないのわかってる?」

 

「へーへー!わーかってんよ、二天だもんな私達は!」

 

「そういう事よ」

 

熱き大魔導士と冷めた賢者は笑う

 

「寝ようと思ったけど目ぇ覚めたぜ、ちょっと皆に知らせるがてらそいつ等見てみるかね」

 

「私はいつも通りね、バーンの様子でも気にしてるわ」

 

立ち上がった魔理沙が楽し気な顔で図書館に向かうパチュリーと共に出ていった

 

「では私も各所に連絡しに行くとしましょうか」

 

「待って紫、先に奴等の世界に連絡を取って欲しいの、確か……アバンだったかしらね、私が話をするわ」

 

「わかったわ、少し探すから待ってちょうだい」

 

二人は一行の世界への連絡を始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さてどこから行こうかな……まぁどっからでもいいんだけどよ)

 

箒に跨がり紅魔館を出発した魔理沙は行き先を思案する

 

「……あ」

 

ふと思い出した

 

(ロン……そうだぜ、あいつがバーンを倒した奴等の事知らない訳がねぇよな、そんなら最初に知らせといた方が良いか、よっし!)

 

行き先を白玉楼に決めて全速力で飛んで行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-人間の里-

 

一行は宿屋に戻ってきていた

 

「さぁてと……だ」

 

宿屋の前でポップが困った様に頬を掻く

 

「どうするよ?」

 

滞在が決まったは良いが帰るのが目的だった一行は何をすればいいのかわからないのだ

 

「今は昼過ぎってとこか……なんかメシでも食うか?」

 

「そうする?」

 

とりあえず食事をしながら決めようかとなりそうだった時、ヒュンケルが皆から一歩離れた

 

「俺は行きたい場所がある、すまんが行かせてくれ」

 

「そんな事言ってたな、場所は想像つくけど一人で行くのか?レミリアが話通してくれるから単独行動でも大丈夫だろうけどよ」

 

「ああ、無駄足になる可能性も高い、一人でいい」

 

「だけどなぁ……」

 

幻想郷での安全は保証されたがそれでも見知らぬ世界での単独行動に心配するポップだったがヒムが一歩踏み出しヒュンケルの横に並んだ

 

「じゃ俺が一緒に行ってやるよ」

 

「良いのかヒム?つまらんかもしれんぞ?」

 

「いいさ、俺はメシも食えねぇし楽しみな事も今のところねぇからよ、付き合ってやるさ」

 

「フッ……わかった」

 

二人は里の外へ向けて歩き始める

 

「ヒムが一緒なら大丈夫か、気を付けて行けよー」

 

見送りの言葉に何も返さないヒュンケルの代わりにヒムが腕を上げて答え、二人は行った

 

 

 

「俺等はどうすっかねー」

 

「とりあえずお昼にしましょうよ」

 

「だな、そうすっか」

 

食事が出来るところを探して里の中を歩く六人

 

「アレはそうではないか?」

 

クロコダインがそれらしい店を見つけ確認しに近付いていく

 

 

「美味しそうなネズミなのだー!」

 

「あっ!?ルーミアちゃんダメッ!?」

 

 

突如、知らない声が聞こえた直後

 

 

「ウギャアァァァァ!!?」

 

 

チウの絶叫が響いた

 

「どうしたチウ!?……って、あん?」

 

ポップが慌てて振り向くとチウの尻尾に何かが噛みついていた

 

「ガキじゃねぇか……こいつも妖怪か?」

 

黒い服を着た子どもがチウの尻尾をガジガジ甘噛みしている

 

「ちょルーミア!あんた何やってんの!?」

 

「ルーミアさんそれ食べ物じゃないです!生きてる生きてるから!?」

 

青い服と紅白の服を着た子ども二人が飛び込んでルーミアと呼ばれる子どもを引き剥がそうとしている

 

「あのっ!ごめんなさいごめんなさい!ルーミアちゃん何でも食べれる子でしてお腹が減り過ぎたらたまに見境無くなる時があるんです!本当にごめんなさい!」

 

最後に緑の服を着た子どもがやって来て六人に平謝りをしだした

 

「あ、ああ……大丈夫だと思うぜ?コイツは少々問題ねぇ、でも早く解放してやってくれ」

 

「は、はいっ!すぐにしますね!……ルーミアちゃんいい加減にしないと怒るよ!」

 

緑の子どもが怒鳴るとルーミアと呼ばれる子どもはビクッと怯えた様に跳ね、恐る恐る尻尾から口を放した

 

「ご、ごめんなのだー大ちゃん……」

 

「謝るのは私じゃないよ!この人達にだよ!」

 

「あうー……急に噛んだりしてごめんなさいなのだー……」

 

ルーミアと呼ばれる子どもはとても申し訳なさそうに頭を下げた

 

「あー!歯形付いてるー!?コラー!お前なんて事してくれたんだー!」

 

チウが腫れた尻尾をふーふーしながらルーミアを睨み付ける

 

「子どものした事だ、謝ってるんだし許してやれチウ」

 

「ぐぐ……先代がそう言うなら……やいお前等!許してやるからもうどっか行け!」

 

散れと言う様に手で払う仕草をするチウ

 

「なにコイツ?生意気な奴ね」

 

その態度が面白くなかった青い服の子ども・チルノがチウに睨み返す、自分達が悪い事などお構い無しだった

 

「コラコラ、喧嘩はやめろっての……」

 

「あっ!?親分ダメッ!?」

 

ポップが収めようと間に入ろうと動き紅白の子どもが青い子どもを止めようとした瞬間

 

 

キンッ

 

 

乾いた音が鳴ったと同時にチウは顔だけ残して雪だるまにされていた

 

「な、なんじゃこりゃー!!?」

 

「へっへっーん!ざまぁみなさい!サイキョーのあたいに生意気な事言うからよ!」

 

驚愕の声をあげるチウと勝ち誇るチルノ

 

「す、凄いわね……こんな可愛い子が……」

 

その光景に驚く一行、チウが一瞬で雪だるまにされたのに驚いたのだ

 

(待て……待て待て……)

 

その中でポップのみがおかしい事に気付いていた

 

(ヒャド……?いや魔力は無かった、ならレミリアのメイドが持ってる能力ってヤツの類か?こいつの見た目からしたら氷?フレイザードみてぇに炎もあるかもしれねぇ……いや、そんな事よりもだ)

 

ポップは迷うような眼差しでチルノを見る

 

(錯覚じゃなきゃコイツから今一瞬……もっと恐ろしく冷たい感じがしたような……)

 

熱を操る魔法を扱う故か

 

目の前の小さな子どもから魂も凍るような底知れぬ冷気の片鱗を微かに捉えてしまっていた

 

(魔王並み……?いやいや……まさかこんなガキんちょがそんな筈あるかよ、冗談じゃねぇ)

 

それは無いと頭を振ったポップは直後に怒気を感じ視線を向ける

 

「チルノちゃん!!」

 

それは怒った大妖精からだった

 

その大妖精の怒声にチルノはおろか傍に居たルーミアと何もしていないむしろ止めようとしていた紅白の子ども・ルナさえも体を跳ねさせビクビク怯えている

 

「何でそんな事するの!」

 

「だってコイツが生意気な事言うから……お、怒んないでよ大ちゃん……」

 

「悪いのは私達なんだよ!もう!早く謝って!」

 

「わかったわよ……悪かったわねあんた、雪も消したしもう良いでしょ?」

 

「ちゃんと謝って!」

 

「うぅ……ご、ごめんなさい……」

 

言わされたようではあったがチルノはちゃんと謝った

 

(この緑のガキんちょがガキ大将って感じだな……青い方がそれっぽいのによ)

 

意外だなと思っていると緑の子ども・大妖精がまたペコペコ頭を下げる

 

「本当にごめんなさい!」

 

「いいってもう気にすんな、それより教えてくれよ、この店って食事出来るのか?」

 

「あ、はい……私達もここでお昼にしようと思ってたんです」

 

「お!良かった!ここで会ったのも何かの縁だ、一緒に食べるかい?奢ってやるよ……良いよな皆?」

 

ポップの言葉に皆頷く

 

「えっ!?いやそんな!悪いですよ!」

 

「いいんだよ、レミリア・スカーレットって知ってるか?そいつに使い切れないくれぇ大金貰っちまってよ?逆に困ってんだ」

 

「レミリアさんに……?」

 

見るからに外来人な人から意外な言葉が出て目をぱちくりさせる大妖精

 

「そこまで気が引けるってんなら代わりに幻想郷の事教えてくれよ、面白い場所とかそんな感じの事をさ」

 

「そういう事なら……わかりました、ご馳走になります、行こっ!チルノちゃんルーミアちゃんルナちゃん!」

 

「タダメシだー!」

 

「わーい!」

 

「急げー!」

 

さっきの怯えた姿は何のその、いの一番に大妖精以外の子ども達は店に入っていった

 

「失礼だよ皆!もぅ恥ずかしい……」

 

「ハハッ!苦労してんなぁお前さん……まぁ元気いっぱいで良いこった!さっ俺達も行こうぜ!」

 

肩を軽く叩かれて大妖精も一行と共に店に入っていった

 

 

 

 

 

 

 

「おかわりなのだー!」

 

「一番高いの持ってきなさい!」

 

「お母さんとロランさんにお土産持って帰りたいんだけど良いですか?」

 

好き放題している、遠慮など知らない言葉と言わんばかり、3人だけ宴会をしているかの様だ

 

「ちょっとは遠慮しようよみんな……もっと御上品に食べてよ……あぁもぅ恥ずかしい」

 

大妖精は顔を真っ赤にさせて俯きながらちまちま食べている

 

「ガッハッハッハ!元気で良いではないか!子どもはこうでなくてはな!大妖精も遠慮せず好きなだけ食べろ、大きくなれんぞ?」

 

「はい!ありがとうございますクロコダインさん!」

 

仲良くなれた様で楽しく食事をしている

 

「ん~……ん~~~?」

 

ルナがダイを見て首を傾げて唸っている

 

「ど、どうしたんだい?」

 

まじまじと見つめられダイも困っている

 

「あ、その……見た事あるような気がして……どこかで会いましたか?」

 

「いや……初対面だよ?」

 

ルナはダイに出会った事がある

 

ソルが倒した平行世界のダイが改造され、魔勇者ナイトバーンとしてのダイにだが

 

しかし平行の同一人物とはいえ違いが有り過ぎた、ナイトバーンとしてのダイは子どもの姿のままで紫色の皮膚のまるでゾンビの様であり目も生気薄く絶望を纏っていた

 

対して目前のダイはまず背格好からして違う、成長し精悍な顔つきに体、纏う雰囲気も違う

 

ルナが既視を感じたのは僅かな面影を感じ取ったからだった

 

「気のせいかぁ……まっいっか!」

 

そして子どもだから深く考えない、故にこの話はこれで終わった

 

「色々あるんだな幻想郷ってよ、天界や魔界まであんのはビックリだよな~」

 

4人(主に大妖精)から聞いた幻想郷の事を話し合っている

 

「紅魔館楽しいわよ!」

 

「それは私達だけだよチルノちゃん、自分達だけ楽しい場所を教えるのは違うからね」

 

「うーん……?よくわかんないから大ちゃんに任せるわ!」

 

「だよね……うんわかった」

 

チルノ達には任せられないから大妖精が一身に引き受けている

 

「あーうん……紅魔館、ね……」

 

「どうしたんですかポップさん?」

 

様子が曇った一行に気付いた大妖精が問う

 

「何でもない……いや、ちょっと聞いていいか?バーンって……知ってるよな?」

 

問われた大妖精はパアッと笑顔になった

 

「バーンさんですか?もちろん知ってますよ!大好きです私!」

 

「あたいも!」

 

「私もなのだー!」

 

「私もです!……ちょっと怖いけど」

 

大妖精に加えて他の三人も答えた

 

「そ、そうかよ……わかったぜ」

 

曇り無い即答に逆に焦る事態となる

 

「こんな子どもにまで……愛されてるのねバーンは……」

 

「ああ……言わされているのではなく心からそう思っているのが伝わるな」

 

穢れを知らない無垢な子どもに無邪気なままにそう言わせる事が余りにも自分達の知っているバーンと違い過ぎて余計に困惑させられる

 

「?……あんた大丈夫?」

 

ふと……様子が変な事に気付いたチルノがダイに問う

 

「ッ……!?」

 

ダイは酷い顔をしていた

 

言葉に出来ないのか、したくないのかわからないが込み上げる感情を無理矢理押し殺した様な悲痛な顔で拳を握り俯いていたのだ

 

「お腹痛いの?かき氷食べる?」

 

「……ごめん、オレ先に宿に戻るよ」

 

チルノがかけた言葉も聞かず立ち上がり返事も待たず店を出て行ってしまった

 

それを見てラーハルトもすぐに追いかけて行った

 

「あの……私達悪い事したんでしょうか……?」

 

大妖精が不安そうにポップに問う

 

「あ……違う違う!あいつ今落ち込んでてちょっとな、お前さん達のせいじゃねぇから気にすんな」

 

気にしていた大妖精達に非は無いと言うとポップとマァムが立ち上がる

 

「俺達も行ってくる、おっさん、チウ、ここは任せていいか?」

 

「わかった、ダイを頼んだぞポップ、マァム」

 

「任せときなさい!」

 

二人も見送り店にはクロコダインとチウ、大妖精とチルノとルーミアとルナの六人だけになった

 

「あの人……何かあったんですか?」

 

気になったルナが問う

 

「少しな……アイツは本当はもっと明るくて強い奴なんだがな、お前達とならすぐに友達になれるくらいの……純粋な奴だった」

 

「そうなんですか……」

 

理由は教えてくれないらしくルナも相槌くらいしか打てない

 

「へぇ~強いんだアイツ、まっあたいの方が強いけどね!」

 

能天気なチルノは強いところにだけ反応し無い胸を張る

 

「ほう?お前はそんなに強いのかチルノ?」

 

「あったり前田さんのクラッカーよ!なんたってあたいはサイキョーだからね!」

 

「ガハハ!そうか最強か!」

 

クロコダインは笑う

 

子どものよくある大言壮語だと思い合わせたのだが違和感を感じた

 

「確かに親分ならそうかも」

 

「チルノはサイキョーなのだー!」

 

「そうだねー私もチルノちゃん……かな?」

 

何か言っては呆れられているチルノの発言を今は誰も呆れないし否定しないのだ

 

「……?」

 

何故今だけ?と疑問を感じていたクロコダインだったが横に居るチウが声をあげた

 

「いーや!ダイの方が強いね!」

 

負けず嫌いというかダイの本当の強さを知っているチウからすると知らないくせに下に見られるのが気に入らなかったのだ

 

これもダイを大切な仲間と思うからこその身内贔屓

 

「なんてったってダイはあの大魔王バーンを倒した勇者なんだからね!」

 

チウは勢いに任せて言ってしまった

 

「チウ!?」

 

クロコダインはしまったと思った

 

四人とも大好きと言うバーンを貶す発言だったからだ、良い顔をする筈が無いとすぐにわかったのだ

 

(喧嘩にならなければいいが……)

 

またチウが雪だるまにされるかもしれないと思いながら仲裁に入る心構えをしているとチルノが叫んだ

 

「ウソッ!?バーンを倒したの!!?」

 

反応は逆だった

 

「そんなに強いのあの人!?人は見かけによらないんだ……私もまだまだだなぁ」

 

「すごいのだー!」

 

「本当に凄いですね!私達でも勝てないのに……はぁ~凄いなぁ~」

 

誰も怒らず疑わずに信じてくれたのだ

 

「ふっふ~ん♪」

 

チウが機嫌良くふんぞり返る、ダイが認められて嬉しいだけなのだが端から見ると仲間の功績で偉ぶってるだけにしか見えない

 

「や、やるわね……あたいだっていつかバーンを倒してやるんだから調子に乗らない事ね!」

 

「うむ、頑張りたまえ」

 

少し調子に乗り始めるチウに拳骨が落ちた

 

「それぐらいにしておけ」

 

「す、すみません先代……イタタ……」

 

皆で笑い合うのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-紅魔館-

 

「いやぁ~お久し振りですねぇレミリアさん、いきなり空間が裂けた時は大魔王の襲撃かと思っちゃいましたよ」

 

紅魔館の数ある一室の中で裂けた空間から陽気な声を出すのはアバン

 

「久し振りね、老けたわね貴方」

 

レミリアも紅茶片手に挨拶を交わす

 

「それで何年も音沙汰無しで急に何の御用でしょう?」

 

「貴方のところの8人が何故か今幻想郷に来ているのよね」

 

「……本当に何故?な事態ですねぇ、貴方が保護を?それで私に連絡をという事でしょうか?」

 

「そういう事よ、10日程こちらで預かってからそちらに帰すから心配無用なのを伝えたかったのよ」

 

「それはそれは御丁寧にありがとうございます、御迷惑をかけて申し訳ありませんがよろしくお願いしますね」

 

「ええ、任せておきなさい」

 

勇者一行の世界に連絡をするという目的は果たされた

 

「……ねぇアバン」

 

だがレミリアには聞きたい事があった

 

「あのバーンを倒した勇者……何があったの?」

 

問われたアバンは眼鏡を曇らせる

 

「気付きますか……当然ですね貴方は聡明な方ですから」

 

「私はバーンと違って勇者は見た事が無い、それでもわかる……アレが、あんな弱々しい情けない奴がバーンを倒したなんてとても思えないのよ」

 

アバンは悔しさと辛さを滲ませ顔を伏せる

 

「……彼は、大魔王を倒した勇者は今……混迷の極みにいます、愛した者達の意思に……心を壊されかけています」

 

アバンは語り始めた

 

勇者の置かれている現状を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-迷いの竹林-

 

空が赤みがかり、もう間もなく夜になろうという刻、ヒュンケルとヒムの二人は竹林の入口に居た

 

「ここか?この先にあの医者が居るってのは?」

 

「里の門番の話だとこの竹林の中にある筈だ」

 

鬱蒼と茂った竹の森、もう中は夜と言ってもいいほど暗くなっている

 

「こんな迷路みたいなところで見つけれんのか?」

 

「因幡てゐか藤原妹紅と言うこの竹林を熟知している人物に会えれば大丈夫らしいが……それらしいのは居ないな」

 

案内人が見つからず仕方無く進もうとした二人は竹林から気配を感じて身構える

 

「おうおう!こっから先は永遠亭と竹林ホームレス一家の家しかないよ!冷やかしで来たなら帰った帰った!」

 

ウサミミが生えた少女が威勢良く飛び出して来た

 

因幡てゐである

 

「お前が案内人か?その永遠亭に用がある、案内して欲しい」

 

「永遠亭にぃ?元気そうなのにぃ?あ、もしかしてあんたが永琳が言ってた外来人?昨日の今日で早いじゃん」

 

「事情が変わってな、証明になる物ではないが八意永琳と会った証拠はある」

 

ヒュンケルはもう必要では無くなった「永琳の紹介状」をてゐに見せた

 

「ん~……はいはい確かにこりゃ永琳が書いたもんだ、オッケー!んじゃ案内するからついてきなよ~」

 

てゐに案内され二人は迷いの竹林を抜けて永遠亭へと辿り着いた

 

「ほいほい到着っと~さぁ入るよ~」

 

玄関に近付くと引き戸が勝手に開いた

 

「あら、もう来たのね貴方」

 

偶々出て来た永琳が出迎える形になった

 

「ああ……あんな捨て台詞を聞いては居ても立ってもいられなかった」

 

「そう……それほどの事なのね貴方にとって戦いとは、己が全力を遺憾無く発揮出来る体とは」

 

「……」

 

来た理由を間違えられていない事がわかったヒュンケルは小さく息を飲み、聞いた

 

「治せるのか?俺の体を……?」

 

再起不能になったこの体の治療が出来るのかと

 

「……そうね、万が一の事態もあるかもしれないし中で診察してから話しましょうか、どうぞ入って」

 

永琳に連れられて永遠亭の中へ入っていく

 

「あ、昨日の人!こんばんは!」

 

途中、鈴仙と擦れ違い診察室を目指す

 

「お?急患?」

 

更に途中、居間から誰かが顔を覗かせた

 

「あ!てめぇは!?」

 

「ゲッ!?帰ってなかったのかお前等!?」

 

少女がしまった顔であたふたしている

 

「お前は……鬼人正邪……」

 

正邪が見つかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-紅魔館・図書館-

 

「……」

 

バーンは今だ虚空を見つめていた

 

(困惑がこんな簡単に見てとれる……こんなバーン初めて見たわ、それほど魂に刻まれた相手なのね、勇者というのは……)

 

近くで本を読むパチュリーも気になって見てしまう程バーンは動かなかった

 

「……」

 

バーンは動かない

 

(此処でいつまでも考えたところで答えは出ん、無駄、か……時を浪費して変化する保証も無い、奴等から来るとも思えんのならば此方から動くしか……あるまいな)

 

こうしている事の愚を悟り目を閉じる

 

「ミスト」

 

忠臣の名を呼ぶと数瞬の間を置いた後、背後に霧が集まり形を成した

 

「はっ、何用でしょうかバーン様」

 

跪き頭を垂れるミスト

 

「頼みがある、引き受けて貰えるか?」

 

「何なりと」

 

二つ返事で応えてくれる忠臣を嬉しく思いながらバーンは頼みを告げる

 

「古明地さとりを……呼んで来てくれ」

 

王の思惑が幻想を駆けていく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




仕事が忙しいと時間が掛かってしまうのです……

もう結構書いたのに作中ではまだ二日目なんですよね……まぁ10日間きっちり居るとは限らないし一日一日きっちり書く訳でもないんですが二日でこの内容は濃い、ちなみにまだ夜が残ってます。

次回も頑張ります。

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