東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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-闇の彼方に- 終末の章

 

 

 

 

 

 

 

 

 ""私はただの闇でいい

 

          ルーミアという名の闇でいい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    私は生まれながらに嵐なら良かった

       脅威ならば良かった

      一つの厄災ならば良かった

 

 

 

 

心無く涙も無いただの恐ろしい闇で在り続けれたら良かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      こんなに……苦しいのならば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   お前達になんて……出会わなければ良かった……

 

 

 

  知らなければ良かった……触れなければ良かった……

 

 

 

    そうすれば……私は私のままで在れたから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  だけど……出会えたから今、私は……こんなにも……""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   「ガアアアアアアアアアアアアーーーーッ!!」

 

 

 

 

 

狂飢が叫び狂う

 

 

 

「ルーミアさんッ!?」

 

明らかな異常を目にした大妖精の心中は驚愕よりも悔しさが勝っていた

 

(間に合わなかった……!?)

 

起こってみれば当然の事、こうなる可能性を考えない様にしていただけで大妖精はこの事態は自分に責があると痛感していた

 

(何とかして落ち着けないと……)

 

襲い来る常闇ノ皇が伸ばす腕を避ける大妖精

 

「……ッ!?」

 

だがそれだけ

 

避けるだけで何もしない、出来ない

 

「ウゥゥゥ……!!」

 

狂った殺意と戸惑う優しさ

 

 

「アアアアッーーー!!」

 

 

「あっ!?」

 

 

それは必然

 

狂獣と化した皇の動きに淀みは無い

 

傷つけたくない大妖精は精細を欠き、反撃も出来ない

 

その差が必然的に大妖精を追い詰め、命を掴むその凶手を届かせた

 

 

 

 

 

パキンッ!

 

 

 

 

 

しかしそれが命を掴む事はなかった、氷の盾が割って入り大妖精を守ったからだ

 

 

「ちょっと大ちゃん!これどーなってんの!?」

 

 

遅れてやって来て襲われている大妖精を見て訳もわからぬまま咄嗟に防いだチルノが叫ぶ、その離れた場所から怯えたルーミアも見ている

 

「ありがとチルノちゃん……見ての通りだよ」

 

構わず氷の盾に攻撃を加えて突破しようとする皇から視線を離さずチルノの横まで下がった大妖精は危険だと伝える

 

「とりあえずブッ飛ばして落ち着かせたら良いのね!」

 

「そうしたいけど……ダメだよチルノちゃん、ブッ飛ばすのは無しでお願い」

 

「へ……?なんで?」

 

攻撃するなとの言葉にチルノは困惑しながら問うも大妖精は首を振った

 

(あんなに弱ったルーミアさんを攻撃なんてしたら正気に戻る前に……)

 

常闇ノ皇の今までを知っているから出来なかった

 

「お願い……チルノちゃん……」

 

どうしてもそれは出来なかった

 

「……わかった、けど……どうすんの?何か方法があんの?」

 

「今はわかんない……だからこのままルーミアさんを抑えて何か方法を見つけたいの、もしかしたら疲れたら正気に戻るかもしれないし……」

 

「了解……やってみるわ!離れてて大ちゃん!!」

 

チルノが承った直後、氷の盾は砕かれ常闇ノ皇が二人に迫る

 

 

ドウッ!

 

 

チルノから発生した冷気の嵐が常闇ノ皇を押し飛ばした

 

 

「あんたとやるのは二度目ね……」

 

 

キィィン……

 

 

「やりたくないけどあんたは本気……なら!あたいも本気だ!!」

 

 

体から溢れる凄まじい冷気が瞬時に広がり、周囲数キロを氷獄、摩訶鉢特摩を思わせるチルノの世界に変貌させる

 

「さ、寒いのだー……」

 

「バリア張ってあげるねルーミアちゃん、危ないから離れてよっ!」

 

「チルノ一人でだ、大丈夫なのかー……?」

 

「うん……と言うよりチルノちゃんが強過ぎて私でも上手く合わせられないからなんだけどね」

 

幻想郷に終わらぬ冬を与えられる程の力、出来る限り抑えてそれでもここまでの影響を与える幻想にだけ存在する氷帝の真価、その気になれば今の常闇ノ皇が変えた夜の世界を氷の世界への上書きすら可能な力

 

「合わせられたのは妹紅さんと昔のバーンさんだけだったから……」

 

「チルノはホントにスゴイのだー……」

 

かつてよりも更に力を付けていたチルノはその名に恥じず、今や疑いの余地なく誰もが認める「最強」、それに相応しき力を持つに至った唯一至上の妖精

 

 

「かかってきなさい!!」

 

「アアアアァァアアアァァァァアアアッッーー!!」

 

 

最強と狂皇

 

望まぬ二人の戦いは始まった

 

 

 

「ウゥゥゥ……グギィィィィッ!!」

 

何の意図も無くただ最短に向かってくる正気を失った常闇ノ皇

 

「でぇい!」

 

それを生成した氷壁で防ぐチルノ

 

「クッ……ギィィッ!?」

 

阻む氷壁を粉砕するも次の視界にはまた同じ氷壁、それも壊すもまた氷壁

 

「ギギギィィィ……!!」

 

忌々しそうな唸りをあげて次の氷壁を睨む常闇ノ皇だったが突然、何かに気付く

 

「ク……ワセロォォォ……!!」

 

氷壁もチルノも目もくれず彼方へ飛び始めた

 

「なに?どうしたの?」

 

「あの方角……まさか!」

 

謎の動きに戸惑うチルノへ気付いた大妖精は叫ぶ

 

「止めてチルノちゃん!ルーミアさんは人間の里に向かったんだよ!人間の匂いを感じて……絶対に行かせちゃダメ!」

 

「わかった!ちょっと荒っぽくいくから気をつけてね!もっと寒くなるから!」

 

頷いた大妖精を確認するとチルノは手を天にかざす

 

「氷結界「あたいの世界」!!」

 

放出された冷気が迸り、常闇ノ皇を追い抜き、周囲数キロのチルノの世界を常闇ノ皇では破壊出来ない氷壁で閉じ込める

 

「探しに行ってくる!」

 

「ううん、大丈夫だよチルノちゃん……ルーミアさんは戻ってくるから」

 

大妖精が言った通り、すぐに常闇ノ皇は戻ってきた

 

 

 

 

「……」

 

氷壁は破壊出来なかった、この結界内に居るのは大妖精達3人だけ

 

ならば戻ってくるのは必然と言えた

 

「ヴゥゥゥゥ……」

 

常闇ノ皇は闇の力を弾幕に変えて撃ってきた、弱らせて抵抗出来なくしてからと言う事なのだろう

 

「そりゃあ!」

 

同じく氷弾幕で全てを相殺するチルノ

 

「ヴアァアアアアアッ!!」

 

更なる力で弾幕を放つ常闇ノ皇、宣言はされていないがスペルである闇符「ジェニュイン・ディマーケイション」

 

ルーミアも持つスペル、それの真なる形のスペル

 

「おらおらおらおらぁー!!」

 

その全てを容易く氷弾で撃ち落とす氷帝チルノ

 

「……!?甘いわねッ!」

 

弾幕に紛れて突撃して来た皇を冷気で吹き飛ばし、飛ばされながらも滅裂に撃たれる弾幕を氷浸けにしてのける

 

「ガアッ!!」

 

放たれる闇の波動

 

「凍符「マイナスK」!!」

 

その闇の波動は凍てつき、破砕した

 

有り余るその力は呪文や魔術に注ぐ魔力、そう言った動力や不可視の力にすら簡単に干渉し氷砕する

 

もっとも何故出来るかなどはチルノ自身よくわかっていない、なんか知んないけどなんか出来る、くらいにしか思っていない

 

だがそれは知る者からすれば絶望してしまう程の所業

 

それのみを高め続けた故に万物に干渉するまでの次元に達したもはや冷気と言っていいのかわからないまでの力

 

全てを飲み込む闇そのものが常闇ノ皇ならばチルノはその闇すら凍てつかせるまでに至らせた空前絶後の氷神

 

 

「これぐらいならラクショーね!」

 

調子に乗った声を出すがチルノ自身に油断は無い

 

数多の戦いを経験したチルノは戦いは簡単なモノではないとその幼さ余る身に理屈ではなく本能で刻み込んでいる

 

難しい策略や駆け引きこそわからない、だがこう言った純粋な力比べに関しては無類の強さを誇る

 

そしてその力は無理矢理に意図せずに策を潰してしまう事すら有る

 

故に最強

 

幻想郷でチルノより上だったのは異世界から招かれた外来人ただ一人だけだった、今は並ぶ者は居ない

 

 

「ヴゥゥゥ……ヴヴゥゥゥ!!?」

 

呻く口からは更に涎が滴り、焦点定まらない瞳は血走り、闇の力がより強く溢れる

 

「……」

 

勢いを増す苛烈な攻撃

 

(……ッ!?)

 

それでも全てを捌くチルノだったが一番間近で対峙していたからこそ気付く、と言うよりは感じた

 

「……ねぇ大ちゃん」

 

闇の嵐を防ぎながらチルノは口を開く

 

「もう……ダメね、トドメ……決めるから」

 

それに大妖精が目を見開き叫ぶ

 

「まだ!まだ待ってチルノちゃん!!」

 

「ダ、ダメなのだー……」

 

二人が待ったをかけるがチルノは首を振った

 

「じゃ何か方法見つかりそうなの?」

 

「ッ……」

 

「あ、うぅ……」

 

二人に返す言葉は無い

 

(ルーミアさんを正気に戻す方法は1つだけわかってる、でもそれは出来ない……だけど……他の方法が見つからない……)

 

方法は有るには有った、最初からわかっていた確実な1つだけは

 

誰でも良いし自分でも良い

 

だがそれは非常に危険な賭け、今の常闇ノ皇を考えれば生きていられる可能性を保証しかねる事だった

 

だから言わなかった

 

「……大ちゃんもわかってんでしょ?」

 

悔しく俯く大妖精に自身も辛き想いを感じながらもチルノは告げる

 

「アイツ、攻撃はヤバくなってるけどドンドン弱くなってる……多分、命を燃やしてるから……もうちょっとしかなかった命を……このまま続けたら先にアイツが死んじゃう」

 

「……」

 

「きっとアイツもそんなのはイヤな筈よ、大ちゃんならわかるでしょ……?だから……あたいが終わらせてあげる、あんた達の代わりに」

 

「……ッ!?」

 

(ごめん……大ちゃん……ルーミア……)

 

何も返せず歯噛む大妖精とルーミアに謝ったチルノは……

 

 

「覚悟すんのね……これがあたいの……全力だぁ!!」

 

 

最強たる氷の力を全て解放し、その力を常闇ノ皇へ……向けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……彼処か」

 

飛び急ぐバーンは闇の力が立ち昇る場所をチルノの作った氷結界を遠目に視野に捉えていた

 

「……」

 

更にスピードが上がる

 

上げるのは理由があった

 

(嫌な予感がする……間に合うか……)

 

それは闇が零れる氷域に……

 

 

大事な者が傷つく……そんな胸騒ぎしたから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピシィ……!

 

 

 

チルノから青きオーラが立ち昇ると既に極寒により凍りついた氷域内にてチルノから半径数メートルの周囲が更に()()()()()

 

 

「手加減なんて出来ないからね!」

 

 

先の時点で気を抜けば大妖怪と言えど凍死してしまう程の氷域だった

 

それすらを更に凍りつかせる冷気

 

その力は遂にかつて友と呼んだまま二度と会う事はなかった起源たる大魔王、その名を冠した闇の氷魔と同じ位、そこに至るまでの力

 

 

「ググゥ……ガアッ!!」

 

常闇ノ皇が弾幕を放つ

 

「!!?」

 

その全てがチルノが纏う冷気により直前で凍りつき、砕け散る

 

「ギギギギィィ……!!」

 

特大の弾幕を撃ち込むも結果は変わらない、チルノに届かない、全くも通じていない

 

正気を失っている常闇ノ皇はそれでも構わず撃ち続ける

 

 

「……見てらんない、すぐ……楽にしてあげるから」

 

両手を常闇ノ皇へ向け、チルノは宣言する

 

 

 

「凍符「エターナルフォースブリザード」!!」

 

 

 

放たれた極冷

 

例外無く全てを永久氷結させる最強が繰り出すもはや死技

 

 

「!!?」

 

直前にまで迫っていた危機より更に早く迫る危機を本能で察した常闇ノ皇は無意味な攻撃を止め闇の力で対抗する

 

「クッギッ……ギギギ……!?」

 

止めれたのは一瞬

 

冷気は闇の力に勢いは落ちども確実に常闇ノ皇に向かって進んでいく

 

「ッ……」

 

チルノは苦しそうに顔を歪めている

 

それは常闇ノ皇の抵抗によるものではない、その気になれば闇の力などものともせず一瞬で片を付けられるまでの力差が二人には有るのだ

 

なら何故、苦しそうなのか?

 

(なんで……なんでこうなっちゃうのよ……)

 

それは常闇ノ皇が敵ではないから

 

友達にトドメを刺さなければならない苦悩が友達想いのチルノを苦しめる

 

本当はこんな事したい筈がない

 

それが冷気の進みが遅い理由なのだ

 

 

「ギギギ……ギィィィィィィッ!?」

 

しかし、それでも討つ覚悟はしている

 

進みは遅いが常闇ノ皇の命には確実に近付いている

 

そして届けば間違いなくその命を氷砕するだろう

 

「ィギッガァァァァァ……!!?」

 

もう、それは目前まで迫っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チルノちゃん……ルーミアさん……ッ!?」

 

見守る事しか出来ないが大妖精は目を逸らさない、苦しさと覚悟を表した拳を耐える強く握り締める、チルノの苦しさ故の遅さが大妖精とルーミアの二人にも苦渋を味あわせているのだ

 

「……ヤ……なのだー……」

 

「?……どうしたの……?ルーミアちゃん……?」

 

傍で聞こえた小さな呟きを大妖精は聞く

 

「せっかく……仲良くなれたのに……こんなの……イヤなのだー……」

 

それは彼の皇と最も近しき者からの悲痛な言葉

 

「ルーミアちゃん……」

 

助けれない

 

それは幼いままのルーミアとてわかっている

 

だが幼いままだからこそ、幼いまま故に納得していない感情を大妖精の様に抑える事が出来ず、溢してしまっていた

 

「~~~~ッ!?」

 

大妖精は何も返せず今にも泣きそうな顔で歯噛むしか出来ない

 

一番楽しそうにしていたルーミアに掛ける気の利いた言葉など無い、そこまでの状況なのだから……何を言っても傷口を深くするだけ

 

だから何も言えない

 

 

 

「ねぇなのだ大妖精……」

 

溢れる感情は止まらない

 

「ホントにもうダメなのかー……?もう絶対に助けられないのかー……?」

 

「ッッ……!!?」

 

ルーミアの想いが大妖精に深く刺さる

 

「もっと一緒にお話したかったのだー……元気になったら一緒に遊びたかったのだー……」

 

「~~~~ッ!!?」

 

胸が締め付けられる様に痛い

 

大妖精はルーミアの気持ちが苦しいまでにわかる、バーンが死んだ時に嫌と言うほど味わっていたから

 

「大妖精……ホントにもうダメなのかー……?ねぇなのだー……あぁうぅ……何か……言ってくれ……なのだー……」

 

「~~~~~~~~~~~~ッッ!!?」

 

ルーミアの幼くも必死な愛に……

 

「…………チルノちゃん!!」

 

押さえ込んだ大妖精の想いが……弾けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あと……一押しね……)

 

冷気はもはや常闇ノ皇に触れる刹那、残るはほんの少しだけ強く力を入れるだけ

 

「……」

 

その最後の一押しの直前

 

「じゃあね……」

 

別れの言葉を言うだけの一瞬、一瞬だけ……冷気は止まった

 

 

 

「待ってチルノちゃん!!」

 

 

 

飛び込んで来た大妖精がチルノの手を掴み、押さえる

 

「大ちゃん!?何すんのよ!!」

 

「倒すのは待ってチルノちゃん!もう1回だけルーミアさんを助ける方法が有るか考えさせて!!」

 

「バカじゃないの!?大ちゃんが考えても無かったからこうしてんじゃない!」

 

「そうだよ!私じゃダメだった!だから妖怪に詳しい紫さんやバーンさんに聞いてみたいの!」

 

「もう間に合わないわよ!退いて!トドメ決めるから!」

 

「だからお願いチルノちゃん!最後まで諦めたくないの!チルノちゃんお願い!!」

 

必死に止めようとする大妖精と譲らぬチルノ

 

放出していた冷気が止まり、視界が鮮明になり始めた

 

 

 

 

その瞬間であった

 

 

 

 

ズギャアッ!!

 

 

 

 

勢いを無くした冷気を突き抜けて……闇が二人を直撃した

 

 

「あうっ!?」

 

打ち飛ばされ木に強打した大妖精は苦痛を感じながら顔をあげる

 

「あっ……イツッ!……チ……チルノちゃん!!?」

 

その目に写ったのは悪夢

 

「グゥゥゥゥ……ギィィィィ……!!」

 

「うっ……うああっ……!?」

 

常闇ノ皇がチルノを吊し上げている光景だった

 

(わ、私のせいだ……!私がチルノちゃんを止めたから……チルノちゃん……!!)

 

強い後悔を感じるがそれどころではない、今まさにチルノが絶体絶命の危機に掴まれているのだから

 

「うっ……くっ……うぅ……!?」

 

動こうとするが動作が鈍い、不意を突かれてまともに受けたダメージが酷い

 

妖精は身体に優れない、氷や風といった能力に優れその能力で攻防を担わなければならない程に妖精の身体は脆いのだ

 

大妖精はどうにか能力を発動させようとするが間に合いそうにない

 

 

「むぐっ……こん……のぉ……!」

 

首を掴まれているチルノが能力を使おうと力を集中させる

 

 

バヂイッ!!

 

 

「……カッ!?」

 

闇の衝撃がチルノの動きを容易く止める

 

「シィィィィ……!!」

 

ようやく掴んだ嬉しさからか、常闇ノ皇に抑えきれない狂喜の笑みが浮かび、歓喜の涎溢れるその大口を強く狂おしく開きあげる

 

「……ゥ……ァ……」

 

事が終わればそこでチルノの妖生は終わりを迎える

 

妖精は自然が在る限り死んでも復活出来るが常闇ノ皇の口に掛かれば話は変わる

 

魂ごと闇に飲み込まれて二度と復活は出来なくなるのだ、それが命を食らう者の権能

 

それは不老不死の蓬莱人とて例外ではない

 

故に正しく絶体絶命

 

「やめて……!やめて……!!」

 

ルーミアは叫ぶがその声は届けど響く事は無い

 

 

 

「やめてなのだーーーーー!!!」

 

 

 

闇が命を食らう、その直前

 

 

 

 

バシュッ!

 

 

 

 

氷結界を突破し、元・大いなる魔の王がその場に降り立った

 

 

「……!!」

 

 

ざわっ……

 

 

それは感情の隆起

 

常闇ノ皇に食われんとするチルノを視認したバーンは無意識に手をかざしていた

 

 

「ッ!!?」

 

チルノを掴んでいた常闇ノ皇の手が弾かれる、餌は結界で守られてしまったのだ

 

「!?……!!?」

 

そして気付けば自分の回りは力場で囲まれていた

 

 

「……博麗の結界術だ、少しそこで待っていろ」

 

最後の博麗の巫女から役目を引き継いだ王は博麗の巫覡として継承した術にて常闇ノ皇を隔離しチルノを引き寄せる

 

「私が悪いんですバーンさん……私が馬鹿な幻想に縋っちゃったから……だからチルノちゃんは悪くないんです……!!」

 

弱々しくバーンとチルノに寄ってきた大妖精が涙目で謝る

 

「……お前達が奴に抱く想いをわからぬ余ではない、お前達を責めはせぬ……だが、後は余に任せるがいい」

 

「……!!」

 

バーンからの言葉に大妖精は終わりを感じた、チルノがしようとした事をバーンが代わりにするのだと察したのだ

 

「わかり……ました……お願いします……」

 

そしてバーンですらそれ以外に方法が無いのだと……

 

 

 

「そろそろか……」

 

チルノを大妖精に預けルーミアの位置まで下がったのを確認したバーンは常闇ノ皇へ向く

 

「グギギッ……ガアアアアアッ!!」

 

結界を破壊した常闇ノ皇がバーンにではなく3人の方へ向かうがそれを読んでいた様にバーンは立ち塞がる

 

「アアアッ!!」

 

突き入れる爪、それを掌底で払う、構う事無く次は逆の爪、それもはたき落とす

 

「メシィィ……クワセロォォォォォォ!!」

 

駆け引きも何も無い乱撃

 

(やはり極限の飢餓で我を忘れているか……)

 

それも全て捌く

 

(この程度……我を忘れてこの程度なのか……手加減無しで……今やチルノに劣る余にすら及ばぬほど貴様は弱っていたのか……)

 

実感する常闇ノ皇の今に哀れみすら感じる

 

「……ウウゥ!?」

 

掌底で弾き飛ばされた常闇ノ皇は限界を表す様な血涙を流しながらバーンを睨み付ける

 

 

 

「クワセロォォォォォオォォォオオォォォォォォォ!!」

 

 

 

爆発的に放出された闇の力が常闇ノ皇の前方に集まり形を成していく

 

 

皇夜「ウェルテクス・ナイトバード」

 

 

闇の力を鳥の形に成して撃ち込む常闇ノ皇が持つ最大にして最強の皇技

 

それを撃とうとしている

 

「ぐる……ギルゥゥアァァァァ……!!」

 

終末に限りなく近付いた常闇ノ皇にもはや正気は欠片も残っていない、それどころか唯一残っていた本能すらも極限状態で混濁し食らわなければならぬべき者まで闇に葬ろうとさえしていた

 

 

「……よかろう」

 

静かに呟き、応える様にバーンも魔力を高める

 

「これが……余の不死鳥だ」

 

前方に集められた魔力が炎と変わり、皇帝を冠した不死なる鳥へと形を形成していく

 

 

「オオオオアアアアアアアーーーーッッ!!」

 

 

「カイザーフェニックス!!」

 

 

闇鳥と炎鳥、2羽の比類無き王鳥が同時に羽ばたく

 

 

 

 

ドウッ!!

 

 

 

 

羽炎(はえん)闇羽(やみばね)を激しくも美しく散らし、2羽の王鳥は攻めぎ合う

 

 

 

 

「キキ……ィィィ……!!?」

 

余りの力みに浮き出た血管が裂け、血を噴き出しながらも決して力を弛める事なく皇は死力を込める

 

「……」

 

バーンは闇鳥から聞こえる必死なる力の絶叫を黙視し感じる

 

「……これにて終焉としよう」

 

かざしていた手を握り込むと2羽の王鳥は弾け飛び、羽炎と闇羽を撒き散らし、消滅した

 

 

 

「ガアアアアアアアアアアアアーーーーッッ!!」

 

 

 

次の瞬間、舞い散る羽を突き抜けて常闇ノ皇がバーンに向かう

 

 

「……」

 

 

スッ……

 

 

それを予期していた様に……バーンは己の腕を皇の口元へ差し出した

 

 

 

グチィ!!

 

 

 

刹那の交差にバーンの腕の肉が食い千切られる

 

 

「ウゥ……美味しい……!オイシイヨォォォ!!」

 

念願の食事にありつけた皇は狂喜の笑みを浮かべながら夢中でバーンの肉を咀嚼する

 

「……美味かろう」

 

己の肉を美味そうに食べる皇を眺めながらバーンは言う

 

「老いたとは言え鬼眼王の肉だ……一口で正気に戻れる程の、な」

 

「……ウッ!!?」

 

夢中で食べていた皇の様子が急変する

 

「ウゲェ!?ゲェッ……オエェ……!!?」

 

嬉々として食べていた肉を吐き出し、夜が消えた

 

「ルーミアさん……」

 

それを心配そうに見つめる幼い3人

 

 

「不様だな」

 

吐き出し終えた常闇ノ皇へバーンは言う

 

「ハァ……ハァ……」

 

吐き出したとはいえ凄まじき力を秘めた鬼眼王の肉、僅かに取り込んだ栄養だけで正気を取り戻すには充分過ぎた

 

その正気を戻した瞳で常闇ノ皇はバーンを睨む

 

「どうした?何故吐き出す……食えば良かったではないか、念願の食事……それも極上の餌だ、何故食わぬのだ?」

 

「……」

 

「知古が嫌なのか?ならば余が紫に言って無関係な人間でも魔族でもすぐに拐って来てやる、存分に食うがいい」

 

「……五月蝿い」

 

「まだ……まだ苦しみたいか!いつか!やがていつかはと!そんな甘い幻想を信じ……いったいどれ程の無駄な時を耐え続けて来た!!」

 

「五月蝿い……!」

 

「それだけの業を生まれ持ち!重ねて来たのは誰だ!貴様自身だろうが!変えられる筈がなかろう……それは貴様自身が一番わかっていた筈だ!」

 

「五月蝿いのよッ!!」

 

怒声を出した常闇ノ皇は恥じる様に頭を垂れる

 

「……礼だけは言っておくわ、止めてくれた事と……最後を私のままで在らせてくれた事を……ね」

 

「……後は好きな様にするがいい」

 

苦しみながらも精一杯の笑みを返した皇は自分へ駆け寄ってくる3人へ顔を向ける

 

「ルーミアさん!大丈夫ですか!?」

 

「……心配、掛けたわね」

 

元の常闇ノ皇に戻ってくれた嬉しさから3人に笑顔が見える

 

「もうちょっと待ってくださいね!絶対に助けますから!大丈夫です!次はバーンさんも居ますから絶対大丈夫です!」

 

「そう……でも……もう、いいのよ」

 

笑顔は一瞬で消え失せた

 

「なんでよ!いいわけないでしょ!」

 

「そ、そうなのだー!諦めちゃダメなのだー!」

 

嫌だと喚く3人をまともに見れないのか常闇ノ皇は首を振って顔を逸らした

 

(そんな顔しないで……儚き幻想を懸命に、されど楽しく生きる……そんなお前達と出会ったから、触れたから、私は共に生きたいと思ってしまったのに……そんな顔は見たくない)

 

常闇ノ皇が食事をしなかった理由

 

それは幻想郷と共存したいが故であった

 

思うのは簡単だが大きな問題があった、それこそが自身の食事

 

命を食らう事でしか生き永らえない常闇ノ皇は幻想郷では生きられない

 

だから食事を絶った、そして命を食らわねばならぬ己の魂の定めを変えたかった

 

だが幾千の月日を掛けようが変えれなかったのだ、大き過ぎる力を持つ皇の魂故に……

 

そうして何も食わぬまま、本来なら有り得ない死期を悟った皇は最期に幻想郷に帰ってきたのだ

 

ほんの僅かの時間だけでも望んだ場所で願いを叶えたかったから

 

 

 

「大妖精」

 

知っていながら初めて名前を口にする

 

「覚えてくれていた事、感謝するわ……会えて嬉しかった……」

 

「そんな……イヤですよ……そんなお別れみたいな事……言わないでくださいよ……」

 

顔を振りながら終わりを拒否する大妖精

 

「……悪いわね」

 

頬を撫でると大妖精は堪らず泣き出した

 

「チルノ」

 

次は受け入れてくれた氷精

 

「ずっと居るの?とお前は前に聞いたわね?」

 

「……うん」

 

「永遠なんて有りはしない、形あるものはいずれ滅する……どんな物語にも終わりは有る様に……強さなんて何の意味も無いわ」

 

「……難しいわね、何言ってるかちっともわかんない」

 

「いつまでも子どものままではいられないと言う事よ……すぐにわかるわ」

 

いつまでも夢見がちな妖精に告げると最後はルーミアへ向いた

 

「……」

 

優しく頭を撫でる

 

「……私はね、お前が羨ましかった」

 

皇の言葉が震える

 

「お前みたいに……闇の定めを変え、ここで不自由無く楽しく暮らすお前みたいに……」

 

唯一出た本心

 

「ただのルーミアに……貴方になりたかった……」

 

同じ体を持つが故に出た本心

 

ルーミアは成りたかった自分、だから言う気は無かったのに今際の際に自分に語りかけるように本心が溢れた

 

「私も、一緒に暮らしたかったのだー……お姉ちゃん」

 

ルーミアにとっても常闇ノ皇は特別な存在、過ごす内に姉の様に、家族の様に思うまでに芽生えた愛は育っていた

 

「……お姉ちゃん、かぁ……」

 

その言葉が余程心に響いたのか、常闇ノ皇の頬を初めての涙が流れ落ちる

 

 

 

「……そろそろお別れね」

 

 

 

「ダメです、イヤですよ……だって、まだ私が作った料理……食べて貰ってないですよ」

 

「そうよ……ぐちゃぐちゃになっちゃったけど今日も持って来てるから、食べなさいよね……大ちゃん泣かせたんだから絶対食べなさいよ」

 

「お願いなのだー……」

 

 

 

「ふふっ……もう……食べたわ……」

 

泣く3人へ常闇ノ皇は笑った

 

 

「お腹……いっぱいよ」

 

 

最期の時を望んだ場所で望んだ者達と過ごせた皇は満たされていた

 

 

空腹ではなく、心が……

 

 

 

「常闇ノ皇よ」

 

見届けていたバーンが最後に皇へ話し掛ける

 

「愚かよな貴様は……魂に定められた理を変える、そんな事が不可能なのは最初からわかっていた筈だ、ならば……いっそ、巨悪に成り上がれば良かったのだ……人妖を貪り食らい、何者からも恐れられる様な……そして、最後には勇者に討たれてしまう様な、巨悪に……」

 

変われた王、変われなかった皇

 

同じ位であり、同じく幻想郷を想う者に成っていた常闇ノ皇だったからこそ言わずにはいられなかった

 

「そうであれば……貴様の死に……これ程の痛みを感じはしなかったものを……」

 

「ハッ……お前ともあろう者が何を言っているの、甘過ぎて反吐が出るわ……」

 

語らずとも本心を理解し合う最後の王達の会話

 

「……でも、今はそれが心地良い」

 

「そうか……ならば、よいのだ」

 

余計な言葉は要らない、当人達がわかっているから余計な言葉は不要なのだ

 

「幻想郷はお前に任せるわ、好きにしなさい……その代わり、半端も妥協も許さない、最期まで見届けるのね」

 

「そのつもりだ」

 

「……帰って来ない方が良かった?」

 

「かもしれぬ、だが……悪いとも言わぬ」

 

「そう……」

 

小さく頷くと、常闇ノ皇は一呼吸置いた

 

 

 

「あーーー………お腹へったなぁ……………………」

 

 

 

そんな……何でもない様な事を呟き

 

「……最後のお前は、まさしくこの幻想郷の……仲間であったぞ、常闇ノ皇……いや、ルーミアよ」

 

常闇ノ皇は息を引き取った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぇぇぇ……ルーミアさぁん……」

 

悲しくて一番泣いている大妖精の前で常闇ノ皇の遺体から黒い飛沫が浮き上がり始める、闇に還るのだろう

 

「……あのね、大妖精……チルノ……」

 

消えていく常闇ノ皇の傍らに立ったルーミアが二人に振り向く

 

「私も一緒に行くのだー」

 

まさかの発言に二人は驚く

 

「ひとりぼっちは寂しいのだー、でも私も一緒ならお姉ちゃんも寂しくないのだー、だから……バイバイなのだー」

 

「そんな……待ってルーミアちゃん!」

 

「そんなの許さないわよ!」

 

二人は止めるがルーミアの覚悟は変わる事は無く、常闇ノ皇と同じく体から闇の飛沫を浮かび上がらせ始める

 

「大妖精……チルノ……バーン……楽しかったのだー、一緒に遊んでくれて……私と友達になってくれて……すごく嬉しかったのだー、皆に会えて……とっても幸せだったのだー」

 

涙は溢れ、止まらない

 

「1つだけ約束して欲しいのだ……夜になったら、私を思い出して欲しいのだー」

 

「……わかったわよ!あたいも……!楽しかった!ルーミアはあたいの友達だから!ずっと友達だから!」

 

「忘れないよ……!いつまでも……絶対に!」

 

「奴の事を頼む……さらばだルーミア、仲良くするがいい」

 

大好きだった者達の別れの言葉を受け取り、幼き闇子は……笑った

 

「さよなら……なのだー」

 

 

パシュ……

 

 

一瞬の閃光を放ち

 

弾けた二人の飛沫は闇へと還って行った

 

 

 

 

「ルーミアちゃん……」

 

そして唯一残ったリボン

 

ルーミアのトレードマーク、常闇ノ皇とルーミアを繋いでいた証、バーンの想いも込められたリボン

 

それを大妖精は手に取り、抱き締める

 

 

 

 

 

 

 

終わったのだ

 

新たな仲間と、古くからの友の死を以て……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「墓は後日作ってやるとしよう……レミリアが夕食を作って待ってくれている筈だ、今日は紅魔館へ泊まって行くがいい」

 

「はい……わかりました、行こっチルノちゃん」

 

だがチルノから返事が来ない

 

「…………」

 

二人が振り向くとチルノは常闇ノ皇とルーミアが消えた場所を見つめて動いていなかった

 

「チルノ……」

 

「……!」

 

ショックを受けているのだと思うバーンと何かを察した大妖精

 

「チルノちゃん!」

 

駆け寄った大妖精が声を掛ける

 

「……あ、ごめんごめん!ちょっと考え事してて……なに大ちゃん?」

 

「今日は紅魔館でお泊まりするって話をしてたんだよ、チルノちゃん行こっ!」

 

「そうなの?わかったわ!とりあえずソルとルナをぶっ飛ばすのね!行くわよ大ちゃん!もたもたしてるんじゃないわよ!」

 

いつもの調子に戻り先に飛んでいくチルノを大妖精が追いかけていく

 

「ふっ……」

 

最後に浮かび上がるバーン

 

(際どいところだった……)

 

思うは先の事

 

(奴が弱っていたから良かったものの……下手をすれば全滅も有り得た)

 

もし常闇ノ皇が完全な状態だったならば老いたバーンは勝てなかった、チルノですら良くて五分

 

(これから先、更に力は落ちる……そして今日の様な出来事が起きる事も有るだろう)

 

だから考えていた

 

(紫に取って来て貰うとしよう……アレを……)

 

出来うる限りの事を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皇が奏でた終末の闇の唄

 

唄い終わった後、そこには誰も居ない

 

想いと絆を残して

 

皇は……闇の彼方に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ大ちゃん……あたいね……」

 

「わかってるよチルノちゃん、チルノちゃんが言うの……ずっと待ってたから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【エピローグ】

 

 

「おはようバーン」

 

「うむ」

 

常闇ノ皇の死から数日後の紅魔館

 

「朝食前に図書館で紅茶でも飲みましょう、淹れてくるわ」

 

「頼む」

 

二人はいつもの様に図書館へ向かう

 

「……!」

 

「どうしたの?」

 

そして、机に置かれたそれを見つける

 

「これ……貴方が二人にあげた……」

 

それは青いイヤリングと緑のネックレス

 

バーンがチルノと大妖精に贈った友情の証

 

「……そうか」

 

ここにこれだけが置かれている

 

それだけで二人は理解した

 

(あの時……チルノはショックを受けていたのではなく、理解したのだ……永遠ではいられない、永遠であってはならない、終わりが有るのだ、と……)

 

あの日、チルノはバーンと同じほど強い常闇ノ皇と昔からの友達であったルーミアの死を目の当たりにして唐突に理解してしまったのだ

 

夢見がちな子どもの様にはいつまでもいられない、現実を知り、世の理をようやく理解したのだ

 

大妖精はとっくに理解していたが親友のチルノを置いて行けないからいつかチルノ自身がわかるまで傍に居続けていたのだ

 

「また……寂しくなるわね」

 

「そうだな……」

 

二人の忘れ形見を手に取ったバーンに今までの思い出が脳裏に浮かぶ

 

(チルノ……大妖精……)

 

生きる理由をくれた最初の友と、父の様に慕ってくれた娘の様な友と過ごした数えきれない時間の欠片

 

「泣かないでバーン……」

 

「……お前も泣いているではないか」

 

身を削られた様な喪失感、心を削がれた様な悲しみが二人の目から溢れていた

 

「……私は最期まで貴方の傍に居るわ、だから……約束は守ってね」

 

「……わかっている」

 

友の形見を強く握り、バーンは受け入れ難き事実を受け入れ、遠くへ行った友へ想いを馳せながら目を閉じた

 

 

「さらばだ、余の……生涯の友よ」

 

 

幻想の時は過ぎ去って行く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お待たせしました!生きてます!

OSを更新したからかアプリのせいなのかはわかりませんが書いてた文章が超頻度で消えてしまう様になり著しくやる気を失ってました、楽しみにしてくれていた方が居られましたら申し訳ありません。

常闇ノ皇との決着が主ではありますが自然が有る限り不滅のチルノと大妖精が居なくなった理由も入っております。
そんなに明るい話ではなかったですね……はい。

常闇ノ皇の最期はわかる方も居ると思いますが幽遊白書の雷禅をベースにうしおととらのとらが入ってます。
冒頭の文章はヘルシングのアンデルセン神父から貰いましたけど!

さて……時間は空いてしまいましたがリクエストが残ってますので次は異魔神との外伝を書こうと思います。

次回も頑張ります!

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