東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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-閑話- いつか知る明晰夢

 

 

 

""……めて……さん……!!""

 

 

 

         ""邪……を……るな……!!""

 

 

 

 

 

月が照らす夜天の下

 

焼けた残骸が残る見た事があるような、見知らぬような荒野で剣閃が絶え間無く響いていた

 

 

「もういいでしょ!一緒に帰ろう!!」

 

「まだだ……まだオレは夢を叶えていない!!」

 

 

青みがかった銀髪の紅い服を着た少女と長い白髪の黒い服を着た少年が凄まじい斬り合いを演じている

 

 

「地上消滅計画は成功しなかったじゃない!もう一緒に帰ろう……父上も待ってるから!」

 

「違う!先延ばしになったに過ぎない!忌々しき竜の騎士!血の勇者!天空の末裔!あの3人が邪魔をしなければ……!だが!オレはまだ生きている!ならば計画は続行される……次は邪魔者を排除した後でな!止めたくばオレを殺すより他ないぞ!」

 

「なんでそこまで地上に拘るの!出来たって……父上にはなれないし越えられないのに……!」

 

「ッ……お前は黙ってろッ!!」

 

 

振りかぶった剣が交差する

 

 

「ッアァァッ!?」

 

「ヌゥグゥッ!?」

 

 

互いの剣、不死鳥を象る剣を少年が、竜を象る剣を少女が手で掴み防いでいる

 

 

「わ……私達が……!」

 

 

少女は言う

 

 

「私達が…………と…………の子どもなら……!受け継ぐべきは野望なんかじゃない……ッ!」

 

 

想いを込めて叫ぶ

 

 

「もっと大切な……誇り高き魂でしょッ!!」

 

 

少年を押し飛ばした少女は胸に当てていた手を少年へ向け指差す

 

 

「その魂が叫んでる……兄さんを止めろってねッ!!」

 

 

「フッ……フハハハハハ……ッ!!」

 

 

魂からの叫びを受けた少年は高く笑う

 

 

「悪いがオレの魂はこう言っている……」

 

 

手を天にかざし、太陽に照らされる月を掴む様に握り締める

 

 

「魔界に太陽を……!!」

 

 

魂からの意思が返答する

 

 

「双子なのに……どうして……兄さんッ……!」

 

「ああ……そうだな……妹よ……」

 

 

そして、太陽と月、運命の兄妹は戦う……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

図書館でバーンは目を覚ました

 

(夢……か……)

 

座ったままいつの間にか寝てしまっていたらしい

 

(余が寝るなど……あれから結構な時が経った筈だがまだ完全に癒えておらんのか……)

 

体の調子を確かめていた手が止まる

 

(それにしても不思議な夢であった、覚めたとたんに朧になったが何か……何か引っ掛かる……まるで予知夢を見ている様であった……)

 

見ていた夢が気になり考えるも答えは出ない

 

「どうしたの?ボーッとして?」

 

そこにレミリアが咲夜を引き連れて現れ横に座る

 

「少し気になる夢を見てな」

 

「夢?どんな夢だったの?」

 

「詳しくは覚えておらぬが……見覚えがある様な場所で見知らぬ二人が戦っていた、何かを言いながら……」

 

「それのどこが気になるの?」

 

「わからぬ、だが何故か気になるのだ……魂が繋がっていると言うべきか……とにかく不思議な夢だった」

 

「ふーん……まぁ貴方が何ともないなら良いのよ、アップルパイ食べる?」

 

「いただこう」

 

咲夜が用意した紅茶を飲みながら穏やかな一時を過ごす

 

「……」

 

その間にもバーンは先程の夢が気になっていた

 

 

 

「おっす!」

 

「こんにちは~!」

 

「お邪魔します」

 

そこへ妹紅とルナとロランが現れた

 

「いらっしゃい、今日はどうしたの?」

 

「ルナがパチュリーに魔法教わる日だろ?付き添いさ……ほらルナ、パチュリーどっかに居るから行ってこい」

 

「うん!」

 

ルナが走っていくのを見ながら二人も椅子に座る

 

「無事に故郷へ報告出来たみたいだなロラン」

 

「ええ、断ったんですけど一回妹紅を連れて来いってしつこかったですけどね」

 

「行ったらそのまま城に住まされそうだからな~私はここが好きだからずっと居たいし、それに王妃なんて柄じゃないからな」

 

「言えてるわね、カリスマの欠片も無い貴方が王妃になったら恥ずかし過ぎてロランが可哀想よ」

 

「言うじゃねぇかかりちゅま……おっしレミリア運動しようぜ!表出ろ!ギャン泣きさせてカリスマブレイクさせてやるからよ!」

 

「まぁまぁ妹紅、僕は大丈夫だから落ち着いて」

 

「いーや許さねぇ!絶対泣かす!行くぞレミリア!」

 

「良いわ、後悔させてあげる……這いつくばらせて靴を舐めさせてあげるわ」

 

罵り合いながら二人は出ていった

 

「……すいませんバーンさん」

 

「構わぬ、仲が良い証拠だ……それよりも……」

 

バーンはロランの剣を凝視する

 

「ロトの剣がどうかしましたか?」

 

「いや……」

 

剣から目を逸らし紅茶を口につける

 

(剣……)

 

何故かわからないが居てもたってもいられない

 

「……」

 

考えるのはその事だけ

 

「……出てくる」

 

バーンは立ち上がりロランに告げる

 

「どちらまで?」

 

「白玉楼にだ、あやつ達が戻ったらそう伝えておいてくれ」

 

「急ですね……わかりました、お気をつけて」

 

バーンは紅魔館を出ていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-白玉楼-

 

「いきなり来てなんだ?」

 

酒を出しながらロンは言う

 

「お前に剣の作成を依頼したい」

 

バーンの用件にロンは驚きを見せる、剣が要らぬ程強く、更に手刀と言う武器を持つバーンが剣を欲しがるのだから、一番考えれない用件だったのだ

 

「……お前のか?」

 

「いや……余が使うのではない」

 

「じゃあ誰だ?咲夜がナイフの代わりに使うのか?」

 

「……」

 

バーンは暫し黙ると答える

 

「わからんのだ」

 

「……」

 

ロンは真意を見定める様にバーンを見つめる

 

「冗談、ではない様だな……わかる範囲で理由を聞かせろ」

 

「……夢を見た、それから何故か作らねばならない使命感のようなものを感じている」

 

「夢……だと?」

 

またロンはバーンを見つめる

 

「頼む、作ってはくれぬだろうか?」

 

「まぁ……作ってやらん理由はないが……」

 

難しい顔をしながらロンは言う

 

「お前用でないならハッキリ言って大した物は作れん、それでも良いなら作るが……」

 

「構わぬ、ではよろしく頼む」

 

礼を言ったバーンは去ろうと立ち上がる

 

「待て、何か要望は無いのか?」

 

「要望……か……」

 

バーンは己に問い質す

 

「2本、作って欲しい、内1本は……不死鳥を象って欲しい」

 

「2本?それに不死鳥を象る……ロトの剣みたいのか?」

 

「そう……だな、ロトの剣の様な一振りを頼む……もう1本は竜……竜を象って欲しい」

 

「不死鳥に竜……また難しい事言いやがる、まぁ良いが……オリハルコンで作るのか?作るんだったら材料を用意しろ」

 

「わかった、近日中に用意しよう、では……」

 

「まだ待て」

 

ロンはバーンを呼び止め考える

 

(だれが使うかわからん剣を2本だと……?先の為か?未来の為だとすれば……あぁ、おそらくそういう事か)

 

思い付いたロンはバーンを座らせる

 

「血統の剣だ」

 

ロンは言った

 

「血統の剣?それはなんだ?」

 

「なに、そう大したもんじゃない、お前の血と魔力を込めて魔剣を作るだけの話だ」

 

「……余の血と魔力を込めるとどうなる?」

 

「お前の血だけがその剣を完全に扱え真の力を発揮出来る様になる、言わば扱える範囲を広げたダイの剣と言う事だ、範囲を広げた分、最大威力は落ちるんだがそこを大魔王の超魔力で補う、どうだ?……まぁこれを作るならオリハルコン以外ではお前の魔力に耐えられず作れないが……」

 

「血……余の血族だけが扱える……子……ああ、そうか……成程……」

 

「どうした?」

 

「いや……使命感の理由に見当がついたといったところだ」

 

「そうか、で?どうする?」

 

「……是非それで頼む、オリハルコンは必ず用意しよう、その血統の剣で願いたい」

 

「わかった、では不死鳥の方は良いとして竜の方はどうする?どんな形か希望はあるのか?」

 

「……朧気にイメージはあるが……」

 

「ふん……だったら先にオリハルコンをどうにかしてこい、それがなけりゃ始まらん、その間に考えておけ」

 

「ではそうしよう」

 

ロンとの約束を取り付けバーンは白玉楼を出て行く

 

「ふっ……」

 

去った後でロンは面白そうに酒を飲む

 

「今だわからぬ未来の為に、か……すっかり変わっちまったもんだ、あいつも……オレも……」

 

飲み終えるといつでも作成に入れる様に準備をするのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(オリハルコンか……さて、どうするか……)

 

材料の入手を考えるバーンはルーラで戻らず幻想郷の空を飛んでいた

 

(幻想郷にオリハルコンは存在しない……探せば有るかもしれんがやはり八雲紫に頼むのが一番だろうな……)

 

そうしていると視界に人間の里が入った

 

(……せっかく外に出たのだ、土産でも買っていくとしよう)

 

里の入口に降りると自警団の男が大層驚いた

 

「ちょ!バーン!?いったいどうしたんだよ?何かあったのか!?」

 

「何をそう慌てている、余がここに来るのがそんなにおかしい事か?」

 

「まぁ……おかしいな、あんたは外に出るのも珍しいから……異変かと勘繰っちまった、悪い……ようこそ人間の里へ!」

 

「ご苦労、守衛に励め」

 

自警団を通り過ぎ里へ入ると近くに居た子どもが声をあげる

 

「バーンだ!」

 

「なにッ!?バーンだと!」

 

一斉に皆が振り向き

 

「おお!本当にバーンだ!」

 

一気に囲まれた

 

「生きとったんかいワレェ!」

 

「まさか生のバーンを見れるなんてな!今日は運がいいぜ!」

 

「今日は良い魚を仕入れたんだ!やるよ!」

 

「野菜も持っていきな!」

 

「お菓子もあげる!」

 

「やらないか」

 

気がつくと手土産で両手が塞がってしまっていた

 

「……」

 

バーンは笑顔を向けてくる人間達を見回す

 

(誰一人として余を恐れぬのか……)

 

人間達に恐怖も怯えも無い、感じるのはただ純粋な好意

 

(余は成れたのだな……ここの住人に……)

 

今更感じる受け入れられた実感

 

嫌悪していた人間からの好意を悪いとは思わない自分を認識する

 

「ありがたく戴こう」

 

そう告げ、ルーラで紅魔館へ帰った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-紅魔館-

 

「わっ!すっごい御馳走!」

 

並べられた料理を見てルナが声をあげた

 

「バーンがたくさんお土産を持って帰ったからよ、好きなだけ食べなさい」

 

夕食は豪華なものになった、だから親しい者達を呼んで食事会となっていた

 

「遠慮なんかしたら眷族にしちゃうからね?」

 

ボロボロのレミリアが微笑んでいる

 

「だってさ、しっかり食べろよルナ」

 

同じくボロボロなのに笑顔の妹紅

 

「ったりめぇだぜ!」

 

「貴方には言ってないわ魔理沙」

 

「はぁ!?私は食うなってか?酷いぜそりゃあよぉ!私達親友だるぉ!?」

 

「言わなくたって食べる癖に白々しい」

 

「へへへ……当たりだぜ!」

 

 

 

「コッペパンを要求する!あたいはコッペパンを要求する!」

 

「そんなの無いよチルノちゃん……また変な事覚えてる……」

 

「たぶん早苗じゃないかなー?チルノに変な事仕込むの早苗くらいだもん、っていうか早苗だけだもん」

 

 

 

「あら?美鈴が居ないけどどうしたのミスト?」

 

「……美鈴は勤務中に居眠りを咲夜殿に発見され夕食抜きになっていますパチュリー様」

 

「また?なら後でこれを持っていってあげなさい」

 

「温情感謝します……!」

 

「咲夜に見つからないようにね」

 

 

 

「飲み物の用意が出来ました、ウォルター、御配りして」

 

「承知しました咲夜さん……どうぞレミリア様、バーン様」

 

「ありがと」 「うむ」

 

 

「フラン様、パチュリー様、大妖精様、チルノ様、どうぞ」

 

「ウォルターありがと!」 「ありがと」

 

「ありがとうございます!」 「よきにはからえー!」

 

 

「ロラン様、ルナ……どうぞ」

 

「ありがとう」 「ありがとうございまーす!」

 

 

「妹紅……」

 

「お?私だけ咲夜か」

 

「はい水」

 

「なんだよ態度悪いな」

 

「むせて死ね」

 

「だから態度!私だけ態度がおかしいだろ!死ねってなんだ!」

 

「お嬢様に怪我をさせた貴方には当然かと」

 

「アイツが先に冷やかしてきたんだぞ……つかなんだコレ!煮え滾ってんじゃねぇか!殺す気か!」

 

「はい」

 

「はい、じゃねぇよ!おいレミリア!お前のメイドどうなってんだ!」

 

「嫌なら帰れば良いじゃない」

 

「コンノヤルォォォ……!!」

 

今日も変わらぬ穏やかな時

 

(やはりお前達との時間が一番愉快だ……かけがえのなき、余を照らす太陽……)

 

幻想の日々は過ぎていく……

 

(いつまでも……平和な時を過ごしたいものだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-???-

 

 

「うおおおおおッ!」

 

 

竜の剣が魔物を薙ぐ

 

「ちぃ……所用で教団を離れたところを狙われるとは少々迂闊じゃったか、教団員達よ!そのガキ共を殺せ!」

 

大勢の魔物を引き連れた魔道士風のワニの様な魔物と少年と少女、従者の男の3人が争っている

 

「父さんと母さんはどこに居る!答えろ!」

 

少年は剣は怒りのままに剣を振るう

 

「あの石と化した王族の子か貴様達……健気なものだ、さっさと殺して楽にしてやれ」

 

魔物達の首領、教祖の命に魔物が少年に押し寄せる

 

「出過ぎです坊っちゃま!囲まれますぞ!」

 

従者が言った通り数に押され少年は教祖に向かうどころか窮地に陥りつつあった

 

「……クソオッ!!」

 

少年はわかっているが退きたくなかった

 

堪えられない感情を抱えていたから

 

「悔しいか?悔しかろうなぁ……父と母の手掛かりが目の前に居るのに届かぬものなぁ……フハハ!」

 

嘲け笑う教祖の醜顔

 

 

「父さんと母さんを返せぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

怒りを爆発させた少年が魔物を飛び越え教祖に向かう

 

「ハハハ……さて、ではからかうのは終わりにして帰るとしよう」

 

ルーラを唱えようとする教祖

 

 

 

……ズヴゥ

 

 

 

「!!?」

 

突如空間が歪む

 

「なんだこれは……!?ルーラに干渉して……このままでは何処に飛ばされるかわからん!?止めねば……だ、ダメじゃ!止められ……ッ!!?」

 

ルーラが指定した魔物の群ごと一気に空間が歪む

 

「オレも引きずられて……うわああああああっ!!?」

 

歪みが収まるとそこには誰も残っていなかった

 

「お兄ちゃん!?」

 

「坊っちゃん!?」

 

少女と従者を残して……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天の運命がまた彼の地へ向かう……

 

 

まるで……導かれるように……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




短いですが重要な話になります。

冒頭の少女と少年のやりとりは大魔王伝にも関わっているあるゲームから取りました、わかる人いるかな?ちなみにテリーも若干成分が入ってました。

次からはルナ外伝になります、前後編か前中後の2~3話を予定しています、あの幻想郷を一番追い詰めた世界からまた……

次回も頑張ります!

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