東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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最終話 幻想郷

 

 

 

 

 

      ""余等は現実に生きている""

 

 

 

 

 

 

""それは決して風光明媚なモノではなく

 

      良い事もあれば悪い事もあり

 

     満たされぬ夢を抱えて飢えてもいるだろう""

 

 

 

""だが、それが人としての生き方であり

             魔族とて変わりはしない""

 

 

 

 

""余等は永遠になれない刹那

 

        どれだけ憧れ求めても

 

             幻想にはなれぬのだ……""

 

 

 

""刹那はそれでも過ぎていく""

 

 

 

""ならば生きていくしかないのだ

 

     瞬く程の閃光のような一瞬だとしても

 

             その刹那を真摯に……""

 

 

""己が太陽を得る為に……""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ""勇者ダイよ……貴様のお陰で幻想郷(ここ)へ来る事が出来た""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ""お前に……負けて良かった""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

""そして余の友よ……余の……太陽達よ……""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ""余に巡り逢ってくれた事を……永久(とわ)に感謝する""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

王女は会場を歩いていた

 

(みんな楽しんでいるみたいね)

 

目に入る皆の笑顔が頬を緩ませる

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……ハッ!?」

 

「起きたかにとり」

 

「カメハ!あれ……?なんで私カメハに膝枕されてんの?」

 

「お前さとりにギッタンギタンにやられて借金地獄に堕ちて気絶したんだよ」

 

「あ、あ~……そういえばそうだった……どうしよう……このままじゃ地霊殿の奴隷にされちゃうよぉ……」

 

「立て替えてやろうか?オレ金持ちだから余裕だし」

 

「……見返りは?」

 

「オレとデートしてくれよ」

 

「なんだ……結婚してとかじゃないのかよ」

 

「それはお前に勝ってからって決めてるからな」

 

「律儀な奴……ねぇカメハ」

 

「ん?」

 

「もう少しこのままでいい?」

 

「いいけどよ……その前にロビンに攻撃しないように命令しといてくれよ、アイツ今にも襲いかかって来そうで怖いんだよ」

 

「ロビーン!カメハが変な事したら塵1つ残さず消滅させてやれ!」

 

「にとりテメッ!しねぇよ!したいけどしねぇよ!」

 

「ロビーン!やっぱり今やってー!」

 

「バカにとりコノヤロウ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……逃げられましたね……!」

 

「ゼェ……ゼェ……クソッ……魔理沙め……!」

 

「ハァ……どうしますか?ハァ……ロン・ベルクさん?」

 

「ゼェ……もうヤメだ……酒を持ってこい妖夢……飲むぞ」

 

「おつまみも……持って……きますね……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞いてくださいよレティさ~ん!霊夢様ったら酷いんですよ~!明日から修行メニュー3倍だって……鬼過ぎる~!」

 

「ちょっと話しかけないで靈夢、私も先生から宿題出されてるんだから、見てこの量……1週間の期限があるけどあと4日で終わらさないといけないのよ?寝る暇も無いんだから」

 

「パチュリーさんも鬼過ぎですね……宴会を楽しめないくらい宿題を出すなんて……」

 

「先生なら半日で終わらせられるんだけどね……私はまだまだ未熟だから今もやらないと間に合わないのよ……まぁ好きで選んだ道だし苦ではないから良いんだけど」

 

「……私も頑張ろ、うん明日から……ルナちゃんと遊んでこよーっと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シノブティカファントム!!」

 

「超拳「ハルマゲドン」!!」

 

 

ドゴーン!

 

 

「聖様と忍、決着つかないね……」

 

 

 

「あいてっ!」

 

「あ……余波で萃香の酒が落ちた」

 

 

 

「何してくれとんじゃコラァッ!!」

 

「ヤベェ……鬼が怒った……!」

 

 

 

「んだテメェはー!?」

 

「しゃしゃってんじゃねぇぞぉ!」

 

「聖様も忍も熱くなり過ぎてるぞ!口調が90年代のヤンキーになってる!?」 

 

 

 

「あ?私の酒溢しといて謝りも出来ねぇのか?殺されてぇのか!」

 

「あぁん?小坊は消えろや、相手になんねぇからよ?」

 

「すっこんでろボケェ!」

 

 

「オイオイオイ……ヤバイんじゃないのこれ?」

 

「私知ーらね、ドーナツはもういいから避難しとこっと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ……」

 

楽しそうな皆に頬を緩ませながら王女は歩く

 

 

 

 

 

 

「あら……?」

 

ふと目に入ったライブ会場

 

ルナサ、メルラン、リリカのプリズムリバー三姉妹が主演の演奏会

 

「大妖精……?」

 

そこへフラフラ飛んでいく友の姿が見えたからだ

 

「……」

 

気になって見ていると大妖精は壇上へ降り立ち、マイクを奪った

 

 

「みんな!抱き締めて!夢幻の!果てまでーーーー!!」

 

 

謎の大歓声が起こり歌い始めた

 

「とても上手いんだけど……え?なに?この盛り上がり……」

 

大妖精が歌うなんて知らなかったレミリアは困惑の様子

 

「ご存知、ないのですか!?彼女こそ、酔った時にだけその美声を聞かせてくれる、幻想郷で知る人のみぞ知るスター!超夢幻シンデレラ、大ちゃんです!」

 

「知らないわよ、っていうか誰よお前」

 

なんか緑のマーズピープルみたいな妖怪を無視して楽しそうに歌う大妖精を眺める

 

 

「私の歌を聴けーーー!!」

 

 

突如幽霊が乱入しゲリラライブを行う

 

「幽々子じゃない……」

 

「彼女もご存知ないのですか!?彼女は幻想郷が誇る大食いアイドル!ユユコ・サイギョージですよ!?」

 

「だから知らないわよ、いい歳して何やってるのアイツ……」

 

呆れながらも楽しそうな二人を見て機嫌良く次へ進む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら……?あそこに居るのは……咲夜?」

 

テーブルを囲んで何かをしている咲夜を見つけ王女は近付いていく

 

「何をしているの咲夜?」

 

「!!?」

 

話しかけられた咲夜がビクッと体を弾ませる、どうやら麻雀をしているらしい

 

「おおお、お嬢……様……」

 

油の切れたロボットの様にギギギと首を回す咲夜、既に涙目

 

「……もしかして貴方、負けてるの?」

 

「はうあっ!?」

 

もうその反応だけで王女はわかった、かなりの額を負けている事も

 

「100万円になりますね」

 

さとりが言う、100万円とは現在の価値に換算して1億である

 

「どうしよう……どうしよう……」

 

一緒に席に着いている輝夜も吐きそうな顔をしている、同じぐらい負けているのだろう、さっき気絶してたにとりもさとりにやられたのだろう

 

「払えないのなら一生地霊殿で働いて貰いましょうか……異論はありませんねレミリア・スカーレット……?貴方が払うなら構いませんが」

 

さとりは余裕の顔で勝者の風を吹かせている

 

「はぁ……代わりなさい咲夜」

 

溜め息を吐きながら咲夜を退かせ席に着く

 

「おや……貴方が相手をしてくれるのですか?構いませんが良いのですか?紅魔館が私達の別荘になるかもしれませんよ?」

 

「御託は良いからかかってきなさい、ついでだから輝夜とにとりの分も引き受けてあげる」

 

「……わかりました」

 

賽が振られる

 

「……あぁそうそう、最初に言っとくけど……」

 

配牌されていく時に王女は呟いた

 

「私、運が絡む勝負で負けた事ないから」

 

そして動く

 

「ダブリー……カン、カン、カン、はいツモ!ダブリー、リンシャンツモ、小三元、混一、混老、対々、三暗刻、三槓子、南、裏ドラも乗って全部で三十二ね、合計五十二翻だからクアドラプル数え役満よ……はい、点棒払いなさい、6万4千点」

 

「…………え?」

 

瞬殺である

 

「何……それ……?」

 

これには輝夜も唖然とするしかない

 

「う……運が良いようですね、ですがまだまだ借金返済には程遠い……も、もう一度です!」

 

「次は私が親ね……あらごめんなさい、あがってるわ、天和、大三元、字一色、四暗刻、またクアドラプル役満」

 

「なん……だと……」

 

「言ったでしょ?運が絡む勝負で負けた事が無いって?」

 

「も……もう一度です!」

 

「構わないわよ、そこで提案なんだけど面倒だから点数を青天井にしない?怖いならいいのだけれど?」

 

「……構いませんよ、今のは偶々……心を読める私が負ける筈がないのですから」

 

「ありがと、では次で終わらせてあげる」

 

勝負は混迷を極めた

 

(おかしい……有効牌が何一つとして引けない……運が全てレミリア・スカーレットに集まってる……?これではいくら心が読めても意味が……それにあの手……あがったら確実に死……)

 

一切手が進まないさとり、対称に鼻歌交じりで悠々と手を進める王女

 

「はいリーチ!」

 

(来た……!)

 

ざわ……ざわ……

 

(だけどもう最後……鳴いてズラすのは出来ないけど、1回で引けるものか!)

 

それは願いの様な、祈る様な気迫

 

「ウフフ……」

 

王女は艶かしく笑う

 

「心を読める程度で私に勝てる?馬鹿じゃないの?知るといいわ……そういう小賢しい事と無関係な所に……!強者は存在すると言う事を……!」

 

「私の決め台詞取られた……まぁ勝って貰わないといけないからいいけど」

 

(ハ、ハッタリに決まってる!引けるものですか!引くな引くな引くな引くな引くな引くな引くな!引かないでッ!!)

 

運命を預けて気が抜けている輝夜と必死のさとり

 

()()を操る私に……()が絡む勝負で勝つ事は決して有り得ないと……!!」

 

そのさとりにトドメを刺す様に、優雅に、淀みなく伸ばされた手が最後の牌を掴み取り、叩き付けた

 

「ツモ……リーチ海底一発ツモ、ダブ東、字一色、四槓子、四暗刻、小三元、ドラ40……228穰(じょう)7713禾予(じょ)1925垓(がい)9940京(けい)0057兆7474億8313万1904点……勝負ありね」

 

「ヒィッ!?」

 

さとりの顔がぐにゃあ、と歪んだ

 

「支払いは計算するまでなく不可能よね?貴方が億千万回生まれ変わろうと返せない金額だもの」

 

「ハイ……」

 

「一生紅魔館の奴隷メイドね、当然地霊殿の奴等全員」

 

「ハイ……」

 

「……冗談よ、咲夜にも原因があるのだからね、約束通り3人の借金チャラで許してあげる」

 

「ハイ……ありがとうございます……」

 

「あんまり調子に乗り過ぎない事ね、いくら懲らしめる為って言っても、ね?」

 

「ハイィ……グスッ……申し訳……ありませんでしぁ……」

 

圧倒的大勝で勝負は終わった

 

「ありがとうございましたお嬢様……」

 

「別に構わないわ咲夜、部下の失態を拭うのは主の務めだもの……まっ今回は許してあげる、けれど次は無いと思いなさい、わかったらいつまでもサボってないで業務に戻れマヌケ」

 

「ハッハイッ!!」

 

「フン……手間の掛かる子……」

 

王女は歩く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

笑顔を浮かべて歩く王女

 

どこか悲しげ

 

何故なのだろう

 

楽しい筈なのに……

 

 

「……」

 

笑みを浮かべて歩く王女

 

どこか儚げ

 

何故なのだろう

 

嬉しい筈なのに……

 

 

「……」

 

微笑みを浮かべて立ち止まる王女

 

どこか苦しげ

 

何故なのだろう

 

幸せな筈なのに……

 

 

 

 

 

 

「……」

 

王女は作られた笑みのまま人混みの中に溶け、姿を消した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【きっと二人の出会いも、遠い日の奇蹟だったから……】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妹紅……」

 

ロランは妹紅を見つめている

 

「本当に……君なのか……」

 

捜し続けた想い人を前にしたロランは幻を見ている様に固まっていた

 

「ああ……私だよ、正真正銘の藤原妹……」

 

妹紅の言葉は途中で遮られた

 

「ッ!?」

 

言い終わる前に思い切り抱き締められたからだ

 

「探したんだ……」

 

ロランは更に強く抱き締める

 

「ずっと探したんだ……ずっと、ずっと……だけど、どこにも居なくて……」

 

この時をどれだけ願ったのか言い表せない

 

「君を見つけられなくて……苦しくて眠れなくて……だけど逢いたい気持ちが抑えられなくて……!だから……君を探し続けて……!」

 

何よりも大事な人が目の前に居るから

 

「悪い……心配、掛けたよな……」

 

自分ではどうにも出来なかった事ではあるがロランの想いを知り謝る

 

「やっとだ……やっと……君に逢えた」

 

いつの間にかロランは泣いていた

 

どんなに苦しい目にあっても、どれ程辛い目にあっても泣いた事がなかったロトの勇者

 

その彼が泣いている

 

「……」

 

妹紅はそっと背に手を回し優しく抱き締める

 

 

 

泣いても良い……格好悪くなんてない

 

「私も……逢いたかった」

 

ここに今居るのはロトの勇者でもなんでもない……

 

「妹紅……!」

 

一人の少女を愛した、ただの男だから

 

「ロラン……!」

 

そして……

 

神の涙に幸せを願われた……かつて化物だった少女だけ……

 

 

 

 

 

「ルナを守ってくれて、ありがとう」

 

「……」

 

 

「私を探してくれて……ありがとう」

 

「……」

 

 

「私と……出会ってくれて……ありがとう」

 

「君と同じ時代に生まれて良かった……こうして……巡り逢えたから」

 

 

「……好きだよ、ロラン」

 

「僕もだ妹紅……愛してる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――今より数百年後

 

 

 

   アレフガルドに存在したロトの子孫が作った国

 

 

 

          ローレシアは滅びている―――

 

 

 

 

―――王位継承者が行方不明となった事が原因

 

              そう伝えられている……

 

 

 

           しかし

 

 

    国は滅びたがロトの血は絶えず生きている

 

       ただ眠りについているだけ……

 

 

    アレフガルドではそう信じられている―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それがもし本当だとすれば、眠っているのだろう……

 

 

 

 

        愛する幻想の中で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふ~ん♪」

 

ルナは機嫌良く食事を持って廊下を歩いていた

 

(ロランさん起きてるかな~)

 

大好きなロランの元へ行くルナ、心なしか足早

 

「待ちなさい……」

 

もう少しで着くという時に誰かが立ち塞がった

 

「パチュリー……さん?」

 

とても険しい顔をしたパチュリーだった

 

「どうしたんですか?」

 

「通行禁止よ、戻りなさい」

 

「な、なんでですか!?」

 

訳がわからず混乱するルナ

 

「貴方にはまだ早い」

 

「もぉ全然意味わかりません!退いてください!」

 

「まぁ、そうね……勘違いだったら悪いから一応聞いておくわ……何の用事?」

 

「ロランさんが起きてたらお腹減ってるだろうからご飯を持っていこうかなって……」

 

「戻りなさい、ぶっ飛ばされない内にね」

 

「なんで!?」

 

ルナは更に混乱した

 

「酔ってるんですか?後で相手してあげますから退いてください」

 

「断るわ」

 

「……どうしても退いてくれないんですね?」

 

「友の定め……退かないわ!」

 

「だったら……無理矢理押し通ります……!」

 

ルナの意気込みを見たパチュリーは指を鳴らす、すると新たに3つの影が飛び出た

 

「ヒャッハー!」

 

「ここは……!」

 

「通さにゃいですよぉ~!」

 

チルノとフランとまだ酔ってる大妖精!

 

「なななっ!?」

 

「フフフ……」

 

不敵な笑みを見せるパチュリー

 

幻想郷の頂点達が現れた!

 

「親分命令!回れ右!」

 

「人の恋路を邪魔する奴は!あたしに蹴られて地獄に落ちろ!」

 

「この状況でルナちゃんが勝つ可能性は……ゼロでーす!」

 

 

「あーもう!何なんですか皆して!何でロランさんのところに行っちゃダメなんですか!?」

 

悪ふざけにしてはやり過ぎだと結構本気でルナは怒っている

 

「そりゃお前、脇役がでしゃばっちゃあいけねぇからだぜ」

 

魔理沙が肩に手を置く

 

「空気読めって事だ、お邪魔虫ってこったよお前は」

 

「……何ですかお邪魔虫って……意味わかんないですよ!」

 

5人に止められてもルナは諦めない

 

「嘘言うな」

 

そんなルナへ魔理沙は言う

 

「ホントはわかってんだろ?」

 

「!?」

 

ルナはまるで苦虫を噛み潰したように歯を食い縛る

 

「……そんな気はしてたんです、バーンさんが私を見る時みたいに、ロランさんも私を見てくれてる時……違うところを見てる、って……」

 

幼いルナにも自覚はあった

 

相手が誰かはわからないけど認めたくなかった、だから頑張ってアプローチした、いつか振り向いてくれると思って

 

だけど1回も見てくれる事はなかった

 

「そういうのを知ってみんな大人になるんだぜ、お前にゃまだちょっと早いんだけどな……だから全部は言わねぇ」

 

「でも……」

 

「納得出来ないのもわかる、でもな、そうやって嫌な事も飲み込みながら成長するもんなんだぜ、嫌な奴にはなりたくねぇだろ?だから今が我慢のしどころだ、わかってくれるか?」

 

「……わかり……ました」

 

辛い涙を飲み込んでルナは踵を返し会場へ戻っていく

 

「しょぼくれんな!代わりに私達が相手してやるからよ」

 

「じゃあ……お酒飲んでみても良い?お母さんに飲むなって言われてるけど……?」

 

「お?良いぜ良いぜ!飲め飲め!妹紅が怒ったら私等がケチョンケチョンにしてやるからよ!」

 

「そうよ!親分のあたいがぶっ飛ばしてあげる!」

 

「あたしが血祭りにあげてあげる!」

 

「私はお墓を作っときますね~!」

 

本人も理解しないまま失恋したルナを4人で送る

 

「……さて」

 

1人残ったパチュリーは2人が居る部屋を遠目に見つめ、髪を手で靡かせる

 

「ここから先は……R指定よ」

 

防音の結界を張って会場へ戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-紅魔館・バルコニー-

 

「……」

 

満月の月明かりの下、少女は夜空を見上げていた

 

(見つかるわけ……ないわよね)

 

少女は空に何かを探していた

 

(こんなに月が綺麗なのにね……)

 

月が光る為になくてはならないモノ、闇に消えてしまわない様に照らしてくれる光、永遠の番

 

太陽を……

 

「……」

 

永遠に紅い幼き月と呼ばれた少女は暗い闇に飲まれかけていた

 

「ねぇ……」

 

見えない太陽へ向けて少女は呟く

 

「私を見つけて……」

 

消え入りそうなくらいか細く、か弱い声で少女は言った

 

「私を……照らして……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処に居たのか……レミリア」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽の声が闇を払った

 

 

 

 

「バーン……」

 

少女は振り向く事なく夜空を見上げ続けている

 

「……泣いているのか?」

 

背を見た王は問う

 

「泣いてなんかないわ……」

 

「ならば……何故、震えている……?」

 

少女の体は小さく震えていた

 

「どうしてだと思う……?」

 

「余にわかるわけなかろうが……」

 

王は動けなかった、少女の背が余りにも悲しそうに見えたから

 

それが行かねばならない足を止めていた

 

「とても怖いの……」

 

少女の想いが零れ出す

 

「いつも不安だったの、貴方が……消えてしまうんじゃないかって……」

 

辛さが言葉から滲み出る

 

「貴方はいつもそう……私達の為だと言って……いつも一番辛い思いをして」

 

「私の気持ちも考えないで……」

 

ゆっくりと沈む顔と同時に風が吹き、月明かりに煌めく水滴が流れ落ちるのを王は見る

 

「どうして貴方がそんな事をしなくてはならないの!どうして貴方は死にに行く様な事ばかりするの!」

 

叫ばれる悲痛な言葉

 

「私は貴方にそんな事して欲しくないの!死んで欲しくない!生きていて欲しいのに!どうして貴方はそうなの!」

 

皆の前では気丈に振る舞う少女も今は二人だけ、王女ではなく、一人の女として押さえていた心情をぶつけている

 

「……わかってる、私の独り善がりなのは……」

 

それがただの我儘なのは理解している

 

王が居なければ今は無かったのだから

 

幻想郷だけでは間違いなく負けていたのは言われずともわかっている

 

王にとってもそれは同じだという事も……

 

「それでも私は……貴方を愛してるから……」

 

愛故の矛盾

 

少女は王を心の底から愛するが故に苦しいのだ

 

一番居なければならなかった時に居られなかったから余計に

 

誰よりも愛しているから尚更に

 

闇に迷う(自分)を見つけてくれたから殊更に……

 

 

 

「……レミリア」

 

想いを聞いたバーンはゆっくりとレミリアへ歩み寄り、優しく引き寄せ

 

「すまなかった……」

 

包み込む様に抱き締めた

 

 

バーンにはそれしか言えなかった

 

レミリアの想いがわからぬバーンではない、勝つ為に尽くした事に後悔も反省も無いがレミリアを不安にさせたのは悪いと思っている

 

だから何の言い訳もする気も無く、非を謝るだけだった

 

 

「うー……うぅー……」

 

我儘に謝られたのが申し訳なくて、だけどそれ以上に自分を想ってくれているのがわかるから嬉しくて

 

「バーン……!」

 

少女は最愛の人の胸で泣く

 

「余は、此処に……此処に居る、最愛のお前の傍に……」

 

「わかってる……わかってるわ……生きていてくれて……本当によかった……!」

 

月が一層輝きを増し、二人を照らし、幻想の時を彩る

 

 

「ねぇバーン……1つだけ……約束して欲しいの」

 

「何だ?」

 

遥かなる想い

 

 

「永遠なんて言わない……だけど、1日でいい……ほんの1秒だけでも良いから……」

 

 

バーンに頼む一生の願い

 

 

「私より……長く生きて……」

 

 

二度も最愛の人を失ったレミリアが叶えて欲しい最後の我儘

 

愚かな程深い愛故の懇願

 

「必ず果たすと約束しよう」

 

答えなど決まっている

 

不確かな未来に対して余りに保証出来ない約束なのはわかっている

 

それでもそう答える事に迷いは無い

 

 

それをレミリアが望むのならば是非も無い、叶えるだけなのだから

 

例えこの先どんな事が起きようと必ず叶える

 

そう……心に誓ったから……

 

 

「この時間が永遠に続けば良いのにね……無理ってわかってるけど」

 

「永遠とは誰もが望むが皆、信じない、故に永遠に近付こうと今その時を真摯に、そして精一杯に生きるのだ、閃光のように、な……終わりがあるからこそ生とは大いなる意義を持つ、この流れ星のような刹那が尊いものに変わるのだ……」

 

「わかってる……もう、ロマンの欠片も無いんだから」

 

「……時は永遠には続かぬが、この想いだけは永遠だ、この想いは死して尚、神話の如くこの幻想郷に永久に在り続ける……余はそう信じている」

 

「フフッ……気を利かせたつもり?でも、そうね……幸せな時間は有限と知りながらも無限を求める矛盾、そんな矛盾に苦しみながら人は限られた時を懸命に生きる、夢幻に辿り着けると願いながら強く……でも私はもう貰ってるから大丈夫」

 

月光を背に、少女はとても、とても可憐に笑った

 

「例え死が二人を分かつとも……」

 

 

 

 

 貴方に                だから……

     貰ったこの想い()だけは、永遠

 お前に                だ……

 

 

 

 

""二度と来ない刹那の夜は綺麗に更けていった……""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-翌日-

 

「早く来てくださーい!」

 

宴の翌朝、幻想郷の皆は紅魔館の庭園に集められていた

 

「もぉー!お寝坊さんばかりです!」

 

解散する前に文がどうしても皆が集まった写真を取りたいと言いだし強制的に召集させられていた

 

「眠いー……」

 

「すぐ終わるので我慢してください!」

 

 

 

 

「大妖精が起きないんだけどどうしよう?」

 

「えー……是非入って欲しいんですけどねー……でも起きないなら仕方ないか……」

 

「私が起こしてくるわ、荒い起こし方だけどザメハもあるし大丈夫、除け者にされて拗ねるよりかは良いでしょう」

 

「流石パチュリーママ!お願いしまーす!」

 

 

 

 

「頭痛い……射命丸~!頭痛が痛いから私パスでいいか~い?」

 

「そ、そこを何とか萃香さん!」

 

「さっさと並べ腐れ酒乱」

 

「アイタ!コラ角掴むな幽香!はいはいわかった、わかったから怒りなさんなって」

 

 

 

 

「お?遅い出勤だな妹紅!ロラン!昨日はお楽しみだったか!程々にしとけよ!ルナが寂しがってたからよ!」

 

「バ、バカッ!何言ってんだ魔理沙!……ルナは?」

 

「酔い潰れてるぜ!」

 

「酒飲ませたのか!?」

 

「なんだ怒るのか?娘ほったらかしてイチャイチャしてた不良ママが子守りしてやった私に怒ってんのか?よしいいぜかかってこいよ!ケチョンケチョンにしてやっからよ!」

 

「ぐむ……悪かったよ、ルナ起こしてくる」

 

「アハハ……僕も行くよ妹紅」

 

「あ、ついでに慧音と青娥が添い寝してるから一緒に叩き起こしといてくれな~」

 

 

 

 

「お化粧するから待ちなさい、藍、用意して」

 

「私もしとこうかしら、妖夢、用意して」

 

「なら私もしておくか、早苗、用意して」

 

「では私も、鈴仙、用意して」

 

「私も……星、用意して」

 

 

「あー……お前等……なんだその……」

 

「あら鬼人正邪……何かしら?」

 

「ババア無理すんな」

 

「「「「「!!?」」」」」

 

 

 

 

「ハハハ……賑やかだねぇアリス」

 

「フフッ……そうね霖之助」

 

 

 

 

「いい加減にしろ貴様等、バーン様とレミリア様の貴重な時間を使っているのだぞ、命令する……死ね!」

 

「並べじゃなくて死ね!?ヤダ過激……まぁまぁミスト!楽しくて良いじゃないですか!ミストこそいい加減慣れるべきです!」

 

「……確かに、そうか……此処は魔王軍ではなく、私とバーン様が何者でもない……幻想郷なのだからな……すまんな美鈴」

 

「だから楽しいんですよ!上下が無いからみーんな楽しいんです!」

 

「そうだな……昨日は楽しい宴会だった」

 

「おや、霧が出てきましたねミストさん」

 

「そのネタがわかる奴は少ないぞ」

 

 

 

「クソッ……何故俺は妖夢とあんな真似を……!酒!飲まずにはいられん!」

 

「人は誰でも宇宙を動かせるほどの無限の力を秘めている……しかし、その力を破壊と殺戮に使おうとする者もいるだろう……創造に使うか、破壊に使うかは人に委ねられた最後の選択なのだ!あらゆる生命の源である光を絶やすまいとする心……人、それを愛情という……!!」

 

「こいつはまだ酒か自分に酔ってやがるし……クソッ!どうして俺はこんな女に惚れた……」

 

 

 

「なぁ靈夢……ゴニョゴニョ……」

 

「……!博麗神社が奉る神様に頼まれたら断れません!やりましょう龍神様!!」

 

「よし……計画を練るぞ!!」

 

「何コソコソ話してんのあんた達~?早く並びなさ~い」

 

「は、はいっ霊夢様!……ガンバリマショウ!ワタシタチノジユウノタメニ!」

 

「い、今いくよ~!……ゼッタイカツゾ!サナエニモキイテミルカナ」

 

 

 

 

「我等も誘われたのだぞ!急げ忍!」

 

「言われずともじゃハドラー!」

 

 

 

 

 

 

 

これは異なる世界の大魔王が無限の幻想へ至る最中に記された

 

最後の伝記……  

 

 

 

 

 

 

「皆、集まっているようだな」

 

「そうね、フフッ……もう滅茶苦茶じゃない」

 

王は敗北し、誘われた

 

幻想達が生きる楽園に

 

「おっ!来たぞ来たぞ!バーンとレミリアだ!」

 

そこで王は第二の生を受け、大事なものを知り、得た

 

「オーイ!何やってんだい!気色悪い顔して突っ立ってないで早くこっち来て並びなァ!」

 

「レミリアさんもカリスマぶってないで早く来てくださーい!」

 

「もう全員揃ってますよー!」

 

仲間

 

配下でも僕でもない、私欲ではなく、打算抜きに為になってやりたいと思わせる対等の者達

 

「フッ……今行く」

 

王は仲間を抜けていく……

 

「バーンさんはここですよ!」

 

誰よりも弱く、泣き虫だった少女、「純粋」なる風精

 

大妖精

 

「……何故余が中央なのだ、霊夢か紫が筋であろう」

 

「良いんだよそこでよ!ガタガタ言うなって!」

 

我道を行く傲岸不遜、破天にして力の大魔導士、黒白天の「闘志」

 

霧雨魔理沙

 

「レミィはその隣ね、私は後ろで良いわ」

 

「ありがとパチェ」

 

博識広才、聡明なる天稟を持つ技の賢者、「不屈」の紫天

 

パチュリー・ノーレッジ

 

「あー!お姉様元気になってる!良かったぁ!」

 

命の価値を知った爛漫なる悪魔の妹、破壊の狂気を乗り越え「慈愛」に変えた紅黒の吸血鬼

 

フランドール・スカーレット

 

「ん?私の顔になんか付いてるか?」

 

「いや……見ていただけだ」

 

「なんだそりゃ」

 

誇りを同じとした元蓬莱人の少女、優しき「勇気」

 

藤原妹紅

 

「センターはあたいだー!」

 

己が最強を唄い、真に変えた頂点の氷精、友を想うが「正義」と信じる最も強き愚か者

 

だが、王に生きる意味を与えた……最初の友、チルノ

 

 

 

「クククッ……ハッハッハ……」

 

かつては考えもしなかった友という何よりも大事な者達

 

「フフッ!どうしたの急に?」

 

「いやなに、幸福とはこういう事を言うのだろうなと思っただけだ」

 

「ええ、そうね……幸せね」

 

そして誰よりも愛し、愛をくれる唯一の王女

 

「運命」を変えてくれた最も愛しき存在、離れぬ陽月の番

 

レミリア・スカーレット

 

 

この7人の太陽を得たから王は今も此処で生きていられる

 

 

「続いて欲しいものだな」

 

「続くわよ、ねぇ皆?」

 

「ったりめぇだ!私達の大冒険はこれからだぜ!」

 

「続いてなんて願うのではなく、無理矢理でも続かせるのよ、そうでしょう?……それと魔理沙その言い方打ちきりみたいだからやめて」

 

「パチュリーの言う通りだよ!だからあたしもーっと頑張るよ!」

 

「それよりバーンさん……膝に乗って写っても良いですか?」

 

「あー!ズルい大ちゃん!むー!じゃあたい頭にする!」

 

「コラコラ、ふざけてないでちゃんと並べっての」

 

 

「ね?」

 

「フッ……そうだな、杞憂に過ぎぬ事であったな……」

 

 

 

これから先、この幻想が織り成した太陽達の伝記は神話として、御伽噺として後の幻想郷に永劫に語り継がれていくだろう

 

 

 

 

「ハーイ!では撮りますよー!皆笑顔でお願いしまーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……伝記の最後には誰かの手で直接書き足されていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ""例え幾瀬を隔たれようと、幾世を生きようと……"

 

 

 

      ""余は常に、お前達と共に在る……""

 

 

 

        ""この……幻想郷で……""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ""此処より永久(とわ)に……永遠に……""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お待たせしました、最終話になります。

ラブコメっても大したもんじゃないですけど神の涙が祈った妹紅の幸せの終着点的な感じです。
ロランから先のロトの血筋に関してはキャラバンハートにて語られていたのでロトの血は幻想郷に向かったと言う事でもこたんローレシア王妃という玉の輿にはなりません。

劇場版と言う事でありきたりなハッピーエンドだったかもしれません、どうにか捻ってやろうと考えましたが平行の己との戦いがメインだった為に終わり方を全然考えてなかったのもあって無理でした。

さて次は恒例?のエピローグ!となるところですがちょっと外伝を挟みたいと思ってます。
主に今作で不遇だったキャラをメインにして……あの貴腐神とか終始荷物だった誰かの娘とかね……

という訳でもう少しお付き合いしてくだされば幸いです。

次回も頑張ります!

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