東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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第42話 神話(マイソロジー)

 

 

 

 

 

 

 

 

        ""注ぐ命 刻む羽

 

       君がどうか僕を包んで……

 

 

 

        光はまた空に堕ちる……

 

       望むだけの……熱を捧げて……

                    ""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コフッ……ゥ……妹……紅……」

 

言い表せぬ嬉しさが胸を埋め尽くす

 

行方不明になっていた友が、誇りを同じとした最も近き友が、探し続けた友が目の前に来ていたのだから

 

「何故……来た……」

 

彼女なら来ようとするだろう、絶対に見捨てる女ではない

 

「……すまぬ……」

 

方法はわからないが彼女にとって当然の行動が途方も無く嬉しい

 

だから出るのは叱責ではなく感謝、それだけ

 

 

 

「友……?フン……負け犬が得たと宣う太陽とやらの一人か……もう一度聞く、どうやって結界を抜け此処まで来た?余とバーンしか入れぬ筈だ」

 

ソルは現れた少女・妹紅に問う

 

「そんな事私が知るか!それよりバーンから離れろ!」

 

「……」

 

妹紅の答えがソルの警戒心を更に高める

 

「離れろって……言ってんだよ!!」

 

妹紅が不死鳥を纏い炎をソルに向け放つ

 

「!?」

 

咄嗟に飛び退きバーンとの距離が離された

 

「不死鳥……」

 

ソルが妹紅の不死鳥を凝視する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-数分前-

 

「妹紅ッ!!」

 

レミリアが妹紅に詰め寄り肩を掴む

 

「お願い……バーンを……バーンを助けて!!」

 

「ど、どうしたんだよいきなり!?」

 

「貴方しか……貴方にしか頼めないのよ!!」

 

凄まじい力で掴まれ妹紅は揺さぶられる

 

「落ち着けレミリア!ルナが落ちる!私も痛い!」

 

レミリアはスキマから次いで出てきた鈴仙とてゐともう戦う余力が無くサポートに徹していた紫に押さえられようやく少し落ち着く

 

「……取り乱して悪かったわ、だけど事態は急を要するの……お願い妹紅、バーンを助けて欲しいの」

 

「……成程な、この中にバーンが居るのか……確かに私だけしか入れないみたいだなこの結界は……」

 

妹紅は結界を見ると理由はわからないが入れると確信する

 

「貴方に運命を視た……運命を変える不死鳥の姿を……どう変えるかはハッキリわからない……だけどお願い妹紅……!バーンを助けて……!」

 

レミリアは俯きながら願う

 

ようやく帰ってきた友を死地に向かわせようとしているのだから、不鮮明な未来を信じ行かせようとしている

 

死ねと取られてもおかしくない事を友に言っている事が申し訳なく、情けないのだ

 

「……レミリア」

 

妹紅の言葉に顔が上がる

 

「ルナ……任せて良いか?」

 

寝ているルナを渡される

 

「妹紅……?」

 

「ここじゃ邪魔になるだろうから魔界に居る慧音に預けてくれよ、紫が居るなら大丈夫だろ?頼むよ」

 

妹紅は……笑っていた

 

「本当に……良いの?」

 

「良いも悪いも私は最初からバーンに助太刀しようと月から来てたんだ、頼まれなくたって行ってたさ」

 

「ごめんなさい……」

 

「謝るなよ、お前が一番辛いのは、わかってるさ……」

 

命だって惜しくない

 

何故助けられるのが自分ではないのか

 

それが容易く読み取れる程レミリアの無念が伝わるのだ

 

「アイツは自分で背負い込むバカ野郎だからな、すぐ無茶する……誰か居てやらないとダメなんだよ、それがたまたま今回私にしか出来なかったってだけだ」

 

妹紅はルナを任せると結界に向かって歩いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そうか……皇帝()()()……)

 

そう、それはバーンがソルに言った事であった

 

「貴様に感じる近しき感覚……不死鳥……そういう事か」

 

この結界はソルと一騎討ちをする為に誓約を設けて不破の強度にしている

 

 

不死鳥を象徴とする者だけが干渉出来る

 

 

妹紅はバーンが認めた皇帝不死鳥、条件は満たしていたから来れた

 

 

そしてこれはバーンの想定外の誤算でもあった

 

この結界をレミリアに渡した御守りに仕込んだのは戦争が始まる前、まだ妹紅が行方不明だった時

 

あの時点ではソルと自分しか対象が居なかったから不死鳥を条件にする事が一騎討ちに持ち込めるからそうした、行方不明の妹紅を考慮するなど考える筈もない

 

だから帰ってきた妹紅は知らずに外から結界に唯一干渉出来る者として、戦争当初では想定すらしていなかったたった一人のイレギュラー

 

故に来れた

 

 

 

 

「バーン……」

 

「妹紅……」

 

ソルを牽制しながらバーンの傍に妹紅は立つ

 

「立て」

 

妹紅は言う

 

「まだ終わってないだろ、立て!行くぞ!」

 

瀕死のバーンに休んでろではなく

 

戦えと言う、共に在れと言う

 

「……フッ」

 

そう言われるのをわかっていた様にバーンは微笑む

 

「わかって……おる……!」

 

言葉が死にかけた体に力を与える、折れかけた心を奮い立たせる

 

 

友が来た、それだけでこんなにも……

 

 

「お前だけでは……心配だからな……」

 

「それだけ言えるならいけるな」

 

体を出来る限り、斬られた腕は無理でも、ほんの僅かの回復をさせながらでも……バーンは立ち上がろうと力を振り絞る

 

 

 

「……キャスリング、とでも言うつもりか?」

 

ソルが問う

 

「チェックメイトは決まっていた、反則であろう?それは……これは余とバーンの余人を許さぬ一騎討ち、尋常なる決闘であったのだ……随分と不粋な真似をしてくれたな幻想の不死鳥よ」

 

「知るかよ、遊びでやってんじゃないんだよ私達は……!」

 

睨み返す妹紅、決闘など幻想郷からすれば知った事ではない

 

「お前を倒して……終わらせてやる!」

 

だから戦う事を迷わない

 

「たかが小娘が大きく出たな、フン……そんなやっと来たような様でこの余に、勝てると思うか?」

 

「勝つさ……」

 

妹紅が体を弛緩させながら告げる

 

 

「絶対なァ!!」

 

 

一気に力みソルへ殴りかかった

 

 

ドウッ!

 

 

「……」

 

「ウラアァァ……!」

 

受け止めるソルと唸る妹紅

 

「ハアアアーーーーッ!!」

 

「ムッ……」

 

妹紅が連続攻撃を繰り出しソルが捌く

 

「オ……ラアァァ……!」

 

「……チィ」

 

ソルの顔が僅かに歪む

 

 

ドッ……

 

 

攻防の果てに妹紅の拳が命中しソルを後退させた

 

「へっ……どうだ!」

 

「……」

 

一撃を見舞わせ得意気に笑みを見せる妹紅と受けた箇所の炎を消しながら思案するソル

 

(あの不死鳥の女は手負い、見た限りでは全快にも程遠い……にも関わらず押されるか、気を入れてなかったにしても余も想像以上に消耗している故か……)

 

バーンと繰り広げた死闘

 

それはソルの体にも多大な消耗を与えていた

 

勝ったとは言え削り合いの末の勝利、時の秘法を打ち消すのにも魔力を消費している

 

思う以上にソルの力は低下していた、故に妹紅に押された

 

(しかしそれでも……この程度ならば問題は無い)

 

体に力を入れる、気を張り、次は今出せる全力で迎えるつもりだ

 

「デリャアアアッ!!」

 

再び妹紅が挑む

 

「フン……」

 

弱っているから単調な攻撃しか出せない妹紅の攻撃を易々と捌く

 

「ヴグッ!?」

 

掌底が顎を捉える

 

「……アアアアアアッ!!」

 

「……!」

 

怯まず攻撃する妹紅

 

「うざったい」

 

ソルの裏拳が打ち飛ばす

 

「まだ……まだァ!!」

 

それでも妹紅は挑む

 

(そうさ……勝たなきゃならないんだ私は……)

 

最中に燃える意思

 

(皆に……託されたから……!)

 

1つではないから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「待て妹紅!!」

 

振り向くと酒瓶が飛んでくる

 

「……ハドラー!」

 

魔物と戦うハドラーの物

 

「そんな体で行くつもりか馬鹿者!そいつはロン・ベルクが作った魔法の酒だ!体力が回復する!殆どオレが飲んでいるが無いよりはマシだろう!飲んで行け!」

 

「わかった……ありがとうハドラー!」

 

「礼など要らん!バーン様を頼む!!」

 

「ああ……!」

 

漢の餞別を飲み干し妹紅は進む

 

「私が用意した回復道具は使い果たしてしまって……何かないかとスキマを探してみたんだけど……こんなものしか……」

 

「助かる」

 

紫から薬草を貰い煎じて飲み込む

 

「……!?」

 

体の痛みが急に和らぐ

 

「僕の力さ、と言っても回復したわけじゃないよ、痛み止め程度だから過信しないように!僕は戦闘寄りの神だから八坂や神の涙みたいに回復は出来なくてね……ゴメンよ!」

 

「充分だ……」

 

龍神に礼を言ってまた進む

 

「おうもこたん!コレ付けときな!じゃん!映姫様秘蔵コレクション!命の指輪って言って付けて移動する毎に回復するスンゴイアイテムさ!くすねといたのが役に立ったね!」

 

小町に指輪を渡される

 

「あっ!?無くなったと思ってたら小町貴方……藤原妹紅!どうぞ使ってください!お気をつけて!……小町、貴方は終わったら死刑です」

 

「ありがとう……」

 

指輪を装備し進む

 

「妹紅さん!」

 

鈴仙が並び手を当てる

 

「これは軟気功と言って気を分け与えて回復力を高める事が出来ます、焼け石に水かもしれませんがこのままギリギリまで……」

 

「……頼むよ」

 

皇帝不死鳥は進む

 

「お願いします……!」

 

仲間から想いを託されながら

 

「……妹紅」

 

最後に、妹紅を神妙な面で見つめる亡霊姫・幽々子

 

「わかっていないと思うから言うけれど、もし死んだ時は覚悟しておいて」

 

「……わかった」

 

そして辿り着く

 

「……」

 

結界に手を伸ばす

 

手は結界に弾かれる事無くまるでそこに何も無い様に妹紅を受け入れた

 

「……よし」

 

意を決し入ろうとした、その時だった

 

 

「お母さん!!」

 

 

娘の声に母は振り返る

 

「ルナ……」

 

目を覚ましたルナが立っている

 

「……待ってるから!」

 

行かないで

 

そう言いたいのを我慢し送り出す不死鳥の子

 

「ああ……行ってくる!」

 

微笑み、親指を立てて親鳥は振り返らず前を向く

 

「バーン……今行くからな」

 

友の元へ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「絶対に……勝たなきゃならないんだッ!!」

 

幻想郷の明日を託された想いが瀕死の不死鳥をまた強く燃え上がらせる

 

「……その意思は立派だが」

 

しかし、それでも彼我の差は高く強い

 

「悲しき事に今のうぬではどうやろうが勝てはせぬ」

 

所詮は少々回復した程度、殆ど戦えなかった体が何とか戦える程度にしか妹紅は戻っていない

 

「クッ……ウゥ……!?」

 

かなりの消耗をしていたとは言えどそれでもまだソルが上回っている、勝ち目は無い

 

「勝敗は変わらぬ、消えろ、最後の……バーンの使途よ」

 

致命の手刀が振り上げられる

 

 

ギィン……

 

 

「貴様……!」

 

手刀は止められた

 

「では……二人で勝たせて貰うとしよう……!」

 

王の手刀によって

 

「……!」

 

ソルが弾きバーンと共に妹紅も下がる

 

「遅かったな……私が倒しちまうところだったぞ?」

 

「そう言うな……死に損ないが動いたのだ、儲けモノと思え」

 

微笑み合う2羽の不死鳥が並び立つ

 

「再び余の前に立つかバーン……しかし、片腕も無く小娘に支えられて立つその姿は酷く哀れ……情けないとは……!」

 

貶す言葉を出そうとした口は途中言い淀む

 

「思わぬのだろうな……貴様は……」

 

自分とは全く異なる存在に変わっていると知るから答えを完結させた

 

「だが、何度でも言うが勝敗は変わらぬ!バーン……貴様の負けは確たる事実だ!」

 

妹紅ではなくバーンを睨む、これ以上は無意味だと悟らせたいのだ

 

「確かに……余の負けは変わらぬ事実、余は貴様に勝てなかった……」

 

バーンは言う

 

「勝利などくれてやる、しかし……幻想郷の勝利は譲れぬな」

 

「そういう事だ、私達はまだ負けてない」

 

妹紅と言う幻想郷が祈る勝利への願いの形が傍に来た今、成すべきは幻想郷の勝利のみ、己の敗北など気にならない、例え勝負に負けたとてこの戦争に勝利する事が最も優先される事だったから

 

 

「行くぞバーン!遅れるなよ!」

 

「わかっている」

 

 

己が象徴たる王のフェニックス、名を(まこと)にした皇帝不死鳥

 

 

2羽の不死鳥が同時に羽ばたく

 

 

「ならば散るがいい!余の力の前に!太陽神の名を魂に刻んで果てよ!幻の王と!幽炎の不死鳥よ!」

 

 

太陽を手にした神の不死鳥へ向かって

 

 

 

「「「オオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」

 

 

 

それは三様の意思

 

勝ち続ける不変不落の神の誇り、負け続けた王の意地とそれを支える幻の郷が持つ矜持

 

三重に嵩む咆哮が収束する運命の序曲(プレリュード)の始まりを告げる

 

 

「ヌゥゥ……!?」

 

バーンの手刀と妹紅の拳を受け止めるソル

 

「……!」

 

体が僅かに押される

 

「ヌアアアアアアッ!!」

 

「ゼアアアアアアッ!!」

 

同時に二人が攻撃を繰り出しソルを攻め立てる

 

「クッ……敗北者共が!」

 

「ウグッ!?」

 

拳がバーンを打つ

 

「……ウゥ!」

 

「!?……グオッ!?」

 

打った拳をバーンが抱え込む様に抑え込み、それに合わせた妹紅の拳が頬を打ち抜く

 

「!!?」

 

妹紅の顔を掴み大地に叩きつける

 

「ッハァ!?」

 

引き込んだバーンの膝が腹を打つ

 

「バァァァン!!」

 

掌底で押し退け魔弾を撃ち込む

 

「まだだァ!」

 

勢い良く立ち上がった妹紅がしがみつき炎翼で包み込む

 

「グヌゥゥゥ……!小娘があッ!」

 

引き剥がし未だ爆煙があがるバーンの位置に投げ飛ばしたと同時に煙から暗黒闘気の光が走る

 

「……ウグアッ!?」

 

ビームに肩を抉り飛ばされ後退するソルの前に妹紅を抱えたバーンが姿を見せる

 

「……不愉快な奴等め!」

 

何もかもが気に入らぬと睨みつけるソルへ下ろされた妹紅も睨む

 

「ハアー……!ハアー……!」

 

野獣の様な眼光をしているのは生き方がそうさせるから、娘に教えた様に誰かの為に強く在ろうする意思が勝利を目指し飢えた獣の如き執着を見せる

 

「いい加減に理解し諦めろ、死に損ないが力を合わせたとて余に勝てはせぬのだ!」

 

「うるせぇ!」

 

妹紅の叫びが響く

 

「私達しかいないんだよ!もう私達しか出来る奴はいないんだ……!だから……!諦められるか!!」

 

もう何を言っても聞きはしない、覚悟を決めて来ているのだから

 

妹紅を止めたくばもはや殺すか自らが死ぬしか方法は無かった

 

「そういう訳だ、最後まで足掻かせてもらう」

 

そしてそれはバーンも同じ

 

「余に勝ったとしても魔王軍は止まらぬ……」

 

「だったらお前を倒して魔王軍を倒しに行くまでだ」

 

「余が命じれば戦いは終わる……」

 

「だからもう止めろって言うのか!?ふざけるなよ!退けないところまで来てんだよ!仕掛けられた私達がそれで納得すると思うのか!散った命はもう戻らないんだ……!私達はお前達を許さない……!私達が……勝つ!!」

 

「……!」

 

ソルはそれ以上何も言えなかった、心を折るのが完全に不可能だと思い知ったからだ

 

 

「……カアアアアアアアッ!!」

 

故に構え、駆ける

 

「「オオオオオオオオッ!!」」

 

誇り高き者達に敬意を表し、力を余す事なくせめて全霊で倒しに行く

 

 

 

 

 

「ウグッ!?」

 

 

揺るぎ無き生き方が交差する

 

 

「ッ!?……ヌグッ……ッ……!?」

 

 

そう在ると決めた魂が命の炎を強く燃やす

 

 

「アッ……ガァ……アアアアーーーッ!!」

 

 

まるで閃光の様に……

 

 

 

 

 

「カッ……ハアッ!?」

 

互角の攻防をしている中、バーンがソルに斬られる

 

「……ッッ!!?」

 

直ぐ様反撃に動こうとした体が動かない

 

自力で回復したバーンだったが本当に僅かな物、妹紅も僅かだったがそれよりも更に少ない、寧ろここまで戦えた事が奇蹟な程もはや体は限界を越えていた

 

(妹……紅……)

 

一人戦う不死鳥を見る事しか出来ないがそれでも目は逸らされない

 

(バーン……)

 

友の限界を感じ取った妹紅は戦ってくれた事に感謝しながらただ一人ソルに挑む

 

「ヌゥ……アアアアアアッ!」

 

協力してダメージは与えたがソルはまだ動ける、それでも二人によって更に削られた体はもう限界、意思だけで突き動く妹紅とほぼ互角の打ち合いをしていた

 

「……」

 

最中、血反吐を吐きながら妹紅はソルを感情的な目で睨む

 

「……どうして……!」

 

バーンが動けなくなったからか押さえていた感情が爆発する

 

「どうして幻想郷に攻撃したッ!」

 

もはや今更ではあったが言わずにはいられなかった

 

「平和に暮らしていた……だけなのに……!」

 

守る為に力を着けたが本来、妹紅を含め幻想郷は戦いを好まない

 

「……余は戦う気など無かった、陽の射す魔界で静かに暮らして居たかった」

 

ソルは答える

 

「だったらなんで……!」

 

打ち合いの中で交わされる本当の想い

 

「それが魔族の意思だからだ」

 

「魔族の……」

 

ソルが太陽神でならなければならない理由

 

「ッ……魔族が戦いを望んだ、故に叶えた、それだけの事だ」

 

「アグゥ……この……なら!」

 

妹紅は叫ぶ

 

「止めれば良かっただろ!大魔王だったんだろ!?なんで一緒に戦うんだ!」

 

「知った風な口を……利くなよ小娘ッ!」

 

ソルも叫ぶ

 

「太陽を得る為に大魔王となり、余興とは言え魔王軍を作ったのだ!余の悲願が達成されたのなら次は余が応えるのが道理!故に叶えたのだ!それが責務だからだ!」

 

これぞソルが魔王軍を率いる理由であり空虚の正体

 

自らの野望を果たす為に作った魔王軍に労いを与える王の務め、自ら望まぬ事を行い続けたから心が空虚だったのだ

 

「嫌なら叶えなきゃ良かった筈だ!王様だったんだ!そうだろうが!」

 

「それは私利私欲しか考えぬ愚王の所業!そこの逃げた負け犬と同じ恥知らず!何も知らぬ小娘風情が黙っていろ!」

 

ソルの世界では唯一の種族となっている魔族の想いに応えた末なのだから

 

「……黙るかよ!お前は……間違ってる!」

 

拳を握り妹紅は言う

 

「そんなに魔族を想うなら止めろよ!王様は皆を守ってやるもんだろ!お前は魔族の意思だなんだと理由をつけて何も言わない臆病者じゃないか!」

 

「知った風な口を利くなと……言った筈だッ!!」

 

打ち合う度に赤と青の血が流れ、炎に蒸発する

 

「ゲホッ……カッ……間違ってるんだよ……!」

 

「クガッ……ハァ……まだ言うかァ……!」

 

迷わぬ意思は不退の証明が如く命を削り合う

 

「なら……聞こえないのかよお前には……」

 

「何……」

 

妹紅の言葉に距離を離して耳を澄ます

 

「あの……お前を呼ぶ声が!」

 

「!!?」

 

ソルは聞いた

 

 

『『『ソル様ァァァーーーー!!!』』』

 

 

結界の外で叫ぶ魔王軍の時の声を

 

「お前の言う魔族の意思は……お前を救おうとしているんだぞ!」

 

「……ッ!?」

 

ソルの顔に困惑が見えた

 

(バカな……そんな……事は……)

 

戦いを求めるのが魔族の意思、ずっとそう思っていた

 

それを体現していた魔王軍が自分を救おうとしている

 

信じられない、だが現に自らを呼ぶ兵の声が結界の周囲に集中している

 

(何故……)

 

ここまでの事態になったのが勇者以来であった事が、戦いを求める魔族の意思の中に有る本当の真意に今まで気付かせなかった

 

 

魔族はソルを戦いの際の神輿にしていたのではなかったのだ

 

魔界に太陽を与えたソルを偉大な王だと心から敬っていた

 

 

この我等が誇る神の力をもっと知らしめたい

 

 

その想いから戦いを望んだ、それが世界を平定した魔王軍にとって考えれる一番の方法だったから

 

 

無論、ソルが否と言えば従い、軍を解体し敵の居ない自由な魔界で暮らしていただろう、ソルより先に総意を聞かせてしまった事がソルを決意させてしまっていた

 

始まりは些細な過ちからだったのだ……

 

 

「わかったか……!この……バカヤローがァ!」

 

「グッ……クゥゥ……!?」

 

揺れた心が身に作用し妹紅の攻撃を防げず打たれるまま

 

「ゴハァッ……!?……ッッ!!?」

 

このままでは押しきられる

 

 

『何をされておるかソル様ッ!!』

 

 

その時……ソルは声を聞いた

 

『貴方様の力はこの程度で崩れる程脆くは無い筈だ!』

 

魂に直接語りかける、ソルにしか聞こえない声

 

(ガルヴァス……)

 

叱責をくれていたのは今は亡き魔軍司令・ガルヴァス

 

『そうですよソル様、私が慕うソル様は誰よりも強く、美しい方です、あんな小娘に負ける事など有ってはなりません』

 

(グレイツェル……お前もか……)

 

自らを愛した妖魔師団軍団長・グレイツェル

 

『ヒョッヒョ!お勝ちくださいソル様』

 

『負けて欲しくはないねェ、これでも目指してたもんでね』

 

『勝ち続けてこそだろあんたは?オレが越えたかったのはそんなあんただ』

 

(キルギル……戸愚呂……テリー……)

 

着いてきた者達が背を支える

 

『勝てソル……冥府より勝利を祈っている』

 

(ヴェルザー……)

 

最後は友を夢見た冥竜の王・ヴェルザー

 

 

「……」

 

幻聴なのかもしれない

 

迷いに立ち止まったから聞こえたのかもしれない

 

「…………」

 

だが立ち止まったからこそ聞こえた

 

揺れたソルの迷いを払う様に配下の声が幻の様に届いた

 

「……よかろう」

 

バーンは負けたから絆を得た

 

「与えてやる……勝利を……」

 

実はソルにも有ったのだ

 

「余が……!!」

 

勝ち続けたからこそ得られる絆が……

 

 

「オオオオオオオオッ!!」

 

「ウッ……ガアッ!?」

 

迷いが消え、更に心の芯を得たソルが形勢を盛り返す

 

「一応……感謝しておいてやる、うぬのお陰で余は立ち返る事が出来た……勝たせて貰う」

 

戦う意味

 

意思に翻弄されていた太陽神はそれすら力に変えて勝利を掴みに行く

 

(この戦いが終われば軍は解体する……故に!だからこそ最後は勝たねばならぬ!それが余の生き様!!)

 

これが最後の戦い

 

その想いで妹紅を迎え撃つ太陽神

 

「クッ……ソォ……!?」

 

ここで勝ち、最後まで勝利を決め有終の美を飾れば未来永劫魔界で不敗の神として語り継がれるだろう

 

それは同時に幻想郷の敗北を意味する

 

 

「負けるかぁーーーッッ!!」

 

 

そうはさせないのが幻想の不死鳥

 

「ゼェ……ッ……ウアアアアアッ!!」

 

負けられない、勝ちたいのは妹紅も同じ、想いの高は互角、勝敗は着かない

 

 

勝敗の行方は誰もわからない、例え全知全能の神であろうとも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カァハッ!?」

 

 

「アガァァァ……!?」

 

 

 

 

 

 

 

         ""戦っている……""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……うあああッ!!?」

 

「大丈夫か!?」

 

「ダメです……もう……抑えられない……」

 

「堪えろ……諦めるな!必ずやバーン様と妹紅がやってくれる!信じて……戦え!」

 

 

「まだか……まだなのかい妹紅!?」

 

『バーン様ッ!!』

 

 

「早く……勝ってッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        「ゲボッ!?グゥエッ!?……!!」

 

 

        「……ゴフゥ!?グゥ……ゥ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       ""命の限り戦っている……""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テメェ……!よくもオレの相棒を……!」

 

「ハァ……ハァ……竜を倒すのが精一杯だったなんてね……」

 

「だが妙な術も切れたみたいだな……絶対に許さねぇ!仇取ってやらァ!」

 

「上等……来なさいよ、あんた一人なら楽勝で勝って見せるわ」

 

「やれるもんならなぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「ウオアアアアアアアアアアアアッッ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       ""勝利を目指して……""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……ッ……ハァッ……!?」

 

「ゼェ……グウゥ……ッハァ……!?」

 

死闘の果てに不死鳥は互いに膝を着いていた

 

「……!」

 

「……!」

 

示し合わす様に立ち上がり見つめ合い視線が交差する

 

「……次が……余と貴様等の最後になるだろうな」

 

「……そうだな」

 

もはやまともに動けない傷を互いに負っている

 

撃てるのは互いにもう一撃のみ

 

 

""

      私達

 勝つのは    だ……!

      余

             ""

 

 

そして信じて揺るがない

 

 

 

「妹紅……」

 

肩に手を乗せ、並ぶバーン

 

「やるぞ……バーン……!」

 

最後は二人で決めるつもりだ

 

 

「ハアアアア……!!」

 

 

残る全てを出し尽くす様に、最後の一撃の為に有りったけを注ぎ

 

 

「アアアアアッッ!!」

 

 

真紅超炎の皇帝不死鳥を顕現させる

 

 

「余の全て、お前に……頼んだぞ、余が認めた不死鳥()よ」

 

 

残った僅かな魔力、炎に変え、妹紅へ注ぐ

 

メラゾーマも撃てぬ程少ない魔力だったが友を信じ、託す

 

 

「勝つさ……絶対……任せろ」

 

 

不死鳥に与えられた魔力は融和し、かつて破壊神を撃退したあの絆のスペルの様に……その力を何倍にも高めていく

 

 

「余も応えねばなるまい……」

 

 

ソルも残る魔力の全てを使いフェニックスを出現させる

 

 

「これぞ……カイザー(皇帝)を越えた、神域の不死鳥……!」

 

 

フェニックスが更に燃え上り、神々しき光を放つ神炎の不死鳥に進化する

 

 

「ッ……ヌゥゥゥゥゥ……!?」

 

 

これ程までのフェニックスを出すのは生半可な覚悟では不可能

 

 

(勝たねば……ならぬ……!)

 

 

ソルは注いでいた、一人でも勝つ為に

 

 

その姿、まさしく神の鳥、太陽神の威信を懸けた生命の不死鳥

 

 

文字通り持てる全て、勝てば後に神話として語り継がれるであろう神威の神鳥

 

 

 

 

 

「余が正しいか……貴様等が正しいか……」

 

「これで……」

 

「決着だな……」

 

 

 

 

 

遂にその時が訪れる

 

 

 

 

 

 

      「「「これが……」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         私達の……

               

         余の……

 

 

 

 

 

 

 

 

        不死鳥だ……!!

 

 

 

 

 

 

 

   二羽一対の双火真炎、神位に至る天魔神炎

 

 

     終焉を決める不死鳥が……舞い踊る

 

 

 

 

 

 

      「絆炎「皇帝不死鳥(カイザーフェニックス)」!!」

 

 

 

        「不死鳥神話(ゴッドフェニックス)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ウオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

 

 

 

 

 

魂が慟哭している

 

 

 

 

 

「ヌウ……ァ……アアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

 

 

 

有り得る筈の無かった因果が、全てを受け入れる運命が絞り出す

 

 

 

 

未来への咆哮

 

 

 

 

 

「行け……妹紅……!掴め……勝利は……すぐそこだ……!」

 

 

 

 

 

全てを懸けた三者には奇蹟すら介入する余地は無い

 

 

 

 

「ハアアアッ……ウオアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

 

 

どちらかが勝ち、どちらが負ける

 

 

 

 

 

「ゼアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

 

 

 

 

ただ……それだけ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ̄ ̄崩れ落ち行く過ちの果てで……

 

 

 

 

         最期の夢を……見続けている……__

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ソルの技名に良いのが思い付かなかった黒太陽です。
一応考えたんですがね……ソルフェニックス(太陽神鳥)とか……でもよく考えたらカイザーもドイツ語なだけでまんまなので王を越える神と言う事でゴッドフェニックスになりました、某翼神竜みたいだけどいい……よね……?


・現在の主な犠牲者(リタイア含む)
幻想郷 永琳、咲夜、白蓮、チルノ、にとり、霖之助、アリス、美鈴、幽香、竜王、紫、青娥、芳香、輝夜、常闇ノ皇、忍、バラモス、靈夢、正邪、カメハ、ロラン、ルナ、フラン、大妖精、魔理沙、パチュリー、早苗、藍、諏訪子、さとり、神奈子、橙、依姫、妖夢、豊姫、ゾーマ、文、勇儀、ロン 計39名 

魔王軍 六将(5/6)、キルギル、親衛騎団(6/6全滅)、純狐、へカーティア?、バベルボブル、戸愚呂、戸愚呂(兄)?、テリー、ゴリウス、キル、ガルヴァス、グレイツェル、ヴェルザー、ゼッペル、災厄の王(ジャゴヌバ)、ナイト(ダイ) 計26名 
          レミィ一応復帰して戦ってます。


7話も使った太陽神決戦の章、ひいては1年4ヶ月も続いた戦いも次回で決着です。

次回も頑張ります!

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