東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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第39話 神と王

 

 

「バーン……」

 

どうしようもなく嬉しくて

 

「バーン……!!」

 

どうしようもなく愛しい人を抱き締める

 

「当然の事だ、お前を見捨てる筈がなかろう……泣くな、レミリア」

 

「うー……うー……!」

 

止めどなく流れる涙は歓喜の証、誇りすら砕く愛が王女の顔を濡らす

 

「クイーンの危機を救うナイト気取りのキングか……フン……」

 

それを見ていたソルではあったがその興味は既にレミリアには無く、バーンに向けられていた

 

遂に対峙した二人の男

 

冷笑を向けるソルと冷ややかに見るバーン

 

「してやられたわ……よもや猪口才な罠を仕掛けているとはな、だが空間転移ではなく隔離とは妙に面倒な事をしたではないか?」

 

「……余は幻想郷から離れられぬ身ゆえにこうするより他無かった」

 

「何らかの枷ゆえか、それはまぁいいが非常に強力な結界だな……余でも破れぬ」

 

ソルにとっては今更枷などどうでもいい、知っていたとてそんな終わりは望んでいない

 

それをバーンはソルから察した

 

「通常の結界ではいくら魔力を注いでも貴様を隔離は出来ぬ故……この結界は穴を設ける事で強度を不破の物にしているのだ」

 

「制約か」

 

「そう、制約だ……「不死鳥」を象徴とする者のみに影響を及ぼす様にしてある」

 

「成程……余と貴様の象徴か」

 

バーンが仕掛けていたのはソルにのみ反応する隔離結界、異空間では幻想郷から離れる事になるので幻想郷の一部に結界を張り幻想郷内での一騎打ちを実現したのだ

 

「もっとも内から干渉出来るのは余だけだがな、貴様では余を殺す以外に出る事は叶わぬ」

 

「そうか……」

 

それを聞きソルは考え込む

 

「しかし解せぬな、何故他の者達ではなくレミリアへ仕込んだ?理由はなんだ?」

 

ピンポイントにレミリアへ仕掛けた理由が気になった

 

「貴様がレミリアを狙う事はわかっていたからだ」

 

「それがわからぬと言っているのだが?」

 

「ならばわかりやすく答えてやろう、貴様は余だからだ」

 

ソルを罠に嵌めた理由

 

それはソルがバーンだったから

 

バーンがレミリアを愛した様にソルもまたレミリアに惹かれるだろうと読んでいた故の罠

 

「……」

 

そう告げられて面白くなさそうにバーンを睨むソル

 

「まぁよい……では今更ながら一応確認しておくとしようか……貴様が?」

 

ソルはバーンに問う

 

お前が平行の存在なのかと

 

「……わざわざ確認する程疑問を抱いている訳ではあるまい、余なのだからな……見た通りだソル」

 

「フッ……貴様がそう呼ぶのなら余は敢えてバーンと呼んでやるとしよう、ところで鬼眼が見えぬがどうした?」

 

「……貴様には関係無い事だ」

 

互いに笑んでいるがバーンは氷の様に冷たく、ソルは嘲る様に笑っている

 

「……レミリア」

 

ソルから目を離す事なくバーンは言う

 

「わかってる、わかってるわ……」

 

レミリアはバーンの言いたい事を理解し頷くと同時に体を光が包む

 

「勝利を祈ってるから……」

 

バーンがソルと一騎討ちをするから外に出ていてくれと言いたいのを察し結界の外に送る光に抗う事なく身を委ねる

 

「任せておけ」

 

レミリアを見る事は無かったがバーンも答える

 

「……!」

 

外に送られる刹那、レミリアはバーンを見て目を見開く

 

(嘘……まさか……)

 

信じられない事を感じ焦りを見せる

 

「待って……!バー……!!」

 

しがみつこうと伸ばされた手と言葉だったが直後に光に包み込まれ、レミリアはバーンの腕から消えてしまった

 

 

「……」

 

何かを言いたそうだったレミリアの様子に気付いていたバーンだったがもう手遅れであった為に諦め、ソルに意識を集中させる

 

「これで心おきなく……と言ったところか?」

 

ソルの雰囲気が変わった、二人になった事で我慢ならなかったのだろう

 

「……不愉快だ」

 

抑える事の無い侮蔑の瞳を向ける

 

「余と同一なれど異なる道を進んだ貴様がどんな者かと楽しみにしていたが……ここまで癇に障るのは勇者共以来、いや……それ以上か」

 

ソルから感じるのは異常なまでの嫌悪

 

「薄々感じてはいたが……経緯は知らぬがこの地の者共と随分と仲が良いではないか、先のレミリアに関してはおぞましさすら感じたぞ?貴様は本当に余なのかと疑いたくなる程にな……負けた……故にか?」

 

変わり果てたとさえ言えるバーンが堪らなく嫌悪感を抱かせるのだ

 

「そうだなソルよ……」

 

そんなソルの問いにバーンは答える

 

「余は勇者に敗北し、幻想郷に来た」

 

負けた事に何の負い目も無く

 

「そして友や仲間……様々なものを得て……こうなった」

 

恥ずべき事など無いと言う様に強く答える

 

「いや……違うな、こうなれたのだ」

 

それが今のバーンだから

 

幻想郷に住まう者達がバーンを変えたから今のバーンが在るのだから

 

 

「哀れ以外の言葉が出ん……敗北し、生き恥を晒し続けた果てとはこうも醜いモノか……友や仲間だと?よくそんな勇者共の金看板の様な言葉を吐けたものだ、大魔王の名が泣いているとは思わぬのか?」

 

「余にそんなモノは既に無い、ここに来た時からな……そしてこれからも必要は無い、今の余は幻想郷に住まう何の肩書きも持たぬただのバーン、それ以上でもそれ以下でも無い」

 

「……戯言を」

 

ソルに怒気が満ちる

 

同じ故に異常に腹が立つ、それが言うに事欠いて自分が理解出来ず吐き捨てた友や仲間とほざき、誇りでもあった大魔王の冠すら捨てたと言うのだから

 

それは勝ち続けた己を否定しているのと同義なのだ

 

「今の余はそれでいて満ち足りている……ソル、貴様はどうなのだ?楽しいのか?……その様子を見るに楽しそうではなかろうが」

 

「もう大方叶えてしまっているのでな、つまらぬのは確かだ」

 

「本当にそれだけか?勝者にしては随分と儚げだが?」

 

「……!」

 

ソルが目を見開く

 

「負け犬風情が……!」

 

憎悪を孕みバーンを睨みつける

 

負けたバーンに知った風に言われるのが耐え難いのだ

 

「もうよい……同一と思えぬほど貴様は見るに耐えん、引導を渡してやる……それが筋と言うものだ、この幻想郷とやらを貴様の墓場にしてやろう」

 

魔力が膨れ上がり大気を振動させる、ソルが臨戦態勢に入ったのだ

 

「触らぬ神に祟り無し……貴様は太陽神()と言う神の逆鱗に触れたのだ……消え失せろ」

 

「フン……」

 

怒り昂るソルに対しバーンはゆっくりと魔力を上げていく

 

「太陽に近付き過ぎた身の程知らずは焼かれ、墜ちるものだ……」

 

同一のソルの魔力と衝突し空間が歪むまでの圧力を持って応える

 

「貴様は余の太陽を奪おうとした、断じて許す事は出来ぬ……焼滅しろ、跡形も無く!」

 

 

出会いは死合い

 

こうなる定め

 

挫けた夢形を体現せし神と異なる夢形を得た王はまさに水と油

 

決して相容れぬ同一は互いに存在を許せない、同一だからこそ許さない

 

 

「勝てると思うな……敗北者如きが……!」

 

「傲れる勝利者よ……貴様に敗北を与えてやる……!」

 

 

遂に……

 

王と神の戦いが始まるのだ

 

 

 

ズオッ!

 

 

 

始まりは魔力の衝突から始まった

 

至上の魔力は大地を揺らしながらも拮抗している

 

「フン……負けたからといって衰えているわけではない様だな」

 

「……」

 

得意気な顔のソルに対し無表のバーン

 

「イオナズン!」

 

ソルの放った爆発球がバーンに迫る

 

「……イオナズン」

 

同じく放たれた爆発球が衝突し結界内に尋常ではない規模の大爆発が起きる

 

「……ムン!」

 

「……!」

 

同時に唱えられたバギクロスの烈風が爆煙を晴らし、ぶつかり、暴風が荒れ狂う

 

「フハハ……!」

 

「……」

 

次はマヒャド、迸る冷気が結界内を一瞬で氷世界に変える

 

「ベギラゴン!」

 

「……」

 

閃熱が広がりまたも一瞬で氷世界を蒸気むせる熱世界へと変貌させる

 

「ククク……それでこそ余、と言うべきか」

 

「……」

 

当然の様に行っている呪文の応酬

 

普通に見えるのはこの場に居るのが二人だけだから

 

イオナズンは直撃すれば頂点ですら楽観出来ない威力でありバギクロスは大妖精の本気の弾幕に匹敵している威力を平然と出している

 

マヒャドはチルノやゾーマには及んではいないがそれでも一線級を越えている

 

ベギラゴンに至っては熱が得意なのもあり威力は頭1つ飛び抜けており幻想郷の者達なら100単位で熱殺出来る程

 

 

幻想郷最高と魔王軍最高は御伽の如くレベルが違っていた

 

 

「ここまでは分かれる前から出来ていた事……ではここからはその先だ」

 

ソルが手をかざす

 

「ドルマドン!」

 

闇の力がバーンを中心に収束していく

 

「!?」

 

 

ドウッ!

 

 

闇が雷を伴い爆ぜる

 

「……」

 

「ほう、無傷か……」

 

ソルは次の呪文を唱える

 

「ザバトローム!」

 

かざした手からレーザーとも言うべき巨大な水流が撃たれた

 

「ヌッ……」

 

 

ズドオッ!

 

 

水が当たったとは到底思えぬ衝撃音を出しバーンは飲み込まれた

 

「如何かな?これが余が勝利し続けて得た力の一片だ」

 

手を握り呪文を中断しソルは見つめる

 

「余も知らぬ呪文……か」

 

バーンは立っていた

 

「多様な世界から学んだか……やるではないか、ソル……」

 

無傷で

 

「……」

 

ソルの表情が真顔に変わる

 

(効いていない……?)

 

そう、バーンにダメージが無いのが解せないのだ

 

直撃しているのは確かなのに無傷、加減はしていないし呪文の威力は勇者と戦った時より更に上昇しているにも関わらず効いていないのだから

 

(何かしているのか?余が得た力と同じく奴も此処で新たな力を得た……か?)

 

ソルの推測はある意味で正しい

 

バーンは幻想郷で誰かの為に使う心で力を引き出す方法を得た

 

それは今のバーンの根幹に有る力なのだが今に関しては不正解と言える

 

「では次は余が芸を見せてやろう」

 

バーンの挙動にソルの思考が切られる

 

「貴様がレミリア達と戦ったなら見れた筈だ」

 

バーンの周囲に大量の魔法球が展開される

 

「これは弾幕と呼ばれる攻撃方法、幻想郷の基本であり真髄だ」

 

「……!」

 

多種多様の弾幕を見てソルは気付く

 

(火、氷、風、爆、熱……余の世界の基本!五大呪文の……弾幕!)

 

属性に加えその1つ1つに強い魔力を込められている事を

 

 

「魔幻「五大(エレメント)五重奏(クインテット)」!!」

 

 

王の弾幕が放たれた

 

 

「小賢しい……カラミティウォール!」

 

魔力弾と言えどその物量に掌底と反射では防ぎきれないと判断したソルはその小賢しき弾幕に闘気流を広く高く発生させ磨り潰そうと壁を作る

 

 

ズガガガガガ……!

 

 

カラミティウォールが次々と弾幕を磨り潰す、しかし弾幕の勢いが進行を阻止している

 

「この程度が貴様の力かバーン?」

 

凌ぎ切れると確信したソルは言う

 

「負け犬らしい慎ましさよ……!」

 

 

ズオオッ……!

 

 

ソルを暗黒波動が飲み込んだ

 

「ヌグッ!?クッ……!!?」

 

打ち払ったソルは既に破壊されたカラミティウォールの先に居るバーンを見る

 

「魔符「闘魔滅砕砲」……!」

 

かざしていた手をバーンは下げる

 

「暗黒闘気を……ドルオーラの如く……!」

 

傷付いた体を再生させながら何をされたかを悟り身構える

 

(余のカラミティウォールを瞬間的に貫く威力……どうなっている?)

 

先程から疑問ばかりが沸いてくるが答えが出せない

 

「この程度が余の力だ……御堪能頂けたかな?」

 

打って代わりバーンは余裕の表情をしていた

 

 

「気に入らんなその目……斬り刻んでくれるわ!」

 

ソルが手刀を構え飛び込む

 

「カラミティエンド!!」

 

 

ズギャアッ!

 

 

怒濤の衝撃が波紋状に拡散し結界内を揺らす

 

「ムッ……!」

 

ギギィと不協和音を鳴らす両の手刀

 

「……」

 

バーンは受けていた、置いただけの手刀で微動だにもせず

 

「ヌゥゥ……!」

 

下がるソルは睨む

 

「なんだその得意そうな顔は……カラミティエンドが互角な事がそんなに嬉しいのか」

 

「貴様がそう思うのならそうなのだろう……貴様の中ではな」

 

「チィ……!」

 

起伏を見せないバーンに怒りは溜まる

 

「では……これは?」

 

ソルの魔力が溢れる

 

「……」

 

呼応したバーンと共に構える

 

 

「「これが……」」

 

 

極位の魔力が手に収束する

 

 

「「余のメラゾーマだ」」

 

 

収束した魔力が炎に変わり激しく炎上し異常な熱さを予感させる

 

 

「「その想像を絶する威力と、優雅なる姿より……」」

 

 

誰もが畏れ、魅せられた一人の魔族のみが持ち得る火炎

 

 

 

""

        幻想郷 

   太古より     ではこう呼ばれる……

        魔界

                       ""

 

 

象徴たる炎形、この上無き最高の火炎呪文

 

 

 

     「「カイザーフェニックス!!」」

 

 

 

二羽の不死鳥が雄々しくも美しき羽を広げ、衝突した

 

 

「フン……」

 

炎を散らすせめぎ合いの最中、ソルは笑む

 

「これも互角とはな」

 

最も得意と言える自らの象徴での対決

 

見下し、蔑んでいたバーンとの互角のせめぎ合いは腹立たしさもあったがそれでこそ己と言う称賛、それを引き金に僅かに楽しくなってきたのも有って笑った

 

「……」

 

反面、バーンは無表情でソルの不死鳥を見つめている

 

(……予想通りか)

 

押しきろうと手を握り圧を放つ

 

「オオッ!」

 

同時にソルも圧を加える

 

 

ゴウッ!!

 

 

互いの不死鳥が弾け、炎の壁が互いを遮る

 

 

「……」

 

「……」

 

 

炎が散り、明けた先

 

 

「……」

 

目を閉じたバーンが構え

 

「フッ……フハハ……」

 

同じく構えていたソルの静かな笑い声が響く

 

「ファッハッハッハッ!!」

 

堪え切れず大声を出してソルが笑う

 

「……」

 

笑うのは二人の構えに理由があった

 

「考えている事は同じだったか!ハーッハッハッ!!」

 

二人共に同じ構えを取っていたのだ

 

 

天地魔闘の構えを

 

 

期せずして出来た炎壁を利用して奇襲してくるのを予測し天地魔闘で迎え撃つ

 

それが狙いであったのだ……お互いに

 

「やはり貴様は余なのだな!互いに異なる道を歩めど根源的なモノは変わらぬか!」

 

ソルが言う根源的なモノとは本能とでも言うべき行動原理

 

「先のカイザーフェニックスもそうだ、貴様は遅れること無く合わせてきた!」

 

新しき力を身に付けてもそれ以前から持ち、磨き抜いた力に信頼を置く戦略

 

小競り合いではなく判断を誤ると死に繋がる様な場面での行動は同じなのだと言っているのだ

 

「楽しませてくれる!その顔がいつまで続くか見物よ!」

 

バーンに感じるのと同じくソルにも余裕があった、バーンと違い勝利者たる自負と更なる余力故に

 

「……貴様では余の余裕を崩すことは出来ぬ」

 

不愉快そうに見ていたバーンが告げ、手をかざし魔力を集中させる

 

「再びカイザーフェニックスか……」

 

「崩せるか試させてやろう……来るがいい」

 

「フッ……望み通りにしてやる」

 

ソルも応えまた二人は構え合い

 

 

「「カイザーフェニックス!!」」

 

 

不死鳥を放った

 

「何がしたいのだ貴様は!結果は変わらぬと言うのに!」

 

先に互角は証明されている

 

無意味な事だとソルは言い

 

不死鳥がぶつかる

 

「そうでもない」

 

バーンが呟き

 

「なっ……!?」

 

ソルの不死鳥は貫かれた

 

「何いィィィィィィィィ!!?」

 

無防備なソルにバーンの不死鳥が炸裂し炎で包む

 

「余のフェニックスは友との絆の証、これに勝るのはこの世でただ一人、余が認めた皇帝不死鳥のみ」

 

バーンの不死鳥は幻想郷において今や二番目に強き炎、基本威力は非常に高いが最大威力ではその名を本物にした皇帝不死鳥である妹紅の方が強い、真に恐ろしきはそれを詠唱の溜め無く魔力が続く限り次々と放てる事がバーンの不死鳥が決して皇帝不死鳥の下位ではないという証明でもある

 

「そうでなくとも負けは有り得ぬがな」

 

当然の事ではあるがバーンの不死鳥の方が強い理由はもっと単純で明確な事であったがソルはまだ気付かない

 

「ヌオオオオッ!!」

 

魔力で炎を払ったソルだが予想外の事態に息を僅かに荒く吐いていた

 

「……図に……乗るなよ……!」

 

不様な結果が、バーンの顔が、声が更なる怒りをソルに表現させる

 

「その余裕ごと存在を焼き切ってくれるわ……!余の滅死の終刃で!」

 

炎上させた手を手刀に構え飛び込む

 

 

「フェニックスエンド!!」

 

 

神の魔力が籠る究極の魔法刀が振り下ろされる

 

「……!」

 

振り上げたバーンの手刀が受け止めた

 

 

「何だと……!?」

 

ソルは驚きを禁じ得ない、フランやレミリアすら打ち倒したカイザーフェニックスの力を込めた最高の手刀が防がれたのだから

 

「バカな……カラミティエンドが余のフェニックスエンドと互角だなど……」

 

そしてバーンが使ったのは魔法を宿していない言わば通常の手刀だったから

 

「今のはカラミティエンドではない……手刀を振っただけよ」

 

「何……?」

 

手刀を押すソルへバーンは涼しく言い放った

 

「言葉の通りだ、最初の切り合いもそう……貴様は余がカラミティエンドを使ったと思っていた様だが違う……アレもただ手刀を置いていただけに過ぎん」

 

「……!?」

 

「理解出来たか?本気ではないのだ……余は……!」

 

グンッ……!

 

「ヌ……アッ……!?」

 

力が入れられたバーンの手刀がソルの手刀を押す

 

 

ドギャ!

 

 

バーンの手刀がソルを弾き飛ばした

 

「貴様では勝てぬ」

 

ベギラゴンを唱え、熱線がソルに向かう

 

「舐めるでないわ!フェニックスウィング!!」

 

呪文を弾き返す不死鳥の翼

 

「何だとォ!?」

 

振り上げるが返す事叶わない

 

(呪文の威力が上昇して……いや、魔力そのものが先程までと比べ物に……!?一体何をしたのだ奴は!余が防ぐので精一杯だと!!?)

 

それどころか押しきられそうになっている

 

「グッ……オオッ!」

 

余裕無き形相で何とか返したものの狙いなどつけれる筈も無く、熱線は闇の彼方へ消える

 

「ハァ……ハァ……ッ!!?」

 

喘ぐソルは知り、戦慄する

 

「よく返せたな……」

 

目の前に居たバーンに

 

 

ズドッ!

 

 

「ゴハッ!?」

 

バーンの拳が鳩尾を打ち抜く

 

「ぐふっ……グアッ!?」

 

掌底が顎を打つ

 

「……」

 

下がるソルに無表のまま即座にイオラを連射、その全てが命中し絶え間無い爆発が至近距離に居たバーンごと爆煙に包む

 

「……オオオッ!」

 

爆煙を払い、傷だらけのソルが手刀を振り下ろす

 

「……フン」

 

「ヴグッ!?」

 

手刀は容易く掴まれ裏拳が頬を打ち、吹き飛ばす

 

(単純な膂力すら完全に負けて……!?何故だ!これではまるで鬼眼……ッ!!?)

 

既に撃たれていた弾幕に対応出来ず

 

「ウッ……オオオッ!!?」

 

炸裂した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チィ……コイツ等……!」

 

『また減ったぞ萃香!』

 

中央で孤軍奮闘する萃香とミスト

 

「増した勢いが止まらないねぇ……援軍も大した時間稼ぎにならんかもしれんよこいつは……」

 

『……かもしれんな』

 

「……あの向こうに見える黒いドームは何かわかるかい?見たとこ結界みたいだけど?」

 

『おそらくバーン様の仕業だろう、ソルの魔力も感じれなくなった、一騎討ちに持ち込んだのだ』

 

「だったらいよいよ最終局面って訳だね……彼方も此方も……」

 

『そうなるな……また減ったぞ萃香、残りは19だ』

 

「……わかってるよ」

 

分身の核となる本体の萃香は腕を掲げ残る全ての分身を消し、戻す

 

「決着までもうすぐ……命の張りどころは今さね」

 

たった一人になった萃香に魔王軍が雪崩れる様に襲い来る

 

 

ズドオオオッ!

 

 

振り抜いた裏拳が最前の魔物を両断し、衝撃波が後続を吹き飛ばす

 

 

「死にたい奴からかかってきなァ!この霧の萃香とォ!!」

 

 

『私が在る限り此処を死地を心得るがいい!!』

 

 

その黒鬼は後退を知らない

 

己が己で在り続ける為の魂がそれを許さない

 

『行け萃香!私も共に在る!!』

 

誇りの名と不滅の友情がそう在れと支えてくれるから

 

 

「これより我等!修羅に入る!!」

 

 

たった一人の一騎駆け

 

されど心、魂、誇りは2つ

 

黒衣の鬼、修羅となりて戦場に罷り通る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか、そうだったのか」

 

爆煙から姿を見せたソルがその目をバーンに向ける

 

「道理だ……余が敵わぬ訳だ」

 

酷く納得がいった様子で仕方無いと苦笑している

 

「貴様……既に鬼眼王だったか」

 

「……ようやく気付いたか」

 

呆れた様子を見せるバーンだったがソルは気にせず語り続ける

 

「他意か故意かは知らぬが貴様は鬼眼王のまま余と同じ姿をしている、成程……勝てる筈も無い」

 

同一なのに存在した力の差

 

それは状態の違い答えが有った

 

バーンは昔に永琳によって鬼眼王の状態から体を切り取られ今の姿をした言わば小さな鬼眼王、全てを捨てて得た力は魔力、膂力ともに通常の比では無い

 

同じ姿とは言えソルが勝てる筈が無かったのだ

 

「フフッ……貴様に鬼眼が無い時点で気付いていればこれ程まで醜態を晒す事は無かった、クククッ……楽しかったか?狼狽える余を見るのは?」

 

「そうでもない、遅かれ早かれ気付かれるのはわかっていた、あわよくば気付かれる前に倒せれば……とは思っていたがな」

 

バーンの言う通り気付かれるのは最初から想定内、何故なら相手は己、そこに至らぬ訳が無い、だから惜しいとも思っていない

 

今までは予想出来た何の意味も無い茶番、これからが重要なのだから

 

 

「では、余も成るしかあるまい……」

 

ソルの鬼眼から黒い力が溢れ、体を巨大な闇で覆い、赤く光る3つの瞳だけが浮かび上がる

 

「聞きはしなかったが疑問に思っていた事を答えてやろう、何故余は鬼眼王ではないのか?何故人の体のままだったのか、をな……」

 

 

ゴゴゴゴゴ……

 

 

3つの瞳の内の1つが消え、残る2つの瞳が高く昇っていく

 

「大いなる闇の根源、それに触れた余は鬼眼の本質を理解した……余や貴様が更なる力を重ねる様に鬼眼にもまた進化の余地が有ったのだ、それから余は……自由に魔獣と人型に成れる様になったのだ!」

 

闇の中心に巨大眼が妖しく瞼を開ける

 

「これこそが、敗者が至れぬ境地へ至った証明!」

 

 

 

ズギャアッ!!

 

 

 

弾け飛んだ岩片と共に闇が晴れる

 

 

「これぞ神の御業、故に王ではなく鬼神……王を越えた神の力!」

 

 

バーンの何十倍もあろうかと言う巨大な魔獣

 

鬼神ソル

 

全てを捨てたからこそ至れた力を完全に制御したソルの最終形態であり魔王軍が崇めた本当の神体

 

 

ズドオッ!!

 

 

ソルの巨拳がバーンに炸裂する

 

「……ヌゥゥ!?」

 

受け止めているが震える程に力を入れている

 

「これで条件は五分!では雌雄を決するとするか……!」

 

昂り続ける王と神の無情の戦いは続く

 

 

「砕け散れバァァァァァン!忌まわしき生き様と共に!!」

 

 

どちらかが夢幻に消えるまで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遅くなりました、また最近忙しくて今回は短めですが遅れました……

遂に始まりました頂上決戦!ソルが小物臭いのはボッチが初めて友達が出来て舞い上がってる感じと思ってください。

さぁここからですねぇ……


・現在の主な犠牲者(リタイア含む)
幻想郷 永琳、咲夜、白蓮、チルノ、にとり、霖之助、アリス、美鈴、幽香、竜王、紫、青娥、芳香、輝夜、常闇ノ皇、忍、バラモス、靈夢、正邪、カメハ、ロラン、ルナ、妹紅?、フラン、大妖精、魔理沙、パチュリー、早苗、藍、諏訪子、さとり、神奈子、橙、依姫、妖夢、豊姫、ゾーマ、文、勇儀、ロン、レミリア 計41名 

魔王軍 六将(5/6)、キルギル、親衛騎団(6/6全滅)、純狐、へカーティア?、バベルボブル、戸愚呂、戸愚呂(兄)?、テリー、ゴリウス、キル、ガルヴァス、グレイツェル、ヴェルザー、ゼッペル、災厄の王(ジャゴヌバ)、ナイト(ダイ) 計26名 
                    増減無し


次回も頑張ります!

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