東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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第3話 前哨

 

???

 

「……」

 

豪魔軍師ガルヴァスは会議室にて腕を組み待っていた

 

「お待たせしました魔軍司令殿」

 

「……」

 

そこに二人の男が入ってきた、一人はゼッペル、もう一人は青い帽子と服を着た銀髪に紫の瞳を持ち剣と盾を装備した青年だった

 

「来たか」

 

ガルヴァスが座るよう促す

 

「超竜と妖魔、そして機甲士団の長が居ませんな」

 

座りながらゼッペルが呟く

 

「奴等は呼んでいない、呼んだのはお前達と……」

 

「儂ですよ」

 

ガルヴァスを遮ってモノクルを付けた魔導士風の老人が姿を現した

 

「キルギル……」

 

剣士の青年が明らかな嫌悪の目で睨む

 

「ヒョヒョヒョッ……若いですねぇ閃光の剣士よ、嫌われてるのは知ってますが目上の者は振りでも敬っとる方がいいですよ?」

 

キルギルと呼ばれる老人が椅子に座る

 

「お前達を呼んだのは他でもない、頼みがあるのだ」

 

全員揃ったのを確認したガルヴァスは用件を伝え始めた

 

「候補地にて至急確認したい事が出来てな、それを手伝って欲しい」

 

「確認したい事?戦力ではなくてですか?」

 

ゼッペルが問う

 

「そうだ、まぁ戦力を測るという意味も入ってはいるか……候補地のある場所に居る者を確かめたいのだ」

 

「……俺達に陽動を頼みたいと言う訳か?」

 

剣士が問う

 

「正解だ、お前達には候補地でその場所に潜入しやすい様に原住民を引き付けておいて欲しいのだ」

 

「……二団長と魔導士を使う価値があると?」

 

ゼッペルの疑問は当然だろう、まだ直接見てもいない幻想郷の更に限定地にそこまでする程の事を想像がつかないのだ

 

「価値の程は不明だ、徒労に終わる可能性もある……だがもしオレの想像通りならあの地は創、天、幻の王達の庭に匹敵する戦地となる筈だ」

 

ガルヴァスは楽しそうに唇を吊り上げる、そして頭を下げた

 

「頼む……付き合ってはくれぬか?」

 

そう、頭を下げた

 

ここに居るゼッペルと剣士は軍団長でキルギルもそれと同格、だがガルヴァスは魔軍司令、立場では上なのに命令ではなく頼んだのだ

 

「……面を上げよ司令殿」

 

ゼッペルに言われ顔を上げる

 

「司令殿の頼みを我等が断ると思いますか?」

 

ゼッペルは微笑んでいた

 

「あんたが俺達の為に色々と骨を折ってくれてるのは知ってる……手伝ってやるさ」

 

剣士も小さく微笑んでいた

 

「そういう事ですなガルヴァス殿」

 

キルギルが頷きながら言う

 

「……ありがたい」

 

嬉しそうに笑うとガルヴァスは指示を出す

 

「ではゼッペル、お前の魔獣兵団を借りたい」

 

「構いませんが……私は留守番ですかな?」

 

「すまんな、お前を軽々しく出すなとソル様から言われている、今回は堪えてくれ」

 

「そういう事ならまぁ……」

 

少し不満気にゼッペルは答える

 

「お前達二人は潜入するこの地点より離れた場所で軽く暴れろ、強者達が来れば程々に時間を稼いで帰ってこい、それまでには終わらせる、その間品定めをしても構わんぞ」

 

「わかった、他の奴等の分を減らさないよう気をつけよう」

 

「なるほど、それでわしを呼んだのですね……承知しました、新しい玩具もあります、最低30分は持たせて見せましょう……それに見ておきたい場所もありますしねぇ」

 

剣士とキルギルも了承する

 

「主は魔獣兵団とお前達二人で強者を誘き寄せ足止めしてもらう、オレからも数を出し更に六将のうち五将を出そう、出来る限り攻めに来たと思わせろ、そうすれば成功率が高まる」

 

「ではその紅魔館とやらにはガルヴァス殿自らが?」

 

「いや……オレが行けば警戒のレベルを引き上げるだけだ、ソル様と結果を待つ事にする、軽く兵はあてがうつもりだが紅魔館への本命は死神を使う」

 

「ほう、アレを使いなさるのか、余程確かめたいのですねぇ」

 

キルギルが本気の程を知り妖しく笑う、死神について知っている様だ

 

「では頼んだぞ魔王軍の戦士達よ」

 

ガルヴァスの言葉に3人は頷き作戦は開始された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・図書館

 

「準備はいいわね?ミスト?美鈴?」

 

背後にスキマを構えた紫は問う

 

「もちろんだ」

 

「いつでも構いませんよ!」

 

ミストと美鈴が答える

 

敵地への潜入はこの二人が行う事になった

 

「もっとガーって行けばいいじゃん!あたいが行って終わらせて来るのに!」

 

なんで二人なの?とチルノが言う

 

「それが通じるのは弱い相手だけよ」

 

パチュリーが答える

 

「あたいの敵じゃなかったよ?」

 

「それは今までは……でしょ?チルノより強かったり相性が悪い敵が居たら終わりでしょう?それに大勢で行って罠なんか掛かったらゲームオーバーよ?」

 

「うーん……」

 

納得がいってないチルノ、幼いなりに考えているのだ

 

「私達はまだ敵の全容を知らないのだから慎重にならないといけないの」

 

「知らないのは相手も一緒じゃん!」

 

「そうね、でも今回の相手はとても異質……慎重で統率も取れてる、そして何より仲間想い……かなり手強いと思うわ」

 

「うーん……わかった」

 

チルノが渋々納得すると次はフランが声を出した

 

「なんでミストと美鈴なの?」

 

「それもちゃんと理由があるわ、適当に選んだわけじゃないのよ」

 

パチュリーが答えると次はバーンが口を挟んだ

 

「今回は相手と同じく諜報の為の潜入だ、戦闘が目的ではない、故にこの二人だ」

 

「二人が武道家だから?」

 

「そうだ、気配を絶ち、探れるこの二人は潜入には適任なのだ」

 

「妖夢も出来るよ?」

 

フランがそう言うとバーンの顔が曇った

 

「……妖夢ではダメなのだ」

 

「……あー、ドジだもんね妖夢って」

 

潜入での技量で言えば美鈴と同じの妖夢だったが性格に問題があった

 

「腕は問題ないが要らぬ事をする可能性がある」

 

戦闘が目的ではないのに正義感から戦闘を自ら起こすかもしれない危うさがあるのが選ばれなかった理由だったのだ

 

「その点で言えば美鈴は問題ない」

 

「お気楽だもんね美鈴って」

 

「それにミストは武術を嗜んでいるのに加え霧になれる、視認させずに行動が出来る上に同僚である美鈴との連携が取りやすいのが抜擢の理由だ、そしてミスト自身の要望でもある」

 

「ふーん……門番居なくなっちゃうけどいいの?」

 

「そこは仕方あるまい、代わりに咲夜とウォルターが門番にあたるがもとより紅魔館はまだ相手に重要視されていない場所だ、問題はなかろう」

 

「だね、もし来たらあたし達も居るし!」

 

そして二人がスキマに入ろうとしたその時だった

 

「襲撃ですお嬢様!バーン様!」

 

突然現れた咲夜が声を張り上げた

 

「ここに?」

 

「いえ、妖怪の山です」

 

「規模は?」

 

「鴉天狗からの情報によりますと100から200ほどです」

 

「それぐらいなら神奈子やにとりに文が居るから問題ないでしょ?」

 

「それが苦戦しているらしいです、守矢の3人が地獄に呼ばれて不在なのに加え敵の実力が高くにとりと文と妖怪の山の妖怪達では厳しい状況にあるみたいです」

 

それを聞いて皆が顔を見合わせる

 

「じゃあ私が行ってくるぜ」

 

「あたいも行くわ!」

 

魔理沙とチルノも立ち上がり続いて大妖精とフランが立ち上がった

 

「私達は他が襲われてないか見てきます」

 

「見てくるよー!」

 

魔理沙とチルノが妖怪の山に向かい大妖精とフランが他所の確認に出ていった

 

「今襲撃が来たのは追い風かもしれんな」

 

バーンが呟く

 

影響の程は不明だがミストと美鈴を潜入させるにはタイミングが良かった、あちらの目が幻想郷に向いていると考えられるし単純に本拠地の数が減っていると考えれるからだ

 

「深追いはせずともよい、無理だと判断すればすぐに戻れ」

 

もちろんそう甘くないだろう事は理解している、あくまで希望に過ぎないのだから

 

「承知しました、必ずや敵の正体を得てきます」

 

「期待しててください」

 

二人はスキマに入り潜入任務は始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪の山

 

「ふむ、戦況はどうなっとる?」

 

山の麓でキルギルが部下に問う

 

「現在はこちらが押しています、数では劣りますが地力の差で優位です、天狗の中で一番強いであろう者は不死将が押さえ異常な力を持つキラーマシンには妖魔、百獣、魔影の三将が付いています」

 

「そしてあの若僧は妖怪相手に無双をしているというわけですか」

 

悪くないと頷くキルギルに部下が新たな報せを届ける

 

「増援が来始めました、実力者はまだ来ていませんが時間の問題かと」

 

「やりますね、対応が早い……新しい玩具を使いますか、よし……超魔ゾンビを使い迎撃にあたらせます!呪文使いに連絡し補助呪文を味方に掛け時間を稼がせなさい!」

 

指示を飛ばすとキルギルは魔術の行使を始める

 

「これであと最低20分は持たせられますか……その間に儂は不確定要素の確認をしておきます」

 

更に部下に命令を下す

 

「2、3人使いこの地の全容を測ってきなさい、広さ、施設等を調べてくるのです」

 

部下が承諾し行動を開始するとキルギルは魔術に更に魔力を込める

 

「さて、ここの地獄はどうなってますかね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠亭

 

「イタイイタイイタイー!」

 

ルナが悲鳴をあげていた

 

「……」

 

輝夜が無言で頬をつねっている

 

「なにやってるんですか姫様?」

 

「お仕置き」

 

鈴仙の問いに無表情で答えた

 

「ごめんなさい~喋っちゃってごめんなさいぃ~!」

 

情報を喋ってしまったルナはお仕置きを受けていたのだ

 

「私が怒ってるのは喋った事にじゃないの、知らなかったんだからしょうがない事だもの」

 

「じゃあなんでつねるんですか~!」

 

「あんたが知らない人に警戒しなかった事に私は怒ってるのよ」

 

昔から言われている事がある「知らない人にはついていかない」

 

いくら普通の人間より強くてもまだ10歳の子どもであり危険をあまり知らないルナだ、アメちゃんを貰えるからホイホイついていって誘拐されました、なんて事は十分に有り得る

 

だから輝夜はお仕置きをしているのだ

 

「言うだけで良いじゃないですか~!」

 

「生意気ね、反省が足りないのかしら……わかった、幽香か霊夢に頼もうかしら」

 

「それだけはイヤーーー!!」

 

 

 

 

 

 

「しくしく……」

 

「次からはもっと気を付けることね」

 

泣き崩れるルナと鈴仙から貰ったお茶を啜る輝夜

 

「少しね……嬉しいのよ私」

 

「えっ……?」

 

不意に溢した輝夜の言葉にルナが顔を上げる

 

「あんたが見ず知らずにも優しく出来る奴だから」

 

ルナを見ずに言うその顔は笑っていた

 

「妹紅もそんな奴だった、誰にでも優しく出来る奴で……やっぱりあんたはあいつの子なのね」

 

「輝夜さん……」

 

血が繋がっていないがその心は確かに妹紅から受け継いでいるものだと感じて微笑む輝夜にルナは少しだけ罪悪感を感じるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄

 

「ようこそお出でくださりました八坂神奈子」

 

そこでは映姫と守矢の3人が会っていた

 

「藤原妹紅はまだ見つからないのですか?」

 

「ええ、紫とロランが様々な場所を探しているが手掛かりすら見つかっていない」

 

「そうですか……ここに魂は来ていないので死んでいるわけではない筈ですが……」

 

「今それを考えても仕方あるまい?それより私達を呼び出した理由を聞かせて貰おうか」

 

「そうですね……」

 

コホンと咳払いをした映姫は語り始める

 

「つい先日完成した事をお伝えしておこうと思い呼んだのです」

 

「10年前から何かしていた事?」

 

「その通りです、地獄を改変する計画が完了しました」

 

「改変……代わり映えしていないが具体的に何をしたの?」

 

「それは地獄の一方通行化です」

 

映姫は空中に図を描きながら説明を開始する

 

「今までの地獄は判決前後の魂が留まるだけの場所でした、基本的に魂は自分から出ていけませんが外部からの要因で引っ張り出す事が出来る事は知っていますね?」

 

「ええ、反魂の術やエスタークの持っていた特殊な能力がそれだろう?」

 

「そうです、エスタークの時は苦い思いをして、そして与えてしまいました、それを反省して地獄から魂が出られない様に改変したのです」

 

「なるほど、魂を利用されないようにしたわけか」

 

「今後そういった事が無くなる事をお伝えしたかったのです」

 

その時、映姫が何かに反応し表情を鋭くさせる

 

「……さっそく来たみたいです」

 

「みたいだな、干渉してきている」

 

神奈子と諏訪子も反応し映姫を見つめる

 

「……大丈夫です、干渉不可能と悟るやすぐに手を引きました」

 

「安心した、しかし干渉してきたと言うことは今幻想郷に敵が来ているという事だ、私達は戻る……地獄は心配無いと伝えておこう」

 

戻ろうと踵を返す3人だったが映姫に呼び止められた

 

「お待ちを……少し気になる事があるのです」

 

神奈子が振り向くと映姫はとても不安そうに言った

 

「最近……地獄の神がまた無名の神と会っているみたいなのです」

 

「……あの二人が……」

 

それを聞いた神奈子の顔が険しく曇る、その二人を知っていて心当たりがある様だ

 

「わかった、私の方も目を光らせておこう」

 

「頼みます八坂神奈子……こんな時に……何か嫌な予感がします……」

 

「わかっている」

 

一抹の不安を抱えながら神奈子達は地獄を出ていった

 

もう遅かった事など知らずに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

「流石は八雲紫です、誰もいない場所を選んでくれてます」

 

スキマにて潜入を果たしたミストと美鈴はバレない様に慎重に選ばれた物置の様な小部屋に降り立っていた

 

「どうだ美鈴?」

 

周囲の気配を探るようミストが促すと美鈴は集中し周囲を探る

 

「……かなりの数が居ますね、同時にかなり広いようです横にだけでなく縦にも……気配が疎らに散っています、幸いこの周辺には誰も居ません」

 

「よし……では行くか」

 

罠の有無を確かめながら小部屋を出た二人は通路へと出る

 

「どちらに行きましょうか?」

 

左右に別れている通路を見て美鈴がミストに尋ねる

 

「……!?」

 

しかしミストの様子がおかしい事に気付き罠かと身構えるが何も起きない

 

(こ……これは……)

 

ミストは襲われていた

 

(この場所は……まさか……)

 

異常な既視感に襲われていた

 

「どうしましたミスト?」

 

不思議と美鈴が尋ねるとミストは急に霧になり姿を霧散させる

 

「至急確かめる事が出来た、悪いが単独行動を取らせてもらう」

 

「えっ!?ちょっとミスト!?」

 

突然の行動に慌てる美鈴にミストは言う

 

「この道を進めば外周に出れる筈だ、そして中央に上部に城が立つ建物が有る筈……その中に入り上階を目指せ」

 

それだけ告げるとミストの気配が通路から消えた

 

「どういう事なんですか……もしかしてここが何か知ってるんですか?」

 

置いてきぼりを食らった美鈴はなんでと考えるが答えは出ない

 

(あのミストが無駄な事をする筈がありません、知ってるなら後で合流出来るでしょうし……行きますか)

 

切り替えてミストに教えられた道を進んでいく

 

「でも敵地に女の子を一人きりにするのは酷いですよね……」

 

独り愚痴りながら

 

「心細いなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館

 

「……咲夜さん」

 

「わかってるわウォルター」

 

門番をする二人は気付く、紅魔館を囲う隠す気も無い気配を

 

「なんだ……昨日の門番は居ないのか」

 

姿を現したのは昨日美鈴とミストが撃退した魔族の武道家だった

 

「何者でしょう?そしてこの紅魔館に何の御用でしょうか?」

 

メイドの振る舞いで咲夜が問う

 

「俺の名はブレーガン、氷炎将と言われている……用は……」

 

ブレーガンと名乗る魔族の武道家は構え

 

「その紅い館を落としに来た!」

 

楽しそうに笑った

 

「かしこまりました、僭越ながら私が対応させていただきます……ウォルター、貴方は周囲を」

 

「承知」

 

その場から消える様にウォルターは飛び去り咲夜とブレーガンが残る

 

「火葬、土葬、鳥葬……何でもございます、お好きなのをお選びください」

 

スカートの裾を捲り上げながら上げられる手にはいつの間にかナイフが握られていた

 

「俺を殺せたら好きするんだな」

 

紅魔のメイド長と謎の氷炎将

 

紅き館の門前にてぶつかる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上手くやってくれたみたいだねぇ」

 

紅魔館の庭に一人、いや、一体の影があった

 

「僕も上手くやらなくちゃね」

 

長身の怪しげな風貌、被り物をしている頭に仮面から覗く目と口からは表情は伺い知れない、陽気そうな口調は振りか素かもわからない

 

「じゃあお邪魔しまーす!」

 

肩に添える様に置かれた鎌を構えて謎の死神は外壁から紅魔館の中へ侵入していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪の山

 

(地獄は手が加えられてますか、まぁよい……儂の知識の足しになるものがあるか気になった程度でしたし)

 

キルギルは気にせず部下を呼ぶ

 

「どうですか?」

 

「集まってきた増援により形勢は覆り劣勢に、閃光の剣士ならび四将は健在ですが新たに現れた魔法使いと氷を使う妖精2名に補助呪文を掛けた者でも太刀打ち出来ず次々と戦死しています」

 

「ふむ……超魔ゾンビは?」

 

「3体居る内、2体は稼働中、1体は魔法使いに一撃で吹き飛ばされました」

 

「……ここの座標を見つけた後に儂が調べて見つけたザボエラとやらの研究レポートによれば確か耐久性に優れていた筈ですが……相手が悪かったか、おそらくは報告にあった頂点の一人と見ました……改良が必要ですね」

 

暫し思案するとキルギルは指示を出した

 

「約束の30分は過ぎたがあと10分粘れと伝えよ、ガルヴァス殿の願いの為に時間を稼ぎなさい!儂が合図を出せば撤退です!」

 

「はっ!」

 

戦場に消えていく部下を見ながらキルギルは少し憂鬱になる

 

(四将と紅魔館とやらに向かった者達は問題無いとして……あの若僧から戦いを取り上げたらまた恨まれますねぇ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!?こいつなんて強さだ!?」

 

山の一角で数名の妖怪が怯んでいた

 

「ぐああっ!?」

 

一人が切られ断末魔を上げる

 

「この……うぐあっ!?」

 

また一人絶命する

 

「見失ったぞ!?」

 

「どこに行っ……た……」

 

気付く間も無く次々と命を絶ち切られていく

 

「まだだ……こんな程度じゃ俺は姉さんを……」

 

辺りに居た妖怪を余す事なく切り捨てた剣士は悔しそうに呟く

 

「もっと……もっと力を……」

 

焦がす様な欲求が強者を求める

 

「……!」

 

剣士は感じた

 

今まで数多の戦いの中で培ってきた鋭敏な感覚がその方向へ顔を向けさせる

 

(さっき来た強いが不様に垂れ流す素人の気配じゃない……精錬され研ぎ澄まされた刀剣の様な気配……剣士か!!)

 

今、この場所に震えるほど強い気配を持った者が来た事を

 

「姉さん……俺はもっと強くなる……」

 

呪詛の様に呟き、気配の場所へ向かっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

謎の軍勢の居る本拠地の一室、そこには二人の男が居た

 

「兄者……」

 

「ああ……」

 

長身にサングラスを掛けた角刈りの男とウェーブのかかった黒のロングヘアーの小男

 

「驚いたねぇ……まさかここに侵入者が現れるとはねぇ」

 

「いい女だな……」

 

各場所に設置された監視カメラからの映像を見ながら素直に称賛を見せる弟と下衆の顔を見せながら弟の肩に乗った兄

 

いかに武術の達人と言えど気配の無い機械は気付けない

 

「強いと良い……ねぇ」

 

二人は静かに部屋から出ていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪の山

 

「もう!いい加減に邪魔です!」

 

文が鎌鼬を放つ

 

「暗黒衝撃波!!」

 

しかしそれは衝撃波によって打ち消される

 

「退いてください!」

 

「退かせてみろ、この不死将デスカールをな!」

 

文は全身を装具やマントで覆う魔族に今だ足止めを食らっていた

 

「無双風神!!」

 

「フィンガー・フレア・ボムズ!!」

 

文が放った弾幕はまたもデスカールの放つ5つの火球に焼き付くされる

 

「フハハハハ!!ここまで出来る奴とは思わなかった!可愛い顔をしてやるではないか!」

 

「バカにして……!」

 

傲慢な態度に文の怒りが溜まる

 

「本気を出してやりましょう……!」

 

「む?ならば私も本気を出そう!」

 

文が風のマントをポーチから取りだし、デスカールは魔力と暗黒闘気を高める

 

「見るがいい!これが私の……」

 

「横からごめんよ~」

 

その時、ふらふらとやってきた一人の鬼が文とデスカールに割って入った

 

「!!?」

 

「お前いま不死つったね?ちょいと試させておくれよ」

 

そして

 

 

「そぉらああああああああああ!!」

 

 

ぶん殴った

 

 

「バカナァァァァァァァァ!!?」

 

妖術を込めた鬼の圧倒的な膂力から繰り出された拳を受け、デスカールは散った

 

「なんだ嘘かい……しょうもない、まぁいいさね……助けに来たよ」

 

まるで遊んでいるかの様にその鬼は……伊吹萃香は笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬱陶しい奴等だね……」

 

「サンニンアイテハキツイ」

 

3人の幹部級を相手にするにとりとロビン

 

戦況は優勢とは言い難い、致命的なダメージは無いがロビンのボディにかなりの傷が刻まれている、内蔵武器もいくつか壊されており今は刃の欠けたサーベルとモノアイからのレーザーで戦っている

 

「我等……妖魔、百獣、魔影の三将を鬱陶しいと評するなんてね」

 

「だがそう言われても仕方ない強さのキラーマシンだ……驚嘆に値する」

 

「機甲士団の自称勇者が好きそうだな」

 

3人の魔族が言葉を並べる

 

各々、妖魔将メネロ、百獣将ザングレイ、魔影将ダブルドーラ

 

謎の軍勢の将でありガルヴァス直属の部下

 

紅魔館へ向かっているブレーガンと今は来ていない一人を加え六将としてガルヴァスに仕えている

 

かつては各々が軍を率いる軍団長だったのだが訳ありで今は将軍ではなく一人の将として軍に席を置いている

 

「本気出しても良いけどな~んか嫌な感じがするんだよね……同じ科学者みたいなのにパクられそうなんだよな~」

 

ロビンの実力さえ出せば押しきれそうだと思うがキルギルの存在を直感で感じているにとりは二の足を踏んでいる

 

(まぁそれにコイツらを引き付けとけば被害は減らせるしね)

 

またぶつかり合うかと思われたその時、木々を薙ぎ倒しながら巨大なモンスターが現れた

 

「これは……キルギルの言っていた超魔ゾンビ……!」

 

「敵を探して偶々ここに来たのか……!」

 

「これは行幸だな!」

 

強力な加勢に3人の表情が緩む、これで4体1だ、勝つのが目的ではないが少なくとも敗北により時間が稼げないという事態は避けられると安堵したのだ

 

「……気に入らないねその余裕面」

 

ロビンを軽く見るその態度にプライドが傷付いたにとり

 

「後悔させてやろうか……?」

 

その心に火が点く瞬間、何かに反応したロビンがにとりに言った

 

「ニトリ!タイショックシセイ!」

 

「へ……?」

 

 

 

ズドォ!!

 

 

 

空から降ってきた流星がメネロを貫いた

 

「あら……この程度も防げないのね……」

 

明けた砂埃の中に映るのは

 

「ウゥ……ギィャアアアアアアッ!!?」

 

傘に腹を深々と貫かれたメネロ、そして

 

「フンッ……雑魚じゃない」

 

冷めた表情で見下す花の大妖怪、風見幽香

 

「「メネロ!?」」

 

「げぇー!?風見幽香!!?」

 

驚愕するザングレイとダブルドーラとにとり

 

「あら……にとりじゃない」

 

にとりに気付いた幽香はロビンを見る

 

「……まさかこんなのに苦戦してたなんて言わないわよね?」

 

「は?ちげーし!ちょっと遊んでただけだし!本気だせばこんな奴ら秒でぎったんぎたんだし!ね!ロビン!」

 

「ソウダソウダ!ナンナラオマエデタメシテヤロウカー!」

 

「バカッ!余計な事言うなロビン!」

 

慌てて止めるにとりだったがもう遅かった

 

「面白いじゃない……」

 

ズッ……

 

「ガアッ!?アアアアアアアッ!!?」

 

傘を空に向かい斜めに構える幽香、突き刺したままのメネロが苦痛の絶叫をあげようが構いない

 

 

ドウッ!

 

 

撃たれた一瞬の超大レーザーにメネロは跡形も無く消えた

 

「スクラップにしてやるわ……」

 

凶気の笑みで幽香は笑っていた

 

「貴様……!よくもメネロを!!」

 

古くからの仲間を殺されたザングレイが激昂し幽香に叫び、ダブルドーラと共に飛び掛からんと構える

 

「……」

 

冷徹な瞳が二人に向けられる

 

「女々しいのよお前達……」

 

放たれた威圧に思わず動きが止まってしまうザングレイとダブルドーラ、だがそれを責める者は誰も居ないだろう

 

「ちまちまちまちまと……くだらない攻撃ばかりして……」

 

それほどまでに幽香から発せられる恐怖と威圧は凄まじい物であり

 

「本物の闘争というものを教えてやるわ……!」

 

何より歴然たる力の差を感じてしまったから……

 

 

「グオオオッ!!」

 

そこへ割り込んだのは超魔ゾンビ、操縦者も居ず与えられた命令通りに動くある種の機械には幽香の醸し出す物は感じれないから攻撃に出たのだ

 

 

……キンッ!

 

 

幽香が振り向いたと同時に超魔ゾンビは凍りつき

 

 

ズオッ!

 

 

極大のビームが飲み込み消し去った

 

「あたいの方がちょっとだけ早かったわね!」

 

「だな、じゃあ次へ行くか……っておお!にとりに幽香!やってんなぁ!」

 

軽快に頂点のチルノと魔理沙が現れた

 

「超魔ゾンビが……!?」

 

「あれほど容易く……!?」

 

ザングレイとダブルドーラはまた驚愕する、超魔ゾンビを苦も無く仕留める強さ故に

 

「来てんのはお前だけか?」

 

「……萃香と来たわ、途中で妖夢も来たわね」

 

「そっか!」

 

素っ気なく返す幽香に満足した魔理沙はザングレイとダブルドーラを見たあとチルノに目配せする

 

「じゃ頑張れよ!私達は他見てくるぜ!」

 

「負けたら許さないわよ!」

 

すぐに飛んでいってしまった

 

「ちっ……あとでルナをイジメてやるわ」

 

「何でだよ、ルナは関係無いだろ……まぁ私は矛先がルナに行って良かったけど」

 

任された二人は残る二人と対峙する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアアアッ!」

 

呻き声が絶えず鳴るその場所

 

「フッ!セヤッ!」

 

魔獣犇めくその場所で妖夢は戦っていた

 

(強い……一体一体のレベルが高い、エスタークの連れてきた魔界深部の魔物より一段上……数体程度なら問題ありませんがこの数で連携を取るとなると中々……)

 

状況的には押している、押しているが敵は手強く思うように数を減らせていなかった

 

(情報を与えない為に実力を隠すのはわかりますが……今に限っては愚策かもしれません……被害を増やす時間を与えている事になりますから)

 

そう、今は実力を出していないのだ

 

情報を重く見たレミリアからの指示で真の実力は秘蔵している、それが足枷になり今の状況を作っていた

 

(考える時間も惜しい……少々ならば!)

 

決めた妖夢が殺気を放つ

 

「!?……ガアッ!!」

 

身を切り裂く感覚に一瞬止まるも魔獣達は襲いかかってきた

 

「怖れず向かってきたその意気や良し……」

 

楼観剣を持つ腕が蜃気楼の様に揺らめくと魔獣の一体を細切れに切り捨てる

 

「しかし……寄らば切る!」

 

実力の片鱗を見せた妖夢が攻めに出た

 

「グギャアアアアア!!?」

 

瞬く間に数体を倒し更に向かってくる魔獣達に構える

 

 

ザザザザッ……!

 

 

妖夢の耳に魔獣達とは異なる足音が迫ってくるのが聞こえた

 

「……!」

 

自然と体がそちらに向く、剣をより強く握り直すその顔は警戒に満ちている

 

「……」

 

本能がそうさせる

 

 

強者(剣士)が来る……!と……

 

 

そう確信して時間にして僅か数秒

 

「……」

 

長い時間だった

 

剣に命を懸ける妖夢にとっては僅か数秒でも苦痛に感じる程に

 

 

「……」

 

それは剣士も同じだった

 

その急ぎようはまるで待たせている恋人にようやく会えると言わんがごとく駆けていたから

 

 

「……!」

 

「……!」

 

 

魔獣の間を抜けてきた剣士と妖夢の視線が交差する

 

 

「!?」

 

 

その瞬間、剣士が妖夢の視界から消えた

 

 

ギンッ!

 

 

剣のぶつかる音が響く

 

 

妖夢は剣を上段から背に回し剣士の攻撃を防いでいた

 

「……ッ!」

 

「……ッゥ!」

 

尋常ならざる者達の刹那の邂逅と攻防

 

瞬間移動と思わせる閃光のごとき速度で妖夢の背後に回り切りつけた剣士は既に人間を越えている

 

それに反応し防いでみせた妖夢もまた化物、それはすなわち異端の証明

 

(……!)

 

(……!)

 

そしてそれが互いの力量を察する契機にもなった

 

油断は致命、今この間合いにて両者同様に殺せる強さを持っている事を

 

「やるな……」

 

剣士の顔が嬉しく歪む、求めていた自らの糧になる強者、それも剣士に会えたのだから

 

「そちらこそ……」

 

素っ気なく返すが妖夢も口元は笑っていた、幻想郷の危機に不謹慎なのは勿論わかっているが内心嬉しく思っていたのだ、何故なら妖夢も剣士の中で一番強く在りたいと想う求道者だったから

 

「下がれ……俺の獲物だ」

 

距離を取った剣士が魔獣達に命令をくだし下がらせる

 

「俺の名はテリー、青い閃光と呼ばれている……青剣士団の軍団長だ、もっとも団員は俺一人だがな」

 

「私は魂魄妖夢、主、西行寺幽々子様の宝剣にして幻想郷を守る剣」

 

互いに名を言い合うと示し合うように構える

 

 

「行くぞ魂魄妖夢!俺が強くなる糧になれ!」

 

「この心剣断てるというなら……受けてたつ!」

 

 

もはやテリーは時間稼ぎの戦いだという事も忘れ妖夢一人を見据え、妖夢も幻想郷を守る為にと言い訳をしテリーだけを見据える

 

 

ギンッ!ギャギギギ……!

 

 

乾いた唾競り音だけが響く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

「ここは……魔界か?」

 

美鈴と離れ単独行動を取っていたミストは外に出ていた

 

(草木が生えているが私の知る魔界の面影がある……だが妙に明るい……太陽が照らしているからか……)

 

外の大地を見回した後、視線を一点に向けた

 

「やはり……」

 

敵地の上空で本拠地を見下ろしたミストは目を見開いていた

 

(思い出した……昨日紅魔館に潜入しようとした魔族、奴の名は確かブレーガン……ハドラーの影武者、豪魔軍師ガルヴァスの部下だった男……その昔に一度だけ見た覚えがある)

 

「この場所で……」

 

それはミストには馴染み深い場所だった

 

「しかし……これは一体どういう事だ……」

 

だが自身の目で見ても信じられない

 

「かなり傷だらけだ……外部も内部もボロボロ……だが間違いない……」

 

大空を駆ける不死鳥を模した建造物を指してミストは呟いた

 

「これは大魔宮(バーンパレス)だ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一気に詰め込み過ぎたかもしれない……

・今回出てきた名有りキャラの説明

○キルギル
Xのキャラ、ヒョッヒョマンと言われたブライに似ているあの魔導士じいさん、ザボエラ兼科学者枠、帰還装置やらその他諸々の発明はキルギルが開発しました。
ご都合キャラポジですが意外に重要なキャラでもあります。

○六将(デスカール、メネロ、ザングレイ、ダブルドーラ、ブレーガン、べグロム)
劇場版ダイの大冒険に出るガルヴァス配下の六大将軍、この作品ではガルヴァスに帰化しておりそれにともない将軍ではなく将となりガルヴァスの直属の部下として動いている。
いきなり最強のデスカールとメネロが戦死したため残りは四将、まだ出てない最弱のべグロムは今出張中です。
……映画を観れてないので口調は適当です……

○テリー
Ⅵのパーティーキャラ、皆お馴染み引換券!
力を求める孤高の修羅であり剣士枠、もちろん妖夢の相手。
デュラン戦前に戦うテリーから黒衣だけ取ってそのままレベルアップさせた感じ、レベルで言えば70くらい?
ドラクエで剣士を考えた時に一瞬で彼に決まったくらい私の中で剣士はテリーなイメージです。


次はついにラスボスが判明するかもしれません。

次回も頑張ります!

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