東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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第19話 反撃の狼煙を上げろ

 

「バギクロス!」

 

キルギルの放つ風の呪文が正邪を襲う

 

「ドラアアアアッ!」

 

撃ち込んだ正邪の弾幕が呪文を突き抜けキルギルを襲う

 

「ぬぅ!?」

 

避けたキルギルが杖を振り呪文を唱える

 

「メラミ!」

 

中級火炎呪文をお返しとばかりに連射する

 

「どうしたよ!そんなもんかァ!」

 

正邪が新たに撃った弾幕が火球を突き破る

 

「くっ……メラゾーマ!」

 

上級呪文を放ち弾幕を焼き払う

 

「ヌゥグッ!?」

 

焼き切れなかった弾幕が肩に被弾し押さえながら1歩下がる

 

(ちぃ!?メラゾーマクラスでなければ力負けしてしまう……かといってメラゾーマを連射出来る技量は儂には……)

 

正邪との戦力差を考えながら放ったメラゾーマを見ている

 

「こんのぉぉぉ……!」

 

「!?」

 

メラゾーマは止まり、聞こえてきた声に目を見開く

 

(まさか儂のメラゾーマを直接破壊しようとしているのですか!?)

 

そう思った次の瞬間

 

「ラアアアアッ!!」

 

メラゾーマは破壊された

 

「あちち……どうだジジィ!」

 

火の粉を払いながら正邪が姿を見せる

 

「儂のメラゾーマを正面から……やりますね」

 

「ああん?こんなのどうってことねぇよ、こっちにはもっと凄いメラゾーマやら炎使う奴が居るんだからな、大魔王とか皇帝不死鳥とかな……それに比べたら……なぁ?」

 

「ヒョッ……確かにそうですね、ソル様と同じ存在の者を知っていれば儂程度の火炎は大した事はないでしょうね」

 

「本音を言ったらそうでもないんだなぁ、まだまだあのレベルに及ばない私からしたらあんたの呪文も十分脅威なんだなこれが」

 

「誉め言葉と受け取っておきます……」

 

構えを取る二人

 

(やはり厳しいですね……)

 

内心キルギルは苦しかった

 

(基礎能力が儂より二段は上……儂の領域の中距離で劣勢はいかんともしがたい……やめたとて肉弾戦で勝てる筈も無し、ゴリウスを呼ぶにしてもここに来るのに間に合うわけが無い……)

 

能力抜きの正邪の純粋な力が想定外過ぎたのだ

 

傑作であり自身より強い超魔ゴリウスと比べると攻、防は劣るだろうが総合ではほぼ互角と見ている、能力も加味すれば一方的に勝てるくらいだと

 

(ツケですかねぇ……ソル様に仕えてある程度まで強くなった事に満足してから研究に没頭して鍛えるなんてしてこなかった事の……)

 

後悔するもそこまで悲観はしていない

 

(いえ……そうじゃありませんね、儂の研究は魔王軍やソル様の役に立てていた、そこを疑ってはいけません……これは儂が理念に添わず楽に勝とうと謀略を巡らせ続けた曰くゲスの所業の果て……自業自得ですか……)

 

もう覚悟していたから

 

「鬼人正邪……」

 

ずっと魔王軍らしくなかったのだから……

 

「最後の勝負をしましょう」

 

ならばせめて最後くらいは魔王軍らしく理念に添ってみようと思ったのだ

 

「受けてくれますかな?」

 

今更叶うならば……

 

「ハッ……」

 

それを聞いて正邪は笑う

 

「ゲスジジィが最後の最後に漢のツラになりやがって……!面白ぇ!おいジジィ!私が勝つけど名前だけ聞いといてやるよ」

 

「……キルギルと言います」

 

「キルギルね……おう!じゃあ受けてやるよキルギル!……来なッ!」

 

「では……!!」

 

キルギルの魔力が杖に凝縮されていく

 

「ぬぬぬ……!?」

 

決死の形相で魔力を集中させるキルギルに正邪も決して油断出来ないと自らに言い聞かせ同じく妖力を高め大玉の弾に変えていく

 

「へっ……最初に撃つのがまさかお前みたいなジジィになるとは思わなかったよ、最初はあいつらって決めてたんだけどな……」

 

115年

 

バーンに助けられ、バーンが消えた日からずっと鍛え続けた幻想郷で底辺を争う弱かった力

 

今や幻想郷で押しも押されぬ頂点として君臨する7人を越えようと努力した証

 

 

「へへっ……」

 

大変だった……

 

元から力が無かった正邪には才能も無かった

 

誰より努力したつもりだったが頂点達に比べればそれでも上がる力は僅かな物、差は広がるばかりだった

 

それでも正邪は諦めなかった

 

いつか必ずこの力の序列をひっくり返す……そう決めた正邪はずっと続けた

 

頂点達が更に力を着けても、他の誰かに後ろから追い抜かれようともただひたすらに……

 

(なぁバーン……)

 

気になどならなかった

 

何故なら自分がそう在り続ける事で頑張る機会と糧をくれた人への報いる道だと信じていたから

 

(今度も……役に立って見せるよ……!)

 

今でもたまに会いに来てくれて、幻想郷の皆にバレない様にこっそり指導してくれる……最高の恩人の為に……

 

 

「バギムーチョ!!」

 

 

正邪が培った115年

 

 

「行くぞオラァァァァァァァァ!!」

 

 

魔導士の放った荒れ狂う烈風が竜巻と成す極大真空呪文に向かって放たれた

 

 

「逆符「リベリオンシグナル」!!」

 

 

反逆の狼煙と名付けられた正邪が出せる最大最高の特大弾

 

特別な効果など無い、ただ今まで築いた力をそのまま形にしたゲスとは正反対の小細工すら見当たらない正々堂々とした純粋な力の塊

 

それが竜巻と衝突する

 

「ぬおおおおおおッ!!」

 

「ドラアアアアアッ!!」

 

上回らんと互いに更に力を込める

 

「ラアァーーーッ!!」

 

全霊を懸けたこの勝負

 

それはすぐに着いた

 

「ぬぅ!?くくっ……!?」

 

キルギルの竜巻が押されていく

 

「ドリャアッ!!」

 

 

バシュッ……!

 

 

正邪の一押しと同時に竜巻は打ち消された

 

「……ヒョヒョッ!」

 

迫る弾を見ながらキルギルは笑った

 

「予想通りです」

 

そして直撃した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「儂の負けです……鬼人正邪……」

 

倒れるキルギルは言う

 

「そうだね……私の勝ちだ」

 

正邪も答える

 

「最後の最後に……魔王軍らしく戦えて良かった……これならばソル様も司令殿にも怒られずに済むでしょう」

 

「死ぬのに気にしなくて良いだろ別にさ……」

 

「そうかもしれませんね、ですが……一息に死ねなかった儂にはもうそれくらいしか考えられないのですよ」

 

「そうかよ……」

 

キルギルは徐々に弱っていく

 

「なぁおい……勝ったんだから死ぬ前に私の言う事聞けよ」

 

「……なんでしょう?」

 

「お前の権限で動かせる奴等を止めろ」

 

「……」

 

キルギルは考える

 

確かにやろうと思えば出来る、自分の部下や支配下にあるゴリウスならば止める事は可能だった

 

「嫌ですね」

 

キルギルは断り正邪に目を向ける

 

「そんな事は絶対にしませんよ……悔しい……でしょう……?」

 

悪戯をする子どもの様な、でもその中に意地が見える、そんな……

 

「ヒョッ……ヒョッ……さよう……なら……」

 

そんな笑顔でキルギルは息を引き取った

 

「……ちっ……」

 

舌打ちした正邪は消えていくキルギルの遺体を背に飛び上がる

 

「ゲスジジィめ……」

 

仲間を想う気持ちにほんの少しだけ微笑ましく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて早く戻らないと……」

 

龍神に危険は片付けたと言う間も無く正邪は激戦繰り広げる戦場へ急ぐ

 

「ありゃあ……」

 

戻る途中、戦場を一望出来る場所で大きな戦闘のいくつかを遠目に目撃する

 

「無縁塚のあのデカイ力場は八坂の神様だな、あっちは風だ……文屋か?そんで目立たないけどトチ狂った様な魔力と2つのデカイ魔力……ともう1つか、がぶつかってるとこもある……くそっ……大丈夫なのかよ?」

 

元居た幽々子の居る場所へ戻ろうとした正邪だったが状況が変わり過ぎていると感じ早目に指示を受けようと紫に呼び掛けるが応答しない

 

「なんかあったな……まぁいい、白玉楼の亡霊姫に聞くさ!」

 

更に速度を上げ急ぐ

 

「私が勝ったんだ……お前等負けたら承知しねぇからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピシュン

 

 

風切り音が鳴る

 

 

「なんの……!」

 

 

ピシュン

 

 

「……!」

 

 

ピシュン

 

 

「まだまだ……!」

 

 

ピシュンピシュン

 

 

「……!」

 

 

ピシュンピシュンピシュン……

 

 

「今です!」

 

 

文の放った全方位の風衝を終いに後ろ取り合戦は終わりを告げる

 

「……!?」

 

風衝に後退する陸戦騎だが押されただけでダメージは無い

 

「てぇぇぇぇいッ!」

 

僅かに動きが止まった隙を見逃さず文が特大の鎌鼬を連続で放った

 

「……!」

 

初撃を槍で切り払った陸戦騎はそのままの勢いで槍を右手で高速回転させながら突進する

 

「曲芸なんかして何を……ってまさか!?」

 

撃つのを止め急ぎ風を集める

 

 

カッ……!

 

 

衝撃を走らせる一閃が鎌鼬を両断した

 

「あやや……あ、危なかった……」

 

ほんの寸でで避けた文はさっきまで自分が居た位置の1歩先に居る陸戦騎に恐怖していた

 

(あと一瞬でも気付くのが遅れていたら真っ二つ……しかしなんて攻撃力の高さ……まともにやりあっては勝ち目がありません……)

 

避ける間際に掠り切られていた左肩の服を押さえて勝率の低さを感じていた

 

「……ッ!」

 

残像が見える程の高速移動

 

「……」

 

応じた陸戦騎も残像を残しながらのスピード対決

 

「く……うぅ……!」

 

残った像がどんな攻防をしていたかの一部始終を写しながらの戦いの中で文だけが次第に傷付いていた

 

(やはりダメです……スピードは互角でも攻撃力の差で詰められてしまう……)

 

鎌鼬を突き抜けた槍が頬を掠める

 

相殺ならばまだ勝機は有った、持久戦で隙を窺うなり戦い様はあったが攻撃力に差が有り過ぎた事で陸戦騎の攻撃は文の攻撃を打ち消した上で更に迫る

 

速さが互角な以上この差は毒の様に文の体を蝕み刻んでいった

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

距離を取った文が肩で息をしている

 

全て掠り傷な為ダメージ自体は気にする程でも無いが自分の攻撃は効かず相手の攻撃は受け続けるというストレスによってかなりの負担を受けていた

 

「普通に立っちゃってもぅ……嫌味ですか……」

 

逆に無傷な陸戦騎は涼しく立っている、文の動きに合わせていつでも動ける様な余裕すら持って

 

「狡いですよそんな武器使うなんて……私の団扇は風を起こすだけなのに……」

 

文句を呟くが陸戦騎は何も反応を返さない

 

「ふん……別に良いですよ、そっちがそのつもりなら私にも考えがあります」

 

文は肩から掛けていたポーチの蓋を開ける

 

「使うつもりは無かったですけど……本当は私自身の速さだけで勝ちたかったところですがこのままでは串刺しにされて焼鳥にされてしまいそうですしね……まっ、速さで負けてなかっただけ良しとしましょう」

 

スルスルと1枚の布が引っ張られながら出てくる

 

「あー……使いたくないなぁ……着替えなんて持ってる訳にはいかないし……でも焼鳥は嫌ですし……やだなもぅ……」

 

不満を言いながらそれはポーチから取り出された

 

「じゃん!風のマント!」

 

陸戦騎に見せびらかす様に掲げる

 

文が取り出したのはバーンから貰った道具である風のマント

 

「装備!」

 

それを羽織った

 

「貴方の負けが決まりました」

 

表情が変わり断言される

 

「私にこれを羽織らせた時点で貴方の勝ち目は消えてしまったって事ですよ」

 

答えない陸戦騎に文は更に告げ微かに笑った

 

「もうさっきまでの私じゃありません」

 

それを証明したいかの様に文は陸戦騎目掛け1発鎌鼬を放った

 

「……!?」

 

さっきまでと同じ様に切り払おうとした陸戦騎の槍は鎌鼬を両断出来ず相殺に留まった

 

「理解出来たみたいですね、そうです……私の風の力を引き上げてくれるんですよ」

 

風のマントには効果が2つある

 

1つは所有者である文の得意属性である風属性の力の高める効果

 

「いやぁ流石はバーンさんの道具です、あれだけ有った攻撃力差を埋めてしまうとは……」

 

文自身は修行をしていないので力自体は大した事は無い、別段文が凄い訳ではないのだ

 

真に凄いのはそれを陸戦騎と並ぶ一線級まで高める強化倍率、バーンの魔力が込められた風のマントはもはや神器クラスと遜色がないレベルの代物なのだ

 

「まぁこれは私にとってはオマケですけどね……」

 

文の周囲に風が急速に集まってくる、文を台風の目にした様に尋常ではない風量が集まり嵐と間違う程の突風を起こしている

 

「これが私の最高速です」

 

告げた瞬間、文の姿が消えた

 

「!!?」

 

同時に陸戦騎がふらついた

 

キュン!

 

「どうですか?」

 

さっきまで居た場所に文は音より早く立っていた

 

「初めてでしょう?音より速い攻撃を受けるのは……」

 

そう、文は陸戦騎に一撃を与えて戻った時、音より先に姿を見せていた

 

つまり、文は音を置き去りにする程の速さで攻撃したのだ

 

「ふっふっふ!」

 

これが風のマントの2つ目の効果

 

飛ぶ力を助力し更なる速さを引き出す事が出来るのだ

 

本来は先の効果と合わせて使うのが一番有効的に使えるのだが文は風のマントを使う際はこちらの効果を重視している

 

 

 

「!!」

 

陸戦騎が全速を持った攻撃を繰り出す

 

……キュン

 

「遅いですねぇ」

 

陸戦騎の背後に文は居た

 

「!!?」

 

風のマントを装備した文の最高速は陸戦騎の全速を遥か凌駕している

 

「ではそろそろ御仕舞いにしましょう」

 

切りつけてきた陸戦騎の攻撃を軽く避け距離を取った文の周囲を再び嵐が舞う

 

「貴方は強敵でした……私にあまり使いたくなかった風のマントを使わせるくらいに……」

 

最終攻撃の準備段階、文は次で決める気だ

 

「ふふふ!一言だけ言わせてください、道具を使っておいて言うのもなんですが……まぁそちらも槍を使ってますしおあいこと言う事で……」

 

嵐が更に激しさを増す、その激しさたるや陸戦騎が踏ん張る事に精一杯な程

 

「貴方に足りないもの、それは情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ……」

 

文は言う

 

「そしてなによりもッ!」

 

嵐が突然ピタリと止み一瞬の静寂が訪れた

 

 

「速さが足りません!!」

 

 

キュン!

 

 

文が陸戦騎の視界から消えたと同時に打ち上げられた

 

キュンキュンキュン!

 

音だけが響き見えない攻撃が打ちのめす、視認出来ない速さに陸戦騎は防御も出来ず成す術が無い

 

「~~~~ッ!?」

 

歯を食い縛りながら音越えの攻撃を続ける文、その様はまるで命を削っている様……

 

「!!?」

 

陸戦騎の体が崩れ始めた、外側から徐々に砕けて消えていく

 

「ッ……ハアアアアアアアッ!!」

 

吼えた文は1歩だけ、1歩だけ限界速度を越えた

 

 

ギャキキキキキキ……!!

 

 

速過ぎて音の間隔すら無くなる程の連続攻撃、その速さまさに閃光

 

「御別れです……!!」

 

絶える間も無い光速攻撃、自分でもいったい何百の体当たりをしたかわからない程の天の狗が誇る速攻の果て

 

 

「神風「志那都比古(シナツヒコ)の舞」!!」

 

 

最後の一閃が陸戦騎を粉々に突き抜けた

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……」

 

降り立った文は膝に手を着きゆっくり息を整える

 

「勝てました……」

 

疲労しているが勝利に頬が緩む

 

「アイタッ!?あややっ!?イタタタタタ!?」

 

直後に酷い痛みが全身から染み出てくる

 

「やっぱり……こうなっちゃいます……よね……」

 

文の体はかなり痛んでいた

 

「しょうがないですけどねぇ……」

 

風のマントがなければ勝てなかった、しかしあの速度は自分の力ではなく外付けで無理矢理底上げしたもの

 

要は限界を風のマントで無理矢理突破し過ぎた事で体が耐えきれなかったのだ

 

「夢現異変の時はこうならなかったのに……私の最高速が上がったからですかね……やはり速さだけじゃなくて体も鍛えるべきですねぇ……」

 

これが頑丈なフランならば耐えられた、フランだけでなくレミリアやバーン等も余裕だろう、だが体の丈夫さでは一般妖怪より少し上程度の文にはとてもではないが耐え難い負荷、諸刃の剣というわけである

 

「それに……」

 

それよりも文には嫌な事があった、ダメージよりも嫌な事、使うのを躊躇う一番の理由、それは……

 

「服がぁ……」

 

服がボロボロになってしまう事

 

特別な素材でもなかった文の服は凄まじい負荷によって総面積の6割が消えてしまっていた

 

「これじゃ変態さんじゃないですか……」

 

何も知らない人から見れば露出狂である

 

「あやぁ……でも皆戦ってるのに私だけ着替えに行くわけにもいかないし……」

 

浮かび上がった文は近くの敵目掛け飛んでいく

 

「えーい!こうなったらやけくそです!ウザく淫らな……じゃなくて、清く正しい射命丸が相手ですよー!」

 

陸戦騎に勝利した文はまた戦いの渦中へ突撃して行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そーら!」

 

おもむろに1発の弾を撃ち妖怪に当てる

 

「ッ……何がしたいんだお前は!」

 

怒った妖怪が攻撃を仕掛けるがヒラリと避けてTシャツを着た青い髪の神はまるでからかう様に威力が殆ど無い弾幕をまた当てて笑っている

 

「何って~?暇潰し~!純狐は八坂と遊んでるしゼッペルもヴェルザーも誰かと遊んでるし……なんか妖怪の王様も居るみたいだけど枷が付いてるみたいで興味出ないんだ~だから今のところやる事無いから付き合ってよ~」

 

陽気に笑いながら嫌がらせを続ける神

 

 

ガシン!

 

 

神の両手首に光輪が付けられた

 

「おお?拘束されちゃったよ……閻魔の仕業か」

 

犯人を知った神はすぐさま地獄へ向かって念を飛ばす

 

「まさかこの私に間違えましたが通じると思ってないよね?なぁヤマザナドゥ……?」

 

へカーティアを拘束したのは映姫だった

 

『……当然です、冗談で貴方様に無礼をする気などありません、止める為に拘束したのです……地獄の神へカーティア様』

 

これは映姫の策

 

地獄の神であり自身より遥かに格上であるへカーティアの力を重く見ていた映姫は対抗する為に準備していた

 

地獄にて地上の戦いを見てへカーティアが動き出したのを確認すると予め協力を要請していた3人に連絡、そして拘束

 

『こうでもしなければ貴方様を止めれるのは大魔王か頂点くらいですので……』

 

そうしなければならない程にへカーティアの力を映姫は危険視している、純狐以外に一番知っているのだから

 

「あっそ~」

 

映姫の答えにへカーティアは陽気を崩さず続ける

 

「別にそれはどうでもいいけどさ、遊んでただけだよ?誰も傷つけてないのに早計過ぎるよね?」

 

『今は……と言う注釈が付きますねそれは、元来気分屋の貴方様がたまたまそうしていただけに過ぎません、全盛の八坂神奈子に近い神力を持つ貴方様がその気になれば容易く幻想郷を破滅に瀕する事が出来るのですから』

 

一瞬、映姫は口をつぐむ

 

『……貴方様は幻想郷の敵なのでしょう……?』

 

それを聞いてニヤリと悪どい笑みを見せたへカーティア

 

「まぁそうだね……それで?()()()()()集められない様に拘束して全力を封じたのはいいけどそれからどうするの?あんたが遊んでくれるの?」

 

『……まさか』

 

へカーティアに見えないが映姫は微笑んだ

 

『貴方様へのとっておきの相手を用意しておりますとも』

 

答えたと同時にへカーティアの前に一人の少女が降り立った

 

「久し振りね」

 

祓い棒を構えた紅白の巫女、連絡を受けた内の一人

 

「前に弾幕ごっこした博麗の巫女……」

 

「今は隠居中よ」

 

霊夢が立っていた

 

 

 

 

 

 

 

「貴方の相手は私です!御覚悟を!」

 

「知らない奴だね……博麗の巫女?」

 

「不肖ながら当代の巫女をやらせて貰っています博麗靈夢です」

 

別の離れた場所では黄髪のへカーティアと靈夢

 

 

 

 

 

 

 

 

「やいやいやーい!ここで会ったが115年目!今度は退治してやりますからね変なTシャツヤロー!」

 

「……八坂のとこの腐った風祝じゃん」

 

「失礼な!腐って……ないとは言えませんね……」

 

赤髪のへカーティアと早苗

 

 

 

 

 

 

「へぇ……3人の巫女が相手してくれるんだ」

 

状況を知った青のへカーティアは意気揚々と霊夢へ向く

 

「面白いイベントだ!気に入ったよヤマザナドゥ!」

 

神気を立ち上らせて3人のへカーティアは不敵に笑う

 

 

「「「神遊びといこう!!」」」

 

 

幻想郷の未来を賭けた遊戯が始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無縁塚

 

「純狐!!」

 

「八坂ァッ!!」

 

ここでも戦いは続いていた

 

互いの神気がぶつかり合い、魔族はおろか妖怪すら安易に触れればたちまち滅してしまう神々の戦場

 

古き神々が争う古の戦場となっていた

 

「アアアアアッ!!」

 

一心不乱に神の力を弾幕に変えて放つ純狐

 

「……オオッ!!」

 

結界を作り防ぐ神奈子

 

「ムンッ!」

 

御柱が純狐に迫る

 

「その程度がァ!」

 

高き神力で粉砕する

 

「アハハ!やるな八坂!流石は独立不撓と呼ばれし我等神々の同胞!全盛の頃から落ちたとはいえ腐っても鯛と言うわけだ!」

 

夥しい量の弾幕を撃ちながら純狐は狂喜の笑みを見せる

 

「いい加減にしろ!!」

 

弾幕を打ち払った神奈子が怒鳴る

 

「純狐!何故月を売った!?復讐は何も生まぬというのに!!」

 

聞いた純狐の顔が豹変する

 

「復讐は何も生まないだと……?」

 

冷たくも恐ろしくある明らかな侮蔑の瞳

 

「知った様な口を利くなよ八坂ァァァ!!」

 

神奈子の怒りを凌駕する怒声をぶつける

 

「生むさ!!復讐者の心の満足を!心の安らぎを!人の考えた低俗な倫理観でものを抜かすなよ八坂!何もしない方が生まないだろうよ!違うか!?」

 

「くっ……!?」

 

抑えられない生の感情が神奈子を後ずさらせる

 

「私はずっと復讐してやりたかったんだ!私の愛する夫を奪った嫦娥に!奴の子である月の民を蹂躙して同じ目に合わせてやりたかった!大事なものを奪われる屈辱を味合わせてやりたかった!!」

 

「……その為だけにソルに寝返り幻想郷の敵になったのか」

 

「そうさ……あのままではいつまで経っても復讐は成せなかったから……いつの間にか神を越える力をつけた者達が現れ、更には幻想に消えた筈の大魔王の復活……時が経てば経つ程復讐は困難なものになっていた……気にくわない手段だったけどもう形振り構ってはいられなかった……それに……!」

 

感情を吐き出す純狐の体が震える

 

「認めたくなかった……お前達に触れ、知らない内に穏やかになっていく自分を!時が経つにつれ徐々に形骸化していくこの恨みを!不倶戴天の敵と断じた嫦娥への復讐心が風化するのを受け入れ始めた自分を!」

 

その顔は怒りに満ちていたがどこか……

 

「だから!例え神の魂を売ってソルの配下になろうとも私は復讐をしなければならなかった!私自身の為に!!」

 

「……」

 

神奈子は今の純狐に見覚え……いや、覚えが有った

 

「……お陰で……今はいい気分だよ……」

 

不退の覚悟を纏う怨神の微笑は言葉とは裏腹にとても苦しそうに見えた

 

それはかつて神奈子がバーンを甦らせた時に見せた後悔していた顔

 

「……本当にそうか?純狐……」

 

見透かす様に神奈子も微笑する

 

 

 

神でありながら恨みに生きる不退の怨神、それを止めるは同じく神である幻想の軍神

 

純粋なる恨みの行き着く場所

 

心の行方は果たして何処へ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




相変わらず進みません。
実力の低い順に終わらせて行ってます、神奈子はそうでもないですが……ヴェルザーとか上位勢はもう少しお待ちください。

・現在の主な犠牲者
幻想郷 永琳、咲夜、白蓮、チルノ
魔王軍 ザングレイ、ダブルドーラ、キルギル、大魔王の影3体(親衛騎団・大魔道士、兵士、陸戦騎)全滅

神奈子と純狐のやり取りにはあるマンガの有名なシーンを元に書きました、わかってくれるだろうか……

次回も頑張ります!

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