東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

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第17話 魔妖輪舞曲

 

ソルパレス

 

「……」

 

それの存在を確認したソルの表情は先程まであった余裕の色ではなかった、酒を飲むのも忘れ緊迫した目で映像を睨む

 

(あれは……凄まじき竜の力を感じる……ヴェルザーに匹敵、もしくはそれ以上の……)

 

映るそれから感じるものがソルを一瞬迷わせ、考えらせる

 

(ソルパレスの入口を守る者、平行のハドラー……それによく見ればロン・ベルクの姿も見える……全てとは思ってはいなかったがよもやこれ程の者を隠し持っていたとは……誤算だな、お互い様だがこれはもう一人居るあの妖怪の反応を見る限り幻想郷も知らぬ事……あちらの余の仕業か)

 

余裕の顔に戻りソルはまた微笑む

 

(多面打ちと言う事か……よかろう、どこまで余に食い下がるか見物……と言いたいがそれでもやはり駒が足りぬなぁ?まだ隠し玉があるのか?既に出していてこれなのか?ククッ……どうなのだ?)

 

愉快に笑う

 

(地上に居る軍団長の殆どが抑えられているが逆にそれは数に対応出来ない事を意味する……いくら呪法で対等近くになったとは言え数の差はいかんともし難かろう、そして何よりゼッペルを放置していて良いのか?奴だけで雑兵を全滅させるのは容易いぞ?ならばどうする?自ら出てくるか?何も言えんのかもう一人の余よ……?)

 

笑いながら映像をパレス内に切り換える

 

「……何?」

 

ソルの笑みは消えた

 

(先頭を進んでいた二人が消えている……ソルパレス内で別行動をしている訳でもない……)

 

戦場の全てを一度に見れる訳でも知れる訳でもないソルは他を見ている内に魔理沙とパチュリーがパレスから消えていた事を見逃していた

 

(いつの間に……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無縁塚

 

「メラ!……を弾幕に!」

 

大魔道士の影と戦うレティは右手で火球を発生させ左手で弾幕の式を組み入れ大量の火炎弾幕を形成する

 

「メラストーム!!」

 

全ての火球を一斉に放った

 

「……!」

 

パキィン……!

 

大魔道士の放った氷の魔法が弾幕を全て凍らせる

 

「……!!」

 

杖からメラゾーマを放つ

 

「それくらいで!」

 

妖力を高め冷気を放ち火球をみるみる凍らせレティの目の前で氷の球となって地に落ち砕ける

 

「……!!」

 

互いに魔法の乱射戦

 

激しい応酬を繰り広げながら天の弟子と記憶の大魔道士は進退を争う

 

「右手に寒気!左手にバギクロス!」

 

右手に能力の球、左手に魔法の球が出現しレティはその二つを掌を合わせ合体させる

 

「なんちゃって合体魔法!氷刃嵐舞「マヒアロス」!!」

 

烈風に舞った巨大な氷柱が大魔道士を襲う

 

「これなら……どうかしら!?」

 

正確に言えばこれは魔の深淵である合体魔法ではない、合体魔法とはその名の通り異なる属性、もしくは同じ魔法同士を合体させ同時に放つより威力を飛躍的に高めた物を言うのだ

 

だがレティの行ったのは能力である寒気と魔法との合体、似て非なるものだから特技に分類される、パチュリーに師事するレティのこだわりから魔法と叫ばれるのだ、故になんちゃって

 

しかし、なんちゃってとは言うが実は能力と魔法の合体など誰にも出来ない事、そう、数多有る世界においても誰もそんな事は出来ないのだ、師であるパチュリーでさえも……

 

師と並びたいが故の研鑽は魔法使いと言う可能性に触れ己の新たな力として顕現していた

 

「……!」

 

大魔道士がメラゾーマを放つも強力な冷気と魔力を帯びた氷柱に突き破られてしまう

 

「……!!」

 

迫る氷柱に大魔道士は両の指を突き入れる

 

ドシュッ……

 

だが氷柱に何も起こる事はなく、大魔道士の指を弾いて腹を突き抜けて行った

 

「……!!?」

 

「……?」

 

苦しむ様子を見せる大魔道士をレティは訝しむ目で見ている

 

(今やろうとしていたのは先生が出来る魔力分解……?私の合体魔法には能力を使う際の妖力が合成されてるから分解出来るのは魔力だけで失敗に終わる筈……でも今のは失敗したんじゃなくて……出来なかった)

 

大魔道士が魔力分解をしようとする形をしただけで中身が無かった事に気付いたのだ

 

(どういう事?実は出来る……!なんて演技にしてはリスクを負い過ぎてるし……)

 

罠の可能性を考えていたレティだったがそれは大ダメージを負った大魔道士の次の行動で瞬時に霧散した

 

「……!!」

 

杖を消した大魔道士の両手に異なる属性の魔力球が生成される

 

「……ッ!?これ……は……」

 

メラ系とヒャド系、+と-の魔力と知ったレティはある深淵の呪文を思い浮かべて警戒したのだ

 

(まさか……メドローアを……!?)

 

何物も関係無い消滅の呪文、それを撃たれるのではと予感したレティの動悸は上がり、同時に集中力が異常なまでに高まっていく

 

「では……私も……!!」

 

大魔道士と同じく+と-の球を作りだす、一見して同じだが-の方はレティの妖力から作った能力球

 

その二つを拳を合わせ合体ではなく、融合させていく

 

「ッッ……!!?」

 

慎重に、それでいて早く融合を進める

 

しかしまだレティにこの技術は早過ぎた

 

内容こそ違いはあるが元から知識と経験が有ったパチュリーですら実戦で使えるレベルになるまで長い時を費やした深淵の魔法、魔法の魔も知らずにたった25年前にゼロから魔法使いを始めたレティにはまだまだ不可能な事だった

 

その早さは残念ながら完全に会得し動きながらでも瞬時に作成出来るパチュリーに比べ神経が擦り切れる程に集中して急いでも不動で1分掛かる程、まだまだ研鑽が足りないのだ

 

(くっ……やっぱりまだ時間がかかっちゃう……先に撃たれる前に諦めて……)

 

中断すべきかを大魔道士の様子を見て判断しようとしたレティだったが

 

「……?」

 

妙な光景を見て一瞬呆気に取られる

 

(あれ……は……何をしているの……?)

 

大魔道士は魔法球同士を押し付ける動作をしていた

 

融合させようとしている様に見えるがただ魔法球をくっつけるだけで融合させようとする気は微塵にも感じられない、それどころか遊んでいる様にすら見える

 

(いったい何がしたいの……?でも好都合……撃つ気が無いなら……!)

 

謎の行動を繰り返す内に自らの作業に集中し、それは完成された

 

「よし……出来た……!」

 

一つになった魔力球を引き絞り今だ同じことをしている大魔道士に狙いを付ける

 

 

「消符「炎魔氷妖の矢」!!」

 

 

それはメドローア

 

効果的には同じだがこのメドローアは能力が入っている為パチュリーの使う本来の物とは違いマホカンタに反射されない性質を持っている、更には合体魔法と同じく分解も不可能、厳密には出来るが炎の魔力だけの分解になるので能力の分が残り消滅にはならず氷の分だけ直撃する初見殺しすら有る

 

魔力と妖力の融和、レティが休む事無く磨いた努力の結晶、その巨大な消滅の力が矢を象りながら大魔道士に迫る

 

「!!」

 

大魔道士は一段と前に両手を突き出した

 

 

カッ……!

 

 

消滅球がその場所を通り過ぎ後続の魔物を巻き込みながら空へ消えて行く

 

「……」

 

相手が消えたその場所に居るレティ、本来なら勝利で喜んでいる筈だがその顔は疑問で溢れている表情をしていた

 

(私のメドローアが当たる直前、あいつは撃った……やっぱりメドローアが出来るんだと思ったけどアレはメドローアじゃなかった……ただメラゾーマとマヒャドを同時に撃っただけ……)

 

大魔道士が最後に撃ったのはただの魔法の同時撃ち、メラゾーマとマヒャドなのだから威力は有るのは確かだが対するはメドローア、消滅するのは目に見えている

 

(さっきの変な行動といいなんだったのかしら……)

 

勝ちには違いないが釈然としないレティは首を傾げるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは驚きだな……」

 

ソルが感心する声をあげた

 

(随分と拙いがメドローアを使える者が居たとは驚きだ……もう一人の余から存在は知らされていたとしてもそう出来るものでは無い、事実、余には出来ぬ……あの影では撃たせぬ以外に勝てる道理は無い)

 

行方不明の二人を探している内に偶然勝負を見つけたソルは決着まで見届けていた

 

(あの影は余の記憶から作った大魔道士の影だが親衛騎団唯一の失敗作でもある……故に弱い)

 

あの大魔道士を象った大魔王の影は致命的な欠陥が有った

 

ソルの記憶から本当の大魔道士の模倣として作られたあの影には出来る事と出来ない事が有ったのだ

 

それは魔法技術、魔力を分解したり融合する技術をソル自身が使えないが為に記憶から作られた影にもそれが反映され使えないのだ、だから分解しようとして失敗し融合させようとする形だけしか出来なかったのだ

 

(親衛騎団の運用を考えていなかったのと道化もまた一興と手を加えなかったのが敗因ではあるが……まぁいい、所詮は親衛騎団の中で最弱の失敗作だ、消えたところで構いはせん)

 

「それよりも……」

 

レティを見ながらソルは妖しく微笑む

 

「良いのか?その気は無かったのは承知だが獣を刺激してしまっているぞ……?」

 

聞こえる筈のない忠告を呟く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「考えても仕方ないか……早く戻らなきゃ!」

 

レティが戦線に戻ろうと一歩踏み出す

 

 

ズンッ……!!

 

 

同時に目の前に何かが飛び降りて来た

 

 

「ギアアアアアアアアアッ!!」

 

 

それはゼッペル

 

レティが放ったメドローアの存在を獣の本能が危険だと直感し排除すべく現れたのだ

 

 

「あ……」

 

 

 ̄死_

 

 

レティはゼッペルを見た瞬間そう己の未来を予感した

 

突然の襲来に面食らったのも有るがゼッペルから感じた常軌を逸した邪悪な力が何よりも死の未来を感じさせ突進してくるゼッペルを無防備に眺めているだけしか出来なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズオッ!!

 

 

 

「させっかよぉ!!」

 

 

 

横から撃たれたレーザーがゼッペルを飲み込みバランスを崩したゼッペルが転がる様にレティを避けレーザーから出てくる

 

「魔理……沙……?」

 

レーザーが来た方向に顔を向けた瞬間、背後に降り立ったのは紫の魔女

 

 

カッ……!

 

 

既に作っていたメドローアをゼッペル目掛け放つ

 

「!!?……ギィィッ!!」

 

ゼッペルを軽く飲み込むそれを大地が割れる程の力で回避し大きく距離を取ったゼッペルは新たに現れた二人を睨む

 

「ちっ……さすが獣、危機には敏いわね」

 

忌々しく舌を打つ紫の魔女

 

「先生!?月に行ってるんじゃ!?」

 

割って入り助けに来たのはパチュリーと魔理沙

 

「危ないところだったわねレティ……間に合って良かった」

 

微笑むパチュリーの横に魔理沙が並ぶ

 

「理由はアレだぜ、あんな化物野放しにしたら勝てるもんも勝てなくなっちまうからな」

 

「それは見てわかります……でも月に居てどうやって……」

 

「それは私達が地上の状況を知る魔術を使っていたからよ、状況と言っても妙な魔力や妖力を知る程度の簡単なのだけどね」

 

「それがバーン並の異常な魔力を感知したから飛んで来たんだぜ、下手しなくてもソルを倒す前に全滅するレベルだったからな、感謝しろよレティ!お陰で死なずに済んだんだからよ!」

 

普通に話している二人だがその顔は全く笑っていなかった、油断無く威嚇しているゼッペルを睨み見据えている事にそれだけの相手なのだとレティは固唾を飲む

 

「しっかし……直接見て確信したけどこれってアレだよなパチュリー?」

 

「……間違いないと思うわ」

 

「やっぱりな……」

 

二人の魔力が高まっていく

 

「ギアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

呼応したゼッペルが凄まじい咆哮を叫ぶ

 

「いくぜパチュリー!」

 

「そういえば私達が組んで戦うのって初めてね……二天の魔女の実力、獣に理解出来るか試してみるとしましょう」

 

戻りし二天の魔女は魔獣の王へ挑む

 

 

         ぜ!!

   やってやる

         わ!!

           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……空間使いの仕業か」

 

映像に映る二人を見てソルは呟いた

 

(何らかの方法でゼッペルの力を感じ地上に戻っていたか……小賢しい真似をする)

 

思わぬ邪魔に思案する

 

襲いかかったゼッペルは確実にレティの命を刈り取っていた

 

だが阻止された

 

それもついさっきまでパレス内に居た筈の二人に

 

「……」

 

月から地上に一瞬で移動させる事なんて芸当が出来る可能性が有るのは紫しかいないとソルは知っていたからこの予想外に不快感を感じていた

 

(気にもしていなかったがいざ目の当たりにすると鬱陶しいものだ、予想を悪い意味で覆されるのは良い気分ではない……)

 

映像を切り換えソルは指を鳴らす

 

「ボクの出番ですかね?」

 

空間が開き傍に死神が姿を現す

 

「そうだ……お前に本業を頼みたい」

 

「暇だったのでそれは全然構いませんが……ターゲットはこれですかね?……うん?これはこれは……フフッ!願ってもない相手ですよ」

 

死神は映像に映る一人の妖怪を見て嬉しそうに笑みを溢し引き受ける

 

「方法は任せる、好きに始末しろ」

 

「了解です、では吉報をお待ちくださいソル様……」

 

礼をした死神は月から消えて行った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館

 

「……」

 

バーンは小さく溜め息を吐いていた

 

(魔理沙とパチュリーが間に合ったか……あの二人ならば心配なかろう、機転を利かせたようだな、流石だ……ヴェルザーの方も竜王が向かい幽香もおる、幽香の性格を考えれば不安はあるが大丈夫であろう)

 

傾きかけた形勢を戻せた事がバーンに安堵を与えていた

 

(さりとて油断はならん……ソルを討つ戦力の著しい低下は無視出来ぬ問題でもあるが地上も指揮官を押さえられた箇所の劣勢を許し始めている……レミリアと紫にさとり、幽々子、そしてハドラーの5人だけでカバーは不可能……あくまで現時点では互角なだけだ、向こうの方が余裕が有る)

 

直接出向けない事に苛立ちを感じるがぐっと堪えて冷静に戦局を読む

 

(奴と天魔王はどうしているのだ……音沙汰が無い、奴は一人以前から気になる者が居ると言っていたが……そちらに向かったのか?全く行動が読めぬ奴等だ……しかし口惜しいが奴等の力がこの戦局に与える影響は絶大……期待するしかあるまい)

 

勝つ為に出来る最善を尽くしたバーンはふと懐からレミリアに渡した御守りと同じ石を取り出し眺める

 

(必ず与えてやる……勝利を……)

 

静かに……ただ静かにその時を待つ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおらあああッ!!」

 

猛る雄叫びと同時に神奈子が担当していた無縁塚の一部分が突破される

 

「ようし!このまま穴を広げて後続を入れろ!」

 

「……俺さ、この戦いが終わったら結婚するんだ」

 

「マジかよ!俺にも祝わせろよなテメー!」

 

「ああ……!絶対勝って帰ろうぜ!」

 

決壊した箇所を更に広げようと進む魔物達

 

「……待て」

 

その魔物達の前に黒い闇の球が出現し闇が消えるとそこには長い金髪を靡かせる宵闇の美女が立っていた

 

「喜ぶのね下等種族……選択肢を与えて貰える栄誉に」

 

美女は何の躊躇いも無く言う

 

「これ以上私の餌場を荒らさず頭を下げ慈悲を乞うのなら優しく食ってあげる、その気が無いのなら苦しませながら食ってやる、どちらか今すぐ選べ」

 

理不尽な事を口走る美女だったが魔物達は誰も笑いはしない、一目見て震え上がる程の威圧を感じていた魔物はそれが冗談でも何でもないと本能が理解していた

 

「……こんなのと戦えるなんてな、魔王軍に入って良かったぜ!」

 

「結婚が控えてんだろ?お前はやんなくて良いぜ?」

 

「馬鹿言うな……戦友置いて隠れるなんて卑怯者になったら愛想尽かされちまう……!!」

 

冷や汗を垂らしながらも強敵へ挑める喜びから魔物達は覚悟を決め美女へ飛び掛かる

 

 

グチャ……

 

 

1体の魔物の首が食い千切られた

 

「なら絶苦の末に死ね」

 

抉られた首から噴き出す血の雨

 

その血を全身で受けながら美女……常闇ノ皇は魔族の青い血の中、一際映える赤いその瞳を光らせ冷酷な微笑を残りへ向けていた

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「不味い……まぁいいわ、どれもこれも不味そうなのしかいないけど食べ放題だしもう少し腹ごしらえしてから暴れてやりましょうかねぇ」

 

新たに食った魔物の目玉を舌で転がしながら皇は戦場をさ迷う

 

「ウッフフ……ハハハハ……アッハハハ……」

 

抑えきれない食欲と共に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!?」

 

「ふっふっふ……」

 

狼狽えるヴェルザーと不適に笑う竜王

 

「……もう一度聞く、何故貴様がここに居る?」

 

「ん?ふっふっ……バーンに懇願されてな、どうしてもと言うから戯れに引き受けたら面白い者が居たものだ、元気そうだなヴェルザー?」

 

「ヌゥ……!?」

 

巨大なヴェルザーを小さな男が気圧すその様に超竜軍団の竜達にどよめきが起きている

 

「……何故バーンと貴様が繋がっている?」

 

「その昔に縁が有ってな、会えば世間話をする程度の些細な仲だ」

 

更に質問を続けようとヴェルザーが言葉を出そうとしたが竜王の杖の牽制に言葉が止まる

 

「下らぬ話はもうよかろう、過程を知ったところで貴様に何の益も無い……ワシと貴様は出会った、それだけが重要なのだ、違うか?」

 

「……そうだな」

 

経緯を知ったところで今は変わらない、聞く事の無意味をしったヴェルザーは動揺していた心を静め竜王を睨む

 

「手を引けヴェルザー」

 

竜王は命令をくだす

 

「全ての竜の覇者であるこの竜王の言葉は誰よりも重い、退くなら不敬な物言いも不問にしてやろう……さぁ退くのだヴェルザー……永遠の仔竜よ」

 

「……」

 

絶対的な圧にヴェルザーはその長い首を下ろし下を向く

 

「……貴様の命でもそれは出来ぬ」

 

鋭い眼光が意思と共に竜王を刺した

 

「……この竜王に逆らうと言うのか冥竜王よ?」

 

更に増した威圧を受けてもヴェルザーは動じなかった

 

「当然だろう竜王よ……今のオレは冥竜王である前に……」

 

そして告げる

 

「魔王軍の軍団長なのだからな!!」

 

竜の立場と関係無い立場に居るのだと

 

 

「ふっふっふ……よくぞ言った、そうでなくてはわざわざ現界した甲斐が無い……ならばとくと思い出すがいい……」

 

 

竜王の内に秘める竜の力が激しく鳴動しその姿を変異させる

 

 

「全ての竜の覇者!この竜王の力を!!」

 

 

竜王が正体を現した!!

 

 

「「グオオオオオオオオオオッ!!」」

 

 

2体の竜が咆哮をあげ強大な竜の力が激しくぶつかり超竜軍団を後方に押し退ける

 

そして今まさに竜の王同士の戦いが始まろうとする刹那

 

 

 

「おい」

 

 

 

声が掛かり2体は同時に視線を向けた

 

「私を無視して始めようなんていい度胸じゃない」

 

それは放置されていた幽香、暴れる竜の力の中でも影響無く凛として立っていたが無視されていた怒りにその顔は凶気に満ちている

 

「……フッ、そうだったな」

 

一方的だが幽香をそれなりに知る竜王が苦笑する

 

「私が先でしょう?そうだろうがトカゲ……!!」

 

浮かび上がった幽香はヴェルザーに向かってゆっくりと近付いていく

 

「……」

 

近付いてくる幽香をヴェルザーが見下している、その目に敵意は無い、まるでその目は……

 

「殺してやるわ……」

 

幽香が傘を突きつける

 

「……」

 

その時、ヴェルザーの口内に強力な冥竜の力が溜まり、幽香へ向けられた

 

 

「邪魔をするな」

 

「!!?」

 

 

 

ドウッ!

 

 

撃たれたブレスが幽香を飲み込む

 

「~~ッッ!!?」

 

脱出する事は叶わず幽香は彼方へ消えた行った

 

 

 

「待たせた……始めるとしよう」

 

邪魔者を排除したヴェルザーが竜王へ向く

 

「……フンッ、見所が有りそうだったがこうなっては仕方あるまい」

 

譲る気だった竜王も再びヴェルザーに向き直す

 

 

「ゆくぞ竜王!我が名はヴェルザー!超竜の長!!」

 

「来るがいいヴェルザー、再びその胸に刻み込んでやろう……誇り高き竜族の王にして王の中の王!竜王の力をな!!」

 

 

竜の決戦は始まった

 

本来戦う筈だった花の大妖怪を除いて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社方面

 

「「深弾幕結界-夢幻泡影-」!!」

 

下がらない勢いに指示を出しながら自らも積極的に迎撃する紫

 

(良かった……どうやら間に合ったようね、無縁塚から感じるこの邪悪な魔力の持ち主にいち早く気付いたからね……ソルを討ったところで地上が全滅なら意味がないもの……流石!)

 

頼りになると感心しながらその超人的な頭脳を持って戦いながら思考する

 

(地上に戦力が集中し過ぎるのもよろしくないわ、限られた時間内で最終的にソルを討つのが目的なのに月の戦力が足りずソルを討てなかったでは本末転倒……そうならない為に誰かを月に送らないといけないわね……でも実力不足な者は送れない、萃香か幽香か妖夢、もしくは役目を誰かと交代させて霊夢か……)

 

(……どうするにしても判断は総指揮をするレミリアがすべき事ね、手遅れになる前に聞いてみましょう……私の判断で勝手をしたら今までの事から状況が悪くなりそうだものね……)

 

自分を皮肉った紫はレミリアと連絡を取ろうとスキマを広げる

 

 

……ズッ!

 

 

同時に開いた背後の裂けた空間から飛び出た鎌が紫を捉えた

 

(しまった!?スキマに集中した一瞬の隙を……!!?)

 

逃れられない紫は引き摺られていく

 

「……くっ!?」

 

体が全て入る間際、紫は念じ、力を飛ばす

 

「紫ッ!?」

 

霊夢が気付いた時には裂けた空間は閉じきり紫は幻想郷から姿を消した

 

 

 

「敵の攻撃!?どうなってるの!?」

 

紫が消えた場所で霊夢が叫ぶと背後から声が掛けられる

 

「紫様は敵の手により異空間に囚われてしまったのよ」

 

「藍!?」

 

背後に居たのは紫の式神である藍、紫は空間が閉じきる間際に藍を幻想郷に残していたのだ

 

「囚われたって……大丈夫なの?」

 

「心配要らないわ、紫様なら必ず御帰還なされるから」

 

「……あんたえらく冷静ね」

 

「私とて当然心配よ、でも紫様から最優先の命を受けているから私は応える事に全力を尽くすだけ……紫様に代わって私が指揮を取る!総員!私の指示に従え!」

 

「……わかった、頼むわ藍」

 

霊夢が戦線に戻ろうとした瞬間、地獄から通信が霊夢に入った

 

「動き出したですって!?このタイミングで……なんて間が悪いのよ……あーもう!行ってくるわ!戻って来るまで絶対に持たせなさいよ!」

 

怒りながら霊夢は急いで飛んでいった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

""幻想郷は誰もが皆を信頼している""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……はっ……」

 

ザングレイが地に伏せ息絶えた

 

「ハァー……ハァー……ッウ!?……強かったよあんた……」

 

勇儀は勝利を納めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「核ごと消えろぉぉぉ!石波天驚拳!!」

 

「ぬぐあああああっ!?」

 

ダブルドーラを撃破し鈴仙も勝利を納める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

""応えようと誰もが頑張るが応える事が出来ず散っていく者も居る""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゥ……」

 

「ハズレだったな……次を探すか」

 

倒した咲夜をベグロムは無造作に放った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

""信頼はより絆を深める要素ではあるが毒でもある、強く信頼される者ほど負けた時の絶望感は深く強い""

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピチューン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!?」

 

レミリアは気付く

 

「まさか……そんな……嘘……」

 

有り得ないと驚愕に目を見開き、信じられないと友が戦っていた方角へ目を向ける

 

「チルノの冷気が……消えた……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弾けた散命の音と共に……

 

幻想郷は強さだけなら誰よりも信頼する最強の敗北を知る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一応進んだ……のか?否!進んでませんね。

・現在の双方の主な犠牲者
幻想郷 永琳、咲夜
魔王軍 ザングレイ、ダブルドーラ、大魔王の影(親衛騎団・大魔道士)

進んではいませんが動きは有りました、ゆうかりん吹っ飛ばされたりゆかりんがどこかの家庭教師のごとく誘拐されたりチルノの冷気がどこぞのオサレマンガのごとく消えたり……

次回も頑張ります!

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