東方大魔王伝 -mythology of the sun-   作:黒太陽

1 / 86
プロローグ

 

 

 

 

 

 

    未来は無限の可能性に満ちている

 

 

 

   有り得ないなどいう事は有り得ないのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それがどんなに信じがたく、残酷だろうともこの楽園は受け入れるであろう……

 

 

 

 

何故なら此処は想像と可能性が交差する夢幻の世であり

 

 

 

 

全てを受け入れる幻想郷なのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ならば余も受け入れよう

 

 

 

共に幻想郷で生きるのだから

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

    それが余の残した業であるならば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

薄暗い場所で何者かが部屋を物色している

 

(チッ……賭けに負けたからってこんな誰も使わなくなった研究室の掃除なんてやってらんねぇよ)

 

そこは昔に使われていた誰かの研究室だった、かなりの年月が経っているのか埃にまみれ一見して物置にも見える

 

(魔族のジジィが使ってたんだったっけか?名前は……ザ……なんとかってジジィだったか、確か妖なんたら言う二つ名が有ったっけ……グレイツェル様の前の軍団長か)

 

研究レポートをパラパラ捲りながら下っぱの魔族は机にある椅子に持たれる

 

(早く戦いてぇなぁ……)

 

掃除の手が止まり天井を眺める

 

(……面倒だから燃やしちまうか)

 

口から火を吐こうと顔を下げる

 

「……ん?」

 

その時見つけた、少し開いた引き出しの中から見える紙束の様な物を見つけた

 

「……」

 

何となく気になり火を吐くのを止め引き出しを開け中に有ったかなり分厚い紙束を取り出す

 

「レポート……なんとかってジジィの研究記録か」

 

また何となく読んでみる

 

(スゲェ量書いてんな……よくやるよ、日付は……100年前か……あん?ナンバー890016?いったい何年前から書いてんだ……)

 

想像だにしていない量に驚いた魔族は俄然興味を持って前のレポートを探し始めた

 

「あった……どれどれ……?」

 

書き始めた頃のレポートを手に取り読み始める

 

(こっちも似たようなもんか、飽きないもんだな……)

 

変わらない内容に興味が失せてきた魔族だったがある記述を見て手が止まった

 

「異世界へ渡る為の魔法機械?」

 

それは日記の主が造り上げた機械についてだった

 

(異世界へ渡る為の魔法機械の作製に成功、実験を兼ねて異世界の調査を行う……へぇ、俺達と同じ事を昔にしてたんだなこのジジィ……次からは異世界の調査結果か)

 

何となく、本当に何となく目を通していく

 

「……ハハハッ!なんだこのジジィ!原住民に返り討ちに会って逃げ帰ってんじゃねぇか!それっぽい理由書いて……妖怪と魔族では種族の違いがなんやら書いてやがるが完全に言い訳じゃねぇか!大した違いはねぇよ!」

 

読み終えて面白く笑った魔族だったが冷静になると難しい顔で頬杖をつく

 

(待てよ?このジジィはグレイツェル様の前軍団長だった男だ……軍団長になれる程だから魔力は高かっただろうし若い頃だから身体能力もそれなりにあった筈……それを見る限り一方的に追い返した……)

 

文章の意味を推察していく魔族はどこか楽しげ、良い場所を見つけたかもしれない期待感が顔に出ていた

 

(次の候補地に良いかもしれねぇな……ちょうど座標も記されてる、我等が軍師殿に進言してみるか)

 

座標が記されたレポートを破ると魔族は研究室から姿を消したのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!!」

 

彼の王は感じた

 

確信にも似た予感

 

「……」

 

不吉な兆しを感じ取った王は眉間に僅かに皺を寄せる

 

「バーン……」

 

傍の王女がいつもの様に紅茶を飲みながら小声で話し掛けた

 

「お前も感じたかレミリア」

 

「ええ、運命の分岐を感じたわ……あまり良い感じとは言えないわね」

 

周囲に居る友に気取られない様に二人は話を続ける

 

「……備えておくに越した事はないか」

 

「そうね……使いを出しておくわ」

 

幻想に住む王と妃は杞憂である事を願いながらも最悪に備える

 

「……」

 

ただ王だけは虚空を睨んでいた

 

(この感覚はなんだ……酷く懐かしく、それでいて称えたくもある、同じ様にも全く違う様にも感じる……)

 

王だけが宿す奇妙な因果を胸に秘めながら

 

(これは……いったい……)

 

紅い館で静かに目を閉じる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつはなんだ!?」

 

「くっ……結構強いぞ!?」

 

「気をつけろ!」

 

王の住む幻想世界のとある場所で妖怪が襲われていた

 

「その程度か?弱い……」

 

3人の妖怪を弾き飛ばした襲撃者、部分的な甲冑を身につけたリザードマンと呼ばれる魔物、戦いの歴史を表しているのかその体には無数の傷が露見している

 

「コノヤロー……いきなり襲いかかって来やがったくせに舐めやがって!」

 

「安心しろよ……まだ9割程度だからよ!」

 

「やるぞ!」

 

完全に臨戦態勢となって構える

 

 

「お前もかー!幻想郷で暴れてるのはー!」

 

 

その時、一人の少女が舞い降りた

 

「大丈夫ですか!?」

 

腰まで伸びた茶色の髪に蝶に結んだ目立つ大きな紅いリボン、まだ幼さが前面に押し出された成長途中のまさしく少女、ペンダントにされた不死鳥と王の紋章が刻まれた御守りを首から下げ、襲撃者を牽制しながら3人の妖怪を横目で確認する

 

「お前は……皇帝不死鳥の……」

 

「良いとこに来られちまったな」

 

「ああ、大丈夫だよ」

 

妖怪達も知っている様で緊張が和らぎ軽く微笑む

 

「なんでここだってわかったんだ?」

 

「他にも何ヵ所かで襲撃があったと連絡が来たんです!それで私は幻想郷を見て回ってて皆さんを見つけました!」

 

「他にも……大丈夫なのか?」

 

「大丈夫です!他も1体しか現れませんでしたし皆が向かいましたから!」

 

「オーケー理解した!それじゃ一緒にこいつを片付けるか!」

 

「いえ……ここは私にやらせてください!」

 

「……格好良く来た勢いで行きたいのはまぁわかるが一緒にやろうぜ?な?」

 

「任せてください!修行の成果を見せてあげます!」

 

制止を振り切って少女は襲撃者に構える

 

「覚悟しろ!」

 

飛び込んだ少女が拳を打ち付けた

 

「その程度か?」

 

が、襲撃者を僅かに押しただけでダメージは無い

 

「か……硬っ……へぶっ!?」

 

頬にビンタを受け吹き飛ばされる、それを見て妖怪達はあちゃーと言った仕草やオロオロしている

 

「こんのー!!」

 

負けじと体当たりを食らわせると次は大きく後退させる、どうやら慢心があった様でさっきのは本気ではなかった様だ

 

「うららららー!!」

 

そのまま乱打戦に移行する両名、しかし地力の差か少女が押され始めまたも殴打で吹き飛ばされる

 

「……ッ!?こうなったらー!!」

 

少女が力を込めると体の周囲に火が出現、燃え上がり、背中から火の翼が出現した

 

「本気の本気で……!!」

 

突撃してくる気配に危険を察した襲撃者が構える

 

 

キンッ!

 

 

と同時に凍りついた

 

「あたい!参上!!」

 

そして舞い降りる少女よりは少しだけ大きい青い少女は高らかに指を掲げていた

 

「……酷いですよ親分」

 

頬をプクーと膨らませて少女は抗議する

 

「え?酷いって?あんたのザコさが?」

 

「ぐへぇ……って違いますよチルノ親分!私の獲物を横取りした事ですよ!」

 

「え?ちょっと見てたけどあんたあんな程度のに押されてたじゃん」

 

「あそこから逆転するつもりだったんですー!ブー!ブゥー!」

 

プンプンと抗議する少女、そこにまた新たな者達が舞い降りた

 

「片付いた様ね」

 

「こっちも片付いたぜー」

 

「こっちもでーす!」

 

紫と白黒、そして緑の少女が横に並んだ

 

「お疲れ様です!」

 

「貴方もね」

 

「あ!ルナちゃん怪我してる!また無茶したんでしょ!」

 

「大丈夫ですよこれくらい!」

 

「終わったんだから帰ろうぜー!腹減っちまったぜー」

 

「あ、じゃあ私も永遠亭に帰りますね!」

 

和やかに会話をしながら紫の少女を残し帰って行く

 

「やっぱとんでもねぇな頂点達は」

 

「だな……俺達も帰るか」

 

「そうだな、なんか俺も腹減った」

 

妖怪達も帰ったその場所で凍りついた襲撃者を神妙な眼差しで見つめるのは残った紫の少女

 

(襲撃は数ヵ所あった、にも関わらずそのどれもが略奪や殺しを目的としていなかった、示し合わせた様にどれもが……タイミングが良すぎるわね、皆はただの戦闘狂と思ってたみたいだけど私が持ったのは違う印象……)

 

(そう、まるで値踏みをしている様な……)

 

知識豊かで冷静な彼女だけがそんな考えをし、不吉を予感させていた

 

(……気になって目的を聞こうと私が生かして倒した奴は吐かせる前に自ら命を絶った……)

 

(あの時の目は命令されたから出来る目ではなかった、意思が有った……「仲間を売るくらいなら自ら死を選ぶ」そんな目……)

 

氷にヒビが入りバラバラと崩れていく襲撃者を見ながら彼女は思っていた

 

(もしこいつらが全て繋がっていて、目的の為に差し向けられた尖兵だとすれば……ただの敵じゃない、恐ろしく統率され、結束された集団という事を意味してる)

 

立ち尽くす彼女に青い少女が戻って来た

 

「何やってんのパチュリー!早く行くわよー!」

 

「……ええ、わかったわ」

 

青い少女の後ろに付いて飛ぶ彼女は小さく呟いた

 

「また戦いが起きるのかしら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

「申し上げます」

 

主城の王の間で現れた軍師がヴェール越しに映るシルエットに話し掛ける

 

「聞こう……」

 

グラスを回す仕草を見せながらヴェールのシルエットから声が返される

 

「いくつか有った候補地に偵察隊を差し向けたところ、倒されはしましたがその殆どが攻める価値の低い世界でした、ですが1ヵ所だけ偵察隊が成す術無く倒された世界が存在、これから更に調査を進めますが現状では最有力候補となっております」

 

「そうか……」

 

さしたる興味もなさそうにヴェールに隠される者は軍師に指示を飛ばす

 

「任せる、お前達の好きにせよ……」

 

「はっ!」

 

「どこを攻めるにしろお前達の手に余る様なら言ってくるがいい」 

 

「ははっ!」

 

間を去ろうとする軍師

 

「……」

 

それをふと気になったヴェール越しの者が呼び止めた

 

「ちなみにそこはなんと言う所だ……?」

 

「はっ!記された資料によるとそこは「幻想郷」と呼ばれる場所です」

 

「幻想……郷……」

 

その名から奇妙な感覚を受け暫し沈黙した後

 

「わかった、下がるがいい」

 

軍師に告げると気配を消した

 

「では失礼します」

 

頭を垂れる軍師は言った

 

「我等が唯一にして絶対の神……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         太陽神(ソル)様……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは全てを受け入れる

 

 

 

 

全てを受け入れる幻想の特異点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遥かな久遠の未来へと向かう幻想に立ち塞がるのは過去より挫けた可能性の分かれ身

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新たな戦いの予兆……

 

 

 

 

 

 

 

無限へと至る大いなる冒険の果てに……

 

 

 

 

 

 

 

王と幻想は何を見るのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




祝!ゆかりん異変の原因にならなかった!

お久し振りです、お陰様で投稿となりました!
プロローグから既に匂ってはいますが今作のキーワードは「可能性」、そして今までの総集編的な内容を考えています。
続編と言うよりは劇場版みたいな物と思ってください。

それではよろしくお願いします。




……副題は「太陽の神話」となっていますが……アメリ……英語間違ってたら教えてください、英語はからっきしなので自信無いです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。