fate/never surrender,s 作:R-boat
『
(腹を刺されて平然と殴りかかって来るやつだ。此れで仕留められたなら構わんが…っ!)
「オオオッ!」
「…上かっ!」
アーチャーは頭上から振り下ろされた剣を黒弓で受け止めると、その衝撃を利用して後ろへ下がる。そして廃墟となった寺の屋根に飛び乗り、襲撃者の姿を捉える。
「ずいぶん様変わりしたな、さながら
アーチャーが屋根から見下ろすバロン、否ロードバロンの姿は、先ほど迄の人間の姿ではなく、紅い騎士を思わせる異形のものとなっていた。
「何とでも言え。此れが俺の行き着いた『強さ』、理想を掴むための力だ」
「『理想』の成れの果て…か」
アーチャーは汚れた霊基の奥底で、かつて得た『答え』を想い、それを振り払うように新たな矢を取り出す。
「ハァッ!」
「ふっ!」
アーチャーが矢を射るより速く、ロードバロンはグロンバリャムを振るい紅の斬撃をアーチャーへと放った。屋根を蹴りあげ跳んだアーチャーが落下しながら矢を放つと、ロードバロンの姿が紅い霧のようになり矢は空を掠める。
着地したアーチャーが夫婦剣を取り出した瞬間、ロードバロンを覆っていた植物と同じ蔦がアーチャーの四肢を拘束する。
「卑怯な手を使うじゃないか、バーサーカー」
「見え透いた挑発をどの口で言う。持ちうる全ての力を使うことは正しい。卑怯者とは、強い奴に寄生しその背中を撃つ奴のことだ!」
「なるほど、全く同意見だ!」
「何っ!」
拘束されたままアーチャーは宙に新たな夫婦剣を『造りだし』、爆発させた。
「
煙の中から放たれた矢を首を傾けるだけで回避したロードバロンは、カウンターに斬撃を放つ。
「貴様ごときの小細工では、俺には届かん」
「…そのようだな」
煙が晴れ、既に霊基の崩壊が始まっているアーチャーが口を開く。
「確かに君には届かなかった。君には、な」
「どういう意味だ?」
「アインツベルンの森には、未だに主人を守り続けているサーヴァントがいるのだよ」
ロードバロンは道すがらにロマンが言っていたことを思い出す。
ーー『それと、郊外の森で動かない反応がある。多分、手を出さない限りは無視して構わないだろう』
「…まさか」
「彼はマスターに仇なす全てを許さない。例えば、屋敷に何処からか矢が放たれたとすれば、「ーーーーーーー!」
黒い弾丸の如く現れた『ソレ』は落下地点のアーチャーを踏み潰すと、生前感じたことの無いほどの圧倒的なプレッシャーを放ちながら、標的をロードバロンへと変える。
「やってくれたな!」
「ーーーーーーーーー!」
今にもロードバロンへ飛び掛かりそうなバーサーカーに対し、アーチャーを拘束したものの数倍の蔦で拘束する。実の所、ロードバロンは満身創痍である。堂々と立ってこそいるが、アーチャーに刺された傷は浅くない。とても正面からあの怪物と戦える状態ではないのだ。
◼
あれから数分、しかし永遠に思えるにらみ合いは終わりを告げる。
「ーーーーーーー!」
ついに蔦を引きちぎったバーサーカーが、柱ほどある斧剣を振り上げながらその巨体に似合わぬ速度でロードバロンへ突撃する。
「ーーーーーーー!」
「ぐぅぅぅッ!」
一度はグロンバリャムで攻撃を受け止めるが、数秒立たずにロードバロンは吹き飛ばされる。バーサーカーはトドメを差そうと追撃をかけるが、それより早くロードバロンの体が光の粒へと変わって行く。
「…強制退去とか言うやつか。余計な真似を、とは言えんか」
「ーーーーーーー!」
「いずれ貴様と会うときまで、勝ちは預けてやる!」
バーサーカーが斧剣を振り下ろした時、既にロードバロンは特異点から消滅していた。
◼
「イライラすんなって、空気悪くなるだろ」
人間の姿でカルデアに再召喚されたバロンが不機嫌さを隠すこともなく歩いていると、同じく召喚されたクー・フーリンが声をかける。
「お前も来たのか」
「縁のが出来たもんでな、それでお前さんは何が気に入らないんだ?」
「…俺にはまだ強さが足りない」
「あの弓兵を下せたなら、俺は十分だと思うがな」
「足りん。俺に必要なのは全ての強者に打ち勝つ力だ」
バーサーカー(後にギリシャの大英雄であるヘラクレスと判明)に事実上勝ち逃げされたのが引っ掛かっているバロンに、クー・フーリンは模擬戦を提案する。
「まっ、気分転換には体動かすのが一番だわな。付き合いな、坊主」
「俺を坊主呼ばわりしたこと、後悔させてやる!」
その後、二人が模擬戦を行うのが日課になるのだった。
これから先は、書きたくなったら書きたいシーンだけ書いてく感じです。
…誰か書いてくれてもいいですよ?