バカとE組の暗殺教室   作:レール

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鬼ごっこの時間

 体育の時間に裏山へ来た僕らは、烏間先生から新しい暗殺の技術を教わっていた。

 

「二学期から教える応用暗殺訓練。火薬に続くもう一つの柱がフリーランニングだ」

 

「フリー……ランニング?」

 

 聞き慣れない単語だったのか、周りから疑問の声が上がる。

 僕も詳しくは知らないけど、偶に配信動画とかで見掛ける……えっと、パルクール?みたいなものかな。あれ、同じものだったっけ?

 

「例えば、今からあそこにある一本松まで行くとしよう。三村君、大まかでいい。どのように行って何秒掛かる?」

 

 烏間先生から名指しされた三村君は、指定された一本松までの地形を確認する。

 

「えーっと……まず崖を這い降りて十秒。小川は狭いところを飛び越えて……茂みのない右の方から回り込んで岩をよじ登って……一分で行けりゃ上出来ですかね」

 

「んー、ムッツリーニだったらもっと早く行けるんじゃない?」

 

 多分僕ももう少し早く行けると思うけど、こういう機動性に関することはムッツリーニの方が上手だろう。

 

「…………(コクリ)。撮影スポットに階段がないなんて、日常茶飯事」

 

「土屋君。その撮影の対象が何なのか、あとでじっくり話を聞かせてもらうから」

 

「…………!!(ブンブン)」

 

 つい口を滑らせたムッツリーニに片岡さんからの突っ込みが入る。なんかごめん、僕が話を振ったばかりに尋問コース入っちゃって。

 必死に尋問拒否を示しているムッツリーニは置いておき、烏間先生がムッツリーニへ問い掛ける。

 

「土屋君、君なら何秒で行けそうだ?」

 

 ムッツリーニも改めて一本松までの地形を確認していく。自分ならどのルートで行くか考えているようだ。

 

「…………道具の使用は?」

 

「今回は無しだ」

 

「…………三十秒から四十秒くらい」

 

 ざっと見積もっても三村君の倍近く早い。道具を使用すれば更に早くなりそうな辺り、流石はムッツリーニといったところだ。

 

「では俺が行ってみよう。時間を計っておけ」

 

 二人の答えを聞いた烏間先生は、スーツのネクタイを緩めながら三村君へストップウォッチを渡す。

 いったい烏間先生がやったらどんなタイムになるのか。ちょっと楽しみにしながら見ていると、先生は崖の縁に立って僕らの方へと振り返った。って、まさか……。

 

「フリーランニングで養われるのは、自分の身体能力を把握する力、受け身の技術、目の前の足場の距離や危険度を正確に計る力……これが出来れば、どんな場所でも暗殺が可能なフィールドになる」

 

 そう言って烏間先生は背中から崖下へと落ちていった。此処って三階くらいの高さはあるけど大丈夫なの!?

 全員が驚きながら慌てて崖下へ目をやると、烏間先生は難なく受け身を取って立ち上がっていた。更に止まることなく助走をつけて壁走りで川を飛び越え、茂みを無視して跳び上がりつつ三角跳びで一本松まで岩を駆け上がった。

 

「タイムは?」

 

「……じ、十秒です」

 

 ムッツリーニの見積もりよりも更に倍以上早いタイムである。いや、凄すぎるでしょ。

 何が凄いって、もちろんタイムもそうだけど、それを動きにくいスーツでやってるところだ。化け物としか言いようがない。

 

「道無き道で行動する体術。熟練して極めれば、ビルからビルへ忍者のように踏破することも可能になる」

 

 確かに皆もフリーランニングを覚えれば暗殺の幅は確実に広がるだろう。

 暗殺の期限も迫ってることだし、出来ることならどんどん殺せんせーの暗殺を進めていきたい。政府や烏間先生もそう考えてるのかな。

 

「だがこれも火薬と同じ。初心者のうちに高等技術に手を出せば死にかねない危険な代物だ。危険な場所や裏山以外で試したり、俺の教えた以上の技術を使うことは厳禁とする」

 

 こうして僕らのフリーランニング習得に向けての訓練が始まった。

 

 

 

 

 

 

 フリーランニングの訓練が始まって何日か経ち、皆もフリーランニングの基礎が身についてきたところで殺せんせーがこんなことを言い出した。

 

「最近皆さん、フリーランニングをやってますね。折角ですからそれを使った遊びをやってみませんか?」

 

 というわけで殺せんせーが提案してきたのは裏山を使ってのケイドロだ。

 殺せんせーと烏間先生が警官役となり、一時間を逃げ切ったらご褒美に烏間先生のお金でケーキを奢ってくれるらしい。ただし全員が捕まったら宿題の量が二倍である。

 当然ながら殺せんせーから一時間どころか数秒でも逃げ切れる自信はないので、殺せんせーはラスト一分まで校庭の牢屋スペースで待機するらしい。最初に追ってくるのは烏間先生だけだ。

 

「……で、ムッツリーニはさっきから何をやってるの?」

 

 それで裏山へ散り散りに逃げている僕らだけど、ムッツリーニがあっちへ行ったりこっちへ行ったりして木の上から戻ってくるを繰り返していた。よく分からないけど忙しないなぁ。

 

「…………カムフラージュ」

 

「カムフラージュ?」

 

「明久、カムフラージュってのは他人の目を欺いて誤魔化すことだぞ」

 

「カムフラージュの意味くらい知ってるから」

 

 幾らなんでも雄二は僕のことを馬鹿にし過ぎじゃないだろうか。

 

「追ってくる烏間先生へのミスリードじゃろ」

 

「…………(コクリ)」

 

 僕の疑問には秀吉が代わりに答えてくれた。ムッツリーニも秀吉の言葉を肯定する。

 なるほど、烏間先生が追ってきてもムッツリーニのカムフラージュに気を取られて時間を稼げるってわけか。ムッツリーニも宿題二倍を避けるためにやる気だな。

 でも流石にカムフラージュまでする必要はない気もするけどなぁ。

 

「そこまでしなくても大丈夫じゃない? 警戒するに越したことはないと思うけど、痕跡は消してるし烏間先生でも広い裏山でそう簡単には――」

 

『岡島さん、速水さん、千葉さん、不破さん、アウトぉー♡』

 

 僕らは見つけられない、と言おうとしたところで実況役の律から四人の逮捕が告げられた。

 ……え、捕まるの早くない? ケイドロが始まってからまだ全然時間経ってないのに。

 

「他の奴らはフリーランニングの訓練を受けてはいても、誰かに追われることには慣れてないはずだ。面倒だが少しでも勝率を上げるなら出来る手は打たねぇとな」

 

 いきなりの逮捕報告に唖然としていると、そんな僕を放って雄二は何処かへ電話を掛け出した。いったい誰に掛けてるんだろう?

 

「おう、カルマ。お前、捕まった四人がどの辺に居たかって分かるか? 大まかにでも烏間の位置を把握できればと思ったんだが」

 

 どうやら電話の相手はカルマ君らしい。そうしている間にも菅谷君とビッチ先生の逮捕報告が律から伝えられる。こんな短時間で六人……烏間先生もかなり本気だ。

 

「……何? 今、牢屋に向かってるだと? お前、そんなことしたところで――」

 

「そっか! ケイドロなんだから牢屋の皆を逃がせばいいんだ! 幾ら烏間先生でも皆を追いながら牢屋を守るなんて無理でしょ!」

 

「あ、おい待て明久――」

 

 雄二とカルマ君の会話から突破口を見つけ出した僕は、逃げていた裏山を逆戻りして牢屋スペースのある校舎まで走っていく。

 烏間先生に見つかるリスクはあるが、今のペースで捕まっていったら全滅は時間の問題だろう。先生が全く別の場所に居ることを祈るしかない。

 

 そうして何とか烏間先生に見つかることなく校舎まで戻ってきた僕だったが、牢屋の皆を逃がすにはまず根本的な問題があったことを思い出した。

 

「明久よ、牢屋の皆を救出するのは無理じゃ。殺せんせーはラスト一分まで牢屋の前で動かないと言っておったじゃろう」

 

「…………それが出来るくらいなら殺してる」

 

 あとから着いてきた秀吉やムッツリーニの言う通り、殺せんせーが牢屋の前に陣取って待ち構えていた。っていうかこっちを見てるし、既に僕らの位置もバレてるな。

 どうにかして牢屋から皆を助けないと、こうしている間にもどんどん『竹林君、原さん、アウトぉー♡』また二人捕まったか。これはマジでヤバイ。

 

「そういえば雄二はどうしたの?」

 

「無理なことに労力を費やすつもりはないと、一人でそのまま何処かへ行ってしまったぞ」

 

「こういう時こそ雄二の無駄に回る頭が必要なのに……必要な時に雄二は使えないなぁ」

 

 皆を助け出す良い方法はないかと考えていたところで、何やら牢屋の方で動きがあった。

 岡島君が殺せんせーに何かを差し出すと、それを受け取った先生はその場で座り込んでしまう。

 その隙を突いて反対側から出てきた渚君や杉野君が、皆にタッチして牢屋から助け出していた。いったい何が起こったんだ?

 

「まさか賄賂で脱出するとは……岡島の発想に感心するべきか殺せんせーの対応に呆れるべきか、どう思うべきか悩ましい脱出方法じゃな」

 

「賄賂って何を渡されたんだろう?」

 

「大方、エロ写真といったところじゃろう」

 

 律からの脱走報告を受けてか、殺せんせーの携帯が鳴り出した。相手はまず間違いなく烏間先生だろうな。

 

「いやぁ……思いの外、奴らやり手でねぇ……ヌっひょー! この乳やべぇ!」

 

 どうやら秀吉の言う通りエロ写真のようだ。

 しかし殺せんせーのあの反応……かなりの逸品に違いない。くそっ、僕もケイドロ中じゃなければ見たかったのに!

 

「……にゅや? 土屋君、逮捕です」

 

「…………油断した。巧妙な罠だった」

 

 そしてケイドロ中にも関わらずエロ写真を見に行ったムッツリーニは流石としか言いようがない。アイツのエロは止まるということを知らないのか。

 

「秀吉、馬鹿は放っておいて逃げようか」

 

「そうじゃな。どのみちワシらには助けようもないしの」

 

 そんなやり取りをしている間にも逮捕報告は続々と挙がっている。烏間先生が脱出した皆を捕まえに戻ってくる可能性もあるし、ずっと牢屋の近くに居るのは危ないだろう。

 取り敢えず僕と秀吉はさっきまで逃げていた方へと行くことにした。ムッツリーニのカムフラージュもあるし、校舎へ戻る時も烏間先生と遭遇しなかったからまだ安全だと思う。

 

 なんて少し油断していたからか気付けなかった。

 

「吉井君、木下君、逮捕だ」

 

 不意に肩を叩かれたと同時に烏間先生の声が聞こえてきた。

 

「うわっ!?」

 

「むぅ……いつの間に」

 

「俺を欺くために痕跡を偽造していたようだが、偽造した痕跡が多過ぎたな。大まかな進路を痕跡がないことで示してしまっていたぞ」

 

 あのムッツリーニのカムフラージュを逆に利用されるなんて……念のため別ルートを行くべきだったか。

 今度は脱出する側で牢屋へ戻ると、ムッツリーニの他に竹林君、原さん、寺坂君、村松君、吉田君、狭間さん、矢田さんの八人が待機していた。

 人数で言えばさっき脱出成功した時よりも増えてる。烏間先生、本当に容赦ないな。

 

「よく来たな囚人ども! 貴様らの刑務作業はこれだ! 無駄口を叩かず刑務作業に没頭したまえ!」

 

 そして殺せんせーは警官役に成り切って牢屋を取り仕切っていた。さっきは賄賂を受け取って汚職に手を染めてたくせに。

 でもだからこそ牢屋から脱出するのに、誰かにタッチしてもらうことなく自力で出る手段も取れる。また別のエロ写真で取引するか?

 

 ムッツリーニにエロ写真を持ってないか聞こうとした時、隣に居た矢田さんが急に泣き出した。

 

「え!? や、矢田さん、どうしたの!?」

 

 突然の出来事に僕がオロオロしていると、矢田さんが泣きながらその理由を話してくれる。

 

「実はね、弟が重い病気で寝込んでるの。ケイドロやるってメールしたら“絶対に勝ってね!”……ってさ。捕まったって知ったら、きっとあの子ショックで……」

 

「そ、そんな……」

 

 まさか矢田さんがそこまでの覚悟を持ってケイドロに参加してたなんて……これは是が非でも負けられない。ケイドロに勝って矢田さんと弟君を助けてあげないと。

 そのためにも何とかして牢屋からの脱出を――

 

「……行け」

 

 その時、殺せんせーから小さな呟きが聞こえてきた。

 

「……え?」

 

「本官は泥棒なんて見なかった……行け」

 

 殺せんせーは背中を向けてるから顔は見えないけど、どうやら矢田さんの話を聞いて泣いているようだ。超生物である先生にも人の心が残っていたらしい。

 僕らは殺せんせーの慈悲を受けて牢屋からの脱出を果たした。これで矢田さんの弟君を助けられる!

 

「矢田さん、弟君のためにも絶対に勝とうね!」

 

「や、確かに弟は病弱だけどそこまで重症じゃないから大丈夫だよ。まぁもちろん勝つつもりでやるけどね」

 

 矢田さんはさっきの涙が嘘のように笑顔を浮かべていた。っていうか嘘だったのか。僕のケイドロに賭けた想いを返してほしい。

 

「見事な演技じゃったぞ。まぁ殺せんせーも目的があってワシらを逃しておったみたいじゃがな」

 

「…………逃がす切っ掛けを探していた」

 

 僕が遣る瀬無い気持ちになっている横で、殺せんせーの思惑について秀吉とムッツリーニが言及していた。

 

 実は殺せんせー、僕らを逃がす時に烏間先生から逃げるためのコツを教えてくれていたのだ。多分だけど岡島君達を逃した時にも同じことをしていたのだろう。

 その後も烏間先生が皆を牢屋へ送るたびに、殺せんせーによる僕らの取り逃がしは続いた。幾ら烏間先生が僕らを捕まえようとも、あの手この手で殺せんせーは僕らを逃がしていく。

 

「あの馬鹿タコは何処にいる! 出て来い!」

 

 とうとう堪忍袋の尾が切れたらしく、烏間先生は怒り心頭な様子で怒鳴りながら牢屋へ戻ってきた。冷静になって僕らを捕まえにくる前にさっさと逃げよう。

 ちなみに殺せんせーはさっき暇だからと長野県まで信州そばを食べに行ったところだ。先生のことだからすぐ戻ってくるに違いない。

 

 今の取り逃がしで全員が一度は捕まったことになるのかな。この時点で殺せんせーが僕らを取り逃がしていなかったらケイドロは終わりである。

 改めて裏山全域を一人で捜索できる烏間先生の体力と追跡力を思い知らされた。やっぱり烏間先生も化け物だ。

 

 とはいえ本番は此処からである。殺せんせーが逃げるためのコツを全員に伝え終えた以上、もう取り逃がしをすることはないだろう。

 加えて烏間先生から一人でも逃げ切ることができたところで、最後の一分に殺せんせーが控えていてはまともにやっても僕らに勝ち目はない。

 

「ごめん、待った?」

 

 だからこそ僕らは戦略を練って先生達の裏をかく必要があった。そのための準備は既に出来ている。

 僕は牢屋からの痕跡を消しつつ、事前に決められていた場所へ来ていた。そこに待っていたのは片岡さん、杉野君、木村君の三人である。

 

「大丈夫。まだ烏間先生との距離は遠いわ」

 

「さっき中村が捕まったって情報が来たから、進行方向はこっちで間違いないはずだぜ」

 

「あとは先生が来るのを待つだけだな」

 

 まず何とかしないといけないのは烏間先生だ。幾ら殺せんせー対策をしても烏間先生が野放しではリスクが高い。

 そこでE組でも機動力の高い僕らが烏間先生を引き付ける役割だ。先生が反対側へ行くことも想定して磯貝君、前原君、岡野さん、ムッツリーニも別地点に固まって待機している。

 

 と、そこに予想通り烏間先生がやってきた。

 此処までの作戦は順調だ。問題は僕らが待ち構えていた意図を悟られないかどうかだが……。

 

「左前方の崖は危ないから立ち入るな。そこ以外で勝負だ」

 

 烏間先生が罠に掛かった!

 

「「「「はい!」」」」

 

 僕らは返事をすると同時に散らばって烏間先生から逃げていく。

 烏間先生は僕らが先生に挑戦していると思ったんだろうけど、僕らに誘き出されたのが先生なのだ。勝負に乗ってきた時点で僕らの勝ちである。

 ただしだからといって簡単に捕まっていては引き付け役にならない。あとは烏間先生から何処まで逃げられるか、ある意味では挑戦というのも間違いではないな。

 

 僕は岩場を小刻みに蹴り上がりつつ木の多い方へ――ッ!

 

「くっ……!」

 

 木の陰で死角を利用しつつ烏間先生の機動力を削ぐつもりだったが、直感に従って木の上へと急いで駆け上がる。

 その直後に僕が進もうとしていた方向へ烏間先生が先回りしていた。危なっ!

 とにかく動きを止めれば捕まってしまう。枝から枝へ、出来るだけ上へ上へと高く飛び移る。

 こうなっては僕が烏間先生から逃げ切ることは不可能だ。だったら少しでも他の三人が逃げる時間を稼がないと!

 

 しかし烏間先生は即座に木を駆け上がると、たちまちのうちに僕を捕まえて他の三人を追い掛けていった。先生、マジで速過ぎ……。

 そのまま僕も烏間先生を追っていくと、少し開けたところで杉野君が捕まっていた。片岡さんと木村君は既に捕まっていて、僕と一緒に烏間先生を追い掛けている。

 

「随分逃げたな、大したもんだ。だがもうすぐでラスト一分。奴が動けばこのケイドロ、君らの負けだな」

 

「……へ、へへへ。俺らの勝ちっすよ、烏間先生」

 

「……何?」

 

 まだ息を整え切れていない杉野君の言葉に、烏間先生から疑問の声が漏れる。最後まで僕らの狙いは悟られなかったみたいだ。

 僕らは烏間先生を出し抜けたことに優越感を感じながらネタバラシをする。

 

「だって烏間先生、殺せんせーと一緒に空を飛んだりしないですよね?」

 

「……? 当たり前だ。そんな暇があれば刺している」

 

「じゃあ烏間先生、此処から一分で()()()()()()戻れませんね」

 

 片岡さんのその一言で烏間先生も僕らの狙いを理解したようだ。

 でももう遅い。きっと今頃、殺せんせーはプールの底にいる雄二とカルマ君を前に呆然としていることだろう。水が弱点の殺せんせーはそれだけで二人に手出しできなくなる。

 

 そうしてあっという間に一分が過ぎ去っていき、最後まで雄二とカルマ君の逮捕報告がされることはなかった。

 

『タイムアップ! 全員逮捕されなかったので泥棒側の勝ち!』

 

 律の宣言を持って僕らの勝ちが確定した。

 これで烏間先生の奢りでケーキゲット! 今日の放課後が楽しみだ。

 

「なんか不思議〜。息が合わない二人なのに、教える時だけすっごい連携取れてるよね」

 

 ケイドロで僕らを教える殺せんせーと烏間先生を見て、倉橋さんが不思議そうに言う。まぁケイドロ中も息は合ってなかったと思うけどね。

 

「当然です。我々は二人とも教師ですから。目の前に生徒が居たら伸ばしたくなる。それが教師というものです」

 

「立派なこと言いやがって、汚職警官が。泥棒の方が向いてんじゃねーか?」

 

「にゅやッ! 何を言います聖職者に向かって! この先生が泥棒なんてするはずがないでしょう!」

 

 寺坂君の物言いに殺せんせーは必死で否定する。でも少なくとも警察には向いてないと僕も思う。

 さて、裏山を走り回って汗掻いたし早く着替えたい。シャワーも浴びたいけどまだ一時間目だし……僕もプールに飛び込もうかなぁ。




授業中にも関わらず原作でも携帯を使用しているのは協調性を高める訓練の一環ですかね。

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