オーバーロード "Mondo Diverso Alla Tomba" 作:ごむまり
おやつの時間に間に合いませんでした……無念。
アンチヘイトタグが何故か付いていましたので削除。恐らくスマホ投稿が裏目に出たようです。
この小説ではモモンガ様に甘いので内容的に逆です。ご迷惑をお掛けしました。
一体全体何が起こった!?
何故匂いを感じる!? 何故口が開く!? 何故NPC達は、加えてゴーレムまでここに居るんだ!?
──違う、一旦落ち着こう。
そう『如何なる時も冷静に』それが基本でしたよね、ぷにっと萌えさん。
よし、まずはこの場所から整理していこう。
ここは……見間違えようも無いな。ナザリック地下大墳墓の最奥、玉座の間。その丁度広間の中央辺りだろうか。
次に今の時間はっと……視界のインターフェイスが消えているな。ええっと、アイテムボックスはどうすればいいんだ?
あ゙ー、割りと始めっから分からないじゃないかこれ。アイテムよ! とか言えば良いのだろうか?
「──恐れながら、モモンガ様」
内心でこんこんと悩んでいる内に、アルベドが──あれ? さっきまで玉座の側に居たよな?──声を掛けてきた。
というか、これも分からない事の内一つだよなぁ。
「
なんでウロボロスが出たままなんだ!? それにうちのNPC達が喋ってるのは……良くないが一旦は置いておこう。なんでウロボロスに攻撃を仕掛けているんだ!? 全く意味が判らんぞ!
『モモンガさん、如何なる時も冷静に』──ってこれは無理ですよ、ぷにっと萌えさん! もう『だいたいるし★ふぁーが悪い』説でなんとかしよう。だいたい悪いし。
あー、うん。なんとなく気分がスッとした気がする。これからも悩んだらこれでいこう。
「あの……モモンガ様? 如何なされましたか?」
おっと。そういえばアルベドから、座ったらどう? みたいな事を言われていたっけ。しっかし、普通に話してるなぁ……首をこてんと傾げる様はかなり自然体だ。もうこういうものだと思うしかないか。
しかし、その。こう、ね。アルベドさんや。
とても距離が近いというか。しなを作っているせいで胸が強調されているというか。何か良い匂いもするというか。
「いや、アルベド。なんでもにゃいで──なんでもないぞ」
噛んだ。
いや、こんな
あー、またなんかスッときた。なんなんだこれ? 心が落ち着くというか、波が治まっていくというか。
うん。一先ずは言われた通り座ろう。これで距離も置ける筈だろうし。
うん。
素直に玉座に座ったまではいい。未だにドンパチしている広間はちょっと不味いけどそれは次でいい。
「モモンガ様。どうやら先程から何か御悩みな御様子。不肖ながらこのアルベド、全力を持って御力添えさせて頂く所存です」
アルベド、近い。
いや、なんかもうそういうお店だっけナザリック。無理矢理連れられた一回だけだけど、それよりもっと密着度高いなこれ。腕に当たってるから柔らかいから貴女も良い年頃なんだからもっとこう慎みをね。あー、良い匂いする。
──はい三回目。なんとなく掴めてきたな。
感情が昂ると落ち着くのか? なんにせよ暴走しそうになくて助かるな。……情けない話だけど。
「あー、そうだな。アルベドよ、お前のアイテムボックスから何か出してみてくれないか?」
それと折角だし、本当に悩んでいる部分を聞いてみようか。少なくとも何か情報は増える筈だろうし。
というか、咄嗟にロール風味で話しちゃってるけど平気……だよな? 相手も何故か敬う感じだし。こんな時なのにロールプレイに興じてしまうとは、我ながら悪い癖だよなぁ。
「お前……長年連れ添った夫婦……くふっ、くふふふ」
「アルベド?」
「──ハッ! し、少々御待ち下さいませ!」
「焦らずとも良い。ゆっくりやってくれ」
あー、美人さんが慌てる所って良いなぁ。しかし、どうやってアイテムボックスを開くのかは、しっかり見ておかないと。
ふむ。服に手を掛けるか。
こう懐に手を入れると取り出せるような感じだろうか? ……なんだか猫型の便利ロボットみたいだ。
ん?
んんんんんん!?
ちょおっとアルベドさんや、どうして服を全て下ろそうとしている!?
「ちょまっ、ア、アルベド? 何故服を脱いでいるんだ?」
「申し訳の無いことに、私のアイテムボックスには現在何も入っておりません。なので、今から装備している衣服を収納し差し出そうかと」
いやいやいや、そこまで頼んでないから! 全く親の顔を見て──あぁ、そういえばタブラさんが張り切って設定書いていたっけ。
と、すると色々変な行動も納得できるか。『るし★ふぁーも悪いけどアルベド関連はタブラも悪い』よし、これでいこう。俺の心の平穏を守るために犠牲になってくれ、二人とも。
「モモンガ様……その、こちらで宜しいでしょうか?」
いや、空想に逃げても逃げられないのは知ってた。見ないように下を向いていたけど、受け取るなら前見ないとダメだよなぁ、これ。
もちろん決して欲望に負けたわけでは無くて、これは情報を集めるために致し方ない犠牲なんだ。そう確かコラテラル・ダメージ? という奴なんだ、きっと。
飲めない唾を飲み込んで声のした方に視界を向けた。
其処に在ったのは僅かな朱を頬に走らせ、少し困ったように不安げな表情でこちらを上目に見据えるアルベド。その身体には一糸も纏わず、上は片腕で、下は腰に生えた翼でその神秘を隠し通している。その全身は白く輝いて見え、その身に着けていた上質な
突如として埋まる視界。自らの前半分に感じる温もりと同時に感じる柔らかな感触。それは先程隠されていた神秘の一画であり、夜闇すら見通す程の高性能な眼窩はその全てを嘗ての海馬部分へと余すこと無く収めていた。あぁ、これこそが我々が求めていたエデンの園かペロロンチーノさん。貴方の求めた道は此処にありま──「くふふ、モモンガ様と、くふっ、皆に見せ付ける様にしっぽりと……くふー!」──はっ!?
なんとか正気を取り戻した際、適当に念じるとアイテムボックスに繋がる空間が開くと分かった。
使わないまでも羽織れる装備品を入れておいて助かった……。本当に。
現在はアルベドをちょっと下げさせた。色々危ういわあの娘。今だってなんか柱の陰からチラ見してくるし。妙に俺のツボをツイて来るのは誰かの入れ知恵か?
さてと、当初の思惑通りとまでは言えないが順調に消化出来ているな。順調に。
結局時間は──色々あったから分かっていたけど──とっくにサービス終了の時刻を過ぎていた。
そして先程のアレな出来事からハラスメント行為の警告も出ない。それ故に、ここはユグドラシルでは無いことが分かる。
……確かに分かったは良いんだけど、なんだかなぁ。
そして次に自身の肉体の変化もある。アレだけあって全く反応もしていないし、見える手足は骨である。纏う服装も豪華なローブ、と完全にユグドラシルでのアバター、モモンガの姿なようだ。
まぁ、この身体? に変わっての違いは追い追い、だな。心が落ち着く事とかは気にはなるが……正直今はあっちが不味い。というか、ヤバイ。
玉座の間は広大である。
百人乗っても大丈夫な物置を数個置いても余裕で大丈夫なうえ、棒高跳びの世界記録保持者が頑張って十倍高く飛んでも頭をぶつけない。
要するにとても広い。さながら気分は小学校の体育館である。
そして、そこで繰り広げられている大バトル。という名の魔法撃ちっぱなし合戦。攻撃される対象のウロボロスは意に介さず無言を貫き、NPC達はこぞって魔法やスキルをぶっぱなしている。
……うん。どうやって止めたらいいんだろう。NPCに声を掛けるのは正直な所、なんか怖い。
そういえば何故ウロボロスはまだ消えていないんだ? 確かにアイテムとして使った筈なんだが……もしかして、願い未履行で発動段階で待機しているとかか?
えーと、確か腕輪は
ということは、適当に願えば消えてくれるのか? いや、そもそも願ったところで本当に叶うのか? どういった仕様になるんだ?
……ふむ。こうなると途端に何を願うかが重要になるな。恐らくはユグドラシルではない別の世界、はたまた何かのゲームにでも移った可能性がある訳で。今まで取得したスキルや魔法はなんとなく使い方も分かる。つまりはユグドラシルでの設定も反映されているのかも、いやされている筈だろう。
あまり変な事を口走りでもすれば、どうなるか判ったものじゃないな……これは結構悩むぞ。
いつもならこういう重要な事柄は、ギルメン皆で多数決を取っていたし。大体が建設的な意見を出すたっちさんとそれに対抗したウルベルトさんで分かれるんだよなぁ。おまけに
はぁ。
皆は一体どこに行ってしまったんだろうか。流石に俺だけがこの場に居る訳じゃないんだろうけど。
もし、判るなら──
「ギルメンの皆の居場所さえ判れば迎えに行くのになぁ……」
『よかろう。お主のギルドメンバーがこの世界に居る場所を特定出来る様にしてやろう』
「……あっ」
なんとなしに呟いた後、思わず手の中を見れば未だに握り締めたままの腕輪がある。さっきの呟きが願いとして受理された様だった。
せめてYES/NOの問い掛けが欲しい。流石はユーザーからクソアイテム呼ばわりされた
──いや、少し考え方を変えてみよう。
俺がここに居るように他の皆だって居るのかもしれないし、無意識な呟きからとはいえ最終的に探すことを考えれば、ベターな願いかもしれん。
……いやそれなら「皆をナザリックに戻してくれ」とでも願えば良かったんだろうけどさ。もう手遅れそうだしなぁ。
厳かな声が消えると同時にその巨大な姿も掻き消え、手の中には腕輪の代わりに見慣れぬ円盤の形をした機械が残っていた。
これが居場所を特定出来るアイテムになるのか? 見た感じは少し大きな、懐中時計型のレーダーみたいだけど。
「<
ユグドラシルとは違い自らの脳に直接──恐らくこの身体には無いだろうが──そのアイテムの情報が刻まれた感覚がある。そして予想通りに魔法は問題なく使用出来た。
まぁ、さっきまでやたらとドンパチしていたから、ある意味判り切ってはいたんだけど。
ウロボロスが残した物……仮にギルメンレーダーとでも言おうか。これはアインズ・ウール・ゴウンのメンバーが居る位置を光点と音で知らせ、その位置までを方位と距離で表すという実にシンプルなものであった。
誰が居る、というまでは分からないようだが。案の定今は自分に反応して、ピコンピコンと中々煩い……あっ、音は消せるのか。ふむふむ、光点に名称を付けて区別する事も出来るな。
まぁともかく、こいつは後でじっくり確認するかとアイテムボックスへと収納。さてと、今一度周囲の状況を確認する。
本音を言えば今すぐにでもギルメンレーダーを頼りに探しに行きたい。先程見た限りでも光点は幾つか確認出来、更にその内幾つかは比較的に近いようであった。
しかし自身の周りでは、敵視していた者が突如として消え失せたせいか立ち尽くす
こんな視線が突き刺さる中で自分勝手に行動出来るほど、自分は楽観的でもマイペースでもないのだ。
「皆の者、ご苦労であった」
徐に立ち上がり、頑張ったNPC達を労う言葉を投げ掛ける。アルベドとの会話からしてもこちらを敬っていることは明白。ならば、それ相応の
「──あの蛇は去り我らが願いが成就した。当初こそ此方が有利であったが、この地へと飛ばされ危うかったのだ……。しかしながら、我が優秀な配下である諸君らの働きにより、危機は回避されたと言えよう。大義であった」
どことなく暗い表情の多かったNPC等も、自分の言葉を受けて幾分か和らいだ表情を見せたようだ。
しかし、十全とは言えなかった。何故なら苦し気に口を開く者が居たからである。
「恐れながらモモンガ様。我々
冷酷且つ残忍で理知的、悪魔である故に悪魔らしくあれ。
確かそんなコンセプトで創られた──ウルベルトさんがえらく豪語していた──であろうデミウルゴスが、常に浮かべていた微笑を引っ込めて、苦々しい表情をしている。
しっかし、僕ねぇ。そこまで卑下しなくても良いのになぁ。
「ほう。それはまた何故だ?」
「我々はヘロヘロ様より直接の指名を──勅命を受けておりました。ヘロヘロ様の御言葉は難解であり、私の意訳とはなりますが……『指定の時刻に玉座の間へ集まり、現れた蛇を全力で打倒せよ』との事であられました。ですが我々のみでは力及ばず、あまつさえモモンガ様の御手を煩わせる始末。弁解の余地も御座いません」
要するに命令を遂行出来なくて悔いているのか? もう少し気楽に考えてはくれないかなぁ……。
しかし、デミウルゴスのお陰でようやく分かった。この大集合はヘロヘロさん絡みだったということか。ならば、あの物言わぬゴーレム軍団はあいつだな。元の場所まで動けるんだろうなゴーレム達は。見るからに停止中じゃないか。
「ふむ、デミウルゴスよ。私には解らぬな。諸君らはこの場に於いて万が一での対応に呼ばれ、その万が一が起こった現状で私の準備が整うまで持ちこたえた。……なんだ、言葉に起こせば何も問題等無いではないか。だろう? デミウルゴス」
「──御配慮頂き有難う御座います。僕一同、心よりの感謝をモモンガ様に」
ふぅ。なんとか納得して貰えて良かった。ちょっと堅苦しすぎるというか。重く捉えすぎと言うのか。
……少し話しただけでも分かるな。なんなんだこの忠誠度、軽くカンストしてるんじゃないか?
俺、中身は只のおっさんなんだけどなぁ……。
あー、もう今更接し方を変えたりとかは……無理だろうな。高い忠誠心が裏返って、もしも反乱されたら今の俺だけじゃ太刀打ち出来ないだろうし。
……まぁ、この様子を見てればそれも心配無さそうではあるんだが。
それに相手が上位者を求めるなら、支配者ロールを演じるのも悪くない。
とりあえず、今後の方針だけ話してこの場はもう閉めよう。
さて、まずはどうするか。
最早何が起こるか分からないしな。ここは万全の体制を整えてから、皆を迎え入れるようにするのが懸命じゃないだろうか?
しかし、あまり時間を掛けるのも宜しくないだろう。辺鄙な地へと放り出され、明日をも分からない暮らしをしているかもしれない。
情報収集とギルメンの探索。この二つをいっそのこと同時に執り行えば……。いや、ナザリックの防衛も確認しないと。
──ああっ、判らん!
現時点だと未知の部分が多すぎるな。もういっそ外に出て確認してみるか? この未知なる世界を探索……ん? これって結構良いんじゃないか?
よし、そうと決まればこの場は解散して早速外に出てみよう。
▽△▽△▽△▽△
ナザリックの外周付近なう。
うん。きれいな景色だ。見慣れた沼地ではなく、草原が広がっている。
そういえば、「現状を伝える時は『なう』って言うのが様式美らしいですよ、お骨さん!」とかレインさんが言ってたっけ。
確かあの後も気に入ったのか使い続けてて、「敵影発見なう」「弐ぃさん連れて直上なう」「敵後衛壊滅なう……あっ、弐ぃさんdeadなう」とか戦闘中でも挟んで来たよなぁ。
で、一時期ギルメンの中でも流行り出すし。おまけに派生も作られる始末。『わず』だっけ?
あまりにも皆がなうなう言うから戦闘中は自重しましょう、って決定までしたよなぁ。
うん。まぁ、こんな状況なら過去を振り返りたくもなる。
チラリと後ろを窺えば、セバスとマーレ。加えて、ぞろぞろと列を成してついて来るナザリック産の配下MOB──アルベドが言うには義仗兵──が目に入る。その数、およそ二〇〇。
いや多すぎないか!?
改めて見ても多いわ、これ。
それとなく数のことを指摘しても──
「なにぶん急な事でしたので、ナザリック・マスターガーダーはこの程度の用意しか出来ずに申し訳ありません。くっ、警備の見直しやナザリック全域の確認が無ければ私自らが申し出るというのに……!」
「モモンガ様、不足分には配下の魔将を御付け致しておりますので、御心配無く」
「モモンガ様! わた──わらわ配下の
「ナラバ、我ガ部下ノ親衛隊カラモ幾ツカ同行サセマショウ」
「はい、はい! あたしからはフェンをお付けしますね、モモンガ様!」
「あ、あのっ……ボクは直接モモンガ様に、つ、付いて行きますっ」
「「「「「!?」」」」」
「──でしたら私も執事として、モモンガ様に待従致します」
「「「「「!?」」」」」
「そ、そうか。ではその様にせよ」
この始末である。わず。
とびきり笑顔のマーレと密やかに微笑むセバスが印象的だった。
他の守護者からの強い視線もなんのその。そんな様子の二人に急かされて、大群引き連れての行進をする羽目になった訳だ。
単なる興味本意からの行動なんだけどなぁ……ここまでされると息が詰まりそうだ。
まぁ、一旦は置いておこう。それよりも周囲を探る方が建設的だろうし。
「この中で一番探知に優れた者は誰か判るか?」
「え、えっと。この中ならお、お姉ちゃんのフェンが一番です」
「確かに探索範囲は一番でしょう。調べさせますか?」
「ナザリック周囲数kmの様子が知りたい。何か知的生命体が居れば教えてくれ」
「お、「仰せのままに」」
「そ、それじゃあフェンお願い」
風によってザアザアと揺れる草原に、日が暮れかけて見えた夕焼けの赤色。そこに一声鳴いて駆けるフェンの黒が混ざり、そして瞬く内に姿を消した。
しばらくすれば戻るだろうし、それまではぶらぶらしておくかな。
「あ、あのモモンガ様!」
「ん……どうかしたのかマーレよ?」
なんて考えていればマーレから声を掛けられる。聞きたい事でもあったのだろうか?
「そ、その……モモンガ様以外の至高の方は、どちらへい、行かれたのでしょうか?」
思わずどきりと無い心臓が跳ねる。こっそりと探しに行こうと考えていた事が見透かされた? ……いや、単にマーレも疑問があり心配であったのだろう。
少し考えれば判る事じゃないか。まだ子供のマーレが創造者に会えたいと思う事はなんら不思議でもない。茶釜さんも溺愛してたからなぁ……親思う心にまさる親心という奴だろうか。
「それに関しては私の方で情報を精査次第、皆に伝えようと思っていたのだが……マーレ、それにセバス。お前達には一足早く伝えるとしよう」
心なしか身構えて見える二人に見せ付けるように、先程仕舞ったギルメンレーダーを取り出した。
途端にピコンピコンと響く電子音。おっと、機能を切っておかないと……。
「モモンガ様、そちらの物は一体?」
「あぁこれはだな、お前達も覚えてるだろうがあの蛇からもぎ取ったアイテムになる。簡単に言えばアインズ・ウール・ゴウンに所属しているメンバー専用の探知機の様なものだな。哀しい事に我がギルドの各員が、今何処に居て何をしているかは判らぬ。だが、これさえあれば少なくとも位置は把握出来る。迎えを寄越せる訳だ」
「そ、それならば、探せばまた御会い出来るのですね!?」
「あぁその通りだ。しかしナザリックを手薄にして出掛ける訳にもいかん。防衛態勢が整い次第、探索隊を編成して向かいたい所だな」
こうして俺が考えていた事を伝えた。反応は概ね良好で、二人とも「是非探索隊に」とお願いされる程であった。
そうだよな、NPCにとってはギルメン皆が産みの親という訳で。忠誠はともかく、心配するのは至極当然の事だ。変に警戒心を抱いていた己の心を恥じる。彼ら彼女らはこんなにも俺達の事を思っているというのに。
……まぁ、それでもちょっとアルベドはね。うん。
────ォォーン!
辺りに響く巨狼の遠吠え。何かを見付けたのかと尋ねようとすれば、血相を変えたマーレがそこに居た。
「モ、モモンガ様! フェンが何者かを発見したみたいです。ですがこの気配は……」
「おぉ……これは御迎えの御用意をしなくては」
「? お前達、一体どうしたと──」
相手の姿すら見えない状態の筈だがこの様子。疑問は尋ねる前に答え自体が赴く事で解消される。
「いっやぁー、正に読み通りの結果じゃないですか! 流石は我らが名軍師、ヘルメスさん並みに尊敬しますよ」
「一つ目から大当たりとは、私たちの運も一周回って巡って来たんでしょうか? というか今更褒めても遅いですからね、賭け分はしっかり頂きますので」
あまりの驚きで言葉が出なかった。例の現象が何度も起こっていると言えば判りやすいだろうか。
空から降り立った二人の異形は、それこそ見慣れた体で近寄り目の前で止まった。
「やぁやぁモモンガさんお久し振りです。と言ってもモモンガさんにしてみれば、あまり時間が経ってないかもしれませんが。ま、積もる話はナザリックに入ってしましょう。いや~久々のホームだ」
「ちょっとタブラさん、挨拶も重要ですがはぐらかそうとしても無駄ですからね? 高原産の花の蜜ですからね、モモンガさんも証人ですよ。モモンガさん今は混乱しているでしょうから、円卓の間辺りで話しませんか? ……しかし、リアルナザリックが体感出来るとは、実に興味深い」
ここで漸く心が落ち着いたらしい。頭に浮かぶは様々な言葉に疑問。しかしそれら全てを飲み込んで、今はこれだけを言おうと思う。
「タブラさん、ぷにっと萌えさんお帰りなさい! 円卓の間に早速行きますか? それともナザリックを見て回ります? 実は私もこの状況になってからまだ見てなくてですね、九階層とかは物凄く気になってはいたんですけど、状況把握が先かと思ってましたから。あっ! そうそう、見て判ると思いますけどNPC達が自由意思で動いてるんですよ! 凄いですよね! そういえばタブラさんはアルベドに何かを吹き込んだりしました? 彼女のせいで色々と、あー不味い事になりかけたんですよね。なのですみません、一発殴らせてくださいね。って避けないで下さい! こっちはもう少しで猛獣に食われる所だったんですから! あっ、飛んで逃げたって無駄です、<
「あ、あのぷにっと萌え様?」
「ん? ……あぁ、マーレでしたね。どうかしましたか?」
「ボク達はど、どうすれば宜しいでしょうか?」
「えーと……因みに後ろの大軍は何? 戦争でもするつもりだったの?」
「あれらはモモンガ様の儀仗兵でございます、ぷにっと萌え様」
「儀仗兵って……多すぎるでしょうに。とりあえず帰してくれて良いよ。私達は円卓の間に向かうと思うから。話が終わったら<
「ハッ! 畏まりました。急ぎ御帰還を祝う宴の準備も致しますので。お帰りなさいませ、ぷにっと萌え様」
「お、お帰りなさいませ。ぷにっと萌え様!」
「宴……まぁ、良しとしますか。はいはい、ただいま二人とも。あのお馬鹿二人が帰ってくるまで話し相手になって貰いましょうか」
Q.モモンガ様アンデッドなのに動揺しまくりじゃね?
A.穢れを知らない無垢な身体ですし、多少はね?
オリジナル設定の雑解説
・アルベド
┗誰かさんの好みに合わせた性格。複数名による入れ知恵。骨キラー。ちなみにビッチである。怨みが無い。代わりに襲う。対象は至高の四十一人のみ。だといいけどなぁ……。
最後になりましたが、一話目からお気に入り等々ありがとうございました。マイペースにこれからも続けさせて頂きます。