ある日、カズマの屋敷を訪れた来客を出迎えるカズマとアクア。
「「……あなた、だれ?」」
貴族の女性がふたりの前に立っていた。彼女はまくし立てる。
「私を忘れたのか!?」
「そう言われましても……、カズマ、あなた知ってる人?」
「いや? こんな美人な貴族のご令嬢の知り合いはいないな」
「!!」
しばし沈黙が流れる。
「いま、何と言った!?」
「いや、美人な貴族のご令嬢と……」
「はうぅっ!」
「なんだ? 何がツボったんだろう、この人……」
「美人貴族令嬢を犯してみたいと……」
「そんなこと言ってねー!」
「あらっ……、もしかして、あなた、ダクネス!?」
聖騎士(クルセイダー)ダクネスは、カズマのパーティの一員だ。そして、彼女は筋金入りの変態でもある。彼女にとって、くっ殺が似合う女騎士は天職だと言えよう。
彼女はお見合いのため、今まで一時的にここを離れ、実家に戻っていた。お見合いの日程が決まって、また一時的にこの屋敷を訪れている。
なんのためにこの屋敷に来たかというと、お見合いを破談にしてもらう手伝いを、カズマたちに頼みに来た。彼女は冒険を続けたかったのだ。
この日のダクネスは、ふだんの鎧姿ではなく、貴族らしいドレスを着ていた。そのため、ふたりはひと目見て、ダクネスだと分からなかったのだ。
「ダクネスは黙っていれば美人なんだよなー」
「そうねー。ちゃんと着飾れば美人さんよねー」
他愛もない世間話をしているようで、この日のアクアは違っていた。ダクネスをジト目で見ていたのだ。
日も暮れ、ダクネスは屋敷に泊まっていくことになった。そこで彼女は寝る前に風呂に入る。脱衣所でダクネスは服を脱いでいく。そして、彼女は浴室に入り、まず身体をお湯で流して洗おうとする。
「ガラガラッ」
「!」
とつぜん、浴室に入ってきた者がいた。だれかと思えば、アクアだ。ダクネスは一瞬驚いたが、女同士なのですぐに警戒を解く。
「アクアか。どうしたんだ?」
「ダクネスの背中を流してあげようと思ってぇ~」
「じゃあ、お願いしようかな」
アクアはダクネスの身体を手で洗っていく。ふたりの身体はだんだん石鹸の泡にまみれていく。アクアは自分の胸にも泡を立てているのだ。そして、ダクネスの背中に胸を押しつける。
「アクア? そのー、当たってるんだが?」
「当ててんのよ」
アクアは両胸をボインボイン弾ませて、ダクネスの背中を洗う。手も下半身に伸びていく。ダクネスは心地よさを感じながらも、同時に違和感を覚えていた。
「アクア? なんか、その……変な感じなんだが?」
「んー? なにがぁ~?」
「女同士とはいえ、その……ちょっと大胆すぎないか?」
「ダクネスは、めぐみんとゆんゆんをもう見たよね?」
「ああ……」
ダクネスはこの屋敷に来て、めぐみんとゆんゆんに会った。そして、そのイチャイチャぶり――ゆんゆんからの一方通行だが――を目の当たりにした。最初は少し驚いたものの、可愛らしくほほえましいカップルだと感じた。
「私はもう見たぞ。それが何か?」
「わたしね、あのふたり見てて、気づいちゃったんだ」
「なにに?」
「愛は性別を超えるって!」
「……!?」
ダクネスはハッとした。これはもしかして、女だからまったく予想していなかった展開? 心なしか、背後からのアクアの吐息が荒くなっているようだ。
「あ、あのー? アクアさん?」
「ダクネスって胸大きいし、スタイル良いわよね~?」
「そ、その、もしかして、アクアは……」
「わたし、女の子でも好きになれるから!」
これでハッキリした。ゆんゆんのように、アクアも百合に目覚めたのだ。
「いや、済まないが、私にはソッチの気はないから」
「ダクネスは変態さんでしょう~?」
「たしかに私は変態だが、レズではないぞ!」
ダクネスがアクアから離れて、自分の身体をギュッと抱く。そうして目をつぶって、顔を赤くしている。彼女に密着していたアクアの乳房が、プルルンと揺れた。
「じゃあさ、こう考えたらどうかしら? 好きでもない女に無理やり開発されちゃうって!」
「開発……?」
「開発された後に、調教されちゃうのよ!」
「調教……!?」
ダクネスの表情が変わった。レズに興味を示したようだ。いやそれどころか、興奮しているのか、身体を小刻みに震わせている。
「アクア! 私の女王様になってくれ!」
「おやすい御用よ。わたしは女神だから、格下の女王なんか、上位互換できるのよね」
「私は騎士だから、仕える女王様が欲しかったんだ」
「わたしも仕えてくれる人間が欲しかったのよ。まあ女王より女神が良かったけど……」
ダクネスは振り向いて、アクアの手を取った。そして、ブンブンと上下に振る。自分の未知の性癖を開発できそうで、感激しているのだ。
「じゃあ、ダクネス。さっそくひとつ試してみない?」
アクアはダクネスと正面から向き合い、ふたりの胸と胸をくっつける。そして今度は、胸同士で洗いっこを始めた。
「あっはぁ~ん!? さすがにこれは、女同士でも感じてしまう……!」
「はぁはぁ、ダクネスの胸大きいから、洗いがいがあるわね」
そして、アクアは心ゆくまでダクネスの肉体を堪能した。
次の日。屋敷にまた別の来訪者が来る。
「カズマ! サトウカズマはいるか~!?」
「だれだー!?」