この素晴らしい百合に祝福を!   作:青戸礼二

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1話:この誇らしい好敵手に再会を!

 

「エクスプロージョン!」

「ドカーン!!」

 

魔法使いめぐみんは、今日も爆裂魔法を撃つ。街から少し離れた草原で、山に向かって撃つと、山腹が轟音を立てて爆発した。

 

彼女は紅魔族の彼女は体質のため、魔力を排出しなければならず、この魔法詠唱が毎日の日課となっている。もっとも、めぐみん自身は爆裂魔法を撃つこと自体に快感を得ていた。

 

 

「あー、クセになるうー!」

 

しかし、爆裂魔法を一回撃っただけで、めぐみんは魔力を使い果たしてしまう。そして、その場で動けなくなってしまうのだ。これも彼女が爆裂魔法のロマンを追求した代償。

 

「あのー、カズマさーん?」

 

ふだんなら、めぐみんが所属しているパーティのリーダーである、冒険者カズマが連れて帰ってくれるはずだ。しかし、今日はなぜかいない。なぜだろう?

 

「おーい、クズマー、ゲスマー」

 

いつもなら、悪口を言えばすぐに、カズマが飛んでくるはず。しかし、今日は本当に来れないようだ。いったいどこで何をしてるんだろう?

 

「うーん、どこかで浮気してるのかなー」

 

もちろん、これは冗談。めぐみんとカズマとは、少し意識する程度の仲だ。好意的に見ても、せいぜい友達以上・恋人未満くらいの関係でしかない。

 

「……」

 

まあ、ここら辺にはモンスターも出ないし、このまましばらく待っていれば、たいした問題はないだろう。めぐみんはそう考えた。しかし――。

 

 

「ザッ、ザッ、ザッ」

「だ、だれ……!?」

 

とつぜん何者かが現れた。しかし、今は倒れているので、足音でしか分からない。身動きも取れないだけに緊張が走る。めぐみんは心細くて、今にも泣きそうな顔をした。魔法が使えるといっても、やはりまだ幼さが残る少女だ。

 

「私よ、めぐみん」

「……その声は、あなた、ゆんゆん!?」

 

ゆんゆんも魔法使い(アークウィザード)の少女。めぐみんと同じ紅魔族の出身で、前から知っている友人だ。もっとも、ゆんゆん側が勝手にライバル視して、勝負を挑んでくるという一方通行の関係だったが。

 

 

「な、何するの? また勝負?」

「……」

「動けない相手に勝って嬉しいの? 卑怯よ!」

「……」

「ま、まさか命までは取らないわよね!?」

「……」

「そうだ、一緒に昼食を取る権利をやろう!」

「……」

「あ、あのー、わたしの負けでいいから、許して?」

「……」

「あなたの乳が勝ってることは認めるから!」

「……」

 

不気味な沈黙を続けるゆんゆん。めぐみんは倒れているため、その顔色はうかがえない。よほど日頃から憎しみを溜めていたのだろうか? もっと手加減して接待勝負で勝たせてやれば良かったのだろうか? めぐみんの頭の中では、走馬燈(そうまとう)のように、今までの想い出がグルグルと駆けめぐっていた。

 

 

「めぐみん、……よ」

「……え?」

「私、めぐみん、好きよ」

「――えーっ!!」

 

とつぜんの愛の告白。めぐみんには衝撃だった。

 

「ゆんゆん、あなたいつから、ソッチの気があったの?」

「この前のヌルヌルプレイで目覚めたのよ」

「あ……」

 

 

めぐみんは思いだした。あれはカズマたちと、カエル討伐のクエストをしていたとき。爆裂魔法を撃って、めぐみんは身動きが取れなくなった。そして彼女は、カエルに飲み込まれてしまった。

 

しかしその後、助けに入ったゆんゆんの魔法攻撃もあって、めぐみんは助け出された。そしてそれから、ゆんゆんが勝負を挑んできた。そこでめぐみんは、カエルのヌルヌルな体液まみれのまま、体術勝負に持ち込む。ゆんゆんに抱きついて、彼女までヌルヌルまみれにしてやったのだった。

 

「あーあのときのヌルヌルかー」

「今日は私がローション持ってきてるから」

「わ、わたし、ソッチの気はないので……」

「あの素晴らしいヌルヌルをもう一度!」

「あーん! 助けてカズマー!」

「ウフフ、男なんて忘れさせてあげるから……」

「くっ殺ー!!(ダクネス風)」

 

 

ゆんゆんはめぐみんの服を脱がし始めた。めぐみんはいつもの魔女風衣装を着ている。黒をベースに赤と黄の色が鮮やかで、三角帽子が特徴的だ。対するゆんゆんの衣装は、黒をベースとしてピンクと赤がアクセントになっている。上胸をはだけ、プリーツのスカートを履き、ゆんゆんより女の子らしい。

 

服が脱げていき、めぐみんの肌もはだけてきた。そしてふたりとも、黒髪を持ち、紅魔族に特有な赤い目をしていた。その瞳でふたりは見つめあう。ゆんゆんは真っ直ぐな瞳で、熱い視線を向けてくる。めぐみんは思わず目をそらす。彼女の想いを正面から受け止められずに困惑していた。

 

「ゆんゆん、本気なの……?」

「私は本気だよ!」

「でも、女の子同士だよ……?」

「それがいいのよ!」

「あーん……、もうどうしよう?」

 

 

めぐみんの肌がだいぶ露出したところで、ゆんゆんはローションを取り出して、彼女の身体に塗り始めた。めぐみんの細い腕、スラリとした脚、スリムなお腹、さらに下腹部に……。彼女の肢体をゆんゆんの手が滑るたびに、めぐみんのあえぎ声が漏れた。そして、その声はだんだん熱を帯びてくる。

 

「あんっ……、なんか身体が熱いよ?」

「ウフフ、これ媚薬入りだからね……」

「やだっ、もう、変な感じ!」

「アハハ、すぐに良くなるから」

「この、クレイジーサイコレズ!」

 

 

――しばらく、ふたりが抱き合った後。

 

「汚れてしまった……」

「あら、男に汚されるよりいいわよ?」

「もうお嫁に行けない~」

「私がもらってあげるから」

 

ゆんゆんは、照れて赤く染まった頬に両手を添えて、もじもじしている。一方のめぐみんは、ハイライトの消えたジト目で、涙を流していた。

 

そして、めぐみんはゆんゆんにおぶられて、街へと帰って行った。

 

 

一方その頃、カズマは離れたところにある木陰で、荒縄に縛られていた。口には猿ぐつわの布を噛まされている。めぐみんと帰る前に、少し用を足しに離れたところを、ゆんゆんに背後から襲われたのだ。

 

「ムグー! ムグー!」

 

カズマの存在は忘れ去られたまま、夜は更けていった。

 

 

 


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