「エクスプロージョン!」
「ドカーン!!」
魔法使いめぐみんは、今日も爆裂魔法を撃つ。街から少し離れた草原で、山に向かって撃つと、山腹が轟音を立てて爆発した。
彼女は紅魔族の彼女は体質のため、魔力を排出しなければならず、この魔法詠唱が毎日の日課となっている。もっとも、めぐみん自身は爆裂魔法を撃つこと自体に快感を得ていた。
「あー、クセになるうー!」
しかし、爆裂魔法を一回撃っただけで、めぐみんは魔力を使い果たしてしまう。そして、その場で動けなくなってしまうのだ。これも彼女が爆裂魔法のロマンを追求した代償。
「あのー、カズマさーん?」
ふだんなら、めぐみんが所属しているパーティのリーダーである、冒険者カズマが連れて帰ってくれるはずだ。しかし、今日はなぜかいない。なぜだろう?
「おーい、クズマー、ゲスマー」
いつもなら、悪口を言えばすぐに、カズマが飛んでくるはず。しかし、今日は本当に来れないようだ。いったいどこで何をしてるんだろう?
「うーん、どこかで浮気してるのかなー」
もちろん、これは冗談。めぐみんとカズマとは、少し意識する程度の仲だ。好意的に見ても、せいぜい友達以上・恋人未満くらいの関係でしかない。
「……」
まあ、ここら辺にはモンスターも出ないし、このまましばらく待っていれば、たいした問題はないだろう。めぐみんはそう考えた。しかし――。
「ザッ、ザッ、ザッ」
「だ、だれ……!?」
とつぜん何者かが現れた。しかし、今は倒れているので、足音でしか分からない。身動きも取れないだけに緊張が走る。めぐみんは心細くて、今にも泣きそうな顔をした。魔法が使えるといっても、やはりまだ幼さが残る少女だ。
「私よ、めぐみん」
「……その声は、あなた、ゆんゆん!?」
ゆんゆんも魔法使い(アークウィザード)の少女。めぐみんと同じ紅魔族の出身で、前から知っている友人だ。もっとも、ゆんゆん側が勝手にライバル視して、勝負を挑んでくるという一方通行の関係だったが。
「な、何するの? また勝負?」
「……」
「動けない相手に勝って嬉しいの? 卑怯よ!」
「……」
「ま、まさか命までは取らないわよね!?」
「……」
「そうだ、一緒に昼食を取る権利をやろう!」
「……」
「あ、あのー、わたしの負けでいいから、許して?」
「……」
「あなたの乳が勝ってることは認めるから!」
「……」
不気味な沈黙を続けるゆんゆん。めぐみんは倒れているため、その顔色はうかがえない。よほど日頃から憎しみを溜めていたのだろうか? もっと手加減して接待勝負で勝たせてやれば良かったのだろうか? めぐみんの頭の中では、走馬燈(そうまとう)のように、今までの想い出がグルグルと駆けめぐっていた。
「めぐみん、……よ」
「……え?」
「私、めぐみん、好きよ」
「――えーっ!!」
とつぜんの愛の告白。めぐみんには衝撃だった。
「ゆんゆん、あなたいつから、ソッチの気があったの?」
「この前のヌルヌルプレイで目覚めたのよ」
「あ……」
めぐみんは思いだした。あれはカズマたちと、カエル討伐のクエストをしていたとき。爆裂魔法を撃って、めぐみんは身動きが取れなくなった。そして彼女は、カエルに飲み込まれてしまった。
しかしその後、助けに入ったゆんゆんの魔法攻撃もあって、めぐみんは助け出された。そしてそれから、ゆんゆんが勝負を挑んできた。そこでめぐみんは、カエルのヌルヌルな体液まみれのまま、体術勝負に持ち込む。ゆんゆんに抱きついて、彼女までヌルヌルまみれにしてやったのだった。
「あーあのときのヌルヌルかー」
「今日は私がローション持ってきてるから」
「わ、わたし、ソッチの気はないので……」
「あの素晴らしいヌルヌルをもう一度!」
「あーん! 助けてカズマー!」
「ウフフ、男なんて忘れさせてあげるから……」
「くっ殺ー!!(ダクネス風)」
ゆんゆんはめぐみんの服を脱がし始めた。めぐみんはいつもの魔女風衣装を着ている。黒をベースに赤と黄の色が鮮やかで、三角帽子が特徴的だ。対するゆんゆんの衣装は、黒をベースとしてピンクと赤がアクセントになっている。上胸をはだけ、プリーツのスカートを履き、ゆんゆんより女の子らしい。
服が脱げていき、めぐみんの肌もはだけてきた。そしてふたりとも、黒髪を持ち、紅魔族に特有な赤い目をしていた。その瞳でふたりは見つめあう。ゆんゆんは真っ直ぐな瞳で、熱い視線を向けてくる。めぐみんは思わず目をそらす。彼女の想いを正面から受け止められずに困惑していた。
「ゆんゆん、本気なの……?」
「私は本気だよ!」
「でも、女の子同士だよ……?」
「それがいいのよ!」
「あーん……、もうどうしよう?」
めぐみんの肌がだいぶ露出したところで、ゆんゆんはローションを取り出して、彼女の身体に塗り始めた。めぐみんの細い腕、スラリとした脚、スリムなお腹、さらに下腹部に……。彼女の肢体をゆんゆんの手が滑るたびに、めぐみんのあえぎ声が漏れた。そして、その声はだんだん熱を帯びてくる。
「あんっ……、なんか身体が熱いよ?」
「ウフフ、これ媚薬入りだからね……」
「やだっ、もう、変な感じ!」
「アハハ、すぐに良くなるから」
「この、クレイジーサイコレズ!」
――しばらく、ふたりが抱き合った後。
「汚れてしまった……」
「あら、男に汚されるよりいいわよ?」
「もうお嫁に行けない~」
「私がもらってあげるから」
ゆんゆんは、照れて赤く染まった頬に両手を添えて、もじもじしている。一方のめぐみんは、ハイライトの消えたジト目で、涙を流していた。
そして、めぐみんはゆんゆんにおぶられて、街へと帰って行った。
一方その頃、カズマは離れたところにある木陰で、荒縄に縛られていた。口には猿ぐつわの布を噛まされている。めぐみんと帰る前に、少し用を足しに離れたところを、ゆんゆんに背後から襲われたのだ。
「ムグー! ムグー!」
カズマの存在は忘れ去られたまま、夜は更けていった。