暗殺教室 ~僕は平穏に過ごしたい~   作:三十

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お気に入りや総合評価、日刊ランキングを見て狂喜乱舞の作者。

SAN値チェックに失敗したので書き上げたのを投下します。


真相の時間

 

 

「えっと、何をどこまで知っているかでしたっけ。

 

 実を言うと大したことは知らないんですよね。ただ、断片的な情報から推測を重ねただけですし。

 

 まず、殺せんせーが地球を爆破すると言ってましたけど、そもそもそんなことをしてメリットなんてないでしょう?

 

 まあ、愉快犯的な犯行と言うならそれまでですけど。

 

 それに、暗殺の依頼を防衛省からされましたけど、中学生には荷が重いですよね?

 

 生徒と教師という関係なら、信頼関係を築き得るなら、交渉して地球の爆破を取り止めさせればいいですし、暗殺を依頼するよりは合理的のはずです。

 

 ですので殺せんせーの地球の爆破は殺せんせーの意思とは無関係なのではないかと考えました。

 

 最初から交渉の余地はなかった。だから依頼しなかった。

 

 こうして交渉を持ちかけた僕が言うのもどうかと思いますがね。

 

 ……どうしました、茅野さん? 脅迫? なんのことでしょう。 

 

 次に月の爆破ですが、本当に殺せんせーがやったのですか?

 

 確かかめはめ波撃てないんですよね? 無天老師やピッコロさんも撃てたのに。

 

 いえ、関係ありますよ。彼らだって月を破壊したんですよ? かめはめ波で。

 

 まあ、かめはめ波でなくてもいいんですが、目からビームも口から破壊光線も撃てない。

 

 では、どうやって月を破壊したんですか?

 

 遠隔攻撃手段を持たないのに。

 

 ……直接月に行って? 本当に?

 

 第一宇宙速度。宇宙へ行くための速度らしいですね。調べてみましたけどマッハ23ないと宇宙へは行けないらしいですね。それをマッハ20で?

 

 仮に行けたとして、どれくらい時間をかけたんですか? 直線距離でも半日以上かかる計算ですよ? しかも往復なら更に倍です。

 

 ちなみにアポロ11号は月に行くのに四日程かかったそうですよ? 速度は大体マッハ32程らしいです。

 

 ああ、それと……これ。ある研究所の爆発事故に関するSNSの書き込みですけど……何か知りません?

 

 何でも生物化学とか何とか研究していたようですけど……

 

 もし、あなたがこの研究所から脱走して月を破壊したと言うのなら、流石に無理がありますよね。

 

 ほぼ同時刻に事件が起きているようですし、月に行く時間は無いです。あなたにはアリバイがあります。宇宙に時刻表はありませんし、トリックでもないでしょう。

 

 ……あはは、落ち着いてください。もしも、です。あなたがこの研究所にいたなんて言ってませんよ。実際証拠もありませんし。

 

 ともあれ、月を破壊したのは殺せんせーではないと判断しました。

 

 ええ、そうです。しかし政府は地球の爆破の根拠として月の爆破を上げている。無関係ではありません。

 

 恐らくは実験だったのでしょう。

 

 何の実験かは分かりませんが、それにより殺せんせーが地球を爆破すると、地球であれと同じことが起こると示してしまった。

 

 それにより殺せんせーの処分が決まり──殺せんせーは暴走した。

 

 研究所を滅茶苦茶に破壊した。

 

 一体何の研究だったんでしょうね。

 

 月を実験場として使えるなら確実に日本国内に留まる話じゃないですし、複数の国家が共同で行ってますね。月の爆破からの政府の対応の早さも納得です。

 

 研究所が日本にあるなら発案は日本でしょうけど、各国が協力を惜しまない程価値があるのでしょうね。軍事開発なら共同でできはしないでしょうし、宇宙開発ならより赤道に近いところに所在をおくべきですし、そもそもあんな事故が起こるとも思えませんし……

 

 研究による利益が大きく、失敗したときに破壊的な被害が大きいとなると、思い付くのはエネルギー開発くらいですが……

 

 ああ、脱線しましたね。あれ、どうしました? え、いや、思い付きだったのですが……

 

 ……話を戻しましょう。

 

 次に雪村先生のことですけど、正直、殺せんせーの入れ代わりでいなくなった時点で何かあると思いました。

 

 三月の時点ではそんな話聞いてませんでしたし、暗殺を依頼することに関しても生徒と気心知れている方が協力した方が都合がいいでしょうし。

 

 それに烏間先生言ってましたよね。「転勤したと聞いた」って。

 

 伝聞調でしたけど、つまり会ったことはないと?

 

 これから生徒を託すのに引き継ぎも何もなかったと?

 

 ……疑問に思い調べてみましたが、既に亡くなっていました。

 

 ところで、殺せんせーは確かうちのクラスの担任ならなると交渉したんですよね。他の学校でも他のクラスでもなく。

 

 つまりE組とあなたを結び付ける何かが、誰かがいた。

 

 それが、雪村先生でした。

 

 雪村先生は良い先生でしたし、優秀な方でした。

 

 意外にも名門な大学の出身で、化学を専攻としていたそうです。

 

 その繋がりで実験に加わっていたのでしょう。

 

 僕らに親身になって見てくれましたし、あなたにも良くしていたのでしょう。

 

 ……Tシャツはどうかと思いますけど。

 

 彼女が亡くなったのは月の爆破が起きた日と、研究所の爆発事故が起きた日と、同日でした。

 

 そう、あなたが暴れて研究所を脱走したその日です。

 

 あなたにその意図があったとは思いませんし、多分事故だったのではないかと思います。

 

 雪村先生が亡くなったことはあなたにとっても予想外でしたし、或いは暴走したあなたを止めたのが彼女だったのかも知れません。詳しくは知りません。

 

 あなたは哀しんだ。また後悔もしたのでしょう。でなければ約束したりしないでしょうし。

 

 そう、約束です。

 

 あなたは約束したんです。雪村先生と。

 

 渚君から聞きました。あなたは誰かとの約束のためにこのクラスに来たって。

 

 研究所を荒らして、雪村先生が致命傷を負い、死に行く雪村先生に僕達のことを託された。

 

 だから、あなたはこのE組に来た。

 

 雪村先生との約束を守るために。

 

 そうですよね、殺せんせー」

 

 

__________

──────

 ̄ ̄

 

 

 彼からの説明が終わり、俺達は何も言えなかった。

 

 奴も、茅野さんも、俺自身も。

 

 意味の無さそうな質問も情報を引き出すためのものだったらしい。

 

 ほんの小さな失言でさえ、彼は真相を割り出す手掛かりとして使い、そこに辿り着いてみせた。

 

 奴の弱点を見出だした時は予想外に思慮深い生徒と思ったが、それだけではまだ過小評価だった。

 

 この少年は、計算高い。

 

 恐らく、ここで奴が要求を飲まざるを得ないのも計算ずくなのだろう。

 

 そして見事、言質をとった。

 

 世界を滅ぼす怪物に、世界を救うか自害するかの二択を突き付けて。

 

「ああ、これはとっておいてください。一応コピーも残していますが」

 

 そう言って彼は手紙を封筒に戻し、それを奴に渡す。

 

 わざわざご丁寧に、とショックを隠せない様子で受け取る超生物。

 

 そんな反応も無理はない。

 

 こんな手段で世界を救うなんて誰が予想する?

 

 そして彼は俺にも封筒を渡す。

 

 奴に送った脅迫状のコピーらしく、記録した音源も後で提出するらしい。

 

「……これで、君の目的は達成か?」

 

 脅迫状を受け取りながらそう問いを投げ掛ける。

 

 暗殺には参加せず、平穏を望んでいた。

 

 世界よりも日常が大事だと。

 

 これで最低限、世界の未来は保証された。未来において、彼の日常は守られた。

 

 もう暗殺が成功するか以前に参加する必要すらも無いだろう。

 

 勿論、だからと言って暗殺の依頼を取り下げることは無いだろうが、少なくとも彼が関わることはない。

 

 彼からしたら既に解決した問題だ。

 

「うーん……どちらかと言うと()()()()()()()()()()

 

 え?

 

 茅野さんから声が漏れる。

 

 その一言は彼女だけでなく俺の心情も表していた。恐らくは奴も。

 

 まだ何かあるというのか?

 

「あなたの正体についてですよ、殺せんせー」

 

「……私の正体、ですか?」

 

 ええ、そうです。と、

 

 真っ直ぐに向けられた彼の瞳は暗にそう答えていた。

 

「あなたが何者なのか、どういう経緯で生み出されたか、雪村先生とどこでどのように知り合ったか、どのようにしてこのクラスに来たのか。全部、包み隠さず答えてください」

 

 それは、ある意味当然のことだった。

 

 国家機密として、暗殺を依頼するため、秘匿されたものだったが、本来ならば彼らにも知る権利がある。ましてや奴がここに至るまでを粗方暴かれた今の状況ではもう隠している意味もなく、もはや今更だった。

 

 寧ろ、情報を提示した上で彼らに隠匿を頼む方が合理的だろう。

 

 そして、彼は立ち上がり、俺の方に顔を向け、

 

「では、僕達は別室へ行きますか」

 

「何?」

 

 先程から疑問ばかり出てくるが、これはもう仕方のないことだろう。

 

 この少年は、もはやそこの怪物以上に理解不能だ。

 

「君は聞かなくて良いのか?」

 

 本題はこれからと言っていた。

 

 なのに、退室をしようというのは何故なのか?

 

 そもそも、何故彼女を連れて来た?

 

 いや、寧ろ彼女に聞かせるために連れて来たのか?

 

「いえ、殺せんせーからも烏間先生から聞いた後で話を聞かせてもらうつもりですよ? やはり当事者の視点も聞きたいですし」

 

 ですが、と言葉を区切り、

 

 

「まずは遺族の方に話をするべきでしょうから」

 

 

 そう、茅野さんに目を向け微笑んだ。

 

 

 

「え?」

 

 その困惑は、今日何度目だろう。

 

 彼ははっきりと彼女を見据えている。

 

 彼女は狐につままれたように彼を見ている。

 

「彼女の本名は雪村あかりさん。雪村先生の妹さんです。経緯は知りませんが、偽名を使ってこの学校に転入、わざと問題を起こしE組にやって来ました」

 

「本当ですか? 茅野さん」

 

 奴は、恐る恐ると彼女に質問する。

 

 彼女はそれに答えず、彼の方に顔を向けたまま、絞り出すように、

 

「……私のことは話さないって言わなかった?」

 

 そう、暗に認めていた。

 

「いえ、言いませんでしたよ? 目的については言わないと言いましたが。まあ、そもそも知らないですし」

 

 ふてぶてしく答える彼に彼女は二の句が継げない。

 

 事情を知らない俺からみても、彼が彼女の意に反しているのは明らかだった。

 

「一応二つ絞り込めてはいるのですけど」

 

「二つですか? それは一体……?」

 

「答えられませんよ? 約束ですし」

 

 奴の疑問にすげなく断る。

 

 余りにも白々しかった。

 

「それでは、積もる話もあるでしょうし、僕は一旦お(いとま)させていただきますね」

 

 そして彼は出口へと歩いていき、

 

 にこやかな笑顔で、言う。

 

 

「あとの事はよろしくお願いします」

 

 

______________

───────

 

 

「……奴に任せて来て大丈夫だったのか?」

 

「ええ、多分」

 

 誰もいないE組の教室で、烏間先生と僕は対面していた。

 

 やや心配そうに聞いてくる烏間先生に僕は適当に答える。

 

 正直、面倒を押し付けられたのならこっちの目論見は成功、あとの事はどうでもいい。

 

「基本的に生徒に対しては真摯ですからね。まあ、彼女の方は用心すべきでしょうけど」

 

「茅野さん、いや、雪村さんを?」

 

「わざわざ殺せんせーを追って転入するアクティビティですよ? 何しでかすか分からない」

 

 真相解明ならまだしも、あの様子だと復讐だろうし、月爆破からこの短時間で行動力がありすぎる。暴走しかねないし、それを宥めるのは一苦労だろう。

 

 というか、独力ではあり得ない。誰かの手引きがあったとみて間違いないだろう。

 

 その辺の事情も聞き出したいが、今は彼女を落ち着かせることが大事だ。面倒なことに。

 

 そんなことは生徒想いの先生(殺せんせー)に任せとけばいい。

 

「まあ、殺せんせーなら何とかするでしょうし、大丈夫ですよ。それより殺せんせーの事、お願いします」

 

 そう促すと、少しだけ考える仕草をして、やや疲れたように話し出す。

 

 考えても仕方がないと判断したのだろう。

 

 

 

「……俺が知っているのはここまでだ。くれぐれも他言無用で頼む」

 

「分かってます。お話ありがとうございました」

 

 とりあえず殺せんせーに関する話は終了した。

 

 概ね予想の通りであり、しかし最低限の目的はこれでようやく達成できた。

 

 一応交渉(脅迫)は成功したし、脅迫状のコピーも渡した。言質となる音源のデータも後で提出はするが、それで暗殺が撤回されることはまず無い。

 

 それでももしかしたら、僕ら諸共殺せんせーを、という段階にならないための(くさび)にはなるかも知れない。そうなったら御の字だ。

 

 僕の目的は殺せんせーの出生の確認と彼女の対処。

 

 彼女の事は殺せんせーがどうにかするし、殺せんせーもあいつらが関わる存在でないと確認できた。

 

 あとやりたいことはまだあるが、知りたい情報はまだあるが、それは殺せんせーと彼女から聞き出せば良い。

 

 殺せんせーからは問題なく聞けると思うが、彼女からは少しだけ心配ではある。

 

 まあ、大方彼女の行動は先走った結果だろうし、事情を聞いて落ち着いたら聞き出せるだろう。ペテンにかけたとはいえそう悪い結果にはならないだろうし。

 

 ……彼女の匙加減次第だが。

 

「……君は一体?」

 

「ん? 何でしょう?」

 

 ふいに、烏間先生が問いかける。

 

 そんな質問されるなんて、心当たりは少ししかない。

 

「いや、すまん。何でもない」

 

「そうですか。……一応言っておきますけど僕は平穏に過ごしたいだけですよ」

 

 激しい喜びはいらない。その代わり深い絶望もない。

 

 穏やかな植物のような人生。

 

 ある漫画のキャラクターには酷く共感した。

 

 もう諦めてはいるのだけれど。

 

 ……その漫画を読んだあと、無理矢理調査に付き合わされたし。

 

 何だよ、拝読料って。

 

「ですので、目の前の問題に対処したってだけですよ。平穏のために」

 

「……そうか」

 

「まあ、若干彼女には悪いことしたかなとは思いますけどね」

 

 これも本心ではある。

 

 改めるつもりはない。

 

 

 そんなことを話しているうちに、教員室から何かが壊れる音が聴こえた。

 

 何事かと慌てて駆け出す烏間先生。

 

 何事もなく見送る僕。

 

 殺せんせーが何かするとは思えないし、多分彼女の暴走だろう。

 

 もしかしたら何か切り札を持っていたのかもしれない。

 

 まあ、ここまできたら介入しなくとも問題ないだろう。

 

 ……どうせならそれで殺せんせーが死んだら色々と面倒が解決なんだけどな。

 

 それが叶ったら苦労はないし、高望みだろうけど。

 

 そもそも下手に暴走して被害が来ないよう奇襲で仕掛けたから大した準備なんてできるはずもないし。

 

 いや、そもそも彼女の切り札って何だ? これといった武器を隠し持ってたとは思えない。

 

 ……何かしらの異能? 確かに持ち運ぶ必要は無いけど、でもそんなものに関わってるなんて、

 

でも確か彼女の家は製薬会社だし、まさかまたそんな実験による能力開発とか? いや、でも怪しいことはなかったはずだけど、

 

でもあの会社について調べたのは月の爆破の前だし、まさかその間に?いやそんな重要度高く無さそうだし調べるのは後回しにしてたけど、いくらなんでもそんな短時間で劇的に変わるなんて思えない、

 

だけど邪神が関わっていたら?確か星の智慧派が活発に動いてたし、まさかまた無貌が動いてるのか?いやそんなはず無いだろ、

でもあの愉快犯ならあり得るかあのアグレッシブさなら面白がって後押ししそうだしまさか手引きしたのはあいつか

ふざけんな毎回毎回僕らを引っ掻き回してでも待てならば彼女の切り札って魔導書かどうする早く回収しないとでもまて他にも渡ってないよな本校舎の図書館に写本が混ぜられてた時は何とか穏便にすませられたがもしもっと大量にばら蒔かれたら流石に対応しきれないぞ狂信者量産しやがってあいつら今度は何しでかすまた教団同士のいざこざに巻き込まれるのかクトゥグアだろうとハスターだろうとシュブ=ニグラスだろうと信仰するなら人巻き込むな実験で神性を招来してんじゃねえよいやそんなことより喚ばれる神性を退散させなきゃでもどんな神性だアザトースの時は父さんのお陰でなんとかなったけどいやでも或いはしかしだけどもしならばまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか──

 

 

 ──恐らく殺せんせーと彼女が戦っているだろうその間、僕は自分の想像力と戦っていた。

 

 

※ ※※ ※

 

 

 その後。

 

 彼女は入院した。

 

 彼女の目的はやはり復讐だったらしく、姉の迎えに行った彼女は雪村先生の傍で佇む殺せんせーを目撃、殺せんせーが殺したと思い復讐へと走った。

 

 切り札は殺せんせーの触手細胞だったらしく、殺せんせーを目撃したとき偶然手に入れたらしい。

 

 E組には独力で来たらしく触手細胞も自力で理解、本来専門家による調整が必要なそれを気合いで乗りきっていたらしい。

 

 それを聞いた時唖然としてしまったのは無理のない話だろう。何でも調整がないと脳みそを掻き回すような激痛がするらしく、それに耐える胆力といいあの行動力といい本当に中学生だろうか。

 

 そのガッツを感心すれば良いのか、愚直さを呆れれば良いのか……。まあ、復讐に走っただけましなのかもしれない。そのバイタリティーで雪村先生を生き返らせようとしたらどうなっていたか。

 

 殺せんせーから説明を受け、行き場を失った感情が噴出、触手細胞が暴走したのだと言う。

 

 無事殺せんせーに取り押さえられ、触手細胞も摘出。

 

 本来ならば検査のために半月は入院した方が良いと言われたものの余り長く入院するのは誤魔化すのも面倒だと翌週には復帰、検査のため通院はしているものの特に問題はないとのこと。

 

 ちなみに一緒に病院に運ばれた僕はその日のうちに帰宅。回復は早いため精神的な異常で入院したことは二度程しかない。

 

 僕も大分馴れたもので、神性を直視しない限りは何かを目撃して気を失う事は無くなったのだが、想像力による発作は寧ろ頻度が上がってしまっている。何故だ。

 

 真相を知った彼女にはもう殺せんせーに対する執着はなく、ちゃんと教師を全うするかこれから見ていくのだと。

 

 それに一役買った僕にも感謝しているらしい。良し。

 

 ただし騙したことは別とのこと。ちくしょう。

 

 勿論殺せんせーの事は秘密。学校へはこのまま素性を隠し、茅野カエデとして過ごすのだと。

 

 ここ数日で殺せんせーや茅野さんから話を聞くことができ、知りたい情報も知れたので改めて纏めると、

 

・殺せんせーは元は死神と呼ばれる殺し屋。

・仕事で弟子に裏切られ捕まり、研究所へ。

・そこで体内で反物質を生成する実験のモルモットに。

・実験をコントロールし、脱走の準備をしながら監視役の雪村先生と交流。それはかけがえのないものだったと。

・四月の初め、マウスを使い月で行われた細胞の劣化の影響の実験で、反物質が細胞を飛び出し、月を爆破。

・細胞の周期をマウスと人とで比較、来年三月十三日に同じことが起こると判明。地球滅亡の危機。

・その事を雪村先生から聞き、自棄になり暴走。

・研究員と戦闘。その最中に触手を使って開発された兵器の流れ弾が止めようと体を張った雪村先生に命中。

・後悔するも助ける手だてはなく、雪村先生に三年E組を託された。

 

 まあ、大体想像通りである。

 

 それより問題なのは研究者の方だろう。

 

 柳沢(やなぎさわ)誇太郎(こたろう)

 

 殺せんせーを生み出した実験の主任研究員である天才科学者。

 

 プライドが高く傲慢、婚約者である雪村先生の事をこき使ってたらしく茅野さんは彼の事は嫌いだと言う。

 

 さて、どうしよう?

 

 

 

 

 どうやって彼を殺そう。

 

 

 

 

 天才科学者にろくなやつはいない。それは善悪に関わらず、だ。

 

 ましてやプライドが高いという彼は間違いなく騒動を起こす。

 

 彼からしても失った名誉をどうにか挽回したいだろうし、賞金に関わらずとも暗殺に加わってくるだろう。

 

 触手を使った兵器も存在するようだし、一番殺せんせーの事を知っている研究者だ。実際、地球を滅ぼしうる怪物を生み出した実績がある。

 

 毒を以て毒を制す。政府も彼を利用するだろう。

 

 つまり彼の後ろにはある意味政府がついている。迂闊には手を出せ(殺せ)ない。

 

 

「……当面は保留。今は日常を楽しもうか」

 

 そう呟いて僕は学校へ向かう。

 

 触手の怪物が担任を勤める、僕のクラス。

 

 ナイフが振るわれ、弾丸が飛び交う、当たり前の日常。

 

 そんな平穏な光景に胸を踊らせて、

 

 

 始業のベルは、今日も鳴る──

 




とりあえずプロットがあるのはここまで。
一応続けようとは思うものの多分これからは尻すぼみになりそう……

尚、リアル事情もあり更新頻度は大幅に下がる模様。

ついでに描写の甘さを痛感。主人公の説明回を2話後辺りで予定しているもののどうなることやら。

クトゥルフ風味の強めの話を先走って一本書いてしまっているのでできればそこまでは続けたい。時系列的にまだ先ですが……

他にも前半部分の推理シーンは飛ばした方が良いのかとか発狂シーンをもっと濃く書けないかとか色々と悶々したり。

……作品を作るって本当に難しい(笑)


ともあれ、一旦は打ち止めになる模様。

よろしければ今後も応援よろしくお願いします。

それでは次回まで。

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