この素晴らしい毎日に祝福を!   作:暇潰しと思いつきの人

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第八話 帰還

 昨日、結果を先に言ってしまえば、めぐみんがカズマたちのパーティへと正式に加わることになった。

 まぁ、カエルの粘液によってぬめぬめのネバネバになった事を利用した、半ば強引な手段ではあったが。

 流石にあの状態になっている女子を街の人間が見たらどう思うかなど、語るまでもない。

 それに加えて、正式加入を望むめぐみんをカズマが拒んだため、言い争いに発展したのだからあらぬ誤解を受けることもあるだろう。

 主に、女性側から。めぐみんはそれを利用したのである。強かだとしか言い様がない。

 

 さて、カズマが何故、めぐみんをパーティに入れる事を拒んでいたかと言えば、彼女はアークウィザードとしてポンコツだからだ。

 先に言っておくが、ジャイアントトード討伐の時に見せた、彼女の失敗が原因ではない。

 

 アークウィザード、めぐみん。彼女は、()()()()()()使()()()()のである。

 

 上級職の魔法使いともなれば、そして爆裂魔法を習得出来るだけの力を持っているならば、それこそ様々な魔法が扱えるだけの素養を持っているはずなのだ。

 数多の魔法を巧みに操り、モンスターを倒す。本来あるべき姿のそれとはまったく違う方向を目指すめぐみんが、どうしてポンコツではないと言えるだろう。

 そして、そのポンコツ成分に拍車を掛けるようなセリフがめぐみんから吐き出されている。

 

『私は爆裂魔法しか愛せない。例え今の私の魔力容量では一日一発が限界でも。例え魔法を使った後は倒れるとしても。それでも私は、爆裂魔法しか愛せない! だって、私は爆裂魔法を使う為だけに、アークウィザードの道を選んだのですから!』

 

 つまり、他の魔法を習得して、どれだけ冒険が楽になろうとも彼女は爆裂魔法だけを使い続ける。

 更にはアクアまでその思いに同調したのだから、さあ大変。

 何とかパーティ入りを阻もうとするカズマの健闘も虚しく、先に言った通りの結果に収まったのである。

 

 とは言え、めぐみんの爆裂魔法は頼りになるだろう。あの威力と光景は、今でも鮮明に思い出せる。

 カズマには悪いが、パーティの切り札になる日も来ると俺は踏んでいる。多分、きっと、メイビー。

 

 

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「ああ、ダイナか。装備のメンテナンスなら終わってるぞ」

「うっす、どうも。代金は受付の子に渡しておくよ」

 

 鍛冶屋の店主に預けておいた装備一式を受け取り、問題ないか確認しながら装着する。

 まぁ、ここは以前、ダクネスとクリスが紹介してくれたアクセルの中でも結構大きな鍛冶屋だ。

 ピカピカに磨き上げられた装備に不具合などなく、俺は代金を受付の女の子に手渡してから店を出た。

 

 昨日は散々だった。めぐみんが使った爆裂魔法によって、カエルが何体も目が覚めて地面から湧き上がってきたのだから。

 おかげで、カズマと一緒に食われていたアクアとめぐみんを救出すると同時に逃走することになったのだが……。

 ちょっと、現れたカエルの数が多かったのだ。

 めぐみんを背負って走るカズマ。泣きじゃくりながらもう食べられるのは嫌と叫ぶアクア。そして、その殿(しんがり)を務める俺。

 何とか無事に逃げ帰れたわけだが、その代償と言わんばかりに俺の装備にはガタが来ていた。

 そうしてギルドに着いてクエスト達成の報告したすぐあと、カズマたちと別れて鍛冶屋へと駆け込んだのである。

 ちなみに、報酬についてはカズマに一任した。一応、現場関係や一緒にクエストをこなした仲でもあるので、信用してのことだ。

 時間的には、カズマたちも既にギルドに集まっている頃だろう。

 装備も受け取ったし、現場の仕事もしばらく休みをもらっている。

 今日もあいつらと過ごそうかな、と思いながら俺はギルドへと足を進めた。

 

 

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「おーっす。おはようさん」

「待ってたぜ、ダイナ。まず、これ。昨日の報酬の取り分な」

 

 案の定、カズマがギルドに居た。

 挨拶を交わしながら近付くと、まず最初にカズマがジャージのポケットから昨日の報酬の入っている巾着を渡してくる。

 俺はそれを受け取り中身を確認すると、五万エリスが言われた通りきっちりと入っていた。

 

「昨日は散々な目にあったが、ダイナのおかげで結構報酬が嵩増しされてな。本当、さまさまって感じだ」

「もう二度とあんな目には遭いたかないけどな」

「同感だ。ダイナが居なければと思うと、ゾッとするぜ。カエルも数を倒せないと、割に合わねえとしか言えないしな……」

 

 カズマの言葉に、俺はポケットに巾着を突っ込みながらたははと笑う。

 ジャイアントトードの懸賞金は、初心者には割に合わない金額だ。命懸けで討伐したところで、その報酬は一週間もすれば消えるようなもの。

 だが、本来は遠距離から放てる武器や、まとめて吹き飛ばせる魔法を持った者が居ると格段に報酬が良くなる。

 そういうことが出来るようになるのは、中級くらいからだ。

 アクアは《アークプリースト》であり、攻撃も打撃が中心のようなので役立たず。

 本来、こんな時こそ頼もしい《アークウィザード》であるめぐみんは、《爆裂魔法》しか使えない上に一日一回という制限付き。

 カズマにいたっては、基本職にして最弱職と呼ばれる《冒険者》である。

 とは言え、冒険者という職業には、基本ステータスが低い代わりに実は大きなメリットが存在していたりする。

 

「そうだ、ダイナ。ちょっとお前の持ってるスキルで良いのがあったら、教えてくれないか?」

「お、良いぞ。つっても、俺も下級職だからあんま期待すんなよ」

 

 職業《冒険者》は他者のスキルを見て、教えられることでそのスキルを習得出来るようになるのだ。

 習得に必要なスキルポイントは通常よりも掛かるらしいが、全てのクラススキルを覚えることも可能なのである。

 俺はカズマに、汎用性のあるスキルを幾つか教えることにした。

 

 俺が習得しているスキルの殆どは、機動力に関係するものが多かったりする。

 例えば、昨日使って見せた《ジャンプ》。素早さに補正を入れて強化する《スピードアタッカー》。回避の際に補正を得られる《バタフライダンス》など。

 ランサーを生業とするのに基本となる《槍》スキルは勿論、攻撃力を強化するスキルだってちゃんと習得している。

 連撃時に発動する《連続突き》、単純に威力を底上げする《突撃》、相手の急所に当たった時に爆発力を得られる《急所突き》など、これらは槍を使った時にしか発動しない系統だ。

 あとは、汎用スキルではあるが何かと便利な《投擲》も習得している。武器を手放す可能性が高いのでデメリットが多いため、これに関連する《槍投げ》スキルはどうするかは決めていない。

 

「あら、ダイナじゃない。おはよー」

「おはようございます、ダイナ。昨日はありがとうございました」

 

 そんな風にカズマに俺の習得しているスキルをピックアップしながら教えていると、アクアとめぐみんがやって来て挨拶をする。

 

「何やってたの?」

「ああ、ちょっとカズマにスキルを教えてた」

 

 と言っても、それを習得するかを決めるのはカズマだが。

 うーん、しかし冒険者か。スキルポイントが常人よりも取得出来るらしい俺としてみれば、実際こっちの職業になっておくのも手なのでは?

 だが、なんだかんだで有用なスキルの取得や、強化を続けているスキルを更に強化するのに必要なポイントが増えて来ているし、寄り道をするのもなぁ……。

 

「さんきゅー、ダイナ。やっぱ、持つべきものは戦友だな」

「気にすんな。また何か増えたり思いついたら教えてやるよ」

 

 そう言い合った後、カズマは習得するスキルをどうするか考えているのか唸り始める。

 

「そう言えば、ダイナはこれからどうするのですか?」

 

 取り敢えずただ駄弁るだけでも腹は空くので、飯でも頼もうかと考えているとめぐみんに話し掛けられた。

 これから、ねぇ。

 

「友人もいい加減、そろそろ帰ってくるだろうし……俺もレベルが上がってようやく十代に入ったから、そっちに合流するつもりだ」

「なん……だと……!?」

「うそ、ダイナさんにとって、私たちが真の仲間じゃなかったの!?」

 

 俺が何気なくめぐみんに返した答えを聞き、信じられないと言うふうにカズマとアクアが驚愕に表情を染めてこっちを見る。

 おい、元うんたら。その台詞はやめろや。

 

「女神と一緒のパーティに何の不満があるの!?」

「いや、たまには合流しても良いけどさ」

「アクアの言い分はともかく、ちょっと考えてくれダイナ。俺にこんなのの引率をさせるつもりか!?」

 

 言いたいことはわかるが、カズマ。一応こんなの扱いはやめて差し上げろ。

 

「役立たずで余計なことばかりをするアークプリーストに、爆裂魔法しか使えない変な名前のアークウィザードだぞ!? 最弱職の俺がどうにか出来るわけないだろ!」

「役立たずとはなによカズマ! 私だってやれば出来るのよ!?」

「おい、私の両親からもらった名前に文句があるなら聞こうじゃないか」

 

 そこはほら、お前にしか出来ない役目だと思って欲しいとしか言いようがない。

 ぶっちゃけた話、俺だって彼女らとずっと一緒に居るのは遠慮したいのだ。俺だってまともな冒険者生活をしたいのだ。

 今なら、クリスたちが向かったダンジョン攻略にだって加われるかもしれないし……。

 

「それがお前の天命だ。諦めろ」

「だったらお前も道連れになれ! 乗りかかった船だろうが!」

「泥船にすき好んで乗ると思うか?」

「言ったな……! お前……言ってはいけないことを……! 事実だとしても……!」

 

 そんな風に昼間からわいのわいのやっていると――。

 

「あっはっはっ、なにやってんのダイナ! いつの間に芸人みたいなことをやるようになったのさ!」

 

 横から、聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。

 今にも殴り合おうとしていた俺とカズマも。俺たちの発言に抗議をあげるアクアとめぐみんも。

 その声の持ち主の方へと、視線を向ける。

 

「クリス! ダクネス! 帰って来てたのか!」

「ただいま、ダイナ。丁度、昨日の夕方にね」

「ただいまだ。その、元気そうで何よりだ」

 

 そこに居たのは、クリスとダクネスだった。

 クリスはにっこりと白い歯を見せて笑い、ダクネスは何故か少し俯いている。

 

「元気そうで何より、はこっちの台詞だよ。心配してたんだからな」

「まぁ、遠かった上にちょーっと手強くてね。ダンジョン攻略なんて場合によってはもっと時間が掛かる時もあるから、まだ短かったもんだよ」

 

 そうは言っても……ああ、これ以上言ってもみっともないだけだ。

 とにかく、二人が無事に帰ってきたのならそれでいい。

 

「おい、ダイナ。そちらの美少女と金髪美女がお前の言っていた奴か」

 

 そんな風に胸をなで下ろして俺に、カズマがジト目になりながら低い声で尋ねてくる。

 なんだ、羨ましいのか? そりゃそうか、ダクネスは中身はともかく美人な女騎士だし、クリスも少し抜けているところがあっても美少女であり天使だ。

 見える。カズマが嫉妬の炎に――あ? ちょっとダクネスの方を微妙な視線を送っているようにも見えるんだが……気のせいか?

 

「ああ、そうだぞ。紹介しよう、盗賊のクリスとクルセイダーのダクネスだ」

「どーも! ダイナがお世話になっているみたいだね!」

 

 俺の紹介に、快活な挨拶をするクリス。代わって、ダクネスは小さく頭を下げるだけだった。

 あの趣味嗜好に難があると言っても、厳格な性格のダクネスが珍しい。

 

 

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 それからアクアたちも自己紹介を行い、俺はそう言えばと思い立ってカズマのスキルについて相談してみることにした。

 

「だったら、盗賊スキルを幾つか教えてあげようか? ダクネスが入りたがっているパーティだってよしみもあるしね」

「カズマ、そうだったのか?」

 

 クリスから出てきた言葉に、俺は目を丸くした。

 いや、そんなこと一言も聞いてないぞ。

 

「まぁ、昨日お前と別れた後にな。……おい、ダイナ。お前からも説得してくれ。昨日、ちょっと話しただけでもヤバイと思ったんだ」

「……そうは言うけどな」

 

 小声で耳打ちしてくるカズマに、どうしたもんかと俺も溜め息を吐きたくなった。

 なるほど、だからダクネスが大人しい上に、こっちを見ようとしてないのか。

 確かに、カズマの性格やこのパーティの性質はダクネス好みのものだろう。

 俺も俺でまた三人で冒険が出来ると思っていただけに、少しショックではあるのだが……。

 

「まぁ、その相談は後にしよう。今はお前のスキルだ」

「……考えとけよ?」

 

 善処します……とは口に出さず、小さく頷いて返しておく。

 まぁ、せっかくダクネスが行動するくらいカズマのパーティに入りたいと思っているのだ。

 俺も別に、臨時で暇な時に一緒に冒険出来れば良いと思っているだけにそこまで止めるようなことはしない。

 が、カズマに苦労を掛けさせ過ぎるのも心苦しいと言えばそうだ。

 そうこうと一人考えている内に、クリスはクリムゾンビア一杯でカズマに盗賊スキルを教えることにしたらしい。

 ギルドの裏手にある広場で教えるというので、俺とダクネスは二人に着いて行く。

 アクアとめぐみんはギルドで食事を続ける、とのことらしい。どんだけ食べる気なのだ、あいつらは。

 

「まずは《敵感知》と《潜伏》をいってみようか。《罠解除》とかは、こんな街中に罠なんてないからまた今度ね。じゃあ……ダクネス、ちょっと向こう向いてて?」

「ん? ……わかった」

 

 広場にやって来たクリスと俺たち。早速と言わんばかりに言ったクリスのお願いに、ダクネスが答えて後ろを向く。

 すると、クリスは少し離れた位置にある樽へと入り込み、上半身だけを出す。

 そしてダクネスの頭に小石を投げつけ、そのままさっと樽の中へと身を隠した。

 こう見ると馬鹿らしい光景だが、《潜伏》は気配遮断、《敵感知》はその名前通り敵の位置を知れるという有用なスキルだ。

 まぁ、クリスもバレバレなところでやっている時点でダクネスにすぐ発見され、樽ごと横に回されているが……。

 カズマも半信半疑になっているようで、その光景を半ば死んだ目で見ている。

 俺は面白がっているが、笑い声はあげない。後で何されるかわかったものじゃないからな。

 

「つ、次はあたし一押しのスキル、《窃盗》をやってみようか」

 

 ボサボサになった銀髪を、涙目になりながら手櫛でなおしつつクリスが言った。

《窃盗》は対象が持っている物をランダムで奪うスキルだ。その成功率は使用者の幸運依存であるから、カズマ向きのスキルだとも言える。

 以前、酒に酔ったクリスにふざけ半分で《窃盗》を使われ、財布を盗まれたことがある。

 その時は問答無用で睨みつけて返してもらったが……靴底の裏に隠しておいた物を奪われた時は、さすがに焦った。

 こういうところも、さすがはファンタジー世界観だとしか言い様がない。《窃盗》を使うにも魔力が消費されるというし、そういうところも“らしい”と言えるだろう。

 

「あ、俺の財布!?」

 

 思い返している内に、クリスがカズマから財布を奪っていた。

 慌てるカズマに財布を返そうとするクリスだったが、何か思いついたのか悪い笑顔を浮かべる。

 

「ねぇ、あたしと勝負しない?」

 

 どうやら、スティールを習得したカズマに自分から財布を奪い返させるつもりらしい。

 いや、それだけじゃない。カズマの幸運の高さなら、クリスの財布や装備している短剣だって盗めるかもしれない。

 カズマもそれに乗ったようで、冒険者カードを取り出してささっと指を動かしている。

 

「ところで、ダクネス」

「なんだ、ダイナ。……別に、私は謝ったりはしないぞ」

「いや、なんで謝る必要があるのさ」

 

 勝負を見守りながら、ダクネスと会話する。

 いきなり何を言い出すかと思えば、カズマのパーティに入ろうとしていることについてだろうか。

 元々臨時で組んでいただけなのに、本当に律儀なんだから。

 

「お前がそうしたいって思ったなら、別に止めやしないさ」

「……お前のそういうところは美徳だと思うが、たまには存分に罵ってくれても良いんだぞ?」

「おう、敢えて聞き流させてもらうわ」

 

 こういうところを無くして攻撃さえ当ててくれるなら、非の打ち所がない美人なんだけどなー。

 

「なんでまた、カズマのパーティ募集に行ったのさ」

「ああ、昨日帰って来ている時にお前たちを偶然見かけたんだが……」

 

 いや、じゃあその時話しかけてくれよ。そんときに色々話すことも出来ただろうが。

 と思うが、それは俺の都合であってダクネスもギルドへの報告もあるだろうし、他のパーティメンバーも一緒に居たのだろう。

 てか、俺だってギルドで報告を済ませた後すぐに鍛冶屋に行ったしな。ダクネスたちと入れ違いも、単にタイミングが合わなかっただけか。

 

「……お前も居た事にも気付いていたのだが、あのぬるぬるプレイをしてくれるような奴が居ると思うと、正直そっちにしか目が行かず興奮が止まらなくてな」

「俺の心配と心遣いを返せ」

「ンンッ! そうだ、ダイナ。お前もやれば出来るじゃないか! その眼差しは誰にでも出来るものじゃないぞ!」

 

 しまった! 喜ばせてしまった!

 やれば出来るじゃないか、じゃねぇよ。そんなことで褒められても嬉しくともなんともないわ。

 

「それで、リーダーをしているようだった彼――カズマに昨夜、声を掛けたのだ。少し失敗してしまったがな」

「……はぁ。なんでこう、お前はそうなんだろうな」

 

 後悔するように笑むダクネスに、俺は溜め息を吐きながら呟く。

 ていうか、少しどころか大失敗したんだろ、本当は。

 カズマがお前の事をヤバイ奴だとしか思ってないところを見るに、興奮しすぎて自制出来なかったのだろうか。

 そうこうしている内に、カズマの方を見るとスティールを成功させたようで何かを握っていた。

 

「ヒャッハー! 当たりも当たり、大当たりだぁぁぁぁああっ!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁあああああ! ぱ、パンツ返してぇぇぇぇえええええええっ!!」

「よし殺す、今殺す、すぐ殺す! そこを動くなカズマァァァァァァアアアアアアッ!!」

「やはり、私の目に狂いはわかったぁぁぁぁぁああっ!!」

 

 そこは、一種の混沌と化した。四人の叫びが、広間に響き渡った。

 クリスのパンツを嬉しそうにブンブンと振り回すカズマ。スカートの裾を押さえ、涙目で絶叫するクリス。

 友人が羞恥に晒されたことにブチギレた俺。カズマのやったことに狂喜の雄叫びをあげるダクネス。

 広場は今、混沌と化していた。四人の感情が、広間に響き渡った。




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