向日葵に憧れた海   作:縞野 いちご

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#5 なんで私は止めないの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねえ、ちかちゃん。

 

 

うん?なぁに?

 

 

わたしね、ちかちゃんといっしょにいるとうれしいんだ!

 

 

ちかといると……?

 

 

うん!なんか、ちかちゃんがいればなんでもできちゃうきがする!

 

 

それなら、ちかも!

ちかもよーちゃんといっしょにいるとうれしいし、なんでもできるきがする!

 

 

 

……えへへっ

 

 

えへへっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?

 

私、泣いた後、そのまま部屋で寝ちゃって……

 

 

千歌「……ようちゃん。」

 

 

 

そういえばあの封筒には何が入っていたんだろう。

 

 

 

 

確か、机の上に置きっぱなしにしていた気がする。

 

 

見つけた。

 

封筒は裏面が上になっていて、渡辺曜とかしこまった字が書いてある。

 

 

 

ドクンッ

 

 

 

次の瞬間、心の中に嫌な物が流れ込んでくる気がした。

なんで?この封筒のせい?

 

 

私は封筒を恐る恐る裏返した。

 

 

 

千歌「えっ…………うそ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

封筒の表には大きく、退部願と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

千歌「…やめ……る?」

 

 

 

 

やめる?

 

 

 

 

曜ちゃんが?

 

 

 

 

とっさに私は曜ちゃんに言ったことを思い出した。

そっか、私……

 

 

それに、曜ちゃんはAqoursを辞めるってもう宣言していたじゃないか。

 

 

 

 

千歌「これで、曜ちゃんが私に縛られることはもうなくなったんだ。良かった……良かったよ…………」

 

 

 

ホントウニヨカッタノ?

 

 

 

千歌「よかったんだよ……」

 

 

 

ウソダ。

 

ホントウハイッショニイタイノニ。

 

 

千歌「よかったの!!これでよかったの!!

これ以上は…曜ちゃんがかわいそうだよ………」

 

 

美渡「千歌。」

 

 

千歌「みと……ねぇ……」

 

 

私の声がうるさかったのか、部屋の中にみとねぇが入ってきた。でも、怒ることもなく、曜ちゃんの封筒を手に持った。

 

 

美渡「…やめるの?」

 

千歌「…うん。」

 

美渡「なんであんたは止めないのよ。」

 

千歌「みと姉がなんて言おうと、私はこれで良かったと思ってる。」

 

美渡「…もしかしたら、曜が一緒にやりたいって気持ちを押し殺して辞めようとしていても、それでもいいの?」

 

千歌「私は……いい。」

 

 

 

 

みと姉には悪いけど、もう曜ちゃんとは友達じゃないし、それに曜ちゃんの気持ちを大切にし過ぎたからこうなったんだ…。

 

 

 

私はこうなるべきなんだと、飲み込むしかないんだよ。

 

 

 

 

 

私の頑なな態度に、みと姉は背を向けた。そして出て行く間際に

 

 

 

美渡「今のあんたはスクールアイドルの話しない方がいいわ、聞いてる方の胸くそが悪くなるから。」

 

 

 

 

そう言い終わると、そそくさと出て行った。

 

 

 

 

 

 

それから梨子ちゃんが会いにきてくれることもあったけど、曜ちゃんのことを考えたくなかったこともあるし、私はみと姉の言った通り、スクールアイドルの話を全くしなかった。

 

 

梨子「千歌ちゃんは練習とかしてる?」

 

 

千歌「……。練習で思い出したんだけどさ、このスポーツ系の漫画さ、この前見たら面白くてさ〜。」

 

 

梨子「…そうだったの。」

 

 

 

こんな調子に話を続かせない。

それに梨子ちゃんは優しいから、無理に詮索してこなかった。

 

 

 

 

 

 

そんなある夜、私は夢を見た。

 

それはAqoursのみんなと一緒にいる夢。

 

 

 

 

 

 

花丸「正直、マルたちがここまで来れると思っていなかったずら…。」

 

善子「何言ってるのよ!このヨハネが付いていながら、予選で終わるとか絶対ありえないし!」

 

 

ルビィ「でもみんなで頑張ったから乗り越えられたってところはあるよね。」

 

花丸「うん。」

 

善子「まあ、そうね。」

 

 

ルビィ「ルビィはね、Aqoursのみんなのことが好き。だからここまでみんなと来れたことが本当に嬉しいんだぁ。」

 

 

 

花丸「ルビィちゃんの言う通りずら。」

 

善子「…ま、まあリトルデーモンの協力は確か」

花丸「よしこちゃん?」

 

 

 

善子「直接言うのが恥ずかしいのよ!

…だから……みんなと一緒に来れて嬉しかったわ。はいっ、おしまい!」

 

ルビィ「えへへ…善子ちゃんらしいね。」

 

 

鞠莉「まったくでーす。善子はso shy!!

恥ずかしがらずに、もっとOpenにして良いんだよ?」

 

花丸「そう、おーぷん!ずら。」

 

善子「ずらまるはやかましい!」

 

 

ダイヤ「まったく…。本番前に大声をあまり出すものではありませんわ。」

 

果南「まあ、元気な方が私たちらしくていいんじゃない?」

 

ダイヤ「そうかもしれませんが。」

 

鞠莉「Bright!!

ダイヤ、せっかくの美人が曇ってたら台無しになるわよ?」

 

ダイヤ「……まあ、緊張を解くためには良いことかもしれませんわね。」

 

 

ルビィ「お姉ちゃん。」

 

ダイヤ「ん?どうしたの?」

 

ルビィ「ルビィはお姉ちゃんとここに来ることが一番の夢だったの!

だから、本当に嬉しいな。」

 

 

ダイヤ「私もあなたとスクールアイドルができて幸せよ。」

 

 

鞠莉「いい妹を持ったわね。」

 

ダイヤ「茶化すのはよしてください。」

 

果南「茶化してなんかないよ。ただ単に私たちは羨ましいんだよ。

梨子ちゃんたちもそう思うでしょ?」

 

 

梨子「そうだね。それに、ルビィちゃんだけじゃなくて、みんな優しくて、あったかくて私は本当に恵まれたなって思ってるよ。」

 

 

 

温かい雰囲気でみんな笑ってて、こんなに幸せに感じることもない気がするのに

 

 

 

なぜか笑えない。心の底から笑えないんだ。

 

 

 

 

 

それをみんなからも薄々感じてしまう。

 

 

 

 

 

 

なんで……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この違和感。

 

 

 

 

 

いないんだよ。

 

 

 

 

 

曜ちゃんが。

 

 

 

 

 

 

…それでも、みんな笑ってる。

 

 

だから私も笑う。

 

 

 

それぞれ、心の底から笑えていなかったとしても、お互いを傷つけないために笑ってるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…どうしてなの?

 

 

 

 

結局、その疑問は晴れないまま、私は朝を迎えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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