向日葵に憧れた海   作:縞野 いちご

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#3 へーき!

 

 

 

 

 

 

鞠莉『Aqoursは本戦には進めないかもしれないわ。』

 

 

鞠莉『大会中に無理をしてケガをしたメンバーが出たグループは失格とみなされるようになったのよ。』

 

 

 

 

練習が終わって家に帰ると、私はベッドに倒れるようにして寝転んだ。

 

結局、そのあとも千歌ちゃんが練習に来ることはなくて、私のせいで練習もギクシャクしてた。たまに気を利かせて鞠莉ちゃんがジョークを言ってくれたけど、みんなからは乾いた笑いしか出てこなかった。

 

 

 

 

曜「みんな、本当はどう思ってるんだろう……」

 

 

 

怖い。優しくしてくれているみんなが、本当は私のことが嫌いで、私のしたことを許してくれていなかったら……

 

 

 

 

千歌『私、曜ちゃんのこと嫌い。』

 

 

 

忘れたいのに、いつまでも頭の中でこだまする。そしてその度に胸が締めつけられて、吐きそうな感覚に襲われる。

 

 

 

曜「もお…いやだ………」

 

 

 

私は誰を憎めばいいの……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「っむぅ……うぅん……?」

 

 

最近多いなあ。いつの間にか寝ちゃうこと。

 

でも安心する。だって、大抵は私の好きなひまわり畑に来れるから。

 

 

曜「千歌ちゃん!」

 

 

ひまわり畑の真ん中、大っきなひまわりの場所に千歌ちゃんはいる。

私は夢中でひまわりをかき分けて、千歌ちゃんのいるところに向かう。

 

 

曜「ハァッ、ハァッ!ついた!」

 

 

真ん中の開けた場所。そこに私の大好きな景色がある。

 

大きな向日葵と一人の少女がピッカピカな笑顔で私を出迎えてくれる。

 

 

千歌「よーちゃん♪」

 

 

私は千歌ちゃんの笑顔が見れれば何だってできる気がした。

 

 

曜「待ってたの?」

 

千歌「うん!だってお喋りの途中だったし。」

 

 

途中?

 

 

千歌「よーちゃん、途中で帰っちゃうんだもん…」

 

曜「途中で私が帰ったの?」

 

 

確かあの時は私が顔を上げたときには千歌ちゃんがいなくなっていた気が……

 

 

千歌「よーちゃん何か変だよ?」

 

曜「変?」

 

千歌「なんていうか、遠くを見てるっていうか……。」

 

曜「遠いところなんて見てないよ?」

 

千歌「うーん。なんか私とお喋りしてても楽しくなさそうだし……」

 

曜「そんなことないよ!千歌ちゃんとお喋りできるのは楽しいって!」

 

私が言うと、千歌ちゃんは顔を近づけて私をジッと見つめた。

 

千歌「ジー。」

 

曜「な、なに?」

 

千歌「ま、いっか♪」

 

 

千歌ちゃんは私の目を見つめながら微笑んだ。千歌ちゃんって子供っぽいけど、たまにお母さんのような優しくて温かい笑顔を見せる時がある。

その顔を見ると、とても安心してしまう。甘えそうになってしまう自分がいる。

 

 

 

曜「ねえ?」

 

千歌「なぁに?」

 

曜「もしさ、私が千歌ちゃんの大好きなことを取り上げたら、千歌ちゃんはどうする?」

 

千歌「ほぇ?」

 

 

私の突拍子もない質問に、千歌ちゃんはすっとんきょうな声を出した。

 

 

千歌「うーん?怒っちゃうかも。」

 

曜「そっか……」

 

 

千歌ちゃんはラブライブに対して本気だった。生きてきた中で一番本気だったかもしれない。それを私が邪魔したら、やっぱり怒るよね。

 

 

千歌「あー!よーちゃん、なんか私にしたでしょ!?」

 

曜「ええっ!?」

 

千歌「大好きなことってなんだろ……?勝手に家のプリンとか食べた!?」

 

曜「ふふっ。」

 

千歌「なっ!笑うってことは確信犯でありますな!?」

 

曜「違うであります!ふふっ!」

 

千歌「むむーっ!!」

 

 

怒る、の規模の小さな話に思わず笑ってしまった。千歌ちゃんは本当に可愛らしい。こうやって怒られるのはそこまで悪い気がしない。

むしろ、可愛いから見てたいかも。

 

 

でもあの時の千歌ちゃんの態度は明らかに今と違った。

 

 

 

曜「っ!」

 

千歌「よーちゃん!?」

 

ダメだ。やっぱり思い出すだけで吐き気が……

 

曜「ご、ごめん。ちょっと立ちくらみ。」

 

千歌「ちょっとって!かなり苦しそうだよ?無理しないで。」

 

 

心配そうな顔で千歌ちゃんが見つめてくる。

 

 

曜「へーき、へーき!ほら千歌ちゃんとお喋りできるだけで私は元気なれるから!」

 

千歌「う、うん……」

 

 

 

 

 

その後も暗くなるまでひまわり畑で千歌ちゃんとお話をした。

 

 

 

 

千歌「じゃあねー!」

 

曜「またね!」

 

 

 

あれから嫌な気持ちになることはお互いに無かったと思う。

 

でも、私は見逃さなかったよ。

 

 

私が「へーき!」って言ったときに、千歌ちゃんが顔を曇らせたこと。

 

なんでだろう……。私が平気なのに千歌ちゃんは悲しむの?

 

 

私にはよくわからなかった。

 

どうして悲しそうな顔をするの?

 

 

千歌ちゃんには笑っていてほしいのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブーブーッ、ブーブーッ

 

 

スマホのバイブ音で私は目が覚めた。

 

曜「……?」

 

LINE 1分前

Aqours[黒澤 ダイヤ]

突然ですが、本日の練習はOFFにします。みなさん、暑いので各自体調……

 

 

 

 

お休み?

 

なんで?

 

 

曜「気を遣われているのかな……」

 

 

最近ネガティヴになり過ぎている気はする。でもこのタイミングで突然お休みになるなんておかしい。

 

 

曜「みんなで集まってたりしてるのかな。私に内緒で。」

 

 

みんなを疑うなんて最低だけど、私はやっぱり仲間外れにされるのは嫌だから。

 

 

曜「行こう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

私はこの時、考えてなかったんだ。

 

 

 

 

みんなが集まっていたとして、私が呼ばれなかったことに何か意味があるのかもしれないなんて。

 

 

 

 

 

 

 




最近、本格的にYouTubeでの活動を始めたため、更新が遅れていました。申し訳ありません。本当に少しずつですが、書き溜めをしていっているので今月中にあと数話投稿できると思いますのでよろしくお願いします。
ちなみに興味を持っていただけた方は下記URLから、動画を見てくださると嬉しい限りです。
https://youtu.be/yXlbmy-FKq4

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