泣いた曜さんをなだめた後、練習を再開させた私たちはどこかぎこちなく、まだ3年生が加わった直後のような雰囲気の固さを感じた。
ダイヤ「曜さんが感じていたわだかまりは解けたでしょうか……」
鞠莉「All OKではないでしょうね。ただ、私たちに涙を見せてくれた。それはとても大きなことかもしれないわ。」
涙を見せた。
今まで強情だった曜さんが私たちに素直になってくれたと捉えれば良いのかもしれません。
ダイヤ「ですが……」
鞠莉「ダイヤ?」
ダイヤ「いいえ……なんでも。」
鞠莉「そう…」
今まで耐えてきた曜さんがついに感情を爆発させた。つまり、それほど曜さんは弱っているとも推測もできます。
果南「一年生の3人がいてくれてよかったね。」
鞠莉「そうね。」
果南「これも狙って、今話したの?」
鞠莉「さあ。」
ダイヤ「隠し事は禁止、ではないのですか?」
鞠莉「ギャンブルにも近かったのよ。」
果南「ギャンブル?」
相変わらずこの人は…
ダイヤ「では、賭けに勝ったということなのですか?」
鞠莉「とは、言い切れないわね。」
ダイヤ「はあ?」
果南「鞠莉。ずいぶんと無責任じゃない?」
鞠莉「手助けまでは私たちにもできる。でも結局は当人で解決しないとどうしようもない、そうじゃない?」
果南さんは何か察したような顔をして「そうかもね。」と呟いた。
そこには私には感じることのできない二人の間のようなものがあって、それがまた一層私をモヤモヤさせた。
そのあと、特に何もなく練習が終わり、私は事務仕事があるために生徒会室で作業をしてから帰宅しました。
ルビィ「お姉ちゃん。」
家に帰るなり玄関先でルビィに足止め。
ダイヤ「どうしたの?早くシャワーを浴びたいのだけど。」
ルビィ「お姉ちゃんには何が見えてるのかなって、知りたくて。」
ダイヤ「どういう意味?少し説明不足だわ。」
ルビィ「今日の曜ちゃん、どう見えたかな?」
ダイヤ「私たちの前でも泣けるようになって、前よりも少し素直になれたように見えたわ。」
三年生の中で出た結論。とりあえず良かったことだと片付けられてしまった結論。
ルビィ「本当?」
ダイヤ「は?」
ルビィ「お姉ちゃんにはそういう風に見えたの?」
ダイヤ「っ。」
ルビィにあまり不安を煽りたくなかったから嘘をついた。けど、それも見透かされた。
ダイヤ「質問に質問で返すようだけど、ルビィにはどう見えたの?」
少しの間。そして次の答えで、やはり私の妹なのだと思わされた。
ルビィ「じ、実はルビィもそう思ってたんだ。曜ちゃんは何でも溜め込んじゃいそうだったから、泣けたのは良かったのかなあって。」
これはルビィのついた嘘だということはすぐわかった。
私と一緒。できれば相手を傷つけたくなくて嘘をつく。でもその嘘は側からみればすぐに嘘だとわかる。
ダイヤ「ルビィ。あなたになら話せるかもしれない。
私が考えていること。」
ルビィ「……。」
ダイヤ「そして、もしかしたらもう取り返しのつかないことになっているかもしれないということも。」
???「……。」
ルビィ「じゃあ、お姉ちゃんが言った通りになったら……。」
ダイヤ「……Aqoursが解散になりかねません。」
ルビィ「そ、そんな……。」
ガラッ
ダイヤ「なっ、何者!?」
ルビィ「!?」
ダイヤ「外に出て行って…泥棒!?」
ルビィ「た、多分違うよ!」
ダイヤ「で、では何!?」
ルビィ「……花丸ちゃん、だと思う。」
ダイヤ「花丸さん?なぜ?」
ここでようやく、私はまんまと妹にハメられたことに気づきました。
ダイヤ「最初から私の意見を聞こうとしていましたの?」
ルビィ「っ。」フルフル
首を小さく横に振る。これはルビィにとっては肯定に近い。
ダイヤ「なぜ私に話を聞こうと思ったの?」
ルビィ「ルビィって心配性だから、良くないように捉えてるんじゃないかって思って……。でも」
ルビィは握りこぶしを作って、私の目を見た。
ルビィ「もう後悔したくないの!
ルビィがちゃんと止めていれば曜ちゃんのケガもひどくならなかったから…そんな風にもう後悔したくないよ。」
わかる。でも
ダイヤ「なぜ花丸さんをここに呼ぶようなことをしたの?」
ルビィ「え?」
ダイヤ「自分でそう決意したなら、花丸さんを呼ぶ必要はないはず、それなのになぜ花丸さんをここに呼んだの?」
ルビィ「えぇ…あぁ…っと……。」
決意を固くしたつもりでも、いざというときのために予防線を張っておいたのね。
ダイヤ「あなたがどうにかしようと考えるにはまだ早すぎるわ。」
ルビィ「で、でもっ!」
ダイヤ「なんのためにお姉ちゃんがいると思っているの?」
ルビィ「えっ。」
ダイヤ「困ったことがあったら、お姉ちゃんに相談しなさい。辛かったことがあったら、お姉ちゃんのところで泣いていいから。」
ルビィ「っ。ル…ルビィは……。」
泣き虫で何もできないようなルビィでも私の妹。いや、むしろ弱気な彼女だからこそ言い出せなくて溜め込む。
ダイヤ「おいで。」
私は手を広げてルビィのことを抱いた。
ルビィ「……曜ちゃんが一人で辛そうにしているのを見るのは…もう見たくないよぉ……」
私の腕の中で泣きじゃくるルビィを見て、心の底から慈愛を送ろうと思うのと共に、もう一人の『妹』のことも考えなくてはならないと私は感じていた。
ダイヤ「本当に、曜さんはみんなから愛されていますね。」
実は最近、μ'sの方で新作を考えています。
そちらの連載を始めていいか皆さんに相談したいです。連載を始めれば、また投稿ペースが落ちるかもしれません。
今回の最新話のところの感想欄に意見を書いていただけると幸いです。よろしくお願いします。