向日葵に憧れた海   作:縞野 いちご

25 / 68
ルビィpartです

2章#7から2日後


#7.5 誰の責任?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「…………。」

 

 

ルビィ「…………。」

 

 

 

もうすぐ予選が始まるので、ルビィと曜ちゃんは衣装の最終調整をしています。

 

曜ちゃんと一緒に考えた衣装は、とっても可愛くて、気分がウキウキする!

 

 

 

 

……はずなんだけど…………

 

 

 

 

曜「うん?どうしたの?ルビィちゃん。」

 

ルビィ「い、いえっ!な、なんでもないです……。」

 

曜「?」

 

 

 

ルビィのせいで曜ちゃんが腕を痛めた時から…………。

ううんううん。本当は、その少し前から、曜ちゃんの雰囲気が変わっちゃった気がしてたんだ。

 

 

ルビィ「あ、あのっ!」

 

曜「うん。なに?」

 

ルビィ「えぇ…えっとぉ……。

衣装、可愛く仕上がってきてるね!」

 

曜「うん。ルビィちゃんが頑張ってくれてるお陰だよ!」

 

 

ち、違うよぉ……。

ルビィは褒められたいわけじゃなくて、曜ちゃんがすごいってことを言いたいのに……。

 

 

 

 

 

 

ルビィ「!」

 

 

曜「ルビィちゃん?どうし……」

 

ルビィ「ごめんなさい!ちょっとおトイレに!!」

 

曜「うわぁあぁっ!?わかった!行ってきな!」

 

 

ルビィは近くのトイレに急いで走りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ま、間に合って良かったよぉ……。」

 

 

 

こういう時って、急に犬さんが出てきたり、溝に足をとられて転んじゃったりして、トイレにたどり着けないことがよくあるんだよね。

 

 

 

 

 

 

……ぃ…………ぁ

 

 

 

ルビィ「…………?」

 

 

 

部室の近くまで戻ってきたけど、部室から声が聞こえたような……。

 

 

曜「………っ。……。」

 

 

 

よ、曜ちゃん……?

 

 

 

曜「痛みが……ひどくなってきたなぁ……。」

 

 

ルビィ「ピッ!?モゴモゴッ!」

 

 

思わずいつもみたいに声を出しそうになって、ルビィの手で口を抑えました。

 

 

 

痛みがひどくなってきた?

 

 

 

 

……ルビィのことを受け止めてもらったときのケガが治ってなかった!?

 

 

 

ルビィ「曜ちゃんっ!!」

 

曜「!!」

 

ルビィ「見せてください!

ルビィに左腕を見せてください!!」

 

 

そう言って、ルビィが曜ちゃんの左腕を掴んだときでした。

 

 

曜「い、いっ!」

 

 

曜ちゃんは顔をしかめさせて、苦しげな声を漏らしました。

 

ちょっと腕を掴んだだけなのに……それにルビィの持つ力はとっても弱いし……

 

 

ルビィは曜ちゃんの袖を捲って、左腕を肩のところまで見えるようにしました。

 

 

ルビィ「う、うそ……。」

 

 

ルビィは紫色に腫れた曜ちゃんの左腕を見て、頭が真っ白になっちゃったの。

 

 

ルビィ「る、る、ルビィのせいで……曜ちゃんの腕が……」

 

 

ルビィがあの時、花丸ちゃんにぶつかっても倒れなければ、曜ちゃんはこんなケガをしなくて済んだのに……

 

 

曜「違う!ルビィちゃんのせいじゃないよ!それに、今だってダンスの練習ができてるんだから大丈夫だよ!!」

 

 

ルビィ「う、うゆぅ……。」

 

 

違う……よね。

できてるんじゃなくて、無理やりしてるんだってことはルビィでもわかるよ。

 

 

ルビィ「曜ちゃん。」

 

曜「なに……?」

 

ルビィ「病院に行こ?」

 

曜「……。」

 

 

ルビィはこれ以上、曜ちゃんに無理をしてほしくない。

 

 

曜「……病院に診てもらったら、きっと予選に出られないよ。そうしたら、みんなに迷惑をかけちゃう。」

 

ルビィ「予備予選の時だって、曜ちゃんが頑張ったから上手くいったんだよ?今度はルビィたちが曜ちゃんを支えるから!」

 

 

ルビィの言葉を聞いて、曜ちゃんは何も喋らなくなった。それからしばらく、どっちも喋らなかったんだけど、曜ちゃんはルビィを、じっと見ながらポツポツと喋り始めた。

 

 

曜「……もしこれでさ

私が大ケガをしてたら……

誰の責任になると思う……?」

 

 

ルビィのことを考えてくれているの?

 

 

ルビィ「それはルビィだと思う。

 

 

……本当に、ごめんなさい……。」

 

 

 

 

曜ちゃんは悲しそうにルビィのことを見ていて……それが辛くて、ルビィは泣いちゃった……。

 

 

辛いのは曜ちゃんなのに。

 

 

 

 

 

曜「……違うよ。」

 

ルビィ「え……。」

 

曜「花丸ちゃんになると思うよ……。」

 

 

 

 

 

ルビィ「……ぁ。」

 

 

 

ルビィにぶつかったのは花丸ちゃん。でも、それは曜ちゃんのケガには直接は関係ないよ……!

 

 

ルビィ「は、花丸ちゃんは何も悪くない!」

 

曜「私もそう思ってるよ。

ルビィちゃんも、花丸ちゃんも悪くない。」

 

そこまで言って、曜ちゃんは左腕を押さえました。

 

 

曜「でも。ルビィちゃんならわかるよね?

花丸ちゃんならどう思うか、なんて。」

 

 

花丸ちゃんなら…………

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「自分のせいにしちゃう気がする。」

 

 

花丸『マルのせいで曜ちゃんが……』

 

 

花丸ちゃんが泣いている顔を思い浮かべると、ルビィは何も言えなかった。

 

 

 

曜「……花丸ちゃんのためにも、このことは内緒にして。お願い。」

 

 

内緒……

 

 

 

本当に内緒……?

 

 

 

 

それは曜ちゃんのために……?

 

 

 

 

 

それとも、花丸ちゃんのために……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それとも、ルビィのために……?

 

 

 

 

 

 

ルビィ「あぅ……うゆ……」

 

 

頭が真っ白になったルビィは、思わず首を縦に振ったの。

 

 

 

曜「ありがとう。ルビィちゃん。」

 

 

 

 

その時の曜ちゃんは笑顔だったけど、その笑顔はいつもの曜ちゃんの笑顔じゃなかった。

 

 

泣きそうになっているのを必死に堪えようとしているような顔。

 

 

 

 

 

これはきっと曜ちゃんのS.O.Sだったんだ……。

 

 

 

 

誰にも知られたくないけど、誰かに助けてほしい。

もう、辛くて、苦くて、泣きたいんだって。

 

 

 

 

 

 

 

それなのにルビィは弱虫で臆病だから、ただ、曜ちゃんを悲しませないように、曜ちゃんの言うことを聞くことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。